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ICC FUKUOKA 2024 クラフテッド・カタパルトに登壇した、早和果樹園 秋竹 俊伸さんのプレゼンテーション動画【「すてない加工」を通じて地域に貢献し、有田みかんのファンを増やす「早和果樹園」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜 9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。
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【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング
秋竹 俊伸
早和果樹園
代表取締役社長
代表取締役
HP | X(旧Twitter)
和歌山県有田市出身、有田市地域農業士。高校卒業後、農林水産省果樹園芸試験場興津支場(現、農研機構果樹茶業研究部門カンキツ研究興津拠点)を経て、1996 年家業であるみかん農家に就農。2000年、出荷母体である共選組合の法人化に伴い、同社に創業メンバーとして参画するも、30歳過ぎまでは専業農家として実家の有田みかん栽培に従事する。2009年、加工事業の成長に伴い家業の果樹園を同社に預け、フルタイムで参画、総務部長に就任する。以後、取締役総務部長、取締役専務を経て2017 年に代表取締役社長に就任。2022年同志社大学大学院を修了し、ビジネス修士(MBA)を取得。「みかんの価値を上げる」を行動指針とし、加工を通じて有田みかん産地の持続発展に貢献する。
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秋竹 俊伸さん 皆さん、こんにちは。
早和果樹園の秋竹です。
どうぞよろしくお願いいたします。
有田はシェア13%以上を占める、みかんの大産地
突然ですが、皆さん、これご存知ですよね?
そうです、みかんです。
日本を代表する果物の一つです。
みかんは今、全国で約68万トン生産されています。
生産量トップは和歌山県で、20%以上を占めています。
和歌山といえば、有田みかんが有名です。
有田みかんは生産量が9万トン、日本のシェア13%以上を占める大産地になります。
▶︎令和4年産みかんの結果樹面積、収穫量及び出荷量(農林水産省)
有田みかんを生産する和歌山県有田地方は450年の歴史があります。
温暖な気候と急峻な段々畑で栽培されたみかんは有田みかんブランドとして全国に出荷されます。
景観もよく、みかん栽培に最も適した地域といえます。
私はこの有田のみかん農家の長男として誕生し、20歳で就農した農業者です。
就農して4年後、我が家の所属する7戸で作る出荷組合が法人化、みかんの会社「早和果樹園」が誕生しました。
その際、父が初代社長を務めました。
スタート直後に訪れる困難。一念発起し加工事業へ
しかし法人化したものの相場の低迷期に入ったり、異常気象などでみかんのキズ化が多発したことにより一念発起して加工事業に入ることとなりました。
2004年に有田みかんストレートジュース「味一しぼり」を開発いたしました。
糖度12度以上のみかんを活用した濃厚なジュースです。
当時1本1,260円という価格をつけ販売を始めました。
▶︎味一しぼり〈現:味こいしぼり〉(早和果樹園)
まあ、売れなかったんです。
地元のスーパーで試飲販売をやってみたんですけども、1日頑張っても1本売れるかどうか。
ジュース1本、1,000円以上で買ってくれる人はなかなかいませんでした。
うちの母ちゃんたちが販売を担当していたのですが、とにかくもう「行きたくない」と言う始末です。
とにかく最初は売れない期間が長く続きました。
そんな時に転機が訪れました。
知り合いの紹介で、サービスエリアで店頭販売してみたんですね。
そうしたら地元の有田でめちゃくちゃ売れるようになったんです。
もうみんなびっくりですね。
1日190本売れた時もあるんです。
ここで、スーパーと観光土産ではこんなに違うんだなということを理解しました。
お客さんの目的がそもそも違うんですね。
そうなると売れる場所を探してどんどん進めました。
県内の観光土産店や伊勢神宮のおかげ横丁への出店、その後は商談会でB to Bを拡大したり、ネットなどB to Cにも取り組みました。
一気に販路が拡大して成長につながりました。
設備投資も進め、みかん加工品は海外にも展開
そして成長には設備投資が必要です。
小さな工場から始まった当社も、さらなる拡大へとボトリング工場、搾汁工場、そして2018年には本社移転など様々なハード投資を行ってきました。
現在、ジュースを中心とした様々なみかん加工品約360万本を国内外の様々なところにお届けしております。
いわゆる農業の6次産業化の国内のモデルケースと言われるまでになりました。
売上高は2021年、10億円を突破しました。
現在100人規模の会社になり、20代の若い世代が非常に多い会社になってきました。
