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環境負荷が減り、生産量が上がる農薬でサスティナブルな農業を実現する「アグロデザイン・スタジオ」(ICC KYOTO 2022)

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ICC KYOTO 2022 CATAPULT GRAND PRIX(カタパルト・グランプリ) – 強者が勢揃い – に登壇いただき、見事2位に入賞した、アグロデザイン・スタジオ 西ヶ谷 有輝さんのプレゼンテーション動画【環境負荷が減り、生産量が上がる農薬でサスティナブルな農業を実現する「アグロデザイン・スタジオ」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはAGSコンサルティングです。

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【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 6A
CATAPULT GRAND PRIX(カタパルト・グランプリ) – 強者が勢揃い –
Sponsored by AGSコンサルティング

西ヶ谷 有輝
株式会社アグロデザイン・スタジオ
代表取締役社長

1981年静岡生まれ。2016年東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了、博士(生命科学)。大学院博士課程テーマとして研究を始めた農薬(硝化抑制剤)の実用化のため、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)を経て、2018年にアグロデザイン・スタジオを起業。2019年には国内農薬スタートアップ初となるVCからの資金調達に成功。大学発ベンチャー表彰2020アーリーエッジ賞受賞。タンパク質の結晶構造解析技術を活用した毒性リスクの低い分子標的農薬を開発中。


西ヶ谷 有輝さん おはようございます、株式会社アグロデザイン・スタジオの西ヶ谷です。

当社は、「農業をサスティナブルに」したい会社です。

トウモロコシの肥料が河川を通じて海を汚染

皆さん、世界で一番生産されている農作物は何かご存知でしょうか?

実はトウモロコシです。トウモロコシは、アメリカのミシシッピ川流域のコーンベルト地帯で、大量に生産されています。

ここでの生産方法は、とてもサスティナブルとは言えないものです。

なぜなら、大量の肥料が撒かれているため、土壌を汚染し、河川に流れ込み、メキシコ湾岸にデッドゾーンと呼ばれる、生物が住みにくい領域を生んでしまっています。

メキシコ湾の酸欠海域「デッドゾーン」:トウモロコシ増産で過去最高 2008年7月16日(Bloomberg)

このトウモロコシを大量に輸入している国の一つが、日本です。

しかし皆さんは、「あまりトウモロコシは食べていないよ」と思うかもしれません。

実は、このトウモロコシのほとんどは家畜の飼料となっているのです。

つまり、肉を食べるということは、環境に負荷をかけているわけです。

ですから、肉は食べてはいけないわけです。肉はダメ!

そんなことは、サスティナブルに生活している(会場の)皆さんであれば、分かっていることだと思います!

しかし・・・・やっぱり・・・・・焼肉食べたいですよね。

撒くほどに環境負荷が減る“不思議な農薬”「硝化抑制剤」

そんな、「サスティナブルな生活はしたいけれど、焼肉は食べたい」という欲張りな皆さんにぴったりなものを、当社は開発しています。

それが、「硝化抑制剤」(※) という薬剤です。

▶編集注:硝化抑制剤については、アグロデザイン・スタジオの「RESEARCH」内の説明をご覧ください。

これは農薬の一種ですが、撒けば撒くほど環境負荷が減るという、不思議な農薬です。

しかも、生産量もアップします。

なぜこんなことが可能なのでしょうか。

肥料の約半分は農作物の栄養になっていない

実は畑に撒いている肥料のうち、半分ほどしか農作物の栄養になっていないのです。

投与した肥料の残り半分は、土の中ならどこにでもいる「硝化菌」という微生物が食べて(代謝して)しまいます。そして、その代謝物が汚染源(硝酸体窒素 NO3-)や、温室効果化ガス(亜酸化窒素 N2O)になっているのです。

そこで、この硝化菌という微生物を退治(殺菌)する薬剤が硝化抑制剤です。

このように当社が開発中の硝化抑制剤を、トウモロコシのポット(鉢植え)に投与すると、生育が良くなります。

市販薬剤に比べ最大4万倍強力な硝化抑制剤を開発

硝化抑制剤には市販薬もいくつか出ています。しかし、残留したり、効果が弱かったりという大きな問題がありました。

そこで当社は、これまでの薬剤に比べて、最大4万倍強いものを開発しました。

理論的には、畑に撒く際に1ヘクタールあたり50kg必要であったものが、たった1g程度で済む可能性があります。

なぜこんなに飛躍的に、性能アップができたのか。

その理由は当社の技術にあります。当社は、まずこの硝化菌に注目しました。

硝化菌は、畑であればどこにでもいます。こちらは電子顕微鏡写真ですが、粒々の一つ一つがこの微生物です。

この粒(硝化菌)は、重要な酵素を持っています。

この酵素が働かなければ硝化菌は死ぬので、酵素が働かなくなるような薬剤を、三次元の構造を元に、コンピューターを使って設計しています。

この三次元のタンパク質構造を得る、というのが私たちのコアの技術です。

他の農薬会社ができないような開発が可能

そのために、大型放射光施設「SPring-8」を活用しています。

量子ビーム(1)SPring-8ってなあに?(文部科学省)

ここで、先ほどの酵素の結晶に対して、直径500mの円形加速器から放たれる超強力なX線ビームを当てます。

そうすると、構造が分かるのです。

実はこの方法は、医薬品に使われてきた方法です。

ですので、SPring-8を利用する他社のほとんどが製薬会社ですが、当社は今年既に、他の製薬会社を超えた量の測定をしています。

つまり、これだけの量の測定をしたからこそ、他の農薬会社ができないような開発が可能になっているのです。

分子標的農薬の開発プラットフォーマーとして

申し遅れましたが、私は東京大学で硝化抑制剤の研究で博士号を獲得しました。それが評価され、大学発ベンチャー表彰や日本財団からの表彰をいただいています。

[受賞] 大学発ベンチャー表彰にてアーリーエッジ賞を受賞しました 2020.09.28(アグロデザイン・スタジオ)

この薬剤は非常にサスティナブルだということで、これまで国からも10件以上、合計6億円ほどの助成金をいただいています(助成プロジェクトには、硝化抑制剤以外の農薬開発も含む)。

農林水産業等研究分野における大学発ベンチャーの起業促進実証委託事業(農林水産省)

我々はこの技術をプラットフォームとして一般化し、硝化抑制剤だけではなく除草剤などにも使っています。

特に最近は、Preferred Networksと、AI創薬を使った除草剤の開発など、新しい試みをしています。

アグロデザイン・スタジオ、Preferred Networksとの共同研究で、除草剤抵抗のある変異酵素に有効な阻害剤を創出(PR TIMES) 

当社は、バイオ技術を活用し、誰でも手軽にできるサスティナブルな農業を実現したいと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/大塚 幸

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