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NHKでも特集!アジア最貧国で教育支援に挑む「e-Education」感動のプレゼンテーション(ICC KYOTO 2017)

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ICC KYOTO 2017 オムニバス・ライブに登壇した「e-Education」三輪さんのプレゼンテーションを書き起こし記事でお送りします。アジアNo.1の教育NGOを目指す「e-Education」の活動をきっかけに、バングラデシュでトップ大学への合格者が続々と誕生しています。「まだ早い」と言われ続けた挑戦の軌跡を是非ご覧ください。

▶ICCパートナーズではオペレーション・ディレクター及びコンテンツ編集チームメンバー(正社員&インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
オムニバス・ライブ

(プレゼンター)
三輪 開人
e-Education
代表理事

1986年生まれ。早稲田大学在学中に税所篤快と共にNPO、e-Educationの前身を設立。バングラデシュの貧しい高校生に映像教育を提供し、大学受験を支援した。1年目から合格者を輩出し「途上国版ドラゴン桜」と呼ばれる。大学卒業後はJICA(国際協力機構)で東南アジア・大洋州の教育案件を担当しながら、NGOの海外事業総括を担当。2013年10月にJICAを退職してe-Educationの活動に専念。14年7月に同団体の代表理事へ就任。これまでに途上国14カ国8000名の中高生に映像授業を届けてきた。2016年、アメリカの経済誌「Forbes」が選ぶアジアを牽引する若手リーダー「Forbes 30 under 30 in Asia」に選出される。

三輪 開人氏(以下、三輪)皆さんこんにちは。NPO 法人「e-Education」の三輪と申します。

私の仕事は途上国で教育支援をすることです。

今私が住んでいる場所は、アジア最貧国と呼ばれるバングラデシュという国です。

何故、私がバングラデシュという国に住んでいるのか。

それはちょうど1年前(2016年7月1日)に起こったバングラデシュのテロ事件がきっかけです。

日本人8人が巻き込まれ、7人が亡くなりました。

私の知り合いもその一人です。

私も当時、バングラデシュにいました。

もしかしたらテロの犯人がこの近くにいるかもしれない。

私は72時間と3日間、ホテルから出ることを許されませんでした。

バングラデシュという国が、正直、怖くなった瞬間でもあります。

それと同時に、好きになった瞬間でもありました。

それは、私がホテルから出られないことを聞きつけた仲間が「飲み物や食べ物に困っているのではないか」と言って、土砂降りの雨の中を、彼らは一生懸命私のためにやって来てくれたのです。

「こんなにも温かい人たちがいる。」

そんな国で、私はもっともっと教育改革、教育支援を行っていきたい。

そう思って、2017年の5月からバングラデシュを拠点に活動しています。

ただ、バングラデシュを拠点に活動するということに関しては、実は以下のようなメッセージやアドバイスをたくさんいただきました。

「まだ早いんじゃないか」

本当にそうでしょうか。実は私は、「まだ早い」という言葉には、すごく成長する機会、イノベーション起こしていく機会、産業をつくって行く機会、そういったものが含まれていると思っています。

そこで今日のテーマは、「まだ早い」という四文字を、ぜひ皆さんと一緒に考える場にしたいので、その話をさせてください。

アジアの途上国で高校生を対象に映像教育支援

ここにいらっしゃる皆さん、そしてライブをご覧になっている皆さんの中には、世界ナンバーワン、アジアナンバーワンの企業を目指している、きっとそんな方々も多いのではないかと思います。

アジアでナンバーワンの企業を目指しているのであれば、例えばですが、バングラデシュ、ネパール、ラオス、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、こういった国々で、すでに活動を始めているのでしょうか。

実はこれらの国は、全てわれわれ e-Educationという団体が活動している国です。

NPOのわれわれが活動できて、民間企業の皆さんが活動できないのはなぜでしょう。

「まだ早い」からでしょうか。

それから私たちには、こだわっていることが二つあります。

それは、映像教育を活用した支援であること、それから高校生を対象にしているということです。

この2点についても、創業時にこのようなことを言われました。

「まだ早いんじゃないか」

途上国で映像って使えるの?高校生の前に小学校の支援をしなきゃいけないの?そういった点から私たちの挑戦が始まりました。

バングラデシュのカリスマ予備校講師の映像授業を村の高校生に届ける

早速ご紹介させてください。バングラデシュの事例です。

ちなみにこの会場でバングラデシュに行かれたことがある方はどれくらいいらっしゃいますか?いいですね、相変わらず和やかです。

バングラデシュで私が出会った高校生はこのような子どもたちでした。

大学に行きたくて、灯油ランプの明かりの下で、夜11時、12時まで一生懸命勉強をしている高校生。

12時になって街を歩いてみると、街灯の下で高校生たちが一生懸命勉強しているのです。

家に明かりがないからです。

このような子どもたちを支援するために、私たちが出会った、たどり着いたアイデアが、東進ハイスクールのDVD授業です。

「この先生を知っているよ」という人、手をあげていただけますか。本当にご存知ですか?

