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ICC KYOTO 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇いただき3位に入賞した、eboard中村 孝一さんのプレゼンテーション動画【学校での勉強が難しい子どもに今すぐ届く無料オンライン教材で、学びをあきらめない社会を目指す「eboard」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
中村 孝一
NPO法人eboard
代表理事
HP | X(旧Twitter)NPO法人eboard(いーぼーど):学びをあきらめない/中村孝一:NPO法人eboard代表理事
大阪大学在学時、学習塾や学習支援現場での経験から、子ども達の学習課題を痛感。大学卒業後、アクセンチュア株式会社を経て、2013年にNPO法人eboardを設立。立ち上げ時には、自ら2,000本以上の映像授業を撮影し、ICT教材eboardのシステム開発をおこなってきた。2016年、世界経済フォーラムGlobal Shapers Osakaハブメンバーに選出。ICT教材eboardの取り組みは、日本e-Learningアワード文部科学大臣賞、社会課題の解決を支えるICTサービス大賞「社会課題解決部門」部門賞、ジャパンSDGsアワードSDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞など、多くの賞を受賞している。
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中村 孝一さん 皆さん、こんにちは。
NPO法人eboard(イーボード)代表理事の中村です。
私たちは、無料で使える小中学生向けの学習サービスを、10年間、運営してきました。
これまでの利用者数は、700万人以上に上ります。
私の原体験は、学生時代の塾やボランティアでの講師経験です。
大学を卒業した後は、コンサルティング会社のアクセンチュアに就職しましたが、どうしても現場での経験が忘れられず、1年ほどで退職し、この活動をスタートしました。
教育現場の現状
本日は、まず、皆さんに、今の教育現場の状況について、ご理解いただきたいと思っています。
中学校3年生、30人の学級を想像していただけますでしょうか。
先ほど、原体験が塾とお話ししましたが、このクラスの中でどれほどの子が塾に通っているのでしょうか。
答えは25人です。
東京都ではなく、全国平均の人数です。
一方で、経済的な理由により、塾に通えない子もいます。
30人のうち5人が、貧困家庭に生まれます。
今、30人の話をしていますが、クラス全員が揃うことは、まずありません。
2人は不登校で学校に来ておらず、3人は学校に来ていても「学校がつらい」と感じています。
さらに3人は、発達障害等を背景に、「学習や行動面の困難」があります。
このような学校も、平成の30年の間に、6校に1校が廃校になりました。
これが、私たちが解決したい課題です。
「お金がないから」「学校に行けないから」「ここは田舎だから」「他の子と同じように学べないから」
このような理由により、学ぶことをあきらめてしまう。
それをなくしたいと考え、“学びをあきらめない社会”というビジョンを掲げて、10年間、活動を続けてきました。
パソコンやスマホを使って学べるシンプルさにこだわった教材
そんな私たちの解決策は、いたってシンプルです。
いつでも、どこでも、自由に学べる場所をインターネット上に作ることです。
もちろん勉強が苦手な子が自らアクセスして学ぶケースは、やはり多くはありませんが、学校・教育現場に届けることで、先生を通じてサポートすることができます。
「eboard」は、パソコンやスマホ、どこからでも利用することができます。
画面や機能は、あえてとてもシンプルにしています。
複雑にすると、障害や特性から、情報の選択が難しくなる子や集中できなくなる子がいるからです。
学習の流れもシンプルです。
2,000本の映像授業と、1万本のデジタルドリルによって、自分のペースで学習を進めることができます。
映像授業も、平均約8分と短く、講師も、あえて顔を出さず、親しみやすい口調で制作しています。
勉強の遅れや苦手意識から、学ぶことそのものに不安を感じている子もいるためです。
動画を見ていただいて、お気づきでしょうか、この映像授業の声の主は私です。
実は、eboardの立ち上げからこれまで、映像授業の半分以上は、私自身が制作してきました。
障害や言語、特性に配慮した字幕付き映像授業
そして、もうひとつお気づきでしょうか、「eboard」の映像授業には、国内(で義務教育課程を広く扱った映像授業)で唯一、すべて字幕がついています。
それも、単なる字幕ではなく、言葉や文の構造をわかりやすくしたものです。
▶「やさしい字幕」プロジェクト:”もうからないけれど絶対に必要なもの” を1,000人で作り上げた話(eboard)
