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元子ども兵の社会復帰支援で、紛争の平和的解決を目指す「テラ・ルネッサンス」(ICC FUKUOKA 2024)

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ICC FUKUOKA 2024 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただき、見事同率優勝に輝いた、テラ・ルネッサンス 鬼丸 昌也さんのプレゼンテーション動画【元子ども兵の社会復帰支援で、紛争の平和的解決を目指す「テラ・ルネッサンス」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜 9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】元こども兵の社会復帰支援「テラ・ルネッサンス」と、思いやりをつなぐ遺贈寄付「日本承継寄付協会」がソーシャルグッド・カタパルト同率優勝!(ICC FUKUOKA 2024)


【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

鬼丸 昌也
認定NPO法人テラ・ルネッサンス
創設者・理事
HP | X(旧Twitter)① | X(旧Twitter)②

認定NPO法人テラ・ルネッサンス創設者・理事。大学4年生の時に、初めてカンボジアを訪れ、地雷被害の現状を知り、「すべての活動はまず『伝える』ことから」と講演活動を始める。同年10月、大学在学中に「全ての生命が安心して生活できる社会の実現」を目的に、「テラ・ルネッサンス」設立。同団体では、カンボジア・ラオスでの地雷や不発弾処理支援、地雷埋設地域の生活再建支援、ウガンダ・コンゴ・ブルンジでの元子ども兵や紛争被害者の自立に必要な支援を実施している。また、地雷、子ども兵や平和問題を伝える講演を、これまでに約22万人もの人々に届けた。遠い国の話を身近に感じさせ、ひとり一人に未来をつくる力があると訴えかける講演に共感が広がっている。2022年には、約150のNGOが加盟する、NPO法人国際協力NGOセンター(JANIC)の理事長に就任。「対話」と「連帯」による社会変革を目指す。


鬼丸 昌也さん 認定NPO法人テラ・ルネッサンスの鬼丸と申します。

小さいころから世界の平和を考えてきた

僕は、小さいころから、「どうすれば、世界は平和になるんだろう」ということを、ずっと考えてきました。

そのような問いを持ちながら、2001年、大学4年生の時に、初めてカンボジアに行き、地雷除去の現場を訪れました。

カンボジアだけでも、すべての地雷を取り除くには、あと600年かかります。

地雷で手足を失った人の悲しみに、非常に衝撃を受けました。

そして、考えました。

「地雷をなくし、世界を平和にするために、今、自分にできることは何か?」

お金がない、英語も話せない、今もそうです。

しかし、「人に伝えること」はできる、そう思ったのです。

24年間で約22万人に現地体験を伝える

そのため、カンボジアに1週間滞在し帰国してから、招かれれば、幼稚園から老人ホームまで、どこへでも出向いて、お話をしてきました。

そして、おかげさまで、この24年間で約22万人の方に、講演という形で、お話を届けることができました。

すると、その中で理解者が少しずつ増え、「すべての生命が安心して生活できる社会(世界平和)の実現」をビジョンに、2001年10月、テラ・ルネッサンスを設立しました。

たった1人で始めたテラ・ルネッサンスですが、現在は約100名の仲間と、そして、世界9カ国で、紛争によって苦しみや悲しみを受けた人々の自立支援を行うことができるようになりました。

武装勢力の支配下に置かれる「子ども兵」の存在

皆さん、「子ども兵」をご存じでしょうか。

「子ども兵」とは、武装勢力の支配下に置かれている、18歳未満の子どもたちのことを指します。

子ども兵と聞くと、男の子のことを想像するかもしれませんが、こちらの写真で、明るく写っている子どもは、女の子です。

実は、子ども兵には、少年兵に限らず、少女兵も含まれます。

ちなみに、この絵本は、テラ・ルネッサンスが支援した、元少女兵の物語(『少女兵士ピチャ』)ですので、よろしければ、ぜひご覧ください。

ウガンダの子ども36,000人が誘拐されて兵士に

僕らが活動するウガンダ共和国北部では、「神の抵抗軍」という武装勢力が、大勢の子どもたちを誘拐していました。

神の抵抗軍(ウィキペディア)

その数は、36,000人です。

僕らは、子ども時代に神の抵抗軍に誘拐されて兵士になった、大勢の元子ども兵たちに出会ってきました。

引用元:『一人ひとりに未来を創る力がある テラ・ルネッサンスI』より

誘拐され、兵士にさせられて、麻薬やアルコールで洗脳されて、戦闘の最前線へ、地雷原を歩かされたり、人を殺させられたりする――。

皆さん、自分の息子や娘、孫が誘拐されて、兵士になったら、どのように感じますか?

そして、どうしますか?

