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5. 人間と生き物、地域の持てる力を再生する取り組み

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ICC KYOTO 2023のセッション「リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)」、全7回の⑤は、各社の事業を通した社会へのリジェネラティブな取り組みについて。VUILDの秋吉さんは、人間がもっていた本来の力を取り戻すことで環境をよくすることを、ボーダレスの田口さんは、農業とエネルギーや、自然放牧の取り組みを紹介します。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 10D
リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)
Supported by エッグフォワード

「リジェネラティブ社会への変革の取り組み(シーズン2)」の配信済み記事一覧


山崎 今日の本題の一つでもある、皆さんのケースを紹介していただきしましょう。

今日会場にいらっしゃる皆さんに、リジェネラティブ社会への取り組みをどう行っていくのかについて、具体的に例を示した方が良いと思いますので。

では、秋吉さんからお願いします。

他の登壇者の皆さんも、よろしければつっこんでください。

地域の子どもに家具作り体験を提供する理由

秋吉 リジェネラティブには色々な解釈があると思いますが、我々の場合、環境再生だけではなく、産業や能力、人間が本来持っていた力の再生も重要だと考えています。

テクノロジーやハードウェアを掩護射撃として導入することによって、最終的に街が活性化し、もともとあった活力みたいなものを取り戻せるようにしたいと思っています。

建築や林業の場合、産業化によって、地場にあった製造能力や、瓦の目利きなど大工さんの職人としての力が伝承されなくなり、文化としての街並みがなくなってしまいました。

その根本にあるのは、何かを作るという行為を失ったということだと思います。

林業は50年や100年スパンで動くものなので、できる限り長期的に、100年単位で僕たちは考えています。

そして今一番力を入れているのですが、子どもがゲームをする感覚で、僕らのテクノロジーを一瞬で吸収し、地場の材料を使って、自分たちで家具を作れるような取り組みを始めています。

この事業は正直、今は儲かっていませんが、50年、100年経った時、この子どもたちのような人がマスになるので、最終的には儲かるのではないかと考えています。

ですから、短期的には儲かりませんが、取り組まなければいけない文化の課題に対して事業投資をしています。

再生型と言えば環境の話になりがちですが、やはり産業や文化、特に文化、人間であることの理由やその地域であるべき理由を復活させるためのコアとなる技術や能力を作っていこうと考えています。

そうすることで、自分で、お金ではなく豊かさを稼ぐというサイクルに乗ることができます。

結果、自分のことをしつつ、植林をする、空気や水を良くするなど、自分の周りの環境がうまく回り始めます。

このバタフライダイアグラムのように、力をつけて豊かな生活を自分で作ることで、社会、空気、森を良くしていくサイクルを回していくことを、リジェネラティブと呼んでいます。

リジェネラティブ建築の事業化を構想中

秋吉 建築は、サステナブルデザイン、つまり環境に負荷を与えないデザインの紹介をします。

このスライドは、インフラのない山林に建物を建て、バイオマスエネルギーと水を循環させている様子ですが、この建物がある山も買った住み手は、自分たちで山を維持、管理しながら、木で暖を取ったり、エネルギーを作ったりしています。

このように循環型社会における最先端技術を活用したケーススタディとしての住宅・建築を依頼頂くことが多くなっています。

森林資源と共にある日本だからこそできる、最先端のテクノロジーを使ったライフスタイルや家の仕組みをパッケージングしたものを作ることで、5年ほどかけて、事業として展開していく予定です。

10年かけて開発したものを、5年後に投資回収するような事業とするようなサイクルで考えています。

ハードウェアとしての建築と、ソフトウェアとして街を作るという事例を紹介しました。

山崎 めちゃくちゃ面白いですね。

田口 面白いですね。

「プロシューマー」という言葉がありますよね、プロデューサーでありコンシューマーであるという。

今、ビジネスのコアには効率化の追求があるので、どうしても分断されてしまい、意図せずに問題を起こしているということが色々なところで発生しています。

その中で、自分が作るという行為をコアにしているという点は、まさにプロシューマーだなと思いました。

とはいえ、自分の暮らしに必要なものを自分で作るのはできなかったので、こういうツールが開発されるとできるようになるのは…。

山崎 まさに民主化ですよね。

田口 そうですね、なるほどと思いました。

山崎 これがめちゃくちゃ面白いと思ったのは、通常、こういうテクノロジーを作る人はそのテクノロジーを一般に普及させることをゴールとするのですが、VUILDの場合、あえて地域作りの中心に置いて地域作りを主語にしている点です。

そういう人は珍しいと思います、テック系の人はそう思わないですよね。

秋吉 逆に、グロースさせることは弱いのですが…(笑)。

(一同笑)

山崎 でも、そこに面白さがありますし、オリジナリティがあります。

あと、ミクロとマクロ、つまり個人と社会の接点をテクノロジーで作っています。

民主化の可能性は、そこにあると思います。

まさにプロシューマーという言葉の通り、技術があれば、個人が色々なことに関われる時代が来るということですよね。

永田さん、どう思いますか?

