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1. 途上国からブランドをつくる「マザーハウス」、建築の民主化を目指す「VUILD」

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ICC KYOTO 2023のセッション「リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)」、全7回の①は、「リジェネラティブ」という言葉を知っていますか?という問いかけからスタート。検索したという登壇者もいるなか、モデレーターのマザーハウス山崎 大祐さん、VUILD秋吉 浩気さんの事業紹介から議論が始まります。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 10D
リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)
Supported by エッグフォワード

(スピーカー)

秋吉 浩気
VUILD
代表取締役CEO

田口 一成
ボーダレス・ジャパン
代表取締役社長

永田 暁彦
ユーグレナ
取締役代表執行役員CEO
リアルテックファンド 代表

福島 弦
Sanu
代表取締役CEO

(モデレーター)

山崎 大祐
マザーハウス
代表取締役副社長

「リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)」の配信済み記事一覧


今、最先端の話題「リジェネラティブ」を語る

山崎 大祐さん(以下、山崎) 皆さん、よろしくお願いします。

テーマが「リジェネラティブ社会への変革の取り組み」ということで、舌を噛みそうな名前がついています。

僕は参加していないのですが、前回は脱炭素社会についてのセッションだったと聞いており、今回はその一歩先の話をしたいと思います。

「脱炭素社会への変革の取り組み」の配信済み記事一覧

まず聞いてみたいのですが、「リジェネラティブ社会」の「リジェネラティブ」という言葉の意味を、そもそもきちんと知っているという方はどのくらいいますか?(挙手を促す)

すごい! ご存知の方いますね。

永田 暁彦さん(以下、永田) ぶっちゃけ、検索したでしょ(笑)?   今回、検索しませんでした?

山崎 僕は検索しましたよ。

永田 僕もした。

山崎 おまけに、ジェネラティブとは何かも検索しました。

永田 福島さんは検索しなかったの?

福島 弦さん(以下、福島) もちろん、もともと知っていました。

(一同笑)

山崎 永田さんも検索したのですね。

永田 しました。

山崎 何となく聞いたこともあったし、何となく想像はつくけど、検索しました。

でも今日この会場に来た人たちは、ある意味、最先端というか…この後、色々な話が出てくると思いますが、めちゃくちゃ面白いと思います。

というのは、ビジネスは新しいモデル作りという側面があると僕は思っているからです。

新しいビジネスモデルと言ったとき、利益構造を作るという視点もありますが、これから先は当然、色々なステークホルダーもしくはステークホルダーとはくくれないところも巻き込み、生態系を作っていくことも考えていかなければいけません。

僕は今回、リジェネラティブ社会について調べてみて、これは間違いなく最先端の話だなと思ったのです。

ただ、分からないこともありますし、言葉が理解できたところで実際はどういう方法論で実行するの?と思いますよね。

脱炭素社会の件もそうですが、分かったけれど、結構面倒だなとか、コストがかかるとか、こんなことやってられないとかいう気持ちもわくわけです。

だから僕は今日、言いたくなることも出てくるとは思いますが、純粋なる聞き手として、登壇者の皆さんと進めていきたいと思っております。

素晴らしい御四方がいらっしゃっています。

彼らの行っているビジネスがそもそも新しいので、最初に、そこからご理解いただきたいと思います。

まず私の簡単な自己紹介から始め、その後4人から事業紹介を行っていただきます。

アパレルのものづくりを通じ途上国のイメージを変える、マザーハウス 山崎さん

山崎 マザーハウスという会社を経営している、山崎と申します。


山崎 大祐
株式会社マザーハウス 代表取締役副社長
株式会社Warm heart cool head 代表取締役社長

1980年、東京都生まれ。2003年慶應義塾大学総合政策学部卒業、 卒業後にゴールドマン・サックス証券にエコノミストとして入社し、日本及びアジア経済を担当。07年3月に退職し、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもと、ファッションブランドを展開する株式会社マザーハウスを同社代表・山口絵理子と共に創業、08年6月に同社副社長に就任。19年3月から、同社代表取締役副社長に。23年7月現在、マザーハウスは9カ国で生産・販売拠点を持ち、約800人のスタッフが働くファッションブランドに成長している。また、「Warm Heart, Cool Head(熱い情熱と冷静な思考)」を持った経営者・起業家を育てる私塾・山ゼミの主宰やブラインドサッカー協会の理事に就任するなど、社外にも活躍の舞台を広げている。