だから、僕らは決めたのです。

元子ども兵のために、僕らができる限りのことをやろう。

「元子ども兵社会復帰支援プロジェクト」を開始

そうして始めたのが、「元子ども兵社会復帰支援プロジェクト」でした。

まずは、子ども兵だった時代に、多くのトラウマを抱えていますから、カウンセリングなどの心のケアを行います。

識字教育や計算、日常生活に必要な基礎学習も行います。

さらには、自立の基礎となる職業訓練を経て、起業してもらうのです。

支援によって収入が増え周囲との関係性が改善

3年間の支援期間を経て起業をし、自分たちの稼ぎで自分と家族を養うようにする――すると、どのような変化が訪れたでしょうか。

おかげさまで、元子ども兵たちの月収は、支援前の56倍となっています

ウガンダ共和国において、公務員の平均月収は7,000円ですので、ウガンダ共和国北部の地域住民の平均収入を超えることができました。

そして、大切なのは、それと同時に、元子ども兵だと差別や偏見を持っていた、周囲の人々との関係性が改善されたことです。

なぜでしょうか。

それは、自尊心が高まったからです。

自分を大切にする力が育まれたからです。

人から求められ、人の役に立ち、人から褒められる――ビジネスは、人を信頼する力がなければできません。

だからこそ、彼らの自尊心を高めることができたと言えるのです。

これまでに自立を果たした、元子ども兵は251名です。

彼らは、平均12歳で誘拐され、神の抵抗軍に約8年7カ月も拘束されて、戦わされてきた人々です。

それでも、自立をすることができました。

元少女兵モニカさんの体験

具体的な事例を、1人の元少女兵の体験で紹介させてください。

彼女は、モニカといいます。

15歳で神の抵抗軍に誘拐され、2年間、戦わされてきました。

壮絶な経験をした後、ようやく神の抵抗軍を抜けて、自分の町に帰ってきました。

しかしながら、元子ども兵だからという理由で、「お前は悪魔だ」「悪魔の軍隊に行ったのだ」「帰れ」と言われ続けたために、自分を卑下していました。

けれども、テラ・ルネッサンスの元子ども兵社会福祉支援プロジェクトにおいて、洋裁の技術を学び、洋裁店を開いたのです。

周囲の貧しい女性のために洋裁学校を設立

その後の変化について、彼女は自ら、このように語っています。

(映像内のモニカさんの発言)

「スマイルハウス(元子ども兵の職業訓練施設)では洋裁の訓練を受けたのですが、洋裁の技術を身に着けて、村に戻ってから自分のお店を開くことができました。

周りの人たちから『どこで技術を学んだのか?』と聞かれ、何人もの人から『教えてもらえないか』とお願いされて、彼女たちに洋裁の技術を教えることを決めました。

今は8人の生徒がいて、スマイルハウスで教えてもらったのと同じように教えています。

私は現在このようにコミュニティの人々もサポートできています」

素晴らしいと思いませんか。

彼女は、周囲にいる貧しい女性のために、自分で学校を作ったのです。

自分で借金をしてミシン8台を揃えて学校を作り、多くの貧しい女性たちに貢献しています。

モニカのような、テラ・ルネッサンスで関わった元子ども兵たちに、僕は気づかされたことがあります。

それは、「人は、変わることができる。いつでも、いつからでも、そして、いつまでも。」ということです。

紛争で、どれほど過酷な体験をしていても、その魂の奥底にある人間性を、紛争は奪うことができません。

それを引き出していくことが、支援なのだと気づかせてくれたのは、彼女たちでした。

ウガンダ帰還を説得した元少年兵パトリスさん

そして、さらに、あるひとりの元少年兵が、僕らに新しい可能性を気づかせてくれました。

この赤印で囲っている男性が、私たちの支援を受けて変化をした、パトリスという元少年兵です。

彼は、23年間も神の抵抗軍で戦わされてきました。

神の抵抗軍は今、ウガンダ共和国から、コンゴ民主共和国と中央アフリカ共和国の国境に逃げています。

1,500人います。

彼らは、「ウガンダ共和国に戻りたい。しかし、捕まるのではないか。暮らしていけないのではないか。働けないのではないか」と、不安に思っています。

そういった人々のもとへパトリスを派遣して、「俺は変わったぞ。俺は子ども兵だったけれども、元子ども兵の社会福祉支援プロジェクトで、稼げるようになった。俺を見ろ。だから、安心して帰ってこい」と、説得させるのです。

それにより、158名が、ウガンダ共和国に帰還しました。

単純計算で、これを10回繰り返せば、1,500名の神の抵抗軍を壊滅させ、紛争を終結させることができるかもしれません。

平和は、子どもたちにとって今、一番欲しい“現実”

分断が進み、紛争が増えるこの世界に最も必要なのは、紛争を一つでも終わらせることです。

しかも、それを、暴力ではなく、平和的な手段で解決することです。

紛争によって、最も傷つけられた約25万人の方々に支援を届けてきた僕らには、それができると思っています。

そして、皆さんに、1つ、お尋ねしたいのです。

「平和は、いつか叶えばいい理想」だと思っていませんか?

しかし、今、紛争下で苦しんでいる子どもたちからすると、それは、今、一番欲しい“現実”なのです。

平和を、みんなで作りましょう。

ご清聴ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/中村 瑠李子/戸田 秀成

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