私の恩師です。

これが毎回の話のパターンになってきているのですが、私は東進ハイスクールの林修先生のもとで4年間アルバイトをしていました。

このような先生との出会いがあれば、きっとより多くの子供たちに最高の授業が届けられるのではないかと思い、バングラデシュの予備校街で先生探しを再開しました。

さあ皆さん、手をあげる準備はできていますか?

社会のカリスマ、ご存知の方はどれくらいいらっしゃいますでしょうか。

いらっしゃらない。

バングラデシュの社会のカリスマですよ。

見てください。「今でしょ」と今にも言い出しそうな、カリスマ性あふれる先生です。

実際にこの先生と出会ったのは2010年なのですが、それから7年間、ずっとこの先生の協力をいただいています。

実はこの先生の有名なところは、社会の授業を半分で終わらせて、残りの半分を人生に役立つストーリーを伝えるという、こういう授業をするところです。

ご覧のとおり、後ろの黒板を全く使いません。

この先生で大丈夫なのか少し不安になるときもありますが、最近は、日本の有名な企業、ここにいらっしゃるようなベンチャーの皆さんの活躍なども、彼は一生懸命バングラデシュの高校生に伝えようとしてくれています。

バングラデシュ最高峰のダッカ大学の合格者が続出

こういった先生の協力をもとに、われわれが(村の子どもたちに)授業を届けた結果、

なんと最初の一年目、半年の大学受験の勉強を経て1人、

現地の高校生ヘラル君という学生が、バングラデシュの東京大学にあたる、ダッカ大学に合格しました 。

2011年には、2010年に1人だった合格者が3人になり、

そして2012年には東京大学・京都大学がわれわれの授業を、非常に先進的な国際協力の事例だということで研究対象に選んでいただきました。

大学受験に関わらず、このような映像教育の支援をすることが、従来の国際協力のやり方と比べて非常に効率的・効果的だというようなディスカッションペーパー(※)が、東京大学のホームページでも公開されています。

▶ディスカッションペーパー:Kono, H., Sawada, Y. and Shonchoy S.A. (2016). DVD-based Distance-learning Program for University Entrance Exams: Experimental Evidence from Rural Bangladesh. CIRJE F-Series CIRJE-F-1027, CIRJE, Faculty of Economics, University of Tokyo.

▶編集部注:2017年11月に書籍が公開されました。

Kono H., Sawada Y., Shonchoy A.S. (2018). Primary, Secondary, and Tertiary Education in Bangladesh: Achievements and Challenges. In: Sawada Y., Mahmud M., Kitano N. (eds) Economic and Social Development of Bangladesh, 135-149. Palgrave Macmillan, Cham

Amazon: Economic and Social Development of Bangladesh: Miracle and Challenges

高校生支援のために、JICAを退職

ここまで証拠・エビデンスが揃ったにも関わらず、実は一つ、越えなければならない壁がありました。

それは「日本の国際協力の壁」というものです。

私は前職 JICA(国際協力機構)というところで働いていたのですが、下の画像にある通り、JICAには二つ教育の部署、基礎教育課という小学生を教えている課と、大学生以降を支援している高等教育課というものがありました。

高校生の支援はいったいどこがしているのかと気になったので聞いてみたところ、実は対応している部署がないということがわかりました。

それだけではありませんでした。

実は映像教育を活用した国際協力の事例というものが極めて少なかったのです。

理由を聞いたところ、返ってきた答えが「まだ早い」ということでした。

でも、実際に村の高校生たちが大学に進学していて、東大や京大の先生もそれを認めてくださっている。それならば、これに賭けてみる価値があるのではないか。

「まだ早い」が「もう遅い」と言われる前に、誰かが挑戦しなければならないのではないか。

そういった思いを持って、私は2013年の10月にJICAを退職して、今のe-Educationという団体の活動に専念をしています。

そして2016年、小さな村からトップの大学への合格者が150人を超えました。

過去40年間、われわれが入る前の40年間、合格者がたった1人しかいなかった村から、今では150人ものトップ大学への合格者を輩出できるようになっています。

こういった活動が今、バングラデシュの政府や民間企業の皆さんからも認めていただいて、去年から始まった公教育デジタル授業という、非常に大きな規模の授業の日本唯一のパートナー団体として、われわれe-Educationが選ばれています。

