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増加する虐待相談対応をAIでサポートし、子どもを虐待から守る「AiCAN」(ICC KYOTO 2023)

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ICC KYOTO 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇した、AiCAN髙岡 昂太さんのプレゼンテーション動画【増加する虐待相談対応をAIでサポートし、子どもを虐待から守る「AiCAN」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

病児保育室の24時間スマホ予約により、子育てを社会全体で支援する「グッドバトン」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2023)


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

髙岡 昂太
AiCAN
代表取締役CEO
HP | X(旧Twitter)

教育学博士、臨床心理士、公認心理師、司法面接士。児童相談所や医療機関、司法機関において、虐待や性暴力などに対する臨床と研究開発に15年以上携わった後、産総研発スタートアップとして2020年に株式会社AiCANを設立。 大阪大(修士)、東京大(博士)、千葉大(子どものこころの発達教育研究センター特任助教)、ブリティッシュコロンビア大(日本学術振興会特別研究員PD&海外特別研究員)、産業技術総合研究所人工知能研究センター(主任研究員)を経て、現在株式会社AiCAN 代表取締役CEO。 株式会社AiCANでは「すべての子どもたちが安全な世界に変える」をビジョンに、自治体のDXを通して、児童福祉の課題解決に取り組む。


髙岡 昂太さん 児童虐待対応をテクノロジーで解決する、AiCAN(アイキャン)の髙岡です。

よろしくお願いいたします。

皆さんは「児童虐待」と聞くと、「どうにかしたい」と思うかもしれません。

ただ、「メディアで見聞きするような、凄惨なケースは、自分たちの身近にあまりない」、このように思いませんか。

「500人」という数字、これは何を表している数でしょうか。

実はこちらは、現在、この日本で、毎年虐待によって亡くなっている子どもの人数推計です。

さらに、この裏で、毎年50万件の通告がされています。

どうすれば、これを止められるでしょうか。

虐待対応に高い専門性を持つ人材育成ができていない

課題は、大きく2つあります。

1つ目は、「高い専門性を持った人材育成ができていない」ことです。

現場では、調査自体が非常に難しく、属人的な対応になっています。

なぜかと言いますと、本当は保護者が子どもを叩いているにもかかわらず、「滑り台で転んだ」などと、保護者が嘘をつくことがあるからです。

さらに、亡くなっている子どもの大半は、0〜1歳です。

この子どもたちは、まだ話すことができません。

では、学齢期の子どもたちはどうでしょうか。

「お前、言ったら殺すぞ!」などと脅されています。

保護者が怖くて、子どもたちは話すことができないのです。

こういったケースに対応する際に、経験の浅い職員の場合、「判断の質の向上」が課題です。

増大する業務に対し児童福祉司が不足

そして2つ目に、増大する業務量という課題があります。

直近20年間を振り返ると、虐待相談対応件数は約17.6倍になっているにもかかわらず、対応する児童福祉司の人数はわずか約3.7倍です。

人手が足りておらず、子どもと面会する時間も十分に取れていないのです。

業務の効率化が、不可欠です。

この課題に対して、私たちは虐待対応の現場ごとに異なる課題解決に伴走する、「AiCANサービス」を提供しています。

AiCANアプリの提供と、データに基づく研修や政策立案のご支援をしています。

ガイドに沿って調査すれば、漏れなく迅速に情報共有が可能

このサービスの特徴を、ご説明します。

業務の効率化をサポートします。

ガイドに沿ってもれなく調査し、迅速に情報共有することが可能です。

どの部位の傷か、どのような傷なのかを把握した後、どの機関に情報共有をすればよいのかがわかり、他機関との情報共有がアプリ上で行えるようになっています。

過去の対応記録をもとにAIがシミュレーション

こういったデータを蓄積していくと、判断の質の向上もサポートできます。

重篤事例を見逃さずに、必要なタイミングで適切な対応ができるようにします。

子どもや保護者の情報は、アプリに設定してあるリスク項目に沿って回答していただくことで、入力漏れを防ぎます。

それらの情報から、過去の対応記録に基づき、AIがシミュレーションします。

判断に必要な情報が、瞬時にデータで示されます。

手書きの書類作成、電話やFAXによる共有が、アプリ内で即時に完結

実際に導入や実証実験をしてくださった自治体で、共通の業務フローの変化が起こりました。

これまでの業務フローですと、通告受付の際には、電話やFAXで情報の収集や共有をしていました。

そして、手書きで書類を作成していました。

「AiCANサービス」を用いると、アプリでデータの入力や共有が完結します。

出動して調査をする際にも、これまでは個々の職員の観点で調査をし、デジタルカメラで撮影して、帰所後にSDカードで共有していました。

しかし、これ(こういった調査記録の共有)は、リアルタイムでしなければ意味がありません。

「AiCANサービス」を用いると、ガイドに沿って、客観的に情報を漏れなく集められ、また、タブレットで撮影した情報の記録を即時に共有でき、書類もその場で作成できるようになりました。

