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ICC FUKUOKA 2022のセッション「『サステナブル』『ダイバーシティ』はマーケティングのメインストリームになるのか?」、全8回の最終回は、スピーカーたちの感じている課題について議論。ものを買わないこと=サステナビリティという価値観について議論します。物を作って売る企業として、何を大切にしなければいけないのか? 最後まで読み応えのある議論が続きます。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティングにサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICCサミット FUKUOKA 2022
Session 4F
「サステナブル」「ダイバーシティ」はマーケティングのメインストリームになるのか?
Supported by リブ・コンサルティング
(スピーカー)
工藤 萌
株式会社ユーグレナ
執行役員 ユーグレナヘルスケアカンパニー Co-カンパニー長
深井 喜翔
KAPOK JAPAN株式会社
代表取締役
松田 文登
株式会社ヘラルボニー
代表取締役副社長
リュウ シーチャウ
レノボジャパン合同会社
CMO マーケティング統括本部 統括本部長 / NECパーソナルコンピュータ株式会社 コンシューマ事業本部 マーケティング部長
(モデレーター)
山崎 大祐
株式会社マザーハウス
代表取締役副社長
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1.「サステナブル」「ダイバーシティ」で社会に挑む企業が集結、事業を語る
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7.大企業で号令化するSDGs、レノボが”隠れESGを探せ”キャンペーンで得た手応え
本編
山崎 色々とご紹介頂きましたが、残り12分となりましたので、ここからは、今の課題とこれからの話をしたいと思います。
これまでの議論の中で、サステナビリティやダイバーシティを広げていくためのキーワードはいくつか出てきたと思いますが、逆に課題と、今後どうなっていきそうかという話をしましょう。
ものを買わないことを良しとする価値観に危機感
深井 一つ、課題として挙げたいことがあります。
冒頭に工藤さんが、「売れれば売れるほど世界が良くなる商品を作りたい」とおっしゃっていましたよね。
そうやって、一生懸命取り組んでいる人が世の中にすごく増えたと思っており、それはすごく良いことです。
しかし、先日、ブランドのファンだと言ってくれた若い方々と話した時、強く感じた課題がありました。
彼らは「ものを買わないことが一番良いと思っています!」と、キラキラした目で言っていて、それが彼らにとってのサステナビリティなのだと思ったのです。
教育がそういう方向にシフトしていることは、素晴らしい面もありますが、僕は危機感も感じています。
消費は一つの投票だとも言われます。
消費しないことを美徳としてしまうのは投票に行かないのと近い状況ですから、若者が選挙に行かないのと同じことが消費でも起きてしまうのではないかと思っています。
つまり、上の世代が自分たちのやりたい放題で残した世界を次世代が受け継ぐとなると、それは、大変な世界が待っていることになるのではないでしょうか。
それを何とか変えないといけないと、すごく課題に感じています。
山崎 なるほど。
今日皆さんの話を聞いて思ったのは、消費する、買うという行為において、得られるものは買う対象の「もの」の価値だけではないということです。
買うことで、環境に負荷をかけるかもしれないし、悪いことが起こるかもしれない。
でもそれ以上に、プラスの要素を提供する僕らが表現することが重要な気がします。
今それを感じてもらえていなければ、当然買ってもらえてもいないでしょう。
アメリカでは、ミレニアル世代やZ世代が消費の中心になっていますが、日本では人口動態が原因で、まだ年齢が高い世代が消費の中心です。
でも、日本でもその状況が変わる時が来ると思いますし、その時に、プラスの要素が提供できているかが一気に問われるようになるのではないでしょうか。
会社の提供価値をもう少し高い視座で考えて
リュウ 私は、若者がものを買わなくなる時代が来ると思っています。
今日もランチの時、服なんて買わないほうがいいよねという話をしていました。
サステナブルファッションなどと言いますが、結局、作れば捨てることになるので、買わないほうがいいのです。
でも、自分の満足度を上げるためにお金を使うことはするでしょうから、もう少し俯瞰して、そのお金を使う対象がどこなのかについて考えたほうがいいのではないでしょうか。
業界にこだわらなくてもいいと思うので、無理に服を買わせなくてもいいのです。
それが食なのか経験なのか分かりませんが、彼らが、彼らにとってより価値の高いものにお金を使う未来へとシフトしていくと思います。
私が消費財の会社を辞めた理由もそこにあって、工藤さんならお分かりだと思いますが、半年に一度店の棚が変わるので、それに合わせて処方を少し変えて、パッケージを変えて、前の製品は捨てて…という商品開発をしていました。
でも、そんなイノベーションや変更がなくても髪のツヤは出るし、と思うと、未来を考えて、業界を出ました。
深井 なるほど。
リュウ ですから、どの業界に軸をおいて仕事をするのかを考えるのが良いかもしれません。
深井 それは、自分が働くなら、という視点での話でしょうか?
