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4. 資本主義の中で、いかにレバレッジを効かせて社会課題解決をするか

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ICC KYOTO 2024のセッション「社会課題を解決するインパクト・スタートアップを生み出すためには?」、全5回の④は、「障害」のイメージ変容に取り組むヘラルボニー松田 崇弥さんが目指すハイブランド化の話題からスタート。福田 恵里さんは、政府のリスキリング支援事業を追い風に進むSHEの事業戦略を語り、UntroD永田 暁彦さんはユーグレナの早期IPOを振り返ります。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜 9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 2E 
社会課題を解決するインパクト・スタートアップを生み出すためには?
Supported EVeM

(スピーカー)

川野 輝之
株式会社ECOMMIT
代表取締役CEO

永田 暁彦
UntroD Capital Japan株式会社
代表取締役/リアルテックファンド代表

福田 恵里
SHE株式会社
代表取締役CEO

松田 崇弥
株式会社ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO

(モデレーター)

梅川 忠典
リージョナルフィッシュ株式会社
代表取締役社長

「社会課題を解決するインパクト・スタートアップを生み出すためには?」の配信済み記事一覧


ヘラルボニーはハイブランド化できるのでは

梅川 インパクト・スタートアップであることとブランドを作ることは、関係すると思う事例があります。

ヘラルボニーの服を買いたくてサイトを訪れた時、高いと感じました。

今着ているシャツのような、ユニクロの1,480円の服を着ている僕からすると、ヘラルボニーの服は高いのです。

これまで日本のアパレルにおいては、欧米発のハイブランドが席巻するくらいで、インパクト・スタートアップであることの価値は成立していなかったように思っています。

インパクト・スタートアップであることをうまく活用できれば、ハイブランド化できるのではないでしょうか。

松田 そういうこともあると思います。

ちょうど昨日、日本経済新聞で、ヘラルボニーがフランスで法人登記するという情報が解禁になりました。

ヘラルボニー、仏に初の海外子会社 起業支援施設に入居 2024年9月2日(日本経済新聞)

それも、資本主義の中では強い、ルイ・ヴィトンやディオールを持つLVMHに、1,600社の中の6社に日本企業で初めて選んでいただき、LVMHの支援を受けられることになったからです。

日本初!ヘラルボニー、LVMH Innovation Award 2024で「Employee Experience, Diversity & Inclusion」カテゴリ賞を受賞(ヘラルボニー)

6つのアワードがあるのですが、ヘラルボニーはDE&Iの賞(「Employee Experience, Diversity & Inclusion」カテゴリ賞)を頂きました。

ファッション業界では、環境汚染や高すぎる価格へのバッシングが起こっており、大企業もDE&Iを訴求したいのだろうと思っています。

私は、障害のある人の手によるものは安いと思われている、その認識や価値観を変えたいと考えています。

だからこそ、あえてハイブランドを目指したいのです。

これには、私の欲望という背景もありますが。

梅川 最初からそういう戦略を持っていたのでしょうか?

松田 いいえ、全くそうではありませんでした。

梅川 LVMHのニュースにも、相当衝撃を受けました。

創業時、そんなところまで考えていたのか…。

松田 全く考えていませんでした(笑)。

永田さんも含め、自分の人生の分岐点で出会う人は、すごく重要です。

私の場合、3年8カ月前に、ある東証一部上場企業の社長が、ヘラルボニーを買いたいと言ってくれたのがきっかけです。

それまではデッドファイナンスで少しずつ積み上げていたのですが、買いたいと言われてすごく驚いたのです。

それまで事業計画書を書いたこともなかったのに、「御社が何百億、何千億円の規模になるのを見てみたい」とも言われました。

それで、ヘラルボニーを本気で経営したらどうなるのだろう、この人にはそんな世界を考えられるのに自分は考えたこともないと感じたのです。

資本主義においてレバレッジを効かせたらどうなるのかと思い、そこから色々考えるようになり、取り巻く環境が変わっていきましたね。

梅川 ありがとうございます。

インパクト・スタートアップに限らず、スタートアップは、例えば政権が変わるなど、環境が少しでも変わると変化が起こるので、それを掴めるかがポイントだと思います。

なぜか、経済産業省の方々はディープテックが昔から好きなので、すごくお金を投じますよね。

福田さんは、行政から支援を受けながら事業を行っていますか?