永田 主語が大きいが故に、理解しようとしない投資家ほど「誰がその費用を払うの」と言いそうですよね。

(一同笑)

こういう取り組みには、絶対に愛と想像力が必要ですよね。

山崎 まさに。

永田 このコミュニティにどういう生活が訪れ、何が起こるかを語り合うことで、物質もお金も情報も共有されるので、取り組みとして成り立つのだと思います。

ですから、この世の中は本当に、言語化することや可視化することが重要だなと改めて思いました。

取り組みの中身そのものではなく、主語が大きいというところに、語り部と切り口が違うだけで、理想的なものになるか理解を得にくいものになるか、大きく変わるのだろうと感じましたね。

山崎 ありがとうございます。

では田口さん、紹介をお願いします。

自然エネルギー100%の電力提供をするハチドリ電力

田口 はい、リジェネラティブと表現していいのかなと思いながらも、発表させていただきます。

今日は2つの事例を持ってきました。

まず、農業とエネルギーという考え方から。

皆さんご存知だと思いますが、CO2排出の多くを占めるのが発電ですので、今、自然エネルギーを増やそうとしています。

国の施策である、発電すれば必ず決まった価格で買い取るというFITという制度の期間が、順次満了していくため、自然エネルギーのビジネスも通常ビジネスに変わっていきます。

制度の概要|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー(資源エネルギー庁)

これは、買い取り手がいなければ製造できない状態になるということですから、自然エネルギーを買いたいと言う小売事業者がいなければいけないということで作ったのが、ハチドリ電力です。

自然エネルギー100%の電源調達をしてきましたので、100%自然エネルギーを使いたいという人に電力を提供しています。

ちなみに、SANUに…。

福島 ありがとうございます、供給していただいています。

田口 使っていただいています。

今、日本全体の再生可能エネルギーの割合は3割ほどです。

その3割ある自然エネルギーだけを使っていると、自分は地球温暖化に加担していない状況にはなると思いますが、それだけではなくて、自然エネルギーの発電量が3割を超えて増えていくことが大切です。

支払っていただく電気料金の1%を使って、自然エネルギー発電所を増やしていくというのがハチドリ電力の特徴です。

これを「追加性」と呼びますが、これが電力会社を自分で選ぶ意味だと捉えています。

スライドの右の写真は、千葉に作った発電所の様子で、ここではソーラーシェアリングを行っています。

見ていただくと分かるように、通常の太陽光パネルとは違って、非常に細いです。

全体の3割にのみ太陽光パネルを設置していて、トラクターも入れるので、通常の農業を邪魔しない仕組みにしています。

畑の上で発電しています。

植物の光飽和点、つまり、それ以上光があっても光合成ができないという基準は、約6~7割の作物がたくさんあります。

光が多すぎると、植物が体温調整のために負担がかかるるので、そういう植物は光を3割カットしてあげた方が逆に生育率が上がります。

太陽光パネルの下で行っているのは、土壌に炭素を固定して掘り起こさない、不耕起栽培です。

大豆などを作っています。

太陽光パネルには、山肌を削って設置するというイメージがあると思いますが、我々はこういう発電を行うことで、炭素を固定しながらCO2を排出しない発電の量を増やしていきます。

牛飼いと一緒に取り組む廃用母牛による土再生

田口 もう一つは、大分県で行っている取り組みです。

子どもを産めなくなった廃用母牛は肉にされるのですが、その廃用母牛を市場で買い、耕作放棄された山の中で自然放牧しています。

これは環境再生型の農業で、写真にあるように、山の中を牛は自由に歩き回ります。

牧草を植え、場所を変えながら糞をさせていくと、土が再生されていきます。

また、餌は地産地消。近くで採れる牧草が主な餌で輸入穀物飼料は使わないので、輸入穀物飼料によるフードマイレージを抑えることもできます。

僕らは5年ほどこの取り組みを続けていますが、廃用母牛の9割以上が、もう一度自然に妊娠できるようになっています。

牛は畜産動物なので、死ぬと産業廃棄物になってしまうので、母牛も最後にはグラスフェッドビーフとして、僕らの考えに共感してくれるレストランに肉として販売しています。

山崎 面白い。

田口 牛のゲップによるメタンの問題はまだ残っていますが、環境負荷の低い畜産と山の再生にはなっています。

リジェネラティブとは言い切れないので、「ベターな」取り組みだと思っています。

山崎 ありがとうございます、すごく実験的ですね。

リジェネラティブはまだよく分からない言葉ですし。

オタク的に、物事を突き詰めていっているなと感じました。

これは、実験的に、やりたかったことをやっている人がいるということですよね?

田口 そうですね。

山崎 こういう取り組みをやりたかった専門家もいるということですよね?

田口 いますね。

マニアックな話をすれば、山の中でこれを行うには、相当な難しさがあるのです。

例えば、GPSも機能しない山の中で、どう100頭以上の牛の安全管理をするかなど、裏側にはすごくたくさんの課題があります。

山崎 経済合理性という考えから離れているオタクをうまく活用できるかどうかが、ポイントだと思いました。

田口 オタクかもしれないですね(笑)。

山崎 そうですよね。そういう人たちと一緒に、モデル作りをしているということですよね。

田口 そうそう。まさにオタクなのです、一緒に行っているのは、牛飼いなのです。

彼ら牛飼いはこれをやりたい、でも全然ビジネスが分からないということで、一緒に取り組み、モデル化するために僕らが入っているということです。

山崎 そこが、ビジネスとして面白い生態系が生まれるためのポイントな気がしますね。

では永田さん、続いてお願いします。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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