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原宿のど真ん中での挑戦!「小杉湯」が目指す、街の銭湯という文化に経済的評価がつく社会(ICC FUKUOKA 2024)

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ICC FUKUOKA 2024 クラフテッド・カタパルトに登壇した、小杉湯 関根 江里子さんのプレゼンテーション動画【原宿のど真ん中での挑戦!「小杉湯」が目指す、街の銭湯という文化に経済的評価がつく社会】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜 9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。

【速報】古民家宿でその土地に根差した職人技と文化を継承する「LOOOF」がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2024)


【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング

関根 江里子
小杉湯
COO
HP | X(旧Twitter)

1995年上海生まれ。2020年に株式会社ペイミーに入社し、カスタマーサクセス、CRM、マーケティング領域を中心に事業責任者を勤めた後、同年末に取締役COOに就任。2022年に銭湯経営を目指し独立。現在は、高円寺で90年続く老舗銭湯「小杉湯」の副社長として、銭湯の運営や新規事業に関わる。小杉湯として、2024年4月に、初の2店舗目となる「小杉湯原宿」を開業予定。


関根江里子さん(以下、関根) 皆さん、はじめまして。

株式会社小杉湯の関根 江里子と申します。

東京中の銭湯を巡り、継業先を探す

まずはじめに、簡単に私の自己紹介をさせてください。

私は3年前までPaymeというスタートアップでFinTechの事業を経営していました。

ただどうしても人生をかけて銭湯を経営したいという思いから独立をし、浅草の銭湯でアルバイトをしながら東京中の銭湯を巡り、継業先はありませんか?と、とにかく探していました。

そんな活動を見つけてくれたのが小杉湯で、そこから経営でご一緒することになり、今日ここに立たせていただいているという経緯です。

91年目になる街の老舗の銭湯、小杉湯

私が働いている小杉湯という銭湯は、平松家が3代にわたって経営し、2024年で91年目になる老舗の銭湯です。

昔ながらの神社仏閣のような宮造りの建物が特徴で、脱衣所は開放的な高い天井で、この天井には屋久杉が使われていて一度壊してしまったらもう再現することはできません。

そして浴室では富士山の絵の白いタイルが小杉湯のトレードマークです。

そして名物は毎日入れるミルク風呂、熱湯と地下水をかけ流しにした水風呂を交互に入る「温冷交互浴の聖地」と呼ばれることもあります。

小杉湯は、ありがたいことに東京の銭湯が1日あたり144人のところ平日は400~500人、土日祝日は多い日で1,000人ものお客様に来ていただける銭湯となりました。

斜陽産業に、若者自身が企画できる環境をつくる

この数年の成長のど真ん中にいたのが、3代目の平松佑介です。

8年前、3代目に継承され斜陽産業である銭湯にどうすれば多くの方が関わっていただけるか、そう考え銭湯という環境を開き、多くの若者を中心に若者自身が企画をできる環境をつくりました。

例えば休日の浴室を使った音楽ライブだったり小杉湯のお客さんが中心となって企画をするお風呂企画、そして看護師のみんなが番台の番頭として働いたり、銭湯をひとつのケアの場所として健康ラボという組織を立ち上げたこともありました。

気づけば数え切れないほどの企画が生まれ、その過程で多くの生産者さんの皆さん、そして企業の皆さんとご一緒し、それを多くのメディアに取り上げていただけるまでになりました。

