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ICC KYOTO 2023のセッション「リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)」、全7回の②は、ボーダレス・ジャパン田口 一成さんとユーグレナ永田 暁彦さんが事業を紹介。それぞれ社会課題の解決に取り組むなか、リジェネラティブとの接続点を語ります。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 10D
リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)
Supported by エッグフォワード
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▶「リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)」の配信済み記事一覧
山崎 田口さん、お願いします。
社会起業家を増やし、社会問題の解決を増やす、ボーダレス・ジャパン 田口さん
田口 一成さん(以下、田口) はい、ボーダレス・ジャパンの田口と申します。
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田口 一成
株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長
1980年生まれ、福岡県出身。25歳でボーダレス・ジャパンを創業。 現在、世界13カ国で48のソーシャルビジネスを展開し、従業員は約1,500名、グループ年商は75億円を超える(2023年7月現在)。 日経ビジネス「世界を動かす日本人50」(2019年)、Forbes JAPAN「日本のインパクト・アントレプレナー35」(2019年) に選出された。 著書に『9割の社会問題はビジネスで解決できる』(PHP研究所)がある。
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ICCサミットでは社会課題という言葉を使っていますが、我々は、社会問題をビジネスという手段を使って解決するという一本にしぼっています。
社会問題を解決するために起業する人を「社会起業家」と呼んでおり、社会起業家の数が増えれば増える分、解決される社会問題の数も増えます。
そこで、社会起業家のための会社とは何だろうかということを追求しているのが、僕らの会社です。
ソーシャルビジネスがどんどん誕生していくエコシステムは何だろうと考え、企業や経営に必要な資金、ノウハウ、コミュニティについて研究しています。
今、世界13カ国に48社あり、売上は75億円ほどです。
「SWITCH to HOPE 社会の課題を、みんなの希望に変えていく。」が、僕らが掲げている大きなテーマです。
社会課題と聞くと難しく思えるかもしれませんが、裏を返せば、みんなの希望に変えていけるので、その転換装置として僕らはビジネスを行っていこうと考えています。
僕らがボーダレス・ジャパンという会社の中で複数の事業を作っていくよりも、志を持った起業家たち、ソーシャルベンチャーが集まる「カンパニオ(※) 」という考え方で、お互いに支え合う色々な仕組みを作っています。
▶編集注:カンパニオとは、COMPANY(会社)の語源となったラテン語で「パンを分かち合う仲間」の意味。詳しくはボーダレス・ジャパンのカンパニオの仕組みをご覧ください。
ソーシャルインパクトを出していくための、成長と助け合いの仕組みを作っています。
1つの特徴として、カンパニオに集合する起業家たちは独立経営をしていますが、売上の1%を恩送り資金として拠出しており、それを使って新たに起業する起業家をサポートしています。
この資金をもらった起業家は、もらってラッキーで終わるのではなく、創業支援をしてもらったので、今度は自分が資金を出して環境を提供できる側に回ろうとするという仕組みです。
バングラデシュの貧困問題に取り組んだり、ミャンマーでは農業分野でサポートしたり、日本ではホームレス問題や気候変動問題に取り組んだり、循環型社会を実現するツールを提供したり。
また、障がいのある方が健常者と同じ賃金を得られる取り組みをしたり、教育や子育て、農業・畜産、難民問題などに取り組んだりしています。
このうち、リジェネラティブに関することは3つありましたが、そのうちの2つ、気候変動問題と畜産については後で詳しくご紹介します。
ボーダレスは起業家の選択肢作りをしたい
福島 これだけの数の事業を、何人くらいで運営しているのでしょうか?
田口 全社で1,500人ですが、それぞれが勝手にやっているので、あまり把握していません。
永田さんみたいに、きちんと経営をしていません。
永田 いやいや(笑)、2023年の初めに福岡で、2人でその話をしました。
どちらが良いのかという点も含めて。
山崎 マザーハウスとは対照的です。
マザーハウスはワンブランドで、マザーハウスとして運営し、その中に色々なものづくりがあります。
でも、ボーダレス・ジャパンは、カンパニオというモデルです。
マザーハウスは社会起業家ともあまり表現しませんが、ボーダレス・ジャパンはそれを前面に出します。
ですので、周りに気を遣われて、マザーハウスとボーダレス・ジャパンは一緒に登壇することがあまりないです。
田口 へー、そうなんですね。
山崎 田口さんと一緒に登壇するのも、領域は似ているのに、これでまだ3回目くらいですかね。
田口 全然気を遣う必要ないですよね。
山崎 はい。事業を行うにあたってどちらのモデルがいいかについては、永田さん、どう思われますか?