従来は、判断や対応も、職員の経験や感覚で行っていましたが、「AiCANサービス」を用いると、さらに、収集したデータを参照した対応ができるようになります。

情報共有までの時間やオーバーワークを短縮

従来の帰所してから、ようやく記録を書いていたこと、これがオーバーワークの原因でした。

「AiCANサービス」では、すでに記録ができているため、即時に次の対応に移ることができるようになりました。

実際に、ログを取ってみました。

従来の情報共有の仕組みと比べて、半分以下の時間に短縮されています。

市区町村や児童相談所へSaaSで展開

このサービスを広めるために、私たちはSaaSのビジネスモデルで現場の方々に届けています。

そして、システム利用料を頂くことで、このビジネスを広げていきます。

マーケットと虐待対応の流れです。

児童福祉法などによって、子どもの安全が疑わしい事例は、市区町村や児童相談所に通告する決まりになっています。

すなわち、関係機関の学校、保育園、病院や警察は、軽度~中程度の虐待事例の場合は市区町村に、重篤な虐待事例の場合は児童相談所に連絡します。

これらが私たちのお客様で、TAM(実現可能な最大の市場規模)としては、それぞれこの程度あります(スライド下部の金額)。

ただ、優先すべきは、今、困っている子どもに対応できる市区町村や児童相談所で、だからこそ、ここからビジネスを広げ、関係機関へと広げていきます。

ライトプラン導入の課金例です。

月額2万円のアカウント料を頂いており、児童相談所1つ当たり年間800万円程度で、市区町村1つ当たり年間300万円程度です。

現在、三重県の全6カ所の児童相談所(140名)にサービスを導入させていただいており、また、高崎市など6自治体(約130名)で実証実験を行い、導入をご検討いただいています。

虐待の負の連鎖を止めたい

しかし、なぜ私が取り組まなければいけないのでしょうか。

私は、メディアにおいて、“キレる17歳世代”と呼ばれた世代で、神戸連続児童殺傷事件

酒鬼薔薇聖斗や佐賀県で起きた西鉄バスジャック事件、さらに、秋葉原で起きたトラックによる大量殺人事件(秋葉原通り魔事件)などの犯人と同じ世代です。

これらのニュースを探っていくうちに、「もしかすると、これらの事件の加害者には、虐待を受けた過去があったのかもしれない」という報道を見聞きしました。

ただ、もちろん、虐待を受けた人たち全員が、犯罪者になるわけではありません。

むしろ、後遺症に困っている方のほうが多いのです。

いずれにせよ、虐待を止めなければ、負の連鎖につながります。

この連鎖を止めたいと思い、この事業「AiCANサービス」を始めました。

臨床心理士として15年のキャリア

では、どうすればよいのか。

理論だけでは解決できません。

実際に、私は臨床心理士として15年間児童相談所や医療機関で働き、さらに、研究者として12年間、担当者が交代しても対応できる仕組み化ができないかという研究をしました。

この2つの経験が合わさってできた仕組みが、「AiCANサービス」です。

なぜ、私たちはこれができるのかと言いますと、子ども虐待対応現場のドメイン知識を元に、開発から課題解決までワンストップで対応する専門職チームだからこそです。

実際に、国の調査研究やガイドラインも作りました。

関連特許も取得しています。

この強みをもとに、目指すソーシャルインパクトは、5年後までに全児童相談所のシェア6割を目指し、今亡くなっている虐待死推計500人の内、300人の子どもを救うことです。

児童虐待に関連する近接領域に展開

最後に、中長期的な展望について、ご説明します。

こちらは、ある自治体の建物の、よくあるフロアマップです。

1階に母子保健、2階に警察関係、3階に教育センターや発達障害支援センター、4階に子ども家庭支援センターや児童相談所、5階に障害福祉課などです。

これらの部署は、すべて、何かしらの虐待に関連があります。

これほどまでに、児童虐待に関連する近接領域があるからこそ、私たちは、「AiCANサービス」を、すべてのフロアに展開していきます。

子どもたちを虐待から守る

私たちのビジョンは、「すべての子どもたちが安全な世界に変える」ことです。

皆さんには、救える命があります。

「AiCANサービス」を、少しでも多くの自治体に導入いただき、一人でも多くの子どもたちの安全につなげていきます。

ぜひ、皆様のお力をお借りしたいですし、エンジニアや営業職の方、さらに、私たちのサービスに共感して応援してくださる方、世界で誰もまだ解決できていない、児童虐待という問題に挑戦し、一緒に世界を変えましょう!

ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/星野 由香里/正能 由佳/戸田 秀成/中村 瑠李子

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