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ICC KYOTO 2024のセッション「社会課題を解決するインパクト・スタートアップを生み出すためには？」、全5回の②は、インパクト・スタートアップの定義を議論します。企業による過去の積み重ねに触れたUntroD永田 暁彦さんは、社会の変革にコミットしている企業が、SHE福田 恵里さんは、既存の価値観や固定観念にとらわれず新しい価値を創っていく存在が、インパクト・スタートアップだといいます。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜 9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 2E
社会課題を解決するインパクト・スタートアップを生み出すためには？
Supported EVeM
(スピーカー)
川野 輝之
株式会社ECOMMIT
代表取締役CEO
永田 暁彦
UntroD Capital Japan株式会社
代表取締役/リアルテックファンド代表
福田 恵里
SHE株式会社
代表取締役CEO
松田 崇弥
株式会社ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO
(モデレーター)
梅川 忠典
リージョナルフィッシュ株式会社
代表取締役社長
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▶「社会課題を解決するインパクト・スタートアップを生み出すためには？」の配信済み記事一覧
スピーカーが「インパクト・スタートアップ」を定義
梅川 まず、皆さんの頭の中の定義を揃えた方がいいと思っています。
インパクト・スタートアップの他に、ディープテックやリアルテックなど、色々なスタートアップがあると思います。
多くの場合、課題を解決すると謳っていますが、新しく生まれたインパクト・スタートアップとは何かという点を定義できればと思います。
インパクト・スタートアップと他のスタートアップの違いについて、思うところを川野さんからお話しいただければと思います。
社会課題を解決する企業という印象
川野 身も蓋もない発言になってしまうかもしれませんが、私もあまり分かっていません(笑)。
私自身、インパクト・スタートアップだと自覚したこともありません。
社会課題を解決するのであれば、全てインパクト・スタートアップになるのではないかとも思いますし、なかなか答えを出せないというのが正直なところです。
ただ、我々の場合、先ほど（前Part参照）永田さんがおっしゃった通り、売上が伸びれば伸びるほど地球環境が良くなると掲げているので、インパクト・スタートアップだと呼ばれるようになり、ああ、そうなんだと自覚し始めたという感じです。
曖昧な回答になりますが、そう思っています。
梅川 ありがとうございます。
ちなみに、ECOMMITは産業廃棄物処理会社ではなくリサイクル会社ということですか？
川野 どちらでもないですかね。
廃棄されてしまっているものを、回収して製品に戻すためのインフラになりたいと考えているので、新しい産業を興していると考えています。
梅川 なるほど。
インパクト・スタートアップと呼ばれ始めたのは、いつ頃だったのでしょうか？
川野 ここ1、2年くらいですかね。
我々はずっと鹿児島にいて外に出始めたのはここ2、3年なので、それも理由としてあるかもしれませんが、鹿児島にいてインパクト・スタートアップだと呼ばれても、未だに？マークが頭に浮かぶ方が多いのかなと思います（笑）。
梅川 ありがとうございます。
永田さん、いかがでしょうか？
二項対立を起こさず成長と課題解決を実現
永田 先ほどの売上とソーシャルインパクトの相関性についてですが、時代を遡ると、CSR（企業の社会的責任）が謳われる時期がありましたよね。
僕は、それとの対比を意識しています。
当時は、環境や国家間のギャップなど、どこかが良くなるとどこかが悪くなるということが起こっていました。
僕は、サステナビリティは、そのような二項対立がない状態だと定義しています。
人々は、どこかで二項対立を起こしながら金儲けをし続けていて、その儲けを社会に還元しようというのが、かつてのCSRだったと考えています。
現代における売上とインパクトの相関とは、そのような二項対立を起こさずに、業績拡大をしながら、環境を汚さない、不利益のある労働環境を作らないというのが、基本的な考え方だと思っています。
その本質を追求できているかどうかが、とても重要ではないかと思います。
あとは、その中で、起業家の目を見ながら装っていないかを問い続けているのが、インパクト・スタートアップと他のスタートアップの違いかなと（笑）。
AIと言っているけれどAIじゃないよね？ということが最近ありますが、同様に、インパクトと言っているけれどインパクトじゃないよね？と（笑）。
僕は、そういうノリ自体が拡大することは素晴らしいと思っています。
「ソーシャルインパクトを追いかけている」と言うことが恥ずかしくなく、当たり前の環境になって、インパクト・スタートアップという概念がなくなることが勝利ではないかと感じています。