政府のリスキリング支援事業が追い風に

福田 はい、まさに。

私たちの売上はこの2年、凪でした。ずっと変わらない中で、今月、ようやく上がりました。

それは、政府の支援の一つがきっかけになっています。

我々はリスキリングプラットフォームを運営していますが、企業間・産業間の労働移動の円滑化というリスキリング国策(リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業)のため、870億円ほどの国家予算がついています。

そのうちの数十億円が補助金となっており、それを活用すると、我々のスクールを受けた受講者は、費用の70%が還元されます。

松田 実質、定価の30%で受講できるということですか?

福田 そうです、例えば30万円が10万円になるということですね。

それによって、価格に懸念があってSHElikesを受講できなかった人も受講できるので、間口が広がっています。

また、実際に転職すると、追加で還元ももらえるので、個人としてもキャリアチェンジへのコミット度合いが高まる施策です。

これが、我々の収益アップの後押しになっています。

松田 まず、こういう支援プログラムを見つけられるのがすごいですよね。

梅川 そうですよね。

福田 でも、会社としては、すごくリスクのある意思決定でした。

当時のビジネスモデルだとその補助金の対象にはならなかったので、1年かけてモデルやプランを作り直しました。

短期的な売上向上の施策は全てストップし、新しいプランを作ることに時間を割くことになったので、「なぜ今これをするのか」という組織でのハレーションがありました。

今月ようやくその努力が実り、社内もようやく良いムードになりました。

梅川 リスキリングという文脈の補助金をうまく活用しているということですね。

福田 はい。経済産業省のインパクト・スタートアップやリスキリングを担当されている方との関係性を作りつつ、変えていきました。

梅川 国と一体になりながら育てていくということですね。

リスキリングは少し前にブームがあって、助成プログラムができてきたので、加速させていくのが大事だと思います。

川野さんは、補助金や助成金は活用されていますか?

政府補助金の見込みが出てきた

川野 今までは、全然できていませんでした。

脱炭素文脈では結構あったのですが、サーキュラーエコノミーだと、なかなかはまらなかったからです。

ただ、ようやく今年(2024年)から幅が広がってきました。

我々は素材をどう選別するかについて研究開発をしていますが、それにはすごくお金がかかります。

その領域にも多少補助が出る流れが見えてきた、という感じです。

政府の中間取りまとめにおいても、繊維リサイクルを一つの産業として大きくしていくということが盛り込まれていますので、ここから加速していくと思っています。

「2030年に向けた繊維産業の展望(繊維ビジョン)」をとりまとめました(経済産業省)

梅川 なるほど。

ディープテックにお金が投入されてバブルになっていますが、逆に政府補助が入るからバリュエーションも高くなるということが起こっているとも思います。

松田 羨ましいですね。

梅川 資金調達額をはるかに超える額が、政府から補助されていることもあります。

隠しているわけではないのですが、僕らはエクイティで26億円の資金調達をしていますが、政府からの補助は37億円くらいになっています。

松田 すごい! そんなにもらって、何をするんですか?

梅川 (笑)経済産業省をはじめ国がディープテックに力を入れているからだと思います。永田さんはインパクト・スタートアップだけではなく、リアルテックファンドにも取り組んでいらっしゃいますが、この状況をどう見ていますか?

補助金は何のためにあるべきか

永田 まず、補助金は何のためにあるべきかという問いがあります。

僕は常に、大気圏を飛び出すための最初のロケットであることが大切だと思っています。

ディープテックというかアカデミアにおいて、先生はみんな、お金が減っていると言い続けていますが、それでもお金は潤沢に流れ続けています。

リアルテックファンドを始めた2015年、僕は、こんなに素晴らしい科学者たちがなぜ報われないのだろう、お金を出そうと思って始めたのです。

でもそれは、大きな勘違いでした。

スタートアップの10年間生存率は、10%を切ります。

10年というのは、相当大変ですよね。

でも、大学発スタートアップの10年間生存率は、50%を超えるのです。

松田 すごい!

