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ICC KYOTO 2022 REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変えるに登壇いただいた、ElevationSpace 小林 稜平さんのプレゼンテーション動画【大気圏再突入技術の強みで、人工衛星内の無人実験や製造を可能にする「ElevationSpace」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはKOBASHI HOLDINGSです。
▶【速報】長距離ワイヤレス給電で配線のないデジタル世界を創る「エイターリンク」がREALTECH CATAPULT優勝!(ICC KYOTO 2022)
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【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 7A
REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by KOBASHI HOLDINGS
小林 稜平
株式会社ElevationSpace
代表取締役CEO
1997年生まれ、秋田県出身。秋田高専在学中の19歳の時に宇宙建築に出会い人生が変わる。卒業後、東北大学に編入学し建築学と宇宙工学を専攻。大学在学中には人工衛星開発プロジェクトや次世代宇宙建築物の研究に従事し、宇宙建築において国内1位、世界2位を獲得。宇宙ベンチャーを含む複数社でのインターンを経て、東北大学准教授と共同で東北大学発宇宙スタートアップである株式会社ElevationSpaceを2021年に起業。創業1年間で補助金等を含めて約5億円の資金調達を実施し、誰もが宇宙で生活できる世界を目指し、宇宙ステーションに代わり人工衛星内で宇宙実験や材料製造を行う小型宇宙利用・回収プラットフォームを開発している。経済産業省 / JETROが主催する始動 Next Innovator等各種プログラム・コンテスト等で受賞。
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小林 稜平さん 「宇宙実験からイノベーションを」。ElevationSpaceの小林です。よろしくお願いします。
早速ですが、これは何の画像か、ご存知でしょうか?
高度約400kmにあり、宇宙飛行士が滞在し、さまざまな実験や研究が行われています。
宇宙空間が創薬に利用されている
具体的には、乳がんの薬作りが宇宙を使って行われていることを、ご存知でしょうか?
▶「きぼう」実験からの社会貢献(JAXA)
では、なぜ宇宙を使って、そういった取り組みがされているのか。
それは、宇宙にしかない「無重力」という環境に特徴があるからです。
この無重力という環境では、対流が発生しません。
薬を作るためには、非常に高品質な結晶を作る必要がありますが、地球上では重力の影響によってそれができません。
一方、宇宙空間では重力がないために理想的な結晶を作ることができ、それによって薬作りに貢献することができます。
▶きれいな結晶でAI創薬の精度向上、たんぱく質をわざわざ宇宙に運ぶワケ(日経XTECH)
それ以外にも、さまざまな利用が宇宙を使って、地球上に応用することが可能です。
国際宇宙ステーション利用のハードル
しかし、この国際宇宙ステーションには、さまざまな課題があります。
1つ目に、利用できる国が非常に限られています。
日本のような国は利用できますが、特に新興国などは利用する機会がほとんどないのが現状です。
2つ目に、利用できる日本のような国であっても、人がいる宇宙ステーションでは非常に厳しい安全基準があるために、簡単に利用できないという課題があります。
つまり、時間もコストもかかってしまう、そんな課題があります。
3つ目に、実は今ある宇宙ステーションは、寿命の関係から2030年頃に運用が終了するといわれています。
▶ISS運用期限、2030年まで6年間延長…NASA表明 2022/01/01(読売新聞オンライン)
小型人工衛星を使った実験プラットフォームを開発
そこで私たちは、人がいる宇宙ステーションではなく、無人の小型人工衛星を使って、宇宙ステーションで行われている実験などを実現するプラットフォーム「ELS-R」を開発しています。
「ELS-R」のサービスの流れですが、ユーザーが宇宙で実験したいものなどを、私たちの人工衛星に乗せて打ち上げます。
人工衛星が地球の軌道上を回っている間に、無人で実験などのオペレーションを行います。
オペレーション終了後に、人工衛星が宇宙から地球に帰還し、海に着水した人工衛星を船で回収してユーザーにお渡しする、これが私たちのサービスです。
サービスのコアとなる「大気圏再突入技術」