そうすると、自動翻訳の精度が上がるからです。
そのようにすることで、聴覚障害の子だけでなく、日本語の聞き取りが難しい、海外ルーツの子も想定した、学びやすさを追求した教材となっています。
このような、障害や言語、特性に配慮した学びやすさ、また、勉強に対する不安を解消するための工夫が、「eboard」の特徴です。
毎月30万人の子どもたちが無料で利用
そして、何より最大の特徴とも言えるのが、これらすべての教材を、無料で利用できることです。
2023年現在、毎月約30万人の子どもたちに学びを届けられるようになりました。
実際に利用している子どもたちの声を、ぜひ、お聞きください。
(動画中コメント)
「学校の授業で言われてもわからなかったところを、eboardで、それも家でやるときに見たりするから、それのおかげで改めてそういうことかというのがわかる」
(手話で)「授業ではわからないまま進められてしまうことが多かったので、そのままにしてしまって困ることがたくさんありました。でもeboardなら自分のペースで勉強を進められます」
現在、ろう学校に通っている子は、全国に8,000人います。
通常学級に在籍する難聴の子も含めると、推計値ではありますが、数万人になります。
日本語支援が必要な海外ルーツの子は、全国に5万8,000人います。
(海外ルーツの子ども)「わからないところとかは、もう1回予習とか復習したりしています。動画とか見てて、結構点数も伸びたりしました」
(支援者の女性)「学校にちょっとつまづきながら少し苦手意識を持って、でも勉強をがんばりたいというお子さんにとって、eboardはものすごい強力な味方になる教材だと思います」
教材の無料提供を貫く理由
しかし、本日、こちらの会場にいらっしゃっている多くの方が、次のように思われたのではないでしょうか。
「なぜ、無料なのか?」
理由は、3つあります。
1つ目、貧困家庭に届けること。
これは想像に難くないでしょう。
2つ目、明日、現場に届けること。
想像していただきたいのです。
受験を控えた中学校3年生の担任の事例です。
ちょうどこの時期(2023年9月上旬)、2学期が始まった頃、学校に来られなくなった子をどうにかしてあげたいと考えていました。
運良くインターネットで自習できる、良い教材が見つかったけれども、お金がかかってしまうため、経済的に厳しい家庭の子に、提供できずにいました。
どうにかして使わせてあげたいと思っていたところ、運良く熱意のある校長が、これまた運良く熱意のある教育委員会に掛け合ってくれ、予算化されることになりました。
しかし、現場に届くのは2年後――次のICT機器の入札のタイミングなのです。
これは、珍しいことではなく、よくある話なのです。
教材を届けたかったあの子は、まだ学校にいるのでしょうか?
1人からでも、1クラスからでも、先生や支援者を起点にして、現場にすぐに届ける――これが、無料である2つ目の理由です。
そして最後、3つ目、少数派の子に届けること。
なぜ、これほど多くの映像授業が、何年、何十年も前からありながら、字幕はなかったのでしょうか。
答えは簡単です。
「儲からないから」です。
公教育の中においてすら、予算の制約から、少数派の声に対する配慮が行われないことがあります。
無料になることで初めて、配慮された選択肢が届く現場があり、届く子どもたちがいるのです。
これが、私たちが10年間、何度も何度も無理だと言われてきても、無料であることを貫いてきた理由です。
学ぶことをあきらめてほしくない
私たちのもとに、毎日のように届く声があります。
そういったメッセージの中で、私が何度も読み返すものがあります。
障害のある子のお母さんからです。
「読み書きの障害、ディスレクシア(※) のある息子は、以前の学校では理解が得られず、不登校を選択していました。けれども、eboardのおかげで、『大丈夫』と自信を失わずにいられました」
▶編集注:ディスレクシアとは、学習障害のひとつのタイプとされ、全体的な発達には遅れはないのに文字の読み書きに限定した困難があり、そのことによって学業不振が現れたり、二次的な学校不適応などが生じる疾患(国立成育医療研究センター「ディスレクシア」参照)。
そう言ってもらえて嬉しい。けれども、おかしい。
大人が、社会が義務だという教育、それが大丈夫じゃない社会って、一体どんな社会なのでしょうか!?
ただ、子どもたちに「僕も、私も、学べるんだ」と思ってほしいのです。
大丈夫だと、子どもたちに思ってほしいのです。
あきらめてほしくない。
その想いで、10年間、ひたすらに取り組んできた活動です。
“学びをあきらめない社会”の実現に向けてぜひ応援を
寄付で活動を支えてくださる方がいます。
ビジネスとして、ともに、子どもたちに学びを届けてくださる方がいます。
どのような形でも構いません。
私たちの活動に、そして、全国で学ぶ子どもたちに、何より“学びをあきらめない社会”というビジョンに、応援のほど、よろしくお願いいたします。
ご清聴ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/中村 瑠李子