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ICC KYOTO 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇いただき同率5位に入賞した、ウィーズ光本 歩さんのプレゼンテーション動画【生い立ちで生まれた負の感情を癒やし、応援して伴走する人がいることを伝える「ウィーズ」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
▶病児保育室の24時間スマホ予約により、子育てを社会全体で支援する「グッドバトン」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2023)
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
光本 歩
特定非営利活動法人ウィーズ
理事長
HP | X(旧Twitter)
特定非営利活動法人ウィーズ理事長。コールセンター管理・学習塾経営をおこないながら、家庭環境に悩む子どもたちを支援する活動を2009年より継続。2016年に法人化し、家庭不和や虐待に関する講師業・執筆業・メディア出演が多数ある。2022年チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞受賞。
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光本 歩さん 皆さん、これらの事件を覚えていらっしゃいますでしょうか。
いずれも、メディアで大きく取り上げられた、悲しい事件です。
これらの事件の犯人たちは、親や家庭環境のせいで、自分が思うような道を選べなかったと感じていました。
幸福度を決める「自己決定度」
もちろん、家庭や親の問題だけが、すべてではないでしょう。
しかし、自分のルーツの歪みは、人生に大きな影響を与えます。
それは、「自分で自分の人生の選択や決定をすること」が、学歴や所得以上に、人の幸福感につながるにもかかわらず、家庭環境によって、子どもの自己決定が難しくなることがあるからです。
▶幸福感と自己決定―日本における実証研究(経済産業研究所)
例えば、親の離婚、面前DVや虐待、子どもの貧困、育児放棄、ほかの家庭は幸せそうなのに、自分の家庭は違う、誰かに甘えたい、頼りたいのに頼れる人が誰もいない、自分には生きている価値がないのではないか、そのような歪みが、子どもたちから人生の選択肢やエネルギーを奪っていきます。
私たちは、犠牲を生まない社会づくりのために、家庭が安住の地ではなく、しんどさを抱えている子どもたちや、しんどさを抱えて育った、かつての子どもである親や大人たちを支援しています。
教師になる夢を持ち、楽しく学んでいた生活が一変
私自身も、子ども時代に家庭環境に悩んだ当事者でした。
年の離れた妹がいた私は、小学生の頃から、学校の先生になりたいと思っていました。
卒業文集にも、その思いを書き記しています。
この頃は、勉強も、スポーツも、学ぶことがとにかく楽しかったです。
普通に、中学校、高校、大学へと進学して、教員免許を取る、そう思い描いていました。
しかし、親の離婚が、状況を一変させました。
母が父に内緒で多額の借金をし、電気やガスが頻繁に止まる、中学校1年生の時は、そのような日々でした。
この頃の写真は、まったくありません。
夜逃げで居所不明児童生徒に
私と父、そして、妹は、生まれ育った大阪府から静岡県へ夜逃げをしました。
私と妹は、「居所不明児童生徒」になりました。
2019年の国の実態調査では、18歳未満の子どもを調べると、全国に1万5,270人いると言われています。
この実態を踏まえると、「学べること」は、義務教育のある日本でも、当たり前ではなくなります。
家庭が崩壊し、友達にさようならも言えず、当時の私は生きる意味がないと思うようになりました。
夢に伴走してくれた高校の恩師
高校へは、かろうじて進学することができました。
私のみ住民票を移す手続きをすることと、学費を自分で稼ぐことが条件でした。
この進学が、私の転機となりました。
偶然にも担任が、私と同じく親の離婚を経験して、それを乗り越えて先生になった女性でした。
高校受験の面接でも、学校の先生になりたいと述べた私は、入学後すぐ、彼女に呼び出されました。
夜逃げをしたため、現住所に住民票を移していない親を持つ私に、「奨学金の審査は難しいため、独自に特待制度を持っている大学を目指して高校3年間を頑張るように」と言ってくださったのです。
あわせて、先生は、具体的な指針も示してくれました。
こちらが、実際に一緒に立てた計画です。
先生は「頑張れ」と言うだけでなく、勉強を教えてくれたり、バイト先に遊びに来てくれたり、文字どおり伴走してくださいました。
結果、私は、無事に特待生として、大学に合格することができました。
「さあ、これでやっと夢を叶えられそう」――そう思いましたが、実は、たった2か月で大学中退を選択しています。
入学後すぐ、父が入院したという連絡がありました。
当時、中学校1年生だった妹は、バスケットボール部への入部を希望していました。
当然、一人親の父が働けなくなれば、妹は、お金のかかる運動部への入部は厳しいです。
