社会を変え、支援の輪を。世界から子どもが売られる問題をなくす「かものはしプロジェクト」(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】 | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

社会を変え、支援の輪を。世界から子どもが売られる問題をなくす「かものはしプロジェクト」(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】

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ICCサミット FUKUOKA 2020 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただいた、かものはしプロジェクト 村田 早耶香さんのプレゼンテーション動画【社会を変え、支援の輪を。世界から子どもが売られる問題をなくす「かものはしプロジェクト」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 ゴールド・スポンサーの電通様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 9B
ソーシャルグッド・カタパルト
Supported by 電通

(プレゼンター)
村田 早耶香
特定非営利活動法人かものはしプロジェクト
共同創業者
公式HP

大学在学中の2001年、東南アジア訪問時に子どもが売られる問題の深刻さを知り、2002年20歳の時に仲間とかものはしプロジェクトを創業。10歳未満の子どもまでもが被害にあっていたカンボジアで、子どもが売られる問題を防止する為、職業訓練と雇用により家庭の収入を向上させる雑貨工房を運営。また加害者を取り締まる為の警察訓練支援も行う。現在はインドに活動を広げている。2006年日経WOMAN主催「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2006」リーダーシップ部門を史上最年少で受賞。2011年、社団法人日本看護協会とジョンソン・エンド・ジョンソン グループ日本法人各社主催、ヘルシー・ソサエティー賞を受賞し、天皇陛下(当時は皇太子殿下)と謁見。2012年、全国日本商工会議所女性会連合会主催 第11回女性起業家大賞優秀賞受賞。2018年日経WOMAN主催「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」世界の子供を守る賞を受賞。ウーマン・オブ・ザ・イヤーの2回目の受賞となった。

「ICC FUKUOKA 2020 ソーシャルグッド・カタパルト」の配信済み記事一覧


村田 早耶香さん 皆さん、こんにちは。かものはしプロジェクトの村田と申します。

かものはしプロジェクトは、「子どもが売られる問題」をなくす活動をしています。

「子どもが売られる問題」とは、18歳未満の子どもが、騙されたり誘拐されたりして、自分の意志に反して強制的に売春宿で働かされることです。

世界には、このような境遇にある子どもが約100万人もいます。

私は大学生のときにこの問題を知り、20歳でこの団体を立ち上げ18年間、活動してきました。

今日は皆さんにこのような状況があることをお伝えし、できる範囲でご協力をいただけたらと思います。

活動のきっかけは、1万円で売られた12歳の少女の物語

まず、なぜ私がこのような問題に取り組んでいるかについてお話しさせていただきます。

きっかけは、大学の授業で被害者の女性の話を聞いたことでした。

私は国際協力を専攻する本当に普通の大学生だったのですが、実際の被害者の女性が載った新聞記事が配られ、その女性が私とほぼ同い年であることを知りました。

こちらの写真の女性は、ミーチャといいます。

彼女は山岳少数民族の出身で、ミャンマーに住んでいました。

母親はミーチャが12歳の時には既に病気で他界しており、父親は障がいがあり働けないという、非常に貧しい家庭の長女です。

彼女が12歳のとき、都会から男がやって来てこう言いました。

「君がタイのバンコクで子守りの仕事をすれば、家族全員が食べていくことができるから、お父さんは助かる。弟や妹もお腹いっぱい食事ができ、学校にも通えるかもしれない。だから出稼ぎに出ないか?」

非常に家族思いだった彼女は、「これで弟や妹が教育を受けられるかもしれない」と思い、家族のために出稼ぎに行きました。

しかし、連れていかれた先は売春宿でした。

騙されたと気づいた時には既に遅く、そこで監禁され虐待を受け、1日に10人の客をとらされる過酷な生活が始まりました。

そんな生活が数年間続き、感染症予防をする客は半分もいなかったため、彼女はHIVに感染しエイズ (AIDS) を発症しました。

最終的に売春宿から逃げることができ、NGO団体に保護されたのですが、その時には既に症状も末期で、延命措置の施しようがない状態でした。

当時、彼女は20歳。亡くなる数カ月前に、偶然、日本の新聞記者から取材を受けていて、その取材記事が授業中に私の手元に配られのでした。

その時点で彼女は余命半年と宣告されていました。

彼女は、時々涙を流し言葉を詰まらせながらも、新聞記者に自分の身に起きたことを一生懸命伝えたそうです。

新聞記者が「思い出させてしまって、ごめんなさいね」と言ったところ、彼女は「どうか私の話を日本の多くの人に伝えてください。きっと、こんなことが起きないように行動してくれる人がいるはずだから」と言って、全てを話してくれたそうです。