この若い力とともにみかんの会社を盛り上げていきたいと考えております。
弊社の主力であるみかんジュースは、糖度違いで3種類ございます。
みかんは同じ時期でもそれぞれ甘さが違いますので、その甘さで選別して搾り分けております。
皆さんのお手元に置いてあるジュースは「味まろしぼり」と言いまして、糖度11度以上に仕立てております。
僕はこの11度以上というのが一番みかんらしいバランスの取れたジュースだなと思いますので、一番大好きなジュースです。
どうぞお飲みください。
▶︎おふくろスムージー(早和果樹園)
もう一つお手元に置いてあるスムージーは、みかんの“ふさ”が入っております。
後ほどこの発表で触れさせていただきますので、お召し上がりながらお聞きください。
産地継続の課題に「すてない加工」で立ち向かう
さて話は変わりますが、有田みかん農業の課題として、他の産業と同様に後継者不足による産地継続の問題があります。
これは日本におけるみかんの生産量推移です。
実はみかんはピークからもう5分の1まで減少しております。
それだけ全国のみかん農家が少なくなっております。
こちらは有田みかんです。
全国に比べると約4分の3と比較的緩やかですが、それでもやはり農家は減少しております。
弊社はこの生まれ育った有田地域の課題を「すてない加工」で貢献する事業を目指しています。
加工用みかんを高く買い取り、すべてを使いきる
これはみかんのコンテナです。
出荷できない加工用みかんが約20kg入っています。
このようなみかんがシーズンで20~30%程度発生します。
私が就農時、このみかんは1kgあたり7円程度で取引されていました。
このコンテナで140円ですね。
捨てるような価格です。
でもそれが普通でした。
課題解決①1kg7円だったみかんを20円で買い取り
加工産入時、農家出身なので高く買うことを決意し、1kg平均20円で買い取りました。
そうすると噂が噂を呼び、たくさんの農家がみかんを持ってきてくれるようになりました。
弊社の買い取り方式は、甘くて美味しいみかんを高く買う仕組みとなっております。
またその場で現金で支払うため、農家の皆さんに喜ばれております。
うちが価格を上げていくごとに地域の業者さんも買い取り価格を上げてきたんですね。
なので負けじとどんどん価格を上げていって現在は平均50円近く、つまり1コンテナ1,000円ほどで買い取っております。
加工用みかんとしては地域の最高値となりました。
おかげで一度の集荷で100台のトラックが並ぶ、こんな現象も起こっております。
課題解決②年間300トンの残渣を生薬に
ではなぜ加工用みかんを現在の50円まで上げることができたのか。
それは加工方法に秘密があります。
弊社のジュースは皮をむいてから中身をすりつぶすようにして搾ります。
重量に対して60%の果汁が取れます。
残り40%は残渣(ざんさ)となります。
当初はこの60%の果汁のためだけに買い取り単価を設定していました。
弊社の年間作重量約1,000トン、40%の残渣は多額の廃棄料がかかります。
なのでなかなか買い取り価格は上げられませんでした。
しかし、この40%の中にみかんの皮が30%含まれるんですね。
みかんの皮は乾燥させることができれば生薬として販売することができます。
そこでこの残渣をフル活用することを目指しました。
自動乾燥機の導入です。
取引パートナーと共に4年かけて完成させ、現在ほとんどの皮を乾燥させることができております。
この成功により、まずは300トンの残渣物に大きな価値が付与されました。
課題解決③みかんの房(フクロ)も残さず使う
次に10%を占めるみかんの房(フクロ)に目を向けました。
こちらはスムージーとして活用しました。
皆さんのお手元のスムージーですね。
まだすべてを使い切れてないのですが、全量活用を目指しております。
なので皆さん、お店で見たらぜひ買ってくださいね。
これらにより、みかんは資源の塊となり、それが価格アップの源泉となっているのです。
「すてない加工」によりみかんの価値を上げて農家に還元するという流れを作り出しております。
訪れる人を増やし、有田みかんのファンを増やす
最後に未来への戦略を話したいと思います。
繰り返しになりますが、有田地方にはまだまだみかんがあります。
我々は「すてない加工」で価値向上モデルをやっと作ったばかりで、これからが本番です。
まずはこの価値向上モデルの拡大を目指します。
3年でジュースの生産量を約3倍まで持っていきます。
そうなると現在の3倍の買取が実現します。
地方産業にとって、3倍のスケールは非常にインパクトがあります。
次に45年続いた選果場を移設し、みかんの直売場を併設します。
ここで有田に訪れる人を増やし、有田みかんのファンを増やします。
シーズン外はオープンカフェをメインとして、年中賑わう施設を目指します。
今後はみかん産業を盛り上げつつ、
この生まれ育ったみかん産地の継続に貢献したいと考えています。
これからの早和果樹園の挑戦を、楽しみにしておいてください。
ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/森田 竜馬/星野 由香里/戸田 秀成