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“シワになりにくく、軽く、快適なニット”を独自編機で生み出す「丸和ニット」(ICC KYOTO 2023)

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ICC KYOTO 2023 クラフテッド・カタパルトに登壇した、丸和ニット辻 雄策さんのプレゼンテーション動画【“シワになりにくく、軽く、快適なニット”を独自編機で生み出す「丸和ニット」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。

【速報】商品×体験×ビジョンでお酢と地域の未来をつくる「飯尾醸造」がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2023)


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング

辻 雄策
丸和ニット
代表取締役社長
HP | X(旧Twitter)

1978年、丸編みニット産地の和歌山市で当時、丸和ニット株式会社2代目であった祖父の長男の長男として生まれる。2000年地元の和歌山大学経済学部卒。2000年青山商事株式会社入社。3代目である父の誘いで2002年、家業である丸和ニット株式会社へ入社。工場現場見習い期間を1年を経て、自社のBtoB生地販売の営業を10年経験、自社の独自編立技術による編地「Balancircular(バランサーキュラー)」の販売に力を注ぐ。2014年より総務に籍を置き、2016年に営業担当の従弟とバランサーキュラーの特長を自分達で伝えるためにファクトリーブランド「Bebrain(ビブレイン)」を立ち上げ、アパレル製品事業をBtoC向けに展開を開始。2019年11月に代表取締役社長就任。


辻 雄策さん はじめまして、丸和ニット株式会社の辻 雄策と申します。よろしくお願いします。

突然ですが、皆さん「ニット」というと、どういったものを思い浮かべられますか?

おそらくこういったセーター、Tシャツ、スウェットといったものを思い浮かべると思います。

ニットの中でも右の2つは、「丸編みニット」といわれる、よくカットソーに使われる生地を使用しています。

弊社は、この丸編みニット生地の製造工場です。

それを踏まえまして、こちらの動画をご覧いただけますでしょうか。

着たままスポーツができるぐらい動きやすい生地

動画に映っている彼が着ている服のどれが丸編みニットの生地でできているでしょうか?

答えはTシャツだけではなくて、ジャケット、パンツも弊社が作る独自のニット素材でできています。

特殊なニット素材なので、非常に軽く伸びもあり、動きやすいです。

シワにもなりにくく、アイロンがけもほぼ不要。

家庭の洗濯機で洗えて乾くのも早い。

着たままスポーツができるぐらい動きやすい。

そういったことから、アスリートとのコラボも実現しています。

【ゴルフウェア】シワにならない! 洗える! なのにキチンとして見える「あると便利な万能ジャケパン」(ゴルフへ行こうWEB by ゴルフダイジェスト)

プロスポーツ選手×ファクトリエ×日本のものづくり スペシャルコラボプロジェクト4月19日、開始 2021年4月19日(PR TIMES) 

今ちょうどお手元にサンプルが回覧されていると思いますので、ぜひ広げてご覧ください。

ちなみに今日私が着ているジャケットが250g、パンツが200gで、合わせて450gです。

おそらく皆さんがお持ちになっているタブレット端末より軽いと思います。

創業90年の歴史、90年代には量産型からの転換を計画

ではなぜ丸和ニットがこのようなアイテムを作るようになったかをご説明させてもらいます。

弊社は、戦前の昭和9年に丸編みニット産地の和歌山県で私の曽祖父が創業した、創業90年のニット生地の製造工場です。

私で4代目になります。

古くは肌着用のメリヤス生地の生産に始まって、高度成長期には国内量販向けの衣料品生地でB2Bの販路を順調に拡大してきました。

ところが90年代に入りまして、大手SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)が台頭してきて、丸編みニットの生地の生産地が海外へどんどん進出していきます。

輸入品が増えて当社も受注量が激減し、当時3代目の私の父は苦境に陥って、量産型から日本でしかできないニット生地作りへの模索を始めます。

そんな中、父はある中古の編み機と出会います。

本来ニットにはない経糸を全ての編み目に編み込む

この写真がそれですが、昭和50年代に一定台数だけ作られた編み機です。

導入したのですが編み機の構造が不安定で、生産した編み地はとても市場に出せるクオリティではなかったのです。

結局父は150万円で導入したこの中古機に2年の月日と1,000万円の改造費を投じることになりました。

私が入社したこの頃に出来上がった生地に「バランサーキュラー®︎」という名前をつけてブランディングを始めます。

なぜ2年と1,000万円も費やすことになったのか。

筒状の生地をぐるぐると螺旋状に編んでいくのが丸編みニットの生地の機械の構造ですが、バランサーキュラーはご覧のように編み機の上に「ビーム」と呼ばれる大きなボビンのようなものを設置して、本来ニットにはない経糸(たていと)を全ての編み目に編み込む構造になっていったからです。

またこの編み機には1,920本もの経糸があります。

見えますでしょうか?