そしてこの写真が撮られた3カ月後に、たった20年の短い生涯を終えました。

彼女と私は、同じ1980年代生まれです。

私は大学教育を受けられるだけの経済的な余裕に恵まれ、ちょうどその日、1万円で買ったばかりの新しいワンピースを着ていました。

この子はミャンマーの少数民族に生まれ、12歳からありとあらゆる虐待を受け続けて20歳で亡くなりました。

この子が売られた値段はたった3,000バーツ、日本円にして約1万円です。

1万円というお金がなかったために、彼女は家族から引き離されて売られていきました。

たったそれだけのお金がなかったために、彼女は家族から引き離されて売られていきました。

私の着ていたワンピース1枚の値段は、彼女の命の値段と同じでした。

「大学生の自分でも手に入る金額で、なぜ人が売られているのだろう?」

調べてみると、このような被害に遭う18歳未満子どもは、世界中に100万人もいることが分かりました。

「現実はどうなっているのだろうか?」「本当に、こんなひどいことが起きているのだろうか?」

そして大学生だった私は、この問題が深刻だったカンボジアに向かいました。

5歳の子どもが働かされていたカンボジアの売春宿

カンボジアでは、ミーチャよりももっと幼い5歳ぐらいの子どもまで、売春宿で働かされていました。

こちらの映像は、実際に売春宿で撮影されたものです。

映像を、こちらのプレゼンテーション動画内でご覧いただけます。

このように、5歳と9歳の女の子が大人相手に売春をさせられていました。

「30ドル払えば、この子たちを好きにしていい」と言われ、この日は90ドルを払い3人の女の子を買ったふりをして匿いました。

私はこのような状況から保護された後の子どもに会ったのですが、6歳の何の罪もない子どもたちがこのような状況で働かされているのを目の当たりにして、何とかしたいという思いで団体を立ち上げ、18年ほど活動を続けています。

どのようにしたら課題が解決できるのかを、ひたすら考えて活動し続けた18年でした。

「売らせない」ために、農村で雑貨工房の仕事を提供

大学を卒業した2004年からカンボジアで活動を始め、子どもを「売らせない」「買わせない」ようにするために、まずは大人に仕事をつくる取り組みを行いました。

売られた子どもたちの多くは、農村の最貧困家庭から来ていました。

その多くが、母子家庭や親がいない世帯です。

そこで、最貧困家庭のお母さんやお姉さんを彼女たちが暮らす農村で雇用し、雑貨をつくってもらい、販売して得た収益を月収として還元しました。

当初、彼女たちの家庭の状況は、次の写真のようなものでした。

40歳のシングルマザーが息子と暮らすこの家は、ボロボロで壁がはがれてしまっています。

そして皆さん、この男の子は何歳くらいに見えますか?

私は5~6歳かなと思い、カンボジア語で「何歳?」と尋ねると「僕は11歳です」と返事がありました。

1日に1食しか食事がとれず、それもわずかな量しかない。

しかし、お母さんに工房に働きに来てもらうと収入が安定しました。

そして写真の男の子は学校に行けるようになり、3食きちんと食べられるようになりました。

その後も生活が少しずつ改善していき、7年後にはこのように非常に立派な家に建て替わっていました。

男の子は学校に通い始めることができ、小学校5年生に進級することができました。

「買わせない」ために、カンボジア警察に研修を提供

「売らせない」活動をする一方で、買う人を減らさないことには被害者も減りません。

そこで、買う人を減らすことにも取り組みました。

カンボジアでの一番のボトルネックは、加害者逮捕ができていないことでした。

売春宿で子どもを働かせる人たちも、子どもを買う人たちも逮捕されず野放しなので、子どもの人身売買が止まらない状況でした。

そのため、警察に研修を提供するなどして、加害者逮捕と被害者保護を支援する取り組みを行いました。

この取り組みを政府と協力して行ったところ、逮捕件数は年々増えていきました。

その結果、カンボジア国内の18歳未満の被害者数も減少しました。

活動を始めた2000年頃は、売春に従事する人の約30%が18歳未満でしたが、2015年には2%にまで改善されました。

2000年頃は、売春宿に訪れた客に、「5歳がいいか? 9歳がいいか?」と尋ねるような状況でしたが、2015年には宿側の対応も「警察が捕まえに来るから子どもは売っていない」「カンボジアでは捕まる」に変わり、子どもを置く売春宿が劇的に減っていきました。

