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「WOTA」は、水道のない場所に手洗い場を作り、人類の水問題を解決する(ICC FUKUOKA 2021)

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ICC FUKUOKA 2021 カタパルト・グランプリに登壇いただき見事優勝に輝いた、WOTA 前田 瑶介さんのプレゼンテーション【「WOTA」は、水道のない場所に手洗い場を作り、人類の水問題を解決する】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プラチナ・スポンサーのAGSコンサルティング様にサポート頂きました。

【速報】自律分散型水循環システムの社会実装に挑む「WOTA」がカタパルト・グランプリ優勝!(ICCサミット FUKUOKA 2021)


【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICC FUKUOKA 2021
Session 7A
カタパルト・グランプリ
– 強者が勢揃い –
Supported by AGSコンサルティング

前田 瑶介
WOTA株式会社
代表取締役社長CEO

1992年徳島県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学研究科建築学専攻(修士課程)修了。幼少期より生物研究に明け暮れ、高校時代には食用納豆由来γポリグルタミン酸を用いた水質浄化の研究を行い日本薬学会で発表。大学・大学院在学中より、大手住宅設備メーカーやデジタルアート制作会社の製品・システム開発に従事。その後起業し、建築物の省エネ制御のためのアルゴリズムを開発・売却後、WOTA株式会社に参画しCOOに就任。現在同社CEOとして、自律分散型水循環社会の実現を目指す。過去に、東京大学総長賞、グッドデザイン大賞(内閣総理大臣賞)、「30 UNDER 30 JAPAN 2020(主催:Forbes JAPAN)」を受賞。


前田 瑶介さん 皆さんこんにちは。WOTAの前田と申します。よろしくお願いいたします。

我々は、「誰でもどこでも水の自由を。」というミッションを掲げ、人類の水問題の解決のために存在する会社です。

宇宙ステーション内のような水再生処理を実現

WOTAは東京大学発で、水処理と、AI、IoTという技術を組み合わせて、色々な技術バックグラウンドのメンバーが集まっています。


Source:National Aeronautics and Space Administration – Water: Nasa A Chemical Solution –
National Aeronautics and Space Administration – Celebrating a Milestone in Space –

一言で言うと、宇宙ステーションの中にあるような水循環、つまり、水を再生して循環利用するということを、地上で安価に実現することができました。

事業内容としては、小さな水インフラを作ります。世の中にある水処理場の基本的な一日の水の処理量は数十万トンなのですが、これを小さくするということをやっています。

だいたい一日あたり1台で数トンの水を処理できる、そういった製品を作っています。

実績としては、既に断水状況下の災害現場等で、2万人以上の方に使っていただいています。

手洗いに特化した世界初の水循環型のポータブル手洗い機「WOSH」

昨年新しい製品を出しました。

手洗いに特化したモデルで、世界初の水循環型のポータブル手洗い機です。「WOSH」といいます。

これは、使った水を、その場で98%以上再生処理して、かつWHOの定める「飲料水水質ガイドライン」に準拠した99.9999%以上きれいで安全な水を提供できるというものです。

飲料水水質ガイドライン第4版(日本語版・Web公開用)(国立保健医療科学院)

水道いらずで、どこにでも災害時でも使える手洗い場が設置できます。

追加機能として、スマートフォンも99.9%除菌できるスロットを設けました。

衛生効果が高く、好まれるのは「手洗い」

我々は、「手指衛生の新スタンダード」を目指しています。

なぜ「手洗い」なのかというところですが、今、手指の消毒ということで消毒剤が多く使われています。それと比べて衛生効果が高くて、よりお客様にも好まれて、安いからです。

医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン(PDF)(medical SARAYA)

アルコール等の消毒剤による消毒は、一部の病原体には効かないとされているのです。

あるいは病原体の統計的残存率や、副作用、過敏症や接触性の皮膚炎など、いわゆる手荒れなどの問題があります。

また、70%弱の方にアルコール消毒への不満があるというアンケート結果もあります。そして手が荒れるということで悩まれている方も、3割くらいいらっしゃるということです。

