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ICC KYOTO 2023のセッション「リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)」、全7回の⑥は、ユーグレナ永田さんが、循環型農業のための取り組みを紹介。未使用バイオマスを有機肥料や飼料にして循環させる事業を語ります。既存のマーケットがあるなかで、アントレプレナーが担う役割とは? ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 10D
リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)
Supported by エッグフォワード
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循環型農業の肥料分野に取り組む
永田 ネットでリジェネラティブについて一生懸命調べたら、有機農法と書いていたので、ユーグレナとして紹介できる事例はこれかなと思いました。
実は今、ユーグレナには、2年前にできたサステナブルアグリテックという部門があり、アグリテックに全力で取り組むぞと発信しています。
はっきり言って、農業は環境負荷が大きいことはよく分かっていることだし、農家の収入が増えていかないということも分かっていることです。
僕たちが目指しているのは循環型農業で、中でも肥料分野に取り組もうとしています。
スライド左側に書いた通り、基本的には石油由来の肥料が輸入されていますが、その輸入とディストリビューションプロセス全てに負荷がかかっています。
スライド右下に農業生産、加工・流通、消費者と書いていますが、僕たちが行っているのは、年間2億5千万トンもあるバイオマス未利用資源を肥料や飼料にしながら、流通させるということです。
これは、バイオマス未利用資源を積極的に使う人がまだまだ全然いないためです。
有望な未利用資源を集めて、サイエンスの力でその価値を見出し、それをきちんと売るという、資源サーキュラー事業を行っています。
化成肥料から有機肥料への転換を目指しM&A
永田 これ以降は、僕たちらしいやり方ですが、既存の肥料会社を買収していっています。
山崎 そうなんですね。
永田 ですから、初年度で売上が20億円ありますが、それは買収したからです。
なぜそうしたかと言うと、機械などを新しく作るのはすごくもったいないし、熟練した人たちが必要ですし、配送網や顧客網なしにゼロからすると、3,000万円規模のビジネスはすぐに作れても、大きなビジネスは作れません。
化成肥料から有機肥料に転換するためには売上ベースで600億円ほどを目指したいので、買収という資本の力を使うことにしました。
そこで、有機肥料業界の中で大きい企業である大協肥糧を買収し、日本中から集めてきた有機資源から肥料を製造してもらっています。
有機肥料の製造プロセスは、めちゃくちゃすごい職人芸なので、それをデータ化して普遍化しています。
そして、地産地消が一番重要です。
今は関西圏で取り組んでいますが、これを各地に広げるには、各地の企業を買収するか、工場を自分で作るかしないと拡大できません。
ですから、いかに「新しく何かを作らない」ことを考えると、環境問題面から見ても、買収は合理的だと帰結しています。
グループ内外の未利用資源を集めて研究
永田 次に、研究についてですが、僕らはグループ内でそれなりに色々なものを生産しているので、そこで生まれるものや日本国内にある未利用資源を、ある研究所にどんどん集めています。
それらを分析評価し、様々な農作物に使いやすいようにするための研究を行っています。
これが当たるかどうか分かりませんが、取り組んでいます。
山崎 こういう取り組みを行っているのですね!
ミドリムシの会社だと思っていたので…もちろん、ミドリムシの周囲のマーケットだと思いますが。
未利用資源をたくさん集めて研究開発しているのは、めちゃくちゃ面白いですね。
実は宝がたくさんありそうですね。
永田 めちゃくちゃ捨てられているのです。
可能性はすごくあるのになぜやらないかと言うと、やはり有機原料は取り扱いが面倒だからです。
水分を含有していますし、一つひとつを評価するのも面倒です。
大きなバルクで運ばれてくるわけでもないので、すごく手間がかかるのです。
かつ、日本は1年半前に農林水産省から「みどりの食料システム法」が発表されて、その方向に行くぞとなっていますが、その方向に進みたいと思っている人は、業界内には少ない。
そういう場所にはアントレプレナーの仕事があると思っているので、1年半前にこの活動をスタートさせました。
バイオ燃料にも似ているのですが、あまり知られていない肥料という分野に取り組んでいます。
僕は本当にボーダレス・ジャパンが好きで、2つの道の歩き方だと思いました。
1のサイズのビジネスを1万個作るのと、1万のサイズのビジネスを1個作るのは、同じソーシャルインパクトを生みます。
僕たちは資本の力を活用すると決めている以上、単独で大きなインパクトを生む方向に向かっていこうとしています。
山崎 ありがとうございます。
有機農業はデータ化できるし、経済合理性も達成できる
田口 ユーグレナがこの分野に参入して良かったなと思っています。
まず、化成肥料はプラ皮膜を使っていますが、化成肥料由来のマイクロプラスチックの問題はかなり大きいので、あのプラ皮膜に代わる素材を追求する必要があります。
ですから、まさにバイオ素材をうまく活用したいですね。
永田 もっと単純な話をすれば、肥料の袋もそうです。
あの塊が嫌だと業界不信になっているところがあるのですが、業界内で誰もその問題に手をつけないのです。
田口 マルチ(シート。土壌を覆う農業資材)とかもそうですね。
山崎 世の中の素材は、樹脂加工とか、生分解されないものがほとんどですよね。
田口 そうです。
でも、あれに代わる素材がなかなか見つかってない。
ただ、見つかっていないと言っているだけで、実はあるかもしれないので、この分野にたくさん専門家が入ってくるのは良いことだと思います。
もう一つ、有機農業が広がるかどうかは大きいテーマだと思っています。
化成肥料を使う方が、計画的に農業ができる。
工業的な農業と有機農業の境はファジーですが、ユーグレナが入り、有機農業は職人の世界ではなく、データ化してできる農業であることを発信していけば、有機農業に手を出すフックになると思います。
データや科学的な情報を発信して橋渡しをしてあげることに、可能性を感じました。
永田 まさにその通りです。
このビジネスモデルでどうやってアウトプットを実現するかを議論すると、最初はどうしても、有機農法、つまり社会にとって良いことをしているから製品が高く売れるという方向にいってしまいます。
でもそれはビジネスとして、全然サステナブルではないのです。
山崎 そうですよね。
永田 これまでは勘に頼って行われてきた有機農法、そして有機製品はどうしても品質の安定化がしづらいのですが、それを実現させるのが僕らのミッションですから、きちんとエビデンスと結果をもってやりたいというのがあります。
先ほど長期目線を持つべきだという話がありましたが、日本は全て輸入しています。
今、油の価格がものすごく上がっています。
ですから、環境だけではなく、生産者の経済性とフードセキュリティを守るためには、国内循環させる方が重要ですし、経済的に説明できる方法が僕には既に見えています。
全ての活動は環境のためだけではなく、いくつかのものが複合したものが関連するので、経済的にも達成できることを含めて、初めてお客様に使っていただけるものだと思っています。
山崎 僕は坂ノ途中の社外取締役も務めているので、そこはすごく議論したいポイントですが、時間もないのでSANUの事例に行きましょう。
(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成