悲しみの中、思い浮かんだ第3の選択
心が痛み、悩んだ私には、第3の選択肢が思い浮かびました。
私は、あの時の先生のように、子どもの伴走者でありたい、でも、学校の先生にならずとも伴走はできると思ったのです。
私は妹と暮らしながら働き、1年間は資金を貯めて、19歳の時にマンションの一室で学習支援塾を立ち上げました。
これが、今の活動の原点です。
私は、先生のおかげで、自分で自分の人生を決めることができるようになったのです。
1人で始めた活動が90名の仲間、8,000名超の子どもに届く
そして、1人で学習支援塾を立ち上げた私は、子どもの相談対応や家庭訪問も始めました。
離婚に関する民法の改正もあった2012年には、両親の離婚後の親子の交流支援や子どもの声を代弁して発信する活動も、当事者の仲間と行うようになりました。
そして、2016年、ウィーズをNPO法人として立ち上げ、アウトリーチを兼ねて、LINE相談事業に着手しました。
コロナ禍、LINEだけでは救えない子どもたちに、事務所以外の拠点として、「みちくさハウス」という施設を立ち上げ、緊急の生活支援や教育機会の創出も行うようになりました。
現在の拠点は3拠点となり、収益事業として支援者養成講座を行いながら、子どものより身近にいる大人が迅速に、かつ適切に関われるよう、取り組んでいます。
1人で始めた活動は、現在、90名の仲間に恵まれ、対応した子どもの数は8,000名を超えました。
生い立ちから生まれた負の感情の影響は一生涯続く
私たちの活動は、生い立ちによって生じた負の感情を癒やすことを目的としています。
逆境的な子ども時代の体験について研究した、欧米のACEs(※) 研究では、こちらにある10個の体験を複数経験している人は、そうでない人と比較して、自殺未遂は12倍、アルコール中毒は7.4倍、学習や行動の問題は32.6倍という結果が出ています。
▶編集注:ACEs(エーシーズ)とは、Adverse Childhood Experiencesの略称で、逆境的小児期体験と訳される、8歳未満で遭遇した心的外傷を引き起こす可能性のある体験のこと。
▶参考:「子ども時代の逆境的体験 (ACEs)」と貧困(学術の動向)
このような影響は、いつまで続くと思いますか?
なんと、ケアされなければ、一生涯(寿命まで)続いてしまうのです。
これが、私たちが、子どもたちだけでなく、“かつての”子どもだった大人にも対象を広げて活動している理由です。
皆さんの周りにいるパートナー、同僚、ご友人で、生きづらさを抱えている人は、いないでしょうか?
もしかすると、子ども時代に、このような体験をお持ちの方かもしれません。
生い立ちに歪みを抱えて育った芸能人の自殺報道に接したこともあると思います。
「あれほど応援してくれる人もいて、あれほどキラキラしているのに」と思いませんか?
それでも癒されていない傷は、ふとした瞬間に希望の光を消してしまう時があるのです。
一度、希望を見失った私が、学び、創る側に回ることができたのは、人の力のおかげです。
私は、運よく、出会いに恵まれました。
もし運が悪かったら、どうなっていたでしょうか。
子どもの居場所となる安全基地作りを計画
私は、生い立ちが犠牲を生まないよう、すべての子どもの隣に、ともに今よりもよい未来を創ることができると思える人がいてほしい。
そのために、私たちは新たなチャレンジをしています。
来月(2023年10月)より、全国から24時間アクセスできる、メタバース上の居場所を作ります。
▶オンラインみちくさハウス(Cluster)
家庭の悩みは言いづらいことですが、仮想空間であるメタバースでやり取りすることで、たとえ相談を言語化するエネルギーがなくても、他者の悩みに触れながら、悩みを抱えているのは自分だけではないと思える場所にしていきます。
そして、メタバースで繋がった、緊急性の高い子どもたちのもとに、私たちのほうからキャンピングカーで向かい、安心・安全を確保したうえで、次の一歩をともに考える活動を、全国に増えつつある支援員の力を結集させて行います。
皆さん、こちらのキャンピングカーを、ぜひ、ともに走らせませんか。
様々な支援方法があります。
ぜひ、検討してください。
▶寄付する(NPO法人ウィーズ)
子どもへ明日への希望を
今、子どもたちにとって、目の前にいる大人は信じられる存在ではないかもしれません。
しかし、皆さんと一緒に取り組むことで、応援して伴走してくれる大人は、あなたにも必ずいるのだということを、私は子どもたちに伝えたいと思っています。
そのことが、子どもたちにとって、明日を生きる希望になると信じています。
力を貸してくださる方は、こちらのQRコードからウィーズの公式LINEにアクセスしてください。
子どもたちの現状や、今、必要な助けを、発信しています。
伴走された子どもたちが大人になり、かつての子どもとして、また誰かの力になっていく。
そして、私たちのような活動が必要ではなくなる、そのような優しくしなやかな社会を、一緒に創りましょう。
応援をよろしくお願いします。
ご清聴ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/星野 由香里/正能 由佳/中村 瑠李子/戸田 秀成