もしかしたら、マザーハウスという会社は聞いたことがあるかもしれませんが、私自身はマザーハウス以外にも、マザーハウスカレッジ経営ゼミ、ブランディングの会社、日本ブラインドサッカー協会の理事など色々な事業に携わっています。

マザーハウスという会社は、このような理念を持ちます。

「途上国から世界に通用するブランドをつくる」。

事実そこにいて頑張っている人たちに光を当てて、ものづくりを通して途上国のイメージを変えていこうという会社で、バッグやジュエリー、ストールなどアパレル製品を作っています。

今、働いているスタッフは約900人です。

何をしているかと言うと、途上国と呼ばれる国に、工場を作っています。

正直に言うと、リジェネラティブというところまでは全然到達していないので、僕は、今日のセッションから学ばなければいけないと思っています。

バングラデシュ、ネパール、インドネシア、スリランカ、ミャンマーに工場を作っています。

アジアの中でも経済的に厳しい国で、素晴らしい素材を探し、最終的には工場を立ち上げてものづくりを行い、同時に日本と台湾とシンガポールで約50店舗を展開している、ファッションの会社です。

バッグなど、このようなプロダクトを作っています。

スライドの左下に写っているのは、特殊なバッグです。

私たちは年間10~20万個のバッグを販売していますが、使わなくなったバッグは全て回収させていただいています。

それらのバッグを解体して使えるレザーと使えないレザーに分け、使えるレザーをリユースしています。

このリユースモデルで作られるのがRINNE(リンネ)というプロダクトで、リユースされたレザーだけで作られているバッグでして、すごくヒットしています。

また、使えなくなったレザーは全てセラミックパウダーにして、陶器にする技術を開発中です。

マザーハウスがバッグ回収事業をアップデート すべてのパーツを循環するブランドへ(PR TIMES) 

実は私たちもそうやって、すごくこだわって事業を行っているので、今日は私自身も学ばせていただきたいと思っています。

違う国籍や宗教、文化を持つ職人たちが集まって、このように笑顔で写真に収まるような世界を創りたいと考えています。

今、世界では分断が起こっていますが、マザーハウスという試みによって、多様な人たちがつながれる社会を目指している会社です。

では早速、秋吉さんからお願いします。

誰でも好みの建築や家具作りができるテクノロジーを開発、VUILD 秋吉さん

秋吉 浩気さん(以下、秋吉) 初めまして、VUILDという会社を経営している秋吉と申します。


秋吉 浩気
VUILD株式会社 代表取締役CEO

2017年に建築テック系スタートアップVUILDを創業し、「建築の民主化」を目指す。デジタルファブリケーションやソーシャルデザインなど、モノからコトまで幅広いデザイン領域をカバーする。 主な受賞歴にUnder 35 Architects exhibition Gold Medal賞(2019)、グッドデザイン金賞(2020)、Archi-Neering Design AWARD 最優秀賞(2022)。 主な著書に、『メタアーキテクトー次世代のための建築』

自己紹介にも書いていますが、建築家を名乗ってもいて、どちらかと言えば、こういうビジネスイベントよりも、クリエイターやデザイナー向けのイベントに出ることが多いです。

2017年、大学院を卒業した後に色々な起業家や投資家にお会いし、エンジェル投資をしてもらってから起業をし、今、事業を展開しています。

目指しているのは、建築を誰でも作れるようにすることです。

ハードウェアとしてPCやスマホが普及し、インターネットが接続され、その上に色々なアプリケーションが乗ることで、色々な人が色々な表現をするようになってきたという歴史があると思います。

それと同様に我々も、建築を作る機械を全国に導入し、それらをつなげて、その上にデザインのアプリケーションを乗せて、誰でも建築を作れるようにするという、四段構成で今、事業を進めています。

ですから、ハードウェアを販売し、ソフトウェアを開発し、デザインも提供しているという会社です。

ハードウェアというのは、木工用の3Dプリンタのようなもの(ShopBot (ショップボット) )で、500~600万円くらいの設備投資になりますが、これまで全国188カ所の製材所や材木屋に直接、導入しています。

