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ICC KYOTO 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇いただき、見事優勝に輝いた、グッドバトン園田 正樹さんのプレゼンテーション動画【地域の子育て支援の専門家と家族をつなげる「グッドバトン」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
▶病児保育室の24時間スマホ予約により、子育てを社会全体で支援する「グッドバトン」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2023)
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
園田 正樹
グッドバトン
代表取締役
HP | X(旧Twitter)あずかるこちゃん/masaki sonoda
新潟県糸魚川出身、佐賀大学医学部卒業後、東京大学産婦人科学教室に入局。現在、医師15年目。 安心して産み育てられる社会を目指し、2017年にConnected Industriesを創業。2023年には株式会社グッドバトンへと社名を変更。 2020年には病児保育支援システム「あずかるこちゃん」をリリースし、現在、横須賀市をはじめ7市に導入。2021年大分県に導入し、県内すべての施設の空き状況の見える化を実現。システムの全国展開を進めている。 その他、こども家庭庁の根拠法となる成育基本法の基本方針を考える成育医療等協議会委員委員や健やか親子21幹事などを歴任。同時に、病児保育の研究と政策提言にも取り組んでいる。
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園田 正樹さん こんにちは、グッドバトンの園田です。
よろしくお願いします。
子どもとお産が大好きな産婦人科医です。
話を聞く中で知った母親たちの困りごと
わたしが、医師として感じていた課題は「産後うつ」や「虐待」です。
では、自分に何ができるのか。
お母さんたちに話を聞くと、「子どもの風邪のような軽い病気によって仕事に穴をあけてしまう、そんなことが続いた結果、仕事を辞めてしまった」――そのような方々に出会いました。
調査結果を見ても、働くお母さんが最も困ることは、「子どもの急病時の仕事の調整」です。
▶女性の仕事と子育てに関する調査(地方経済総合研究所)
病児保育とは
こういった子どもを「病児」と言いますが、保育園では預かってくれません。
病児を一時保育してくれるのが、病児保育施設です。
半数は医療機関に、4割は保育園に併設された、保健室が2~3部屋ある、そういった場所をイメージしてみてください。
▶病児・病後児保育の実態把握と質向上に関する研究(厚生労働科学研究成果データベース)
こちらが、実際の風景です。
1人の看護師が、2人の子どものケアと保育をしている場面です。
病児保育施設の利用が少ない理由
病児保育は、本当にすばらしい事業ですが、課題があります。
あまり利用されていません。
理由は、使いづらいからです。
こちらは病児保育のフローですが、多くの紙書類が存在し、今でも8割の施設が電話で予約対応されています。
病児保育施設の予約・空き状況把握がLINEでできる「あずかるこちゃん」
この“使いづらい”を、私たちは、「あずかるこちゃん」というサービスで解決します。
システムの導入により、事前登録はオンラインで可能となり、空き状況はリアルタイムに「見える化」されます。
「今日、仕事に行けるのか」――そんな必死な状況の中、30分も電話がつながらない、そんなことは、もう起こりません。
こちらが、実際の画面です。
多くのユーザーは、このように、LINEから「あずかるこちゃん」にアクセスして、空き状況を確認しながら施設を選択し、予約申し込みに進みます。
保護者からは、「電話しなくてよくなり、よかった」――そういったお声をいただいています。
病児保育施設の約6割が赤字
病児保育は、約2,000~2,500円/日と、安価に利用できる市区町村事業で、国と都道府県が交付金で補助しています。
交付金のメインは、利用人数に応じた、加算分です。
現状、6割の施設が赤字で、毎年、数十施設が閉室しています。
▶病児保育事業の現状のまとめ(厚生労働省)
利用人数が増えることで、この課題も解決できます。
ユーザー無料のビジネスモデル
ビジネスモデルです。
ユーザーの利用料は無料、施設から初期導入費とシステム運用料を頂きます。
現在、導入施設の8割がこの「施設プラン」です。
今後、私たちは、市区町村への導入を推進していきます。
市区町村からの「初期導入費」「システム利用料」に加えて、施設数分の料金をいただきます。
