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地方自治体の財政健全化をサポート!保健指導のDXにより、人工透析の医療費削減に挑む「ORANGE kitchen」(ICC KYOTO 2021)【文字起こし版】

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ICC KYOTO 2021 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただいた、ORANGE kitchen 若子 みな美さんのプレゼンテーション動画【地方自治体の財政健全化をサポート!保健指導のDXにより、人工透析の医療費削減に挑む「ORANGE kitchen」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミットFUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 プラチナ・スポンサーのベクトル様にサポート頂きました。

【速報】子どもの好奇心に火をつける!新しい学び場「SOZOW」を提供する「Go Visions」が審査員号泣のソーシャルグッド・カタパルトで優勝!(ICC KYOTO 2021)


【登壇者情報】
2021年9月6〜9日開催
ICC KYOTO 2021
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト&ラウンドテーブル
Supported by ベクトル

若子 みな美
株式会社ORANGE kitchen
代表取締役 / 管理栄養士

1989年愛知県生まれ。2011年 管理栄養士免許取得。2021年 慶應義塾大学大学院 公衆衛生学(MPH)修了。神奈川リハビリテーション病院にて管理栄養士として勤務し、入院・外来患者の栄養指導等を行う。食を通した生活習慣病の予防、健康維持・増進などのポピュレーションアプローチを行うため、2017年に個人事業主として独立。食品メーカーや企業健保向けの減塩レシピ提案、コラム寄稿等を行う。2018年 株式会社ORANGE kitchen設立。腎臓内科クリニックに非常勤 管理栄養士として勤務しつつ、人工透析予防特化型 重症化予防プログラム「しおみる」を立ち上げる。個人のQOL向上と医療費増加抑制を行い、日本の未来を明るくすることを目指している。


若子 みな美さん 慢性腎臓病の方向け、生活習慣改善サポート事業「しおみる」を運営しているORANGE kitchenの管理栄養士、若子と申します。

よろしくお願いいたします。

高齢化、高度医療化による医療費増大

日本における社会課題は、「少子高齢化」や「医療費・社会保障費の増大」、「教育格差」や「経済格差」など、数え上げればキリがありません。

中でも私たちは、「医療費・社会保障費の増大」に向き合っています。

高齢化や高度医療化が進むと、医療費が増加して社会保険料が増加、現役世代の可処分所得は減少し、経済的理由により出生率が低下します。

結果、少子化がますます加速し、医療費以外の財源も減少し、日本の国際競争力が低下、はっきり言って日本の未来は暗いと思っています。

そこで私たちは、根本的理由の一つである、高齢化や高度医療化による医療費増大に向き合い、「しおみる」という事業を運営しています。

生活習慣病の放置で生じるリスク

突然ですが、この中で、高血圧や糖尿病だと一度でも言われた方、心の中でこっそりと手を挙げてください。

そんなあなたに、管理栄養士の私から言わせて頂きたいです。

もしかしたら将来、「人工透析」が必要になってしまうかもしれません。

人工透析とは、腎臓が機能しなくなることにより、体外で血液濾過を行う医療行為です。

食事制限や運動制限がかかるだけではなく、1日4時間以上、週に3日病院に拘束される生活が一生続くことで、QOLや健康寿命が大きく低下してしまいます。

慢性腎臓病の悪化から人工透析へ

では、なぜ人工透析が必要になってしまうのでしょうか?

先ほど高血圧や糖尿病と言いましたが、これらの生活習慣病を放置すると、少しずつ腎機能が低下し、慢性腎臓病になり、さらに悪化すると人工透析が必要になってしまいます。

腎臓は非常に厄介な臓器で、一度悪くなるともう元には戻りません。

そのため、今の状態をキープすることが大切なのです。

3大危険因子をコントロールし、生活習慣を改善

腎機能を低下させる因子には、「肥満」や「高血圧」、「食塩の過剰摂取」などがあります。

これら3つを測定、コントロールし、生活習慣を改善していくのが、「しおみる」です。

ダイエットでは体重を測定してコントロールしますが、ここに血圧や塩分の項目も加えます。

IoTデバイスで摂取塩分量を可視化

では、どのように塩分を測定、コントロールするのでしょうか?

