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匠の心と技で、飛騨の木工産業の次の100年を目指す「飛騨産業」(ICC FUKUOKA 2023)

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ICC FUKUOKA 2023 クラフテッド・カタパルトに登壇いただいた、飛驒産業の岡田 明子さんのプレゼンテーション動画【匠の心と技で、飛騨の木工産業の次の100年を目指す「飛騨産業」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください

本セッションのオフィシャルサポーターはMakuakeです。

【速報】父から受け継いだ育てる漁業で、こどもたちの未来に食をつなぐ「Firesh®」(ふく成)がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2023)


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けてSponsored by Makuake

岡田 明子
飛驒産業株式会社
代表取締役社長
HP

岐阜県高山市生まれ。南山大学外国語学部卒業。 2011年飛驒産業株式会社に入社。2020年の創業100周年を機に、自社の方向性を定めたいという想いからブランディングプロジェクトを立ち上げ、企業理念の言語化・体系化を牽引した。2021年12月、代表取締役社長に就任。


岡田 明子さん こんにちは、家具メーカー飛驒産業の岡田 明子と申します。

早速ですが、スライドの写真は岐阜県高山市にある、私たちの工場を空撮したものです。

このように、山々に囲まれた場所で日々、生産活動を行っております。

本日は、「飛驒産業  次の100年」と題しまして、我々の企業理念についてお話しさせていただきます。

我々は1920年に創業し、2020年に100周年を迎えました。

私は、1年前に社長に就任した9代目となります。

創業から、主に木製の家具を作り続けており、最近では森林資源を適切に活用するため、樹液による製品開発も手がけています。

飛騨に受け継がれる豊かな森林資源と木材加工技術

まず、創業の地である飛騨についてご説明いたします。

飛騨は岐阜県北部に位置し、本州のちょうど真ん中あたりにあります。

高山市、飛騨市、白川村、下呂市の3市1町村を合わせて、飛騨地方と呼ばれます。

観光地として有名で、コロナ禍以前は年間500万人が高山市を訪れていました。

戦国時代に基盤が築かれた古い町並み、近隣にはユネスコの世界遺産に認定された白川郷、美味しいお酒や飛騨牛などの食も人気の理由の一つです。

しかしもう一つ、縄文時代から脈々と受け継がれる魅力があります。

豊かな森林資源と木材加工技術です。

縄文時代からと申し上げましたが、ここからダイジェストで、飛騨における木材加工の歴史をご紹介します。

実は飛騨には、縄文遺跡がたくさんあります。

スライドの右にある新聞記事には、飛騨地方では、すこぶる硬い石器が出土されており、その石器で豊富な木々を切り倒し、加工する高い技術があったと書かれています。

養老令から分かる飛騨の匠の技術力

そんな場所に、「飛騨の匠」という言葉が生まれます。

優れた木工技術集団を指す言葉です。

飛騨の匠の存在が、現存する資料に初めて現れたのは、今からおよそ1300年前のこと。

奈良時代に制定された養老令という法令には、飛騨国から木工技術者を派遣する見返りとして、税の一部を免除するという記載もあります。

この頃、奈良の都では、宮殿や寺社仏閣が盛んに建造されておりましたが、その技術を担う人材が不足し、飛騨の人材に白羽の矢が立てられたと言われています。

飛騨の匠の足跡は、当時の都、編纂された資料に多く残っています。

唐招提寺や平城京朱雀門は、飛騨の匠の仕事と言われており、万葉集にも飛騨人が真摯に木工に向き合っていたことが分かる歌が残っています。

飛騨の匠制度は、平安末期まで約500年に渡って続けられました。

飛騨匠の技・こころ -木とともに,今に引き継ぐ1300年- STORY #029(文化庁 日本遺産ポータルサイト)

飛騨の木工文化の粋を集めた高山祭屋台

江戸時代まで飛びます。

飛騨は、江戸幕府直轄の天領となりました。

力をつけた商人は旦那衆と呼ばれ、彼らが競って制作した祭屋台が、今も春と秋に行われる高山祭を彩っています。

高山の祭屋台(高山屋台保存会)

