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「1次産業(農業水産業) × ITから生み出されるビック チャンス 」【K16-5D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その7)は、1次産業における課題や、ICT活用のケースをより深く議論しました。ぜひ御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 5D
「1次産業(農業/水産業) X ITから生み出されるビック・チャンス」
(スピーカー)
小林 晋也
株式会社ファームノート
代表取締役
藤原 謙
UMITRON PTE. LTD.
Founder / Managing Director
安田 瑞希
株式会社ファームシップ
代表取締役
(モデレーター)
椿 進
Asia Africa Investments & Consulting Pte.Ltd.
代表取締役/CEO
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【前の記事】
【本編】
椿 それではここからディスカッションに入りますが、いくつか質問をしていきます。
藤原さん、水産はうちも結構やっていますが、そもそも餌に魚粉を使わない、というのをやりたいのですが、それについてはどうお考えですか。
養殖の餌に魚粉を使わないというのは可能か?
藤原 魚粉代替に関する研究開発はたくさんあり、よく言われているのは藻類の活用です。
魚粉価格が上がっているので、代替飼料として藻類を使った餌から魚を育てるという計画もありますし、野菜でベジタリアンの魚を育てるという計画もあります。
一方で、水産物の需要が伸びる中で、生産物を効率よく作るというアプローチはいつまでたっても必要です。
餌そのものの代替をしていくことと、ウミトロンのようにデータを使って餌やりの効率そのものをあげていくこと、この2つのアプローチで問題を解決していくと、解決が加速されていくと思います。
椿 この間ノルウェーに行き、マリーンハーベストさん(生産数量世界最大のサーモン養殖加工会社)を見てきました。
海外で食べてもおいしい寿司のネタが何か分かりますか。
藤原 サーモンはおいしいですよね。
椿 サーモンだけなんですよね。
サーモンはアメリカでも穫れるから美味しいんだろうと無邪気に思ってましたが、全然違って、ノルウェーから輸入しているんですね。
この10年ぐらいでノルウェーは、昔は5,000億円ぐらいだったサーモンの輸出で1.5兆円ぐらいになったんです。
成長した分のほとんどが寿司で、日本はほとんど獲得できていません。彼らは、魚のえさの飼料も、ほとんど価格の安い食物飼料に変えましたよね。
藤原 サーモンの強烈な生産量の伸びを見たのですが、同じようなことを日本でできない理由はないと私は思っています。
人口増の中心はアジアですし、中国のプロテイン需要はこれから伸びていきますが、これだけ海に囲まれている日本の養殖の生産量自体は停滞してます。
しかし外の市場は近くで伸びているので、きっかけがあれば爆発的に伸びていく可能性は十分あると思います。
農業×ITはインターネットで言えば20年前レベル
椿 なるほど。小林さん、先程農業のGoogleを目指すとおっしゃっていましたが、世界で勝てますかね。
小林 今世界中を見てもたくさんの農業関係のソフトウェアが出てますが、日本での農業のITの現状は、まだ約20年前のヤフーのディレクトリーサービスぐらいです。
要は、部分最適したディレクトリーにこんなサイトがあるよ、というのを登録していくような効率が悪いだと思います。
日本だけで見ても多くの企業は農業のセンサーに参入していますが、それ自体に意味があるのか疑問を感じます。
海外を見ても同じような状況ですが、様々なディレクトリーサービスが壊れた理由は、Googleの検索に置き換わったからです。
データを統合したことで起きた価値はすごく大きいと思っています。
私たちは今は牛に特化してやっていますが、結果としてはデータをどれだけ統合して、その中からどれだけ価値を見いだせるか、ということだけに集中し、そこから生み出される価値で世の中を変えていくということが重要だと思っています。
あくまでビジョンですが、具体的に牛の話でいうと、世界で勝てる可能性はあると思っています。
ユーザーエクスペリエンスが高いソフトウェアを作れる人がこの業界にいなさすぎるのですが、農家さんが見た瞬間に「お、これなら俺でもできるかも」と思ってもらうことが非常に重要だと思うんです。
小林 しかし、大手の農機具メーカーさんや農業に関連する会社さんがそれを作れるか、というとかなり厳しいのが現状です。
農業関係ではひどいユーザーエクスペリエンスのソフトウェアが大量に出回っているので、タップの回数を減らして快適に仕上げ、1秒でも速くデータを表示するようにすればまだ十分勝てると思います。
最終的には、操作するためにはボタンもいらない、といったようなエクスペリエンスに変えていけば十分農家さんでも使えると思います。
農業ソリューションを世界に普及させられるか?
椿 これは例えば英語版や中国版を作りアップルストアにあげて、誰でもダウンロードして使えるようにする、ということも考えていますか。
小林 2016年9月から新しい期になりますが、今期はまず牛でそこにトライしていこうと思っています。
椿 それはいいですね。
確かカンボジアだったと思いますが、GPSを使って農業を管理するソフトが最近出てきてますよね。
どれだけ広くばらまいて、データを共有させてもらうことが重要です。
小林 牛だけに限って言うと、環境としては良いと思っています。
世界で見ても、日本はアメリカ式の牛の飼い方をしていて、乳牛の場合は1頭あたりの乳量を上げる、肉牛の場合はDGといって1日あたりの増体をどれだけ増やすか、という管理指標が日本では普通に根付いています。
1頭あたりの乳量も世界でもかなりレベルの高い飼養管理をしていますが、市場が小さいので海外からここに入ってこないんです。
高いレベルの飼養管理の技術があるにも関わらずそういう技術が外から入ってこない、という状況で、且つ、日本には知的労働者がたくさんいるので、この知的労働者に農業に目を向けてもらう、という考え方でここで技術を培えば十分勝てると思っています。
椿 もう英語版もあるのですか。
小林 これからです。
椿 アフリカは本当に粗放農業でやっているので、どんどんやったら面白いですよね、データを取ったもん勝ちですもんね。
機器を作るよりも、植物工場でどう使うかにフォーカス
椿 安田さん、Priva社(オランダの温室栽培制御機器の最大手)はどう見ていますか。
安田 Privaさんがやっている領域と私たちがやっている領域は、実はちょっと違います。
Privaは太陽光を使うことがベースになっていて、センサーで引っ張ってきたデータを使い外の環境とどう付き合うか、というシステムですが、私たちの仕組みは、取ったデータを使って環境を創り出す「ゼロイチ」なので、コアの技術が異なります。
私たちは広く農業を見ているので、Privaさんがやっている領域、太陽光利用型の植物工場も見ていきたいと思っていますが、入り口は別にしようと思っています。
環境制御よりも、インプットとアウトプットをしっかりと見ることで、「生産性」のマネジメントを簡単に考えていける、そういう切り口から勝負しようと考えています。
椿 農家さんからデータを集める必要がありますが、完全閉鎖なのでそれは問題ないですよね。
安田 完全閉鎖型は当たり前にデータは集まって来ますし、太陽光利用型もセンサーは、先程小林さんもおっしゃっていましたが、色んな会社が色々作ってくれているので、そこに私たちがそんなに投資しなくても良く、それをどう使うかというところにフォーカスしていこうと思っています。
そして、それを使うのは人なので、ゆくゆくは人がロボットに置き換わって完全に生産するようになりますが、それは植物工場の領域で抑えていく、といったポートフォリオで考えています。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/城山 ゆかり
続きは 農業事業に新規参入する上で重要な2つの鍵とは? をご覧ください。
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【編集部コメント】
続編(その8)では、1次産業×ITのビジネスをする上で、自社生産を行うか、プラットフォームに徹するかといったポジショニング論等を議論しました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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