街の銭湯は継続が難しい現状

私たちはこうした多くの繋がりがある一方で、よく分かったことがあります。

それは、これだけ注目をいただいて成長しても、小杉湯はこのままでは絶対に続けられないということです。

銭湯には2種類あります。

1つは私たちのような街の銭湯が持つ認可、「一般公衆浴場」という銭湯です。

この銭湯は料金が統制されていて、都道府県ごとに上限額が決まっています。

今、東京都では520円になっています。

一方でスーパー銭湯やサウナに特化した施設は「その他公衆浴場」と呼ばれる認可でこちらの価格は自由です。

もちろん街の銭湯として物価が統制されている以上、固定資産税、水道代の減免であったり補助金、助成金といった優遇はあります。

ただ、こうした古い建物を維持し続けて、その中で売り上げ、収支を成り立たせるには厳しいというのが実情です。

そうした中で多くの銭湯がビル型にして、銭湯だけでなく2階以上の上で家賃収入を得るモデルであったりとか、サウナの料金は自由なので、サウナを広くして顧客単価を上げていく──大体どちらかを取ることが多いです。

ただ、私たちは先にお伝えした通り、宮造りの銭湯です。

そして、サウナはありません。

なので、物販であったり多くの企業さんとの取り組みの中で、どうにか収支を合わせられないかと必死に頑張ってきました。

思い出と歴史の詰まった建物の大修繕という課題

ただ、そんな頑張りではどうしても乗り越えられない壁があります。

それは銭湯は20年に1回、業界用語で「中普請」と呼ばれる大規模な修繕を行う必要があります。

水を扱う業種なので、どうしても湿気が多く20年に1回は大規模な修繕を入れなければいけないというのが銭湯の実態です。

小杉湯の場合は、最低2億円、半年以上の休業を要します。

ただ現時点で、その金額を借り入れできる見込みも半年の休業ができる見込みも一切たっていません。

ただ、私たちはどうしてもこの建物で続けていきたいという思いです。

これだけ維持するのも難しく、先ほどの生き残る2つの選択肢も取れないのですが、それでもこの建物で続けていきたいというのがこだわりです。

この小杉湯の建物には多くの人の思い出と歴史が詰まっています。

ただその思いだけではどうしようもないです。

原宿の商業施設に「小杉湯」を開業した理由

ではどうすればいいのか、1つ答えを出しました。

それは、「街の銭湯」という文化に経済的評価がつく社会を作ることです。

具体的なお話をします。

2024年の4月、東京の神宮前交差点に東急不動産が東急プラザ原宿「ハラカド」という新たな商業施設を開業します。

この地下1階に小杉湯原宿という2店目を開業することに決めました。

この銭湯は街の銭湯である一般公衆浴場から離れ、その他公衆浴場として事業として街の銭湯をつくり、そこに民間企業の経済的評価がつくるモデルをつくるというのが私たちの目標です。

それを一番最初に評価をしてくださったのが東急不動産でした。

街の銭湯の減少を止めるために

実は銭湯の経営者の多くは民間の地主です。

なので銭湯をやめるとなれば選択肢は2つで、ディベロッパーに土地を売却するか、そのまま解体してマンションを建てるかです。

この2つが特に東京では選ばれます。

当たり前ですが経済合理的な判断だと思います。

だからこそ私たちはディベロッパー、行政、民間の地主がこの銭湯の文化を評価する社会をつくらなければこのまま銭湯は減りゆく一方だと考えていました。

この小杉湯原宿はまさにディベロッパーである東急不動産が銭湯という文化を評価してくれた1つ目の事例になったと考えています。

▶️小杉湯原宿/ハラカド内に「銭湯を中心とした街」のようなフロアオープン(流通ニュース)

▶️日経スペシャル「ガイアの夜明け」をご覧いただいた皆さまへ(平松佑介 | 小杉湯三代目note)

小杉湯と原宿を通じて成し遂げたいこと

私が小杉湯と原宿を通じて成し遂げたいことは2つです。

1つ目はより多くの人に銭湯を身近に感じてもらうこと。

2つ目は小杉湯原宿を100年続く事業としての銭湯モデルとして構築することです。

この高円寺の建物、歴史を守りながら、原宿のど真ん中で町の銭湯の価値を届け、経済的評価がつく社会を作っていきます。

小さな銭湯の大きすぎる挑戦を応援いただけると嬉しいです。

ご静聴ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/正能 由佳/星野 由香里/戸田 秀成

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