定義、未来観は、そう捉えていますね。
ESG、CSR、インパクトをそれぞれ定義すると
梅川 なるほど。
よく似た言葉に、ESG（環境・社会・ガバナンス）がありますよね。
ESGを加えて、ESGとCSRとインパクト、それぞれを定義するとどうなりますか？
永田 ESGは、よりガバナンスというか……大きくなっている会社が突然、売上とソーシャルインパクトの相関性を優先するのはほぼ不可能です。
そうなると、現在、上場企業に期待されているESGについては、どれだけ社会を良くしているかよりも、まず現状を開示し、社会を良くする方向に向かっていることとその意志を証明することに、重きが置かれています。
社会の変革にコミットしていると、インパクト・スタートアップと呼んでいるのではないかと僕は思っています。
梅川 なるほど。先ほどの、二項対立しているかどうかという点については、二項対立をしてしまっているのがESGやCSRであって…これは、色々な語弊を招きますか（笑）？
（会場笑）
永田 そうですね、僕は今の言葉には頷かないです（笑）。
ESGにおける開示は、「体重を減らしたければまずレコーディング」という考え方と同じところから始まっていると思います。
僕たち次世代の経営者は、生まれた時からそうなっていて、それはとてもラッキーなことです。
だからこそ、インパクトとビジネスモデルがアラインできています。
忘れてはいけないのが、過去の企業による積み重ねがあって今ここに立っているということですから、大きな企業の状態を否定するのは間違っていると思っています。
その上で、インパクト・スタートアップとしてどう立ち振る舞うのか。
世代間格差を言い出すと、それも二項対立だと思うのです。
梅川 なるほど、ありがとうございます。福田さん、いかがですか？
既存の価値観にとらわれず新しい価値を創造
福田 川野さんもおっしゃっていたように、インパクト・スタートアップは、経済合理性と社会課題解決を両立させて急成長を担うという定義だと思っています。
課題解決をしたくてスタートアップは経営している人が多いと思うので、最近、後付けでラベリングされただけで、考え方自体はずっとあったものだと思います。
インパクト・スタートアップと同様、パーパス経営も、新しい資本主義という文脈でこの2、3年でラベリングされただけです。
私たちはずっと、それが当然で自然だと思って経営してきたので、ラベリングされることに少し違和感を覚えています。
実際、大きく変わったわけではなく、時代の潮流によって、後付けでラベリングされたと思っています。
ただ、インパクト・スタートアップの経営者には、新時代を切り開くという志向性を強く持つ人たちが多いと思います。
川野さんの、リユースやリサイクルではなくて新しい定義を模索しているという意見もそうですし、私たちSHEも、女性向けキャリアスクールですねと言われると、それだけではないと感じています。
でも、売上だけを求めるスタートアップでもなく、自分たちの価値をコミュニティブランドだと定義しています。
インパクト・スタートアップには、既存の価値観や固定観念にとらわれず、新しい価値を創っていくという特徴があるのではないかと思っています。
梅川 ありがとうございます。
「急成長」という言葉が出ましたが、成長を追い求めることとインパクトを生み出すことがイコールになる場合、ならない場合があると思います。
福田さんの中では、それがイコールになることを追求するということでしょうか？
福田 おっしゃる通りですね。
我々のビジネスモデルにおいては、リスキリングを経て自分が本当に望むキャリアにキャリアチェンジする人の数を、インパクト指標として開示しています。
その数が増えれば増えるほど我々の売上も上がるし、社会的インパクトも大きくなるという相関を描いています。
社会的コストを減らしている存在かもしれない
梅川 ありがとうございます。では、インパクトスタートアップ協会をお作りになった……。
松田 いや、作ってはいないです（笑）。末席中の末席、理事です。
私たちもヘラルボニー創業時、インパクト・スタートアップをやるぞ！と始めたわけではなく、最近インパクト・スタートアップと呼ばれ始めたと思います。
先日、厚生労働省に行った際、続々と確定申告をするヘラルボニーとの契約作家が現れていると伝えると、「それは、国の障害者福祉のコストを減らしているということですね」と言ってくれました。
例えば、川野さんの活動で環境省のコストが減っているかもしれないですし、雨風太陽の活動も関係人口を創出させるためのコストが減っているかもしれませんし、SHEのリスキリング活動もそういう結果につながっているかもしれません。
インパクト・スタートアップによって、実は社会的なコストが減っているという事実があるのかもしれないと思いましたね。
梅川 財務諸表には表れない指標を、きちんと定義して追っているのもインパクト・スタートアップの特徴かもしれないということですかね。
松田 はい。
（続）
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編集チーム：小林 雅／小林 弘美／浅郷 浩子／戸田 秀成