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6. 西洋基準への依存から脱却し、日本独の工芸・アートを世界に伝えよう【終】

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工芸の価値毀損の根本原因は「西洋基準への依存」にあると石上さんは指摘します。西欧の評価構造に追従するのではなく、日本独自の思想や様式を再定義し、自らゲームのルールを作ることが不可欠と語ります。既存の巨大資本や権力に依存せず、日本の文化を確固たる産業へと昇華させる次世代の勝ち方とは? 最後まで濃密な議論をぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 12C
日本の工芸・アートの価値を高めるには?
Supported by EVeM

(スピーカー)

飯倉 竜
J-CAT
代表取締役CEO

石上 賢
丹青社
B-OWND プロデューサー

上町 達也
secca
代表取締役

松田 文登
ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO

(モデレーター)

各務 亮
電通
クリエイティブ プロジェクト ディレクター

『日本の工芸・アートの価値を高めるには?』の配信済み記事一覧


各務 では、問い2に参りましょう。

皆様が定義してくださった、日本の工芸・アートの価値が「毀損」されているボトルネックはどこか?という問いです。

ここまでのお話でもだいぶ触れてくださっていると思いますが、事前に頂いたキーワードはこちらです。

時間があと10分ちょっとですので、ここからはディスカッション方式というか、自由に議論していければと思いますが、もし会場の皆さんから質問があれば、2、3人まとめてお聞きして、それもふまえて話せればと思います。

感想でも結構ですので、会場で、質問のある方は挙手いただけますか。

「工芸の市場での勝ち方は?」

質問者1 POOL inc. の石向と申します。

seccaのブランディングを担当しています。

昨日もこのセッションの前哨戦みたいなものがあって、工芸の価値観について話していました。

僕も、石上さんのおっしゃる「権威化」が最大の課題だと思います。

今ヘラルボニーはIPビジネスをされていて、昨日グランプリを獲られた方は消費者に売っているようです。

工芸にとっての勝ち方は、資本主義的な勝ち方ではないと思います。

四者四様の勝ち方がある中で、工芸の勝ち方についてご意見をお聞きしたいです。

各務 ありがとうございます。

「価格戦略とテクノロジーによる効率化は?」

質問者2 大丸松坂屋百貨店の稲垣と申します。

価格の定義が気になっています。

例えば輪島塗だと、124工程あります。

そこに6、7人の職人が携わって作っているわけですが、それが例えば30万円だと、今の消費者は高いと思われます。

今の工芸品は、めちゃくちゃ安いと僕は思っています。

価格をどう決めるか、そしてどう価格を上げていくのか、あと、どうテクノロジーを使って今の手作業をもっと効率化していくのかという視点から、お話を伺いたいです。

各務 プレミアムな価格をつけるための戦略やアプローチ、テクノロジーによる効率化ですね。

皆さん、この後のコメントに、内容を含んでいただければと思います。

残り10分なので、問い3についての事前に頂いたキーワードをお見せします。

問い3についてのキーワードを紐解きながら、会場からの質問に答えていただく感じで、1人2、3分でお願いします。

美の奴隷状態から脱却し自ら価値を作る

石上 権威化について、あと価格設定にもつながりますが、OSだと言っているのは、評価基準をどう作るかをずっとテーマにしているからです。

これは僕が説明によく使う図ですが、文化と名がつくものについて皆さんがお話しされるのは、「アプリケーションレイヤー」の話だと思っています。

目で見える工芸や、歌舞伎や能などの舞台芸術、お酒などは、アプリです。

一方、最下層には「OSレイヤー」があり、何が良くて何が悪い、何が美しくて何が醜いという「評価構造」や「様式」があります。

問い2に対して「権威化が最大の課題」と書いたのは、西欧が作った基準に工芸を当てはめていくのではなく、工芸の評価基準をきちんと言語化し、我々がその価値を作っていくことが重要だからです。

ニューヨークやパリで何かが評価されているとすごいと思ってしまう、逆輸入が大好きという美の隷属状態が日本の現状だと思っています。

戦後、各国がそうなってしまっていますが、ほぼ、美の奴隷です。

やはり、戦勝国であったアメリカ、イギリス、フランスは強いわけで、だからハイブランドも生まれます。

でも、そこに甘んじるのではなく、僕たちがきちんと価値を作りにいかなければいけない。

日本には実際に「評価構造」と「様式」として侘び寂びが定義されていて、その名の下、茶器、空間、懐石などが総合芸術として存在していました。

現代においても、それをしなければいけないという考えで、課題だと書きました。

各務 具体的には、このOSレイヤーに「空(くう)」の価値観を埋め込むのですね。

石上さんが昨日おっしゃっていたのは、美術館で価値を普及させるのも良いけれど、例えばこれだけ世界中で日本のアニメが愛されているのであれば、そのアプリケーションとしてアニメを活用することもできると。

その先に、例えばアニメに出てくるおむすび、工芸品、着物などをプロダクトとして最終的にお金に変えていくという考え方を、仮説としてお持ちでした。

この認識で合っていますか?

石上 合っています。

各務 一つの仮説ですが、どう価値付けするかという質問への答えとして提示してくださっていると思います。

こういう構造の中で、ものづくりをしていらっしゃる上町さん、いかがですか。

大きな資本や権力に依存しない