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「何のために生きるのか?使命感とは何か?」【K16-1D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その5)は、各登壇者とともに、ジャパンハート吉岡さんが意識する「誰も損しない仕組みづくり」について議論しました。吉岡さんの「人が今後お金を使うところ」と話した公益観にも注目です。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 1D
「何のために生きるのか?使命感とは何か?」
(スピーカー)
吉岡 秀人
特定非営利活動法人ジャパンハート
代表
山田 敏夫
ライフスタイルアクセント株式会社(ファクトリエ)
代表取締役
吉川 雄介
特定非営利活動法人e-Education
海外事業統括
(モデレーター)
南 章行
株式会社ココナラ
代表取締役
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▶ 「何のために生きるのか?使命感とは何か?」の配信済み記事一覧
【前の記事】
【本編】
惨めには生きないと誓う
吉岡 僕はジャパンハートを作る時に誓ったことがあります。
決して世の中にとって不利益なことをしてるわけではないので、惨めには生きないでおこうと思ったんです。
ジャパンハートを始める時、2004年頃僕のことを知ってる日本人なんて誰もいないんです。
ミャンマーの田舎で医療やってる日本人のことなんて誰も知らないので、資金源がなく、僕が医者になって貯めた貯金しかなかったので、これが無くなる時が終わる時だったんです。
お金は必要だったんですが、そのあては何も無かったのです。
貯金が無くなる時は全てが終わるときなので、爪に火を灯すような生活をしていたんです。
手術の糸だってボロボロになるような一番安いものを買っていましたが、1人でも多くの人に医療を届けたいと思っていました。
それは、それが自分の幸せだと思っていたからです。
そして、「恥ずかしいことはしていないから惨めな思いはしない」、「人にお金をくれって絶対言わない」と誓ったんです。
それは日本人だからピンとくる人もいるかもしれませんが、正しいことをしていたら天は見捨てないと思ってたんです。
そう思っていると、あることにふと気づきまして、それは「お金の集まるところに人は集まるので、人の集まるところにもお金も集まるはずだ」ということです。
だから僕はお金を集めないで人を集めようと思ったのです。
タイムギャップはあるかもしれないけど、人が集まっていたら必ず必要なものは与えられるだろうと思い、まずは人を集めようとしました。
しかし、何でもタイミングが大切だと思うんですが、僕がもしジャパンハートという組織を3年前に立ち上げていたら、僕はこの場で喋っていないと思うんです。
それはなぜかというと、僕は時代に助けられたからです。
インターネットの時代に助けられた
吉岡 僕のことを誰も知らないあの時代に日本の人に知ってもらえるチャンスがあったんですが、それはインターネットだったのです。
インターネットの急激な普及によって、ミャンマーの田舎から日本の人に情報発信できるようになりました。
ネットがその頃から急激に広がったので、毎日夜中まで働いて帰ってきて、当時設置に50万円ぐらいかかりましたが衛星回線の前に座ってボコボコっと打ち込むと、日本のみんなが知ることができたんです。
ですから、もし3年前にやっていたら僕は潰れているはずですが、時代に助けられた、結果的に天に見捨てられなかったということだったと思うんです。
そして今こうやって皆さんの前で喋ることができるのです。
本当にどんなことだって時代の波を受けていないことは上手くいきませんが、時代の波、トレンドに一番敏感に反応してくれるのは誰かというと、20代後半から40代ぐらいの女性です。
だから、ジャパンハートは最初医者を集めないで看護師を集めました。
若い看護師さんたちをどんどん集めて常にインタビューをし、例えば「離島の医療に関してどう思うか、やった方がいいと思うか」と聞いた時に女性が「やった方がいいと思う」と言うと、「じゃあ一緒にやろう」というふうに進めてきました。
今でもそうですが、若い女性をどんどん集めて意見を必ず聞きます。
現場に600人、700人の人が来ても、あまりおっさんの言うことは聞かないんですが、学生を含め女性の話は一生懸命聞き、どう思うか、どう感じるか、どう全員で進むと思うか、ということをいつもインタビューしています。
そういうことが結果的にこのジャパンハートの発展とそれに伴う社会的利益、そして僕が今この場でみなさんへこのようなプレゼンテーションができるチャンスに繋がっていると思います。
南 どうやったらスケールするのか、という質問をしようと思っていたんですが、素晴らしい示唆をいただけて、感心してしまいました。
僕も起業する前にいくつかNPOを立ち上げたことがありますが、理念に共感してもらうところまでは頑張れば意外と持っていけるんです。
ただそこからお金や人は意外と動かないし、一瞬気持ちが盛り上がって手伝ってくれたりはしますが、続かなかったりしますよね。
そこをまず先に看護師さん、女性を動かしたというのが、どこまでが戦略でどこまでが直感だったかは分かりませんが、すごい着眼点だなと思いました。
その後こういう所で講演すると「是非支援したいです」とおっしゃる人が多く、その気持ちに嘘偽りは無いと思うのですが、何万人の人が吉岡さんに対して「賛同している、応援したい」と言っても実際にやる人とやらない人がいますよね。
あくまでも活動を続けるビジネスパーソンとしての視点から、どうやったらそういう人達を巻き込み続けられるか、というノウハウはあるんでしょうか。
活動を継続するための「巻き込む力」
吉岡 一言でいうと、時代をキャッチしているかどうかにかかっていると思います。
自分でお金を払ってボランティアに参加する人がいるんです。実際に今まで参加した人は2,000人以上います。
そうすると「それはサスティナブル(持続可能)じゃないんじゃないですか、自分で払う人はいつまでも続かないじゃないんですか」と言われるわけです。