朝1回、専用カップに尿を入れて頂くと、前日に摂取した塩分量がスマホで可視化できるIoTデバイスを自社で開発しています。

「体重」「血圧」「塩分」の3つを測定しながら、生活習慣を改善していきます。

専属の管理栄養士がLINEで食事指導

しかし、ただ値を可視化しても、行動や生活は1人では変えられません。

そこで、専属の管理栄養士が徹底的にオンラインで伴走します。

LINEを使って食事写真をお送り頂くと、管理栄養士が栄養価計算や食事に関するフィードバックを行います。

週に1回家族同席でオンラインカウンセリング

また、週に1度、ご家族同席でのオンラインカウンセリングを行うことで、自分が食べられるものが自然とわかってきます。

1カ月の指導により、塩分摂取量の有意な減少、血圧の有意な下降と、良い結果が得られています。

定性的な満足度も高く、70代男性から、「(以前の食生活を続けていたら)妻よりも先に死ななければ、大変なことになるとつくづく思った」という言葉を頂いています。

この事業は、患者ご本人の費用負担はありません。

無料で参加可能できるのです。

圧倒的に医療費が高い人工透析

では、なぜこれが必要なのか、なぜこれが無料でできるのでしょうか?

それは人工透析が大きな社会課題だからです。

ご存知の通り、医療費、社会保障費は年々増加しており、社会保険料だけで賄うことは難しく、ここにいる皆さんの税金も充てられています。

人工透析は他の疾患に比べて圧倒的に医療費が高く、透析患者比率が全体の0.3%にもかかわらず、透析医療費比率は5%で、1人あたり16倍にものぼります。

年間で医療費500万円、透析患者数は34万人を超えており、日本では毎年、約2兆円が透析のみに拠出され続けている現状があります。

厚生労働省は、透析患者の増加と透析医療費の増加に歯止めをかけたいと、新規透析導入患者数の10%削減を目標に掲げておりますが、未達成です。

透析患者3万5千人以下に 厚労省、腎臓病で新計画 2018年7月16日(日本経済新聞)

地方自治体と新規透析導入患者削減に取り組む

では、誰がこの目標に取り組むのでしょうか。

新規透析導入患者の平均年齢は、70歳です。

つまり、透析の医療費は、国民健康保険や後期高齢者医療制度における重要な課題です。

よって、これらを運営する地方自治体が、新規透析導入患者削減に向けた取り組みを行う必要があります。

ですから私たちは、将来の人工透析患者数、医療費増加抑制のため、地方自治体の保健事業の一環として「しおみる」を運営しています。

こちらはビジネスモデルです。

自治体から委託費を頂くので、本人は無料で活用できます。

「しおみる」を利用した患者の20%が、血液検査や尿検査の結果、腎機能低下抑制と見込まれれば、費用対効果は200%と試算しています。

それほど人工透析の医療費が高いということです。

昨年度は東京都の実証実験で効果検証、本年度は茨城県でモデル事業として受託、政令指定都市の保健事業受託と、事業を拡大しています。

慢性腎臓病予防事業を誰が担うのか

しかしこの事業は、爆発的には広まりません。

なぜなら、国民皆保険制度は、医療費支払いの責任主体が異なっていくシステムだからです。

私たちは年齢や所属により、加入する健康保険組合が変わっていきます。

企業の健康保険組合で高いコスト負担をしても、リターンが得られるのは国民健康保険、国民健康保険でコスト負担をしても、リターンが得られるのは後期高齢者医療制度。

つまり、中長期的に見た、将来の医療費抑制のための予防事業を行うインセンティブは、各健康保険組合にはありません。

では、患者本人に負担してもらうのはどうでしょうか。

それは難しいです。

慢性腎臓病は自覚症状がないまま進行し、自覚症状が発生するタイミングには時すでに遅し、医療費も腎臓病段階では数千円程度です。

透析患者になると障害者手帳が交付されることなどにより、医療費はほぼゼロ円となるため、本人にコスト負担を頂いて予防事業を行うことはできません。

しかしこれでは、医療費問題は解決しません。

社会制度そのものにメスを入れる必要性があると考えています。

私たちは、現在進められている、内閣府スーパーシティ構想における連携事業者(候補含む)として、複数採択されました。

国家戦略特区の枠組の中で、この課題に向き合い、事業者側から提案していきます。

人工透析が必要になる人を減らし、日本の未来を明るく!

私たちは、人工透析が必要になる人を1人でも減らすことで医療費を削減し、日本の未来を明るくしたいと本気でこの事業に取り組んでおりますので、ご協力、応援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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