このサービスにおいて、通常の人工衛星と大きく違うところがあります。
それは、人工衛星が宇宙から地球に戻ってくる「大気圏再突入」という技術です。
大気圏再突入を実現するためには、燃え尽きないための耐熱材料の技術、さらには狙った場所に正確に落とすコントロールの技術、また宇宙から地球に戻ってくるための高性能なエンジンの技術など、さまざまな技術が必要となってきます。
そして、実はこの再突入技術は、日本が非常に強みを持っている部分です。
「はやぶさ」は皆さんご存知だと思いますが、世界的にも非常に有名なプロジェクトです。
世界的にもほとんど実証されていない技術である一方で、JAXAでこれまで数多くの実証がされています。
人工衛星、再突入技術で高い優位性
ただ、日本の民間企業で、この技術を持っているプレイヤーはいません。
では、なぜ私たちはこれをできるのか。
まず1つは、私たちは東北大学発ベンチャーで、共同創業者、CTOの桒原 聡文先生の研究室では、これまで15機以上の人工衛星を開発してきた実績があります。
▶桒原研究室へようこそ!(東北大学)
通常は人工衛星を作るところにまずハードルがありますが、私たちはそこはすでにクリアしているため、最初からプラスアルファの再突入技術に挑戦できます。
また、この再突入技術に関しても、技術顧問の渡邉 泰秀先生という方がいます。
渡邉先生はJAXAで30年ほど研究開発をしていて、とくに再突入技術の研究開発・実証をリードしていた、国内で最も知見を持っている先生です。
▶JAXAにて再突入技術開発を主導してきた渡邉泰秀氏がElevationSpaceの技術顧問に就任
それに加えて、東北大学やその他民間企業との連携を通じ、私たちは国内で最先端の再突入技術に関する知見を持っています。
この知見を使い、2023年に打ち上げる人工衛星をまず開発しています。
この人工衛星で再突入技術を実証し、次のステップで大型のサービス機を開発し、2026年からのサービス化を目指しています。
より安く、より頻回に利用機会を提供
サービスの優位性という観点では、従来の国際宇宙ステーションは、非常に大型の有人プラットフォームですが、私たちのサービスは、小型の人工衛星を使った無人のものです。
そのため、より安く、具体的には数百万円台で、そして年に6回以上利用が可能、さらには高頻度でより気軽に利用できる、そういったプラットフォームを作ることが可能です。
それによって、ターゲットになる分野も非常に幅広くなります。
従来のアカデミアの研究だけではなく、冒頭でも述べた創薬のような応用研究から宇宙空間での新規材料の開発、さらには人が宇宙で生活する、宇宙に行くために必要なありとあらゆる実験や技術実証などを、人工衛星の中で気軽に行うことができます。
実際に最初の人工衛星では、ユーグレナ社が実験をすることが決まっています。
将来的に人が宇宙で生活するときの食料源として、ミドリムシを活用できるのではないか。
そこに向けた基礎的な実験となっています。
▶ElevationSpaceが微細藻類ユーグレナの宇宙培養を目指し共創を開始(PR TIMES)
人生を変えた「宇宙建築」との出会い
最後に、なぜ私自身がこの事業に取り組んでいるのかを、ご説明させてください。
実は私自身のバックグラウンドは、「建築学」でした。
「宇宙」ではなかったのです。
19歳当時、建築を学んでいた私は、「宇宙建築」という言葉を初めて目にしました。
ここから私自身は宇宙建築という分野に没頭し、自分自身の人生が変わりました。
宇宙建築とは、簡単に言うと月面基地や宇宙ホテルなどの地球外に建てる建築物のことです。
この分野に没頭し、日本1位や世界2位などを、有難いことにいただいています。
▶「火星で雪合戦」を提案-国際コンペで本学の学生チームが第2位を受賞しました(東北大学)
そして、どうやって宇宙建築を実現していくのか考えていたときに、共同創業者の桒原先生と出会い、株式会社ElevationSpaceを立ち上げました。
そのため、私たちがやりたいことは、小型の人工衛星を作ることではないのです。
もっとその先の、人が宇宙に行く、人が宇宙で生活する、そういった世界を本当に作っていきたいと考えています。
2030年代に日本初の宇宙ホテルを
具体的には、2030年代に日本初の宇宙ホテルを作ります。
では、なぜこれが再突入技術と連動してくるのか? そう感じるかもしれません。
宇宙から地球に戻ってくる技術は、人が宇宙に行く、人が宇宙で生活するためには欠かせません。
なぜなら、人が宇宙に行って帰ってこないというのは、あり得ないからです。
そのため、まず私たちは宇宙に行って帰ってくる再突入技術から始めています。
そして、これらを通して、私たちは誰もが宇宙で生活できる世界を創り、人の未来を豊かにしていきます。
ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/小林 弘美