今の林業の課題は、1本の材木を売っても1~3%しか利益が出ないという、なかなか難しいモデルになっていることです。

500~600万円の製造機器を導入することで、材料を家具や建築に変えて利益率を増やしていけるという、価値提案をしています。

とは言え、林業に携わっている人たちには、未だにFAXでコミュニケーションをしている人が多いです。

そういう人でも、簡単に木材製造のオファーをしたり、家具や建築を作ったりできるソフトウェアの開発をしています。

ボタン1押しで、板取をして、パーツが並び、金額が出て、機械が動き出すという、全工程をデジタル化した、家具などの木製ものづくり一気通貫のサービス(EMARF (エマーフ) )も提供しています。

とは言え、機械とソフトウェアの使い方を覚えても、何かを生み出す、デザインする力の会得はなかなか難しいので、我々がプロとして住宅や家具のテンプレート(NESTING)を共有しています。

この部分は、どちらかと言えばD2Cブランドのような形で、我々がお客様を探してきて、全国各地の案件ごとに、導入先と一緒に建物を建てたり、家具を納品したりしています。

3Dプリントで削り出した2,000パーツによる建築

秋吉 最後に、建築家として、デジタルテクノロジーで木材を3Dプリントしてコンピューターで設計するということを、最近は、都市や建築の規模で行っています。

スライドの左上の写真は、最近できた、300平米ほどある大学の施設で、全てユニークな形状の木材パーツを約2,000点、我々がコンピューターでデザインし、我々の工場で製造して、建てたものです。

「学ぶ、学び舎」東京学芸大学EXPG棟(Japan-Architects)

施工ができる大工も、社内にメンバーとしておりますので、一気通貫で行えます。

コンピューターを使って、新しい建築やデザインのあり方を探求し、ビジネスに転用をしている会社です。

以上です。

福島 単純な興味からの質問ですが、木材による曲線は、どうやって作っているのでしょうか?

秋吉 削り出していますね。

例えば木彫刻の場合、いくつかのパーツに分けて、組み合わせて寄せ木をしています。

それと同じような形で、平らな板の上下を少しずつ削ったものを組み合わせて作っています。

木彫刻や大仏の鋳型を作るような感じです。

福島 なるほど。

山崎 すごいですね。

これは、3D CADで起こしたものを平面化して、全て設計図にして…?

秋吉 そうです。

コンピューター上で、自動で並び替えるアルゴリズムなども全て、自社で作っています。

山崎 それがそのまま自動で印刷されて、切り出していくということですか?

秋吉 はい。

この2,000パーツを使った建築も、自社の工場で、途中まではアルバイトメンバーと一緒に組み立てられるくらい、簡単にプラモデル化ができます。

山崎 この建物は、実際にもう建っているのでしょうか?

秋吉 はい、竣工しています。

自分好みの家を簡単に設計・試算できるアプリを提供

永田 僕は、とある村に自分で家を建てました。

構造計算だけ建築士にしてもらい、それ以外は全て僕がiPadで描きました。

秋吉 おお、すごいですね。

永田 でも今、マジで後悔しています。

(会場笑)

秋吉 我々のウェブサイトを検索してもらえれば、アプリで全部できます。

山崎 永田さんの後悔ポイントはどこですか?

永田 やはりUXと…。

山崎 家としてのUXですか?

永田 はい、あと床素材にすごく困っていて。

福島 めちゃくちゃ寒いとか?

永田 ボロボロ(笑)。すぐにボロボロになってしまいまして。

そういう問題も全てクリアできるということですよね?

秋吉 はい、そういう環境シミュレーションもします。

我々の提供しているNESTINGというサイトで立ち上がるアプリでは、床材や間取りを全て選ぶと、都度、金額も出るようになっています。

永田 へー!

秋吉 建築を作る時、図面を出しても返事が来るのは1カ月後くらいです。

ちょっとした変更を加えようと思っても、建築家や工務店を通していると、ものすごい時間のロスになってしまいます。

それを全てアプリで、一気通貫で行うことで、試行錯誤をユーザー側に委ねています。

永田 なるほど。

山崎 聞きたいことはたくさんありますが、次の事業紹介に行きましょう。

(続)

カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Twitterをぜひご覧ください!
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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