それに対して色々考えていますが、僕は完全にサスティナブル(持続可能)だと思っていて、それは何故かというと、時代だからです。
IT業界のことに関係ありますが、人工知能はものすごいスピードで発展していて、あと15年位で人間の知能に追いつきますよね。
その後エネルギーがフリーになる時代が来るかもしれないと言われてますよね。
エネルギーがフリーになれば物価が下がり、食べ物が安くなり、衣食住に困らなくなりますが、そうなったら人間はどこにお金使いますか。
そうなると人間は自分の人生を豊かにすることにお金を使うしかないんです。
だから世界遺産や旅行はこれからものすごく大きなトレンドとして大流行りになると思いますし、健康産業ももっと流行ると思います。
今 自己啓発のセミナー等も高くてもすごく多くの人が参加していますが、それは自分の人生に対する投資なんです。
こういう活動というのは、その大きな一つの流れの中に位置付けられると思うんです。
これからますます多くの人が旅行に行ったりと自分の良い時間を買うためにお金を出して、こういう活動に来る人たちがもっともっと増えると思っています。
だから完全にサスティナブル(持続可能)になると思っています。
それは来る人たちのトレンドから読み取れていまして、時代の流れもそれを後押ししているので、恐らくこの活動は発展していくと思います。
南 ありがとうございます。
吉川さんは同じく途上国で展開する立場として、今の話のどの辺りが共感ポイントで、どこが驚いたポイントでしたか。
吉川 「分かる分かる」と言える立場ではありませんが、すごく勉強になるお話ばかりでした。私は今 途上国(ネパール)の特に農村部や貧困層の教育支援をしているんですが、1年前までは日本の教育産業の企業で働いていました。
日本の教育の課題や素晴らしさを知り、その経験を活かして、途上国にいる学ぶの機会がない子ども達を救いたいと思って活動しています。するとまた途上国での活動を通して学ぶことや気付かされることがあって、それを再度日本に還元したいという思いも出てきました。
吉岡先生に1つお伺いしたいのが、先程の「時代を読む」というお話に関連するかもしれませんが、特に貧困等は富や機会の分配に仕方によって生まれていたり、それによって格差が生じていたりすると思うんです。
途上国の貧困層への直接の医療行為とは別の視点で、「もう少し日本全体がこうなったらいい」とか「世界の経済がこうなったらいい」という視点で、途上国の発展のために、先進国が今後どのように成長、発展していくと良いと思われますか?
2点間の循環が起こる支援を考える
吉岡 作用・反作用ですね。
今までの支援は、日本から資源の一方的な持ち出しでした。
大きな流れの中で見れば、色んな意味で経済的な搾取も起こってますから辻褄が合う作業かもしれませんが、2点間の循環が起こりにくかったと思うんです。
循環というのは日本の文化のエッセンスで、いかに2点間で循環を起こさせるか、ということを常に考えています。
例えば二十数年前、僕が国際医療をやる時に、僕は日本で変態扱いされてたんです。
当時外国に行くというのはアメリカやヨーロッパに行くことで、東南アジアは日本の政府の役員やWHOの職員として待遇と地位と名誉を与えられて行く場所で、途上国にお金を握りしめていくなんて、頭がおかしい人がやることだったんです。
ところが今何が起こっているかというと、今日本中の大きな学会から呼ばれるんです。
数年前、世界から8人の外科医達が呼び戻されて、日本の外科学会で3万人以上集まる学会ですが、その内の1人が僕だったんです。
国際協力に興味がある人、と言うとみんな手をあげるんです。
この人たち、かつて邪魔してきた人たちなんですが、みんな手をあげるんです。
僕がやっていることは二十数年前から一緒ですが、時代が動いたんです。
時代が動いて、僕が真ん中の方にずっと寄ってきたのです。
この写真は今年、福岡のヒルトン・シーホークで行った小児外科の学会です。
今年の小児外科の学会のテーマは何かというと、「ジャパンハートのコラボレーション」だったんです。
「ジャパンハートとどうコラボレーションするか」というのを教授等、偉い人たちがみんな集まって協議したんです。
これは国際セッションで一番大きなセッションです。
この後の消化器外科学会でも同じセッションを行いました。
そして、これは僕が作り上げる仕組みですが、日本小児外科が優秀な指導医と若い医者を連れて学会でチームを出します、ということになりました。
なぜそうなったかというと、日本は子どもが減っていて、子どもの外科医達の経験数が足りなくなってくるので、若い医師に経験させたい、という彼らの思惑があります。
途上国で通常子ども達は治療を受けられないところに、日本のトップレベルの人達がきてその人達が指導してやる、つまり日本の手術室と同じ環境のレベルが現地に現れて、子ども達が治療を受けられます。
若い先生達がそこで経験を積んで、それが日本に還元されていく、要するに誰も損しない仕組みをいかに作るか、ということにかかっているんです。
それを心がけています。
今までバラバラに存在していた学会を今僕が1つにまとめようとしていて、例えば東京だったら子ども関連は慶應大学、大阪だったら大阪大学、九州だったら九州大学が大学単位でもチームを出したいと言ってきまして、11月に九州大学のチームがミャンマーに手術をしにいきますが、それも全部僕等がコーディネートしています。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/城山 ゆかり
続きは 「NGOを科学する」ジャパンハート吉岡医師が重視する再現性ある仕組みづくり をご覧ください。
【編集部コメント】
続編(その6)では、ジャパンハート吉岡さんがミャンマーの慰霊碑で気づいたという、再現性を持つこと(科学)の重要性についてお話し頂きました。日本の多くのNGOは再現性が欠如しているという指摘が印象的でした。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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