鹿児島市の9施設で利用率が約2割増加
導入事例をご紹介します。
昨年(2022年)10月に導入された鹿児島市では、市内に病児保育施設が9施設ありました。
導入時に、登録用紙を廃止し、運用ルールを市内で統一しました。
市に管理画面を提供することで、これまで行われていた、利用した子どもの個人情報をメールで送る必要がなくなりました。
こちらは、鹿児島市の実際の利用画面です。
市が導入することで、特定の施設に予約が集中することなく、平準化が実現できました。
効果です。
導入前に約3割だった利用率は、5割を超えました。
導入から1年が経ちましたが、前年度と比較すると、約3,500件の増加です。
これは、現在9施設ある鹿児島市において、新しく5施設を造ったのと同程度の効果です。
現在、「あずかるこちゃん」は8市1県に導入いただいており、大分県とは連携協定を締結しました。
▶大分県とConnected Industries(株)が連携協定を締結病児保育の推進に向け、広域化・ICT化・情報発信等も実施 (PR TIMES)(※「Connected Industries」はグッドバトンの旧社名)
また、大分県内すべての施設が利用できる、広域受入とシステム導入を実現しています。
トラクションです。
179施設が導入、累積予約数は26万件を超えました。
今期の売上見込は、1億3,000万円です。
病児保育の認知不足という課題
では、「あずかるこちゃん」のシステムだけで、病児保育の課題を解決できるのでしょうか。
答えは、「NO」です。
まず、認知不足の課題があります。
子どもを持つ就労女性に聞いたところ、病児保育の利用経験がある方はたったの12%、利用経験がない方に聞くと、病児保育をあまり知らないという方が75%でした。
そこで、私たちは、システム導入に加えて、ポスターやリーフレット、市長会見やメディアリレーション(※) を通じて、病児保育の広報支援を行っています。
▶編集注:メディアリレーションとは、企業がメディア(新聞、テレビ、ラジオ、雑誌、ネット媒体)と良好な関係を構築・維持する取り組みのこと。
病児保育の広域受入を政策提言
また、病児保育は、市区町村事業であるため、原則、市外居住者は利用できません。
全国に1,700ある自治体のうち、800自治体では病児保育施設が1つもありません。
誰もが病児保育を利用できるように、「病児保育広域受入ガイドライン2022」を学会の先生方と作成し、政策提言を行ってきました。
利用者増加で新たな課題も
「あずかるこちゃん」導入によって、新たな課題も生まれてきました。
今年度、さらに予約が増加したことで、満室となり、お断り件数が増加してきたのです。
鹿児島市内の9施設だけでも、6か月で1,500件を超えるお断りです。
平均すると、毎日10件以上もお断りしていることになります。
私たちの次の挑戦は、適切な施設数を、自治体に提案し、実現していくことです。
「あずかるこちゃん」によって、ニーズは「顕在化」し、これまで測定されてこなかった、お断り件数が「見える化」されました。
保育園に通っている子どもの病欠日数など、各データから試算すると、潜在ニーズは、年間1,500万件、現在の利用件数の20倍以上です。
全国に病児保育施設は約1,800施設ありますが、今後の少子化を考慮しても、その3倍以上である6,000施設が、本当は必要です。
これを実現するためには、データとみなさんの声・応援が必要です。
ぜひ、お願いいたします。
社会全体で子育てをする新時代へ
最後に、わたしの想いを聞いてください。
現在、医学部に通う妻と、1歳になる娘と生活しています。
子どもが大好きなわたしにとって、子育ては本当に楽しい、ただ、同時に、とても大変です。
正直、仕事と育児の両立は、無理ではないかと考えてしまう自分もいます。
みなさんも、ギリギリの状態で踏ん張りながら、子育てしてきたのではないでしょうか。
家族だけで子育てを頑張る、そういった時代は、もう終わりにして「社会全体で子育て」をする、そんな新しい時代をみんなで作りましょう。
地域には、子育て支援をしたい専門家がいて、その支援を受けたい家族がいます。
でも、うまくつながれていません。
そんな子育て支援の課題解決に、今後さらに取り組んでいきます。
今年(2023年)の冬には、「あずかるこちゃん産後ケア」の実証実験を開始します。
▶産後ケアへつなぐためのサービスをつくりたい!あずかるこちゃんの挑戦(READYFOR)
私たちグッドバトンは、妊娠期からの切れ目ない子育て支援を実現するために、あらゆる支援や人、世代をスムーズにつなぐ、そんなバトンになります。
応援、よろしくお願いいたします。
(終)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/中村 瑠李子