田口さんと話して、どういう結論になったのでしょうか。
永田 結論は出ていないです、どちらの山の登り方でも良いと思っています。
キリスト教と仏教、どちらが良いかという話に近いと思います。
人が幸せになれれば良いという根幹は同じだと思いますので、どちらの道も正しいのではないでしょうか。
田口 起業家にとって、どういう山の登り方があるかの選択肢作りができればいいかなと思っています。
僕はどちらかと言えば、そこにない選択肢を補えないかという観点や発想を持っています。
山崎 面白いですね、ありがとうございます。
では永田さん、お願いします。
資本主義を活用して社会問題に向き合う、ユーグレナ 永田さん
永田 はい、未だにリジェネラティブが分かっていない永田です。
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永田 暁彦
株式会社ユーグレナ
取締役 代表執行役員 CEO
リアルテックファンド代表
慶應義塾大学商学部卒業後、独立系プライベート・エクイティファンドに入社。2008年に創業3年目のユーグレナ社に取締役として参画。財務戦略及びIPO体制構築を担い2012年のIPOを実現。IPO後は経営戦略、財務戦略、M&Aに加え、ヘルスケア、エネルギーなどの各事業責任者を歴任し、現在はCEOとして全事業執行の責任者を務める。また、2015年には日本最大規模のディープテック特化型ファンド「リアルテックファンド」を設立し、現在も代表としてファンド運営全般を統括している。
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ユーグレナのCEOをしています。
偶然、我々もバングラデシュの貧困問題を解決するために、ミドリムシを大量培養して食品として届けるというところから、会社が始まっています。
今では1日1万食、給食のない子供たちに自分たちの手で食品を届けるというプログラムを行っています。
これはありものの資料ですが、10年前に上場した時は36人の会社でしたが、今は1,000人を超えています。
当時はヘルスケア領域で健康食品を売る事業だけでしたが、今はバイオ燃料、肥料や飼料など色々なビジネスを行っています。
僕は、資本主義を活用して社会課題に向き合っていくことを、社会的役割と考えています。
前回のICCサミット FUKUOKA 2023で、上場するかしないかについて、山崎さんが出雲(充)と激論していましたよね。
山崎 そうそう。僕以外は上場すべき組で、僕だけは上場しない方がいいと対抗していました(笑)。
永田 これは、先ほどのキリスト教と仏教の話と同様、僕はどちらのルートもあると思っています。
就職する理由は腹を膨らませるためなのか、生きがいのためなのか……その目的によっては、何のために株式投資をするかという価値観も、複数存在して良いと思います。
我々の会社の特徴は、株主が約13万人いて、これは日本でも80番目くらいに多い会社ということです。
そして、彼らの長期株式保有率は66%を超えています。
世の中の個人投資家は短期売買が主ですが、ユーグレナを支えてくださっている株主は、株を長期保有しているのが特徴的です。
田口 長期の定義は、どのくらいですか?
永田 個人投資の場合、1年以上ですね。
山崎 これだけでも、めちゃくちゃ議論できるポイントだと思います。
例えば田口さんの会社だと、上場すると、48社がどういう扱いになるかという点が難しいですよね。
リジェネラティブ社会を考えると、視点の長さがめちゃくちゃ大事です。
永田 そうですね。
リジェネラティブと上場企業であること
山崎 今回の登壇者の会社の中で、ユーグレナは唯一上場している企業ですよね。
永田 はい。
山崎 上場している会社ならではの難しさが、本当はある気がしています。
リジェネラティブと言うと、短期的には収益が上がらなくてもやらなければいけないことがたくさんあります。
でも、株の長期保有者が66%もいるからできることもある気がします。
永田 株の長期保有者がいるかどうか、ではなく、投資家とどのようなコンセンサスであるか、が大切だと考えます。
皆さん、「お化け怖いの魔法」に囚われている気がします。
上場したら、3カ月に1回は決算報告をして、短期的利益を求められると思っていますよね?
成長して収益を出すことは上場企業として必ずやらなければならないことです。
四半期ごとに売上も利益も成長し続ける目標を出して、投資家の方にIRするのか、「5年先にこんなことを実現するために、毎年研究費10億円を使う」と宣言して、投資家に応援してもらうのか、の違いだと思うのです。
その時間軸が四半期だろうと5年だろうと最終的に利益で達成して約束を果たすことには変わらないと思います。
ですから、判断基準を提示した上で投資家が選ぶか選ばないかという状態になっていれば、僕は、それはフェアだと思っています。
その判断基準を提示し続けることが大事です。
選挙のマニフェストに近いかもしれません、嘘をついていたら、次は投票をせずに落選させるべきですよね。
それを上場企業でやり続けようと決めています。
田口 僕は絶対に上場しないと思っていましたが、この前永田さんと話して、なくもないかなと思い始めました。
山崎 おっ!
田口 永田さんの場合、上場する意味がはっきりしているので。
確かにそうだなと思ったことがありました。
山崎 先日、上場したクラシコムの青木(耕平)さんと議論したら、面白かったです。
「上場したことがない人がそれを言うのは違う、上場して分かることもある」と、言っていました。
また、彼らはバイバック(自社株買い)できるだけのキャッシュを持っています。
上場しているのに、未上場状態にできるだけのキャッシュを持って運営しているのも面白いと思いました。
色々なやり方があるのだと思いますね。
ガバナンスとリジェネラティブという要素は、実は結構大きく関連していると僕は思っていますので、1つのポイントだと思います。
上場したから可能になる500億円超のプロジェクト
永田 僕らが、リジェネラティブ社会に向かって上場しているという立場をうまく使っている例が、2つあります。
1つが資金調達です。
僕たちはバイオ燃料の研究をずっと続けており、2026年に商業プラントが建ちますが、スタートから完成まで合計500億円以上かかるプロジェクトです。
▶ユーグレナ、PETRONAS、Eniの3社、マレーシアにおけるバイオ燃料製造プラントの建設・運営プロジェクトを共同検討(PR TIMES)
僕たちが未上場であれば、これは絶対にできなかったです。
もう1つは、僕が大好きなことなのですが……。
僕たちは5F、つまりFood(食料)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)の領域に取り組むと決めて、創業期から継続して取り組んでいます。
そこで今日は、肥料領域についての例を持ってきました。
肥料会社をゼロから作ろうとしたら、大変ですよね。
僕らはM&Aをして、製品を有機肥料化し、M&Aした会社のチャネルを活用しています。
ですから我々は、目的に向かって上場しているという立場をうまく使って、多分、リジェネラティブ社会という今日のテーマに沿ったビジネスを進めようとしているのではないかと思います。
山崎 ありがとうございます。
(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成