医療機関から街全体へ広がる「公衆手洗い」

我々の製品は、こういう状況の中で色々な会社様に導入、あるいは受注の実績があります。

2021年は導入台数ベースで、昨年の25倍の成長になるというのが、今の引き合いです。

事例としては、先行導入ですが、飲食店や商業ビル、医療機関などで使っていただいているような状況です。

“WOSH”が街中に広がる。

我々は、それがもたらす公共性を、「公衆手洗い(Public handwash)」という概念で表現しようとしています。

鎌倉は、街中の色々なところで、オープンスペースで手が洗えるようにしています。

銀座では歩行者天国に設置しました。

それをきっかけに、街中の色々な手が洗えなかったところで、手が洗えるようになっています。

アメリカでは、スタンフォード大の研究成果を契機に、「公衆手洗い」的な事例がどんどん出てきています。

我々のWOSHのビジョンとしては、「社会インフラとしての『公衆手洗い(Public handwash)』が普及し、街中どこでも手洗いができ、安心できる状態の実現」ということを目指しています。

高度な技術を要する職人の水処理を実現

我々が、この水循環を、どうしてここまでコツコツつくってきたのか、それによって何を目指しているのかという話をできればと思います。

そもそも我々の技術のご説明なのですが、水処理というのは高度な職人的世界で、専門技術者の五感や経験則にも基づいて運用管理されてきた世界でした。

上のスライドの左は酒蔵で、右が水処理場です。右上の写真は下水を分解する微生物がたくさんいるタンクなのですが、この表面の泡や色やにおいなどから、微生物の活性度を評価して、それに基づいて制御にフィードバックします。

撹拌したり、空気を送り込んだり、温度を調整したりする、そういった微調整の世界です。我々はこうした水処理の属人的でアナログな部分をテクノロジーで自動化しようとしています。

WOSHも、膜処理を主体とした水処理システムを、完全に自動制御することによって、98%以上の水再生が可能になっています。

通常のセンサーよりもはるかに安い独自開発のセンサーによってデータ量を増やし、取得したデータに対し機械学習等のデータ分析手法を用いて、水処理の制御プロセス自体をモデル化しました。

自律分散型だから、1日で導入が可能

自律分散型の小さな水インフラを作る。

ライフラインの世界は、どんどん小さくなっていると思います。

2019年の末に、ケニアの農村部に行ってきたのですが、その時もポケットに入れていた通信機器は使えました。

電気は、ソーラー・バッテリーシステムがあって、充電したり、それで冷蔵庫を使ったりできるのですが、水は、それらに相当するようなものはまだできていません。

WOTAの考える、小さな水インフラというのは、「自律分散型水循環システム」というのですが、大規模な水処理場の10万分の1のサイズで、水の世界における、無線通信やソーラー・バッテリーシステムに相当するものを作ってきました。

このようなユニセフさんのレポートが、2020年3月20日に出されました。

今、世界の30億人が、手洗い設備にアクセスできません。病院も、6分の1が手洗い設備を持たない病院です。

今からこれを、数十年間かけて、今まで我々がやってきたように水道を普及させていくのか。

WOTAなら、優先度の高い場所から、1日で導入が可能になります。

「WOTAの考える、小さな水インフラ」のメリットは、設置が水道と比べて圧倒的に速いことです。数十年かかるものが、1日で済みます。

そして、98%以上の再利用率なので、効率が50倍以上となります。

また、水道と比べてレジリエントです。気候変動や災害の影響を受けて、断水したりしません。

水処理の価格を下げて、水道の保管から代替へ

これからのWOTAの挑戦としては、水道と比べて水処理の単価を安くする、ということを実現したいと思っています。

どんな状況でも、水道よりも効率的で合理的なソリューションであるということを目指しています。

WOTAの現在地は、2020年よりもさらにコストが下がっています。

「WOTA<水道」に向けたプロセスですが、利用データが蓄積されることによって、モデルの精度が上がったり、台数が伸びてハードウェアそのもののコストが下がっていきます。

北欧の水道料金よりは既に安く、北米にもう少しで迫るところにあります。水道の補完から水道の代替になってきています。

2030年に向けて、水問題の解決に取り組んでいきたいと思っています。

どうもありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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