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過疎地域の農村で75歳以上に働く場を作り、多世代で高齢化の課題を解決する「うきはの宝」(ICC KYOTO 2023)

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ICC KYOTO 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇した、うきはの宝大熊 充さんのプレゼンテーション動画【過疎地域の農村で75歳以上に働く場を作り、多世代で高齢化の課題を解決する「うきはの宝」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

病児保育室の24時間スマホ予約により、子育てを社会全体で支援する「グッドバトン」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2023)


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

大熊 充
うきはの宝
代表取締役
HP | X(旧Twitter)

うきはの宝株式会社 代表取締役 1980年生福岡県うきは市出身、経営者&デザイナー 20代にデザイン事務所を創業。その後地域の課題解決の為に何か出来ないかと 学び直しの為、2017年4月専門学校日本デザイナー学院九州校に入学して、グラフィックデザインとソーシャルデザインを学ぶ。在学中に、ソーシャルデザインからソーシャルビジネスに興味を持ち社会起業家育成のボーダレスジャパン主宰のボーダレスアカデミー二期福岡校を修了して、超高齢化の進む農村でおばあちゃんたちが働くことで「生きがい」と「収入」を得れる、75歳以上のおばあちゃんたちが働ける会社「うきはの宝株式会社」を2019年10月に設立。 2019年度福岡県庁主催の「よかとこビジネスプランコンテスト」大賞受賞。 2021年2月農林水産省主催の「INACOMEビジネスコンテスト」で日本一の最優秀賞。


大熊 充さん 皆さん、こんにちは。

うきはの宝株式会社代表取締役の大熊 充と申します。

“ばあちゃんおじさん”と呼ばれています。

75歳以上のばあちゃんたちが働くことのできる会社を作り、ばあちゃんたちに働く仕事と働く場を作り続けます。

老害という言葉が嫌い

こちらの図は、僕が10代の頃からずっとテレビなどで見せられてきた、若者の右肩にばあちゃん、左肩にじいちゃんの2人を乗せて苦しいという、社会保障の図です。

これをぶっ壊していきたいと思っています。

さらに、7年ほど前からは、“老害”という言葉が、メディアでしきりに叫ばれています。

僕は、個人的に、この言葉がたまらなく嫌いです。

老いたら害ならば、僕ら自身も年を取ると“老害”扱いされていくことになります。

とても恐ろしいことです。

このような社会になってほしくはありません。

高齢化が進む福岡県うきは市で事業に挑戦

課題も、高齢者も多い、過疎地域の農村で、多世代の協働によって、この構図をひっくり返していきたいと思っています。

ばあちゃん、そして、ばあちゃんジュニア、若者とともに、多世代で課題と課題をぶつけてチャンスを見出します。

地域の起業家として、挑戦していきます。

ビジョンは、75歳以上のばあちゃんたちに、500人分の雇用を直接的、また、間接的に創り出すことです。

事業を行っている、福岡県うきは市は、大分県との県境に位置し、山々に囲まれた中山間地です。

自然豊かな農村ですが、高齢化が進み、20年後には人口の2人に1人が高齢者となる、超高齢化地域です。

20代で約4年にわたる入院生活を経験

なぜ、僕がばあちゃんたちと働く事業を始めようと思ったのかと言いますと、高齢化が進んでいるからではありません。

20代の頃に、バイク事故を起こしてしまい、約4年間の長期入院を余儀なくされたことがきっかけでした。

あまりにも長い入院生活だったため、将来に絶望してしまい、人と話すことすらできない精神状態に陥りました。

同じく入院していたばあちゃんたちから、「あんた、どこから来たとね?」「なんで怪我したとね?」と、毎晩毎晩、質問攻めにされました。

一番聞いてほしくないことを、ストレートにぶつけてくるばあちゃんたちに対して、僕はとても質問に答えられる状態ではなかったため、1週間ほど無視し続けてしまいました。

しかしながら、ばあちゃんたちのあまりのしつこさに笑ってしまい、何年も誰とも話せなかった僕の心の壁をばあちゃんたちはよじ登ってきて、僕に笑顔を取り戻させてくれました。

その後、ばあちゃんたちの中には、病院で亡くなる方もいて、将来に絶望していた僕に、生きるということが何かを教えてくれたように感じています。

これが、僕の人生のターニングポイントになりました。

ボランティア活動で知ったばあちゃん世代の悩み

社会復帰後、そのような“ばあちゃん”という属性に対して、恩返しをしていきたいと考え、お困りごと解決として自分には何ができるかを調査するため、高齢者の無料送迎「ジーバーうきは」というボランティア活動をしながら、3,000人以上の高齢者と関わってきました。