このように、「まだ早い」と言われて始まった活動が、バングラデシュだけではなく各国に広がりつつあります。

こういった中で、われわれもう一つ「まだ早い」と言われている領域に気づきました。

それが、日本企業の途上国展開です。

フィリピンでは教育委員会・学校と協力

もう一つだけ今日ご紹介させていただきたい事例があります。フィリピンの事例です。

2011年、東北の震災が起こった年と同じタイミングで、フィリピンは大きな大きな台風の被害に遭いました。

その結果、貧困家庭が続出しました。

早く結婚させて家族を増やすことで、セーフティネットを広げようという活動が広がってしまいました。

私が出会ったのは14歳でお母さんになってしまった女の子です。

彼女たちを支援するために、われわれは教育支援の活動を開始しました。

県の教育委員会や、学校の先生の協力をいただいて、一緒に映像授業を作ったのです。

先ほどご紹介したような14歳の若いお母さんが、赤ちゃんを抱えながらでも授業が見られる、そういった教育の仕組み作りを心がけてきました。

啓林館と協働でフィリピン向け教科書を開発、全土に展開へ

ただ、問題がありました。それがこちらです。

皆さん何かわかりますでしょうか。

ひし形の面積を求める問題です。小学生でも多分解けます。

これを、現地でトップの公立校・私立校の高校生たちに聞いたところ、なんと正答が半分以下でした。

実はフィリピンは、アジアで最下位の数学力と言われている国です。

この課題を解決するために、「日本の教育システムを紹介してほしい」ということで、教育省の方々に日本の教科書や参考書をお届けしました。

そうしたところ、「ぜひ彼らとつないでほしい」というアドバイスをいただきまして、私は、大阪に本社を構えている理数教育のリーディングカンパニーである、啓林館という会社を、フィリピンの教育庁の皆さんにご紹介させていただきました。

そして協働が始まります。

現地の先生と一緒に教材を作りました。

半年近く議論を重ねて作ったのですが、こだわったのは徹底したローカライズです。

現地のテキストに比重を置きながらも、日本の教育手法を上手く盛り込んでいく。

NPOである私たちだからこそできる調整で、教材がひとつひとつ完成していきました。

そしてつい先日、1ヶ月のパイロット授業が終わりました。

何と嬉しいことに、われわれが作った教材を使った生徒と、従来の教材を使った生徒のグループを比較したところ、なんと1ヶ月で50%以上の教育差が生まれたことが分かりました。

こういった授業を、成果を持ってわれわれは民間企業である啓林館の皆さんと一緒に、フィリピン全土に広める活動を今、進めています。

JICA中小企業海外展開支援事業を知ってほしい

ここにいらっしゃる方の中には、「お金はどうなっているのか、活動資金源はどこから得ているのか」が気になっている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

実は啓林館さんは70年以上海外に進出したことがない企業で、海外進出に対して予算をつけるということが難しい事情もありました。

是非皆さんに知っていただきたいのが、私の前職であるJICAが、ここにいらっしゃる企業の皆さん、ライブをご覧になっているような企業の皆さんの、海外進出に対する支援を行っています。

年間3,000万円以上を年間100社以上に対して、途上国進出へのお金が出ているということを、この会場にいらっしゃる皆さんにもぜひ、覚えていただきたいと思っております。

JICA中小企業海外展開支援事業

「まだ早い」という領域に最初の一歩を

最後1分なのですが、改めて冒頭の質問に戻らせてください。

途上国への展開、アジア各国への展開は、本当にまだ早いでしょうか。

「まだ早い」という言葉が「もう遅い」と言われるまでに、果たして一体どれくらいの時間がかかるでしょうか。

私は信じています。

「まだ早い」と言われる領域にこそチャンスがあって、その領域にチャレンジしていくことが、新しい産業や社会をつくっていくことにつながると思っています。

この会場で登壇させていただいている目的は、この会場にいらっしゃる皆さん、ライブをご覧になっていただいている皆さんと、ぜひ、新しい一歩を始めることができたらと思っているからです。

私はこれから3日間、ICCカンファレンスに終日、多分この赤い服を着ておりますので、もし会場でご覧になりましたら、ぜひ最初の一歩を、最初の途上国進出を、われわれe-Educationと一緒に進めていただけたら大変嬉しく思います。

ご清聴ありがとうございました。

e-Education 三輪 開人さんのプレゼンテーション動画をぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/榎戸 貴史/戸田 秀成/平井 裕

【編集部コメント】

大きな反響を呼んだ前回のプレゼンテーション動画は、NHKが半年もの間密着取材をするきっかけになったそうです。さらには、日本に足りない人材をアジアから呼びたいという構想もあるとのこと、挑戦を続ける三輪さんの今後に注目したいと思います。(浅郷)

【ICCサミットとは?】

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