木造の屋台には豪華絢爛な彫刻が施され、ここからも飛騨の木工技術の高さをうかがい知ることができます。

曲木技術が伝わり木工産業が集積

そして、時代は大正。

豊富な森林資源と木材加工技術が育まれた場所に、ヨーロッパから曲木と呼ばれる最新技術が伝わり、飛驒産業の前身である中央木工が誕生しました。

技を磨く 技術の研鑽と発展 曲木(飛驒産業)

曲木は、棒または板状の木材を蒸してやわらかくし、金型に沿って圧を加えながら曲げていく技術です。

こうすることによって、木の塊から曲線を削り出す手間や材料の無駄を省き、また曲線には繊維がしっかり通っているため、強度の高い椅子が量産できるということになります。

こちらは弊社を代表する製品の一つ、柳 宗理がデザインをしたアームチェアです。

YANAGI COLLECTION アームチェア – 飛騨の家具、国産家具(飛驒産業)

左右のアームから背板につながる大胆な曲線が魅力ですが、この曲線が一体どのように作られているのか動画でご覧ください。

そんな曲木の技術をベースとして当社が創業した後、飛騨には木材加工を行う会社が数多く誕生していきました。

現在、飛騨木工連合会の組合員数は22事業者、これほど木工産業が集積した場所は日本でも珍しいと言えます。

創業100年、新たな企業理念を作り上げる

創業から100年、紆余曲折のあった当社の歴史ですが、ここ20年では様々な活動、事業を展開しています。

不要と言われた木の節や針葉樹の杉を活用した家具作り、一流の職人を育成するための職人学校(飛騨職人学舎)、森林の恵み全てを使い切るための研究所(きつつき森の研究所)。

意義のあることを実行していると自負しておりましたが、とある機会に、これが世の中に伝わりきっていないことは、もったいないのではないかというご指摘を頂きました。

そして、それは私が父から事業を継承するタイミングでもありました。

そこで、我々が目指すところを世の中に伝わりやすく言語化しようと、社内チームを組んで、企業理念策定プロジェクトを開始しました。

こちらが、1年半かかって作り上げた、ビジョンにあたるものです。

「匠の心と技をもって 飛騨を木工の聖地とする」。

飛騨における木工の文化と歴史を引き受け、さらなる価値を生み出す場所にするという決意です。

木工と言えば飛騨と呼ばれ、世界中から注目される場所にする、それが私たちの志です。

企業理念に合わせて、ロゴも一新しました。

50年間使い続けたキツツキのマークを変えることについては、関係者から猛反発を受けました。

しかし、「飛騨を木工の聖地にする」にふさわしいロゴにするため、思い切り変更をしました。

そして、たくさん手がけていた事業や思いも、整理して言語化できました。

「人を想う」「時を継ぐ」「技を磨く」「森と歩む」

我々は今後も、この4つの価値観を軸に事業展開を行ってまいります。

気軽に立ち寄れるショールームにリニューアル

さて、企業理念実現のための第一歩が、2022年10月末にリニューアルオープンをした高山の旗艦店「HIDA 森と暮らしの編集室」です。

年間500万人訪れる観光客が必ず寄りたくなる場所を目指して、お店のコンテンツを考えました。

従来、入りづらいと言われていた家具のショールームのイメージを一新すべく、誰もが気軽に立ち寄れるカフェを併設しています。

コーヒーをテイクアウトしていただければ、館内のどの椅子にかけて楽しんでいただくのもOKとしています。

当社ゆかりの作家の作品を集めたクラフトマーケット、様々な国産樹木の香りを楽しんでいただける「森の香りの研究所」、さらに歴史を知っていただくためのコーナーもあります。

結果、高山店への来店者数は半期で昨対150%となりました。

新たな企業理念のもと、次なる100年へ走り出しました。

ぜひ木工の聖地・飛騨へお越しいただき、匠の心と技をご体感ください。

お待ちしています。

ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成

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