「2%」という数字を見るとまだ完全には問題が解決されていないようにも思えますが、この数年は限りなくゼロに近い状態が維持されています。

子どもが売られない世界は、つくれる

私が活動を始めた当初は、カンボジア1国だけで問題解決に40~50年かかるのではないかと仰る専門家もいました。

しかし、この15年間で法律ができ、法執行が強化されて、加害者が逮捕されるようになりました。

さらに、急速な経済成長とともに、貧困層や危険な出稼ぎに行く人も減少していきました。

こうした要因も合わさり、カンボジアではこの問題がほぼ解決したと言っていいほどになりました。

色々な人たちが真剣になって行動を起こせば、このようにひどい人権問題も解決することができるのだと感じています。

被害者数が世界最大といわれるインドで活動を開始

カンボジアでの問題解決が進んだので、次はより状況の深刻なインドにも活動を進めました。

子どもと大人を合わせると、インド国内だけで100万人近い被害者が出ています。

また、一度被害に遭うと社会復帰が非常に難しいのがインドの現状です。深刻な状況であることから、インドを活動地に選びました。

私たちは、被害にあった人たちが回復して人生を取り戻せるように、インドのパートナー団体を通じて草の根の支援をしています。

そしてそこから分かったことを、社会の構造を変えるために活かしていきます。

取り組みの両輪は、大きく2つ。「サバイバー支援」と「社会の仕組みを変える」です。

売られた子どもが「人生を取り戻す」ための支援の輪

インドで子どもと女性が最も多く売られているのは、インド最大の都市ムンバイです。

そしてムンバイに売られて来る被害者の約半数が、西ベンガル州出身だと言われています。

被害に遭い保護された子どもの多くは西ベンガル州に戻るのですが、ムンバイと西ベンガル州では言語が違うため、被害者の多くが村に戻るのですが、その子どもたちを待っているのは厳しい差別です。

村八分にあったり、結婚や就職ができないなど、強烈な社会的差別にさらされます。

ただでさえ売春宿でひどい虐待を受け続けてきたのに、村に戻ってまで差別を受けなければならない現実に耐え切れず、最悪の場合、自死を選ぶ子どももいるほどです。

それを防ぐために、まず、精神面での回復を支援するためのカウンセリングを提供しています。

また、村に戻った後、彼女たちが安定した生活を送られるように支援を行っています。

例えば、州政府からの支援や行政のサービスと、彼女たちをつなげるような支援です。

多くの被害者は戸籍を持っていません。

まず本人が戸籍を取得し、色々な行政サービスにアクセスして被害者補償金をもらったり、貧困層向けの仕事紹介をしてもらったりしています。これらの活動をインドのNGOを通じて行っています。

しかし残念ながら、西ベンガル州では抑止力が働いていない状況で、ほとんどの加害者が処罰されていません。

この状況を改善するには、加害者がきちんと逮捕され、裁判で有罪になるような状況をつくることが必要です。

有罪判決が出されるのは、加害者のたった1~2%に過ぎません。それは、被害者がほとんど証言をしないからです。

証言がなければ加害者も証拠が無いため処罰されず、次の被害者を出すことにつながってしまいます。

そこで私たちは、支援を受けた子ども・女性たちの中で「次の被害者を出したくない」という思いのある人たちの裁判での証言をサポートをしています。

1年間におよそ400名以上の人たちが、支援を受けています。

その中で「次の被害者を出したくない」と働きかけをしたり、自分より後に保護された人の支援をする人達も150人ほどいます。

以前は被害者であった子ども・女性たちが、今度は支援をする側になり、非常に力強いリーダーに育っていっています。

インド全州で適用の反人身売買法案の成立を

インドでの被害者支援を通して、インドに今最も必要なのは、新しい法律をつくることだと感じています。

インドでは州ごとに自治が行われているので、異なる州に売られてしまうと、「被害者の保護」と「加害者の処罰」が非常に難しくなります。

そこで、新しい法律をつくり、インドで州をまたいだ捜査ができる捜査機関を設置すれば、被害者の保護と加害者の処罰が可能になり、問題解決が進むと考えました。

今の法律ではそれができていないので、根拠となる新しい法律をつくり、州をまたいた捜査機関の設置をしてもらえるよう働きかけをしています。

麻薬に関してはこれができており、取り締まりが進んでいるため、人身売買に関しても同じような仕組みを実現させようとしています。

先ほどお話しした元被害者たちが政治家に訴えかけ、それをメディアが発信することで、法律の通過につながればと考えていました。

2018年8月、法案はインド下院を通過

この法案は2018年8月にインド下院を通過しましたが、残念ながら上院で通らなかったため、州をまたいだ捜査機関を設置してもらえるよう、働きかけを続けていきます。

インドでの人身売買問題の解決のために

子どもが売られる問題をなくすために、日本からできることも色々あります。

私たちは月々1,000円からご支援いただく、個人のサポーター会員さんを募集しています。

東京マラソンへの参加を通した支援や、法人としての支援など色々な形がありますので、ご協力いただければ幸いです。

支援・参加の方法 | 認定NPO法人かものはしプロジェクト

ご静聴ありがとうございました。

(終)

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成

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