20デニールといいまして、人間の髪の毛よりも細い糸を、このバランサーキュラーの経糸にするためだけに1本1本、人の手で結んでバランサーキュラーの編み機に掛けるためだけに整経(せいけん ※経糸(たていと)を整えること)させています。

そうなのです。

この編み機は昭和の機械と人間の手で作っているのです。

ここで、そもそも織物とニットの違いをご説明します。

織物は経糸と緯糸(よこいと)を交差させて作ります。

見た目はシャープなのですが、伸びがほとんどありません。

一方ニットはよく伸びるのですが、少し緩く見えてしまいます。

バランサーキュラーは先ほど申しましたように、基本ベースのニットに経糸も編み込むことで、編み×編みの唯一無二の構造になっています。

ニットのほど良い伸び感を残しながら、一見織物のように見えるシャープ感も持ち合わせているハイブリッドな生地なのです。

全く売れない、作り手からも不評だった生地に転機

とは言え、当初現場から、「なんでこんな面倒くさい機械を入れたんや」という苦情の上に、さらに全くと言っていいほど生地が売れず、評価されませんでした。

営業で駆け出しだった私も、当時それでも諦めずバランサーキュラーの生地をカバンに入れて持ち歩いていました。

そして5年ほどが過ぎ、転機が訪れます。

ある大手アパレルブランドに生地が採用されたことをきっかけに、バランサーキュラーの認知度が拡大。

海外有名メゾンにも採用されるようになったのです。

作り手目線では気づかなかったユーザー目線

バランサーキュラーのブランディングを図る中で、私は今まで世界でも弊社だけの技術、経糸も編んでいる、織物のように見えるといった作り手目線の提案をしていました。

ところがユーザーからの実際の評価は、最終的に洋服となった時にシルエットが綺麗、軽い、動きやすい、着心地がいいといったシンプルなものでした。

「機能的価値」に「情緒的価値」が加わったのです。

バランサーキュラーの生地としての評価をまとめますと、織物や従来のニットと比較して、グラフの赤色部分のように、非常にバランスが良かったのです。

自分たちの手によるアパレルブランド「Bebrain」

この自分たちでしか作れない生地で、自分たちで最終製品まで作り挑戦したいと2016年からバランサーキュラーの生地だけを使用したアパレルブランド「Bebrain」をEC販売でスタートさせます。

ブランドを立ち上げた同年、ジャパン・ベストニット・セレクションでグランプリと経済産業大臣賞、2019年にはグッドデザイン賞など、その後も複数の賞をいただきました。

ジャパン・ベストニット・セレクション2016が開催されました(日本ニット工業組合連合会)

2019グッドデザイン賞 バランサーキュラージャケット・パンツ パッカブルセットアップ(GOOD DESIGN AWARD)

自社ブランド「Bebrain」の製品の着心地もグラフのように非常にバランスが良く、冒頭の動画のジャケットパンツのように上下合わせてA4大のポーチに収納でき、持ち運びが便利で、ポーチ自体が洗濯ネットになった設計のものもあります。

そして何よりも、縫製も日本の協力工場にお願いしたMADE IN JAPANの商品なのです。

どうせ着るなら快適なものを

EC販売を中心としていったので、日本経済新聞などメディアで取り上げられるたびに、「一体どこで着られるの?」という一般ユーザーの方からのお声にお応えするため、2020年、和歌山の本社工場内にショールーム兼試着室を設けました。

一般ユーザーの方からの声をお聞きするようになってから分かったこと、それは「どうせ着るなら快適なものを着たい」ということです。

これらの意見を参考に、現在は学生服やユニフォームといった分野、それから作務衣といったアイテムまで挑戦しています。

繊維産業は世界的には成長産業。独自ニットを世界へ!

最後に、この数字。

こちらは去年の国内流通衣料品の中の輸入品の割合の数字です。

そうなんです。

日本製の製品は今やわずか1.5%しかないのです。

今現在も日本製の衣料品は年を追うごとに減少し続けています。

一方、繊維産業はこうも言われます。「世界的には成長産業」と。

コロナ禍を通じて、我々が強く思うようになったことは、「国産の丸編みニットの可能性を試したい」そして「世界的に見ても丸和ニットでしか作れないバランサーキュラーの生地で、海外のいろいろな人に知ってもらいたい」ということです。

バランサーキュラーの生地は父をはじめ、祖父、曾祖父と90年培ってきた編立技術です。

この思いを糸に繋ぎ、この独自のニットを通じて、今度は世界中の人々を快適に包み込めるようなイノベーションを起こしていきたい。

どうぞご支援、ご協力のほど、よろしくお願いします。

本日はご清聴ありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成

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