この活動を通じて目の当たりにしたことが、ばあちゃんたちの生活困窮と孤立です。

1週間のうちに、僕としか会わない、誰ともコミュニケーションを取らないという方が、珍しくありませんでした。

そして、「国民年金の受給だけでは、月2~3万円が足りない」「生活が苦しい」と、口々におっしゃるのです。

起業で、ばあちゃんたちの生きがいと収入をアップ

75歳以上のばあちゃんたちが、元気で体は動くけれども、国民年金の受給だけでは生活がままならない状況になってきているという課題に対して、直球でシンプルな解決策として、ばあちゃんたちと一緒に働いて、月2~3万円の収入を得られるようにしようと考えました。

働くことで、生きがいと収入増、ばあちゃんたちの活躍の場と働く場を、2019年から作り始めました。

もうすぐ、5期目になります。

働きたいという意欲のあるばあちゃんたちは、多数いらっしゃいます。

うきはの宝には、多種多様の、宝のようなばあちゃんたちが来てくださっています。

ばあちゃんたち自身が、働くことで誰かの為になるということが、彼女たち、そして僕たちにとっても、幸せなことです。

ばあちゃんたち高齢者は、間違いなく、未来の僕たちの姿でもあるからです。

ばあちゃんたちの得意な「食」と「料理」で商品作り

仕事内容は、ばあちゃんたちの得意分野と特性を生かした、「食」と「料理」で、それらを商品・サービス化して、ばあちゃんたちの知財を伝承していきます。

起業当初は、75歳以上のばあちゃんたちが働く飲食店を展開しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、2022年に惜しまれつつ閉店し、食品製造業へ転換しております。

現在は、地域の若手農家と組んで、農産物の加工を、栽培から6次(産業)化(※) までを、一貫して行っています。

▶編集注:6次(産業)化とは、農林漁業者(1次産業)が、農産物などの生産物の元々持っている価値をさらに高め、それにより、農林漁業者の所得(収入)を向上していくこと(農林水産省)。

作った惣菜や料理は、イベントやマルシェで販売、そして、ネット通販へと移行しています。

20~90代がそれぞれの得意分野で協力

ばあちゃんたちが働く裏側では、若者やクリエイター、ママ世代や若手農家がサポートして、お互いの得意分野を生かしています。

最大の特徴は、20~93歳までの多世代で、協力して働いていく「多世代型協働」であることです。

良い効果としては、まず、ばあちゃんたちの脳への刺激になっています。

また、同僚やお客さんとの出会い、そして、「ありがとう」と言われることによる幸福度の増加、保護ではなく、機会を創出し、地域・社会への参加、働く場が居場所となることで孤立を防止し、働くことでの収入増です。

ばあちゃんにちなんだ食品ブランドを企画中

今後は、ばあちゃんたちの懐かしい味を、「ばあちゃん飯」という食品ブランドで展開していきます。

ばあちゃんならではの、手作りの料理や調味料の製造、それらをインターネットで販売します。

また、おやつやスイーツにも展開し、近いうちに、新商品の「婆ーむくーへん」の販売を開始します。

さらに、現在、ばあちゃんたちが山で実際に採ってきた野草、薬草を、乾燥・加工し、「ばあちゃんプロテイン」という商品も、開発中です。

コンサルティングやYouTube配信を実施

高齢者就労のコンサルティングによって、ばあちゃんたちの仕事を作りたいと、ほかの地域から共感・賛同の声をいただいておりまして、主に、地方の過疎地域にノウハウを提供して、高齢者の就労を広めております。

起業しようとする若者が1人いれば、そこには、働く意欲のあるばあちゃんたちが、必ず多数いるからです。

食品事業以外では、ばあちゃんたちが主役となる、「ばあちゃん新聞」やYouTubeチャンネル「ユーチュー婆」を展開しております。

里山のばあちゃんの家に遊びに行く里山体験も、ばあちゃんたちと直接的な交流ができると、お客様に非常に喜ばれています。

課題解決を面白く、どこか温かく

課題に対して同情や悲観するのではなく、当事者であるばあちゃんたちとともに、面白く、どこか人の温かみを感じられる企画とコンテンツを作っていきながら、解決していきます。

これからも、応援、ご協力のほど、よろしくお願いします。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/星野 由香里/正能 由佳/中村 瑠李子/戸田 秀成

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