永田 それなのに、IPOをするのは年1社くらいです。

何が起こっているかと言うと、途上国における補助金付きのようなもので、つまり、一人では立てないということです。

ですから、最初のロケットになるかどうかはとても大切だと思います。

2弾、3弾目だと、宇宙に飛び出していけますが、1弾目として世界に羽ばたけるかどうかで、次の5年、10年先が決まるということです。

リアルテックファンドに関して、バリュエーションへの影響もありますが、どちらかと言えば生き残るためだけに使われるお金があることに課題を感じています。

実は10年目を迎え、スタートアップに投資する軸が大きく変わりました。

生き残らせてチャレンジを続けてもらうことに重きを置いていましたが、そうではなく、最短で大気圏を飛び出せる人たちを支援するようになりました。

そうしないと、マーケット全体が良くない状況になるという感覚を持っているからです。

梅川 大気圏を突破するというのは、何を指標にしたら良いのでしょうか?

例えば、ユーグレナはすでに突破していると僕は思っています。

かつ、大学発であり、ディープテックであり、インパクト・スタートアップですよね。

どこが大気圏だったのでしょうか?

永田 それは人によって違うかもしれませんが、少なくともパイロットは、研究ではなくてソーシャルインパクトを目指しているべきです。

研究を目的にすると、研究継続のためのキャッシュフローのために活動をすることになり、一生、大気圏から抜けられないと思います。

ディープテックの場合、上市する、PMFするまでの期間が長いですが、それを最短化しなくてはいけません。

命が救われる人、改善される環境に対して最速で立ち向かうことを目指していない人の割合が、相対的に地方のディープテックには多い気がします。

早くソーシャルインパクトを出そうとしたユーグレナ

梅川 ユーグレナは、早期にIPOされましたよね。

【新】東大発ベンチャーの雄「ユーグレナ」が東証一部上場企業になるまで 【KT16-1B #1】

永田 7年目でしたね。

大学発スタートアップのIPOまでの期間については、IPOしたスタートアップの60%が創業から10年以内です。

梅川 例えば、製薬の場合は上市する前からフェーズ2まで進んでいれば、薬ができなくても上場ができて、100億円くらいの時価総額になります。

製薬を除けば、7年目というのは、かなり早い方なのではないでしょうか?

永田 そうかもしれないですね。

出雲(充さん、代表取締役社長)と出会った時、彼は髭の生えた怪しいお兄さんだったのですが、その時からずっと彼は「N-2(※上場準備期間の段階)」と言っています。

上場(IPO)準備の全体スケジュールと期間ごとの具体的な手順(LegalOn)

出会った日からです。

松田 早いですね(笑)。

永田 結果的にN-2を5年間するわけですが、僕は最初から高い山を目指していた人なので、だからこそ一緒に働けたし、だからこそ惹きつけられた人もいるのではないかと思います。

ただ、IPOを大気圏突破と言っているわけではないですよ。

でも、だからこそ作る組織や利益はあります。

例えば、バングラデシュでの活動は、上場後に始めました。

当時、出雲と僕が話していたのは、ソーシャルインパクトを出したいということです。

青年海外協力隊のように目の前にいる100人を助ける活動を今から続けるのか、5年は力を貯めて、上場後に一気に1万人を助ける活動をするのか、積分値が大きいのはどちらかを語り合ったのです。

結果、後者を取って、なるべく早めにソーシャルインパクトを出せる環境にしようとしたのが、ユーグレナのパターンだったということであり、これが唯一の正解というわけではありません。

社内メンバーや投資家も含めて、目線が合っているのか、何を目的にしているのかについて語られていることがとても大切だと思いました。

梅川 少し前までは、社会起業家と言うと、お金儲けやベンチャーキャピタルとは縁遠く、NPOのような印象だったと思いますが、そうではなくなってきたと思います。

(続)

カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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