リュウ 自分が働く場合もそうですし、自分が会社を持っているとしたら、会社の提供価値について、もう少し高い視座で考えるのが良いのではないかという気がしています。
価値が曖昧なものは若者に選ばれなくなる
山崎 マーケティングは、最終的には世の中に価値を届けるということなので、ものを買う、売る、働く…全てがつながると思います。
人々が価値観に基づいて消費、投資、労働をするようになると、彼らの価値に沿ったものしか残らなくなるのではないでしょうか。
そう考えると、サステナビリティやダイバーシティという価値を持つものは広がっていくと思います。
あと、若い人たちも、ものを買わなくなっているというよりも、今まで5個買っていたものを1個だけ買うようにしているのではないかと僕は思っています。
つまり、価値観を大事にして、きちんと選別してものを買うようになっているので、裏側にある情報の伝え方をコントロールしなければ、選ばれなくなるのではないでしょうか。
昔は価値が曖昧でも選ばれていたものが、今は選ばれなくなっているという感覚を持っています。
工藤 ある程度、淘汰はされるかもしれませんが、今はものが多すぎます。
それぞれのカテゴリが持っている本来のミッション、例えば服なら自己表現の喜びや気持ちが上がるとかあると思うのですが、そんな情緒的なコミュニケーションを含めて、サステナビリティやダイバーシティとを高い次元で両立するイノベーションがこれから求められます。
かつ、それが経済合理性と両立できるかという3点セット、この3点セットの実現が非常に難しい時代だと思います。それを実現することこそが、コマーシャルイノベーションも含めた、イノベーションだし、大事なことだと思います。
マザーハウスのRINNEの例(Part.4参照)のように、単純にものを売って利益を稼ぐのではなく、工夫して若い方にお金を使ってもらうことが大事なのではないでしょうか。
山崎 ありがとうございます。
残り5分となってしまったので、会場の方から質問やコメントがあれば、1つだけお聞きしたいと思います。
Q「サステナビリティ」「ダイバーシティ」以外に広まったほうがよい言葉は?
KIBOW KIBOW社会投資ファンド 山中 礼二さん 今日は、「サステナビリティ」と「ダイバーシティ」という2つの言葉を軸に語って頂きましたが、この2つ以外に、日本に広まったほうが良いと思われる言葉や概念はありますか?
山崎 面白い質問ですね。
リュウ 普段から思っているのは、「生産性」です。
他の国で働いた経験もありますし、今も日本にいながら他の国の人たちと仕事をしていますが、日本の中でのやり取りは、無駄なプロセスが多くすごく時間がかかるので、どうにかならないかとすごく思っています。
例えば、日本語のメールはすごく長いです。
お世話になっていないのに、「お世話になっております。」と書きますよね(笑)。
英語だと“Hi”だけで、やりとりもスムーズなのに、日本語だと、読むのも書くのも時間がかかります。
こういった例が、「塵も積もれば」状態になっているので、きちんと結果やアウトプットを意識して働けば、生産性が上がってみんながハッピーになるのではないかと普段から思っています。
山崎 なるほど。
僕は、「誰も取り残さない」という概念が良いと思っています。
僕はSDGsには懐疑的なところがあるのですが、地域の問題や、少子高齢化が全世界で一番進んでいることを考えると、先頭に来ている「誰も取り残さない」という概念は、日本には合うのではないかと思います。
今シーチャウさんが言った「生産性」の向上を、「誰も取り残さない」で実現することは、社会課題の解決ではないでしょうか。
今日登壇した各社が、「誰も取り残さない」ことを目指して取り組んでいますよね、それこそがダイバーシティだと思います。
この「誰も取り残さない」感覚を日本人は本来持っていると思いますが、あまりフォーカスされていない日本の価値だと感じています。
これからチャレンジしたいこと
山崎 では最後に、一言ずつ頂いて終了しましょう。
今日のスピーカーの皆さんは、サステナビリティとダイバーシティをマーケティングのメインストリームにするため、これからもチャレンジをしていく方々だと思います。
その担い手として、一言お願いします。
リュウ セッションタイトルの、「メインストリームになるのか?」という疑問が嫌なので、「メインストリームになる!」にしていきたいです。
皆さんのこれからの取り組みを、楽しみにしています。
松田 今日の会場は小さめですが、メインストリームになればA会場でセッションができると思うので(笑)、それが叶うくらいにヘラルボニーが周知され、当たり前になることを目指して頑張ります。
よろしくお願いいたします、ありがとうございました。
深井 私は家業の後継という立場でもあるのですが、家業は75年続いているので、サステナブルな事業なのだと思います。
そして、次の75年を作っていくことを考えた時、日本には100年以上続く会社が多いので、それはつまり、サステナビリティの実現に向いている企業が多いのではないかと僕は思っています。
「後継 × サステナブルな未来」の一端を担えるよう、頑張っていきます。
よろしくお願いします。
工藤 私は、マーケティングというテクニックを進化させたいと心から思っています。
マーケティングには人の心や行動を変える力があると思うので、変えたその先にある状態が、人類や地球にとって良いものにできるよう、マーケティングを進化させることを自分の志にして取り組んでいきたいです。
今日は熱い議論ができ、同じ志を持つ方々がいることを心強いと思ったので、一緒に社会を変えていきたいと改めて思いました。
今日はありがとうございました。
山崎 ありがとうございました。
「ダイバーシティがマーケティングのメインストリームになる」というと、たとえそうなり得たとしても、メインストリームというは、マジョリティですよね。
その一方で今日、僕が改めて思ったのは、みんなやっていることは全然違うということです。
各社の価値を体現していくことがマーケティングであり、ダイバーシティだと考えると、そこにメインストリームの方法論は生まれません。
自分たちの価値を表現していきながら、ちゃんと応援者をつかんでいくことがマーケティングだと考えると、メインストリームになることがゴールではなくて、メインストリームになるけれども中身はバラバラなのです。
今日のセッションが、皆さんの企業が届けるべき価値について考えるきっかけになればいいなと思いますし、アンケートで感想を書いて頂けると嬉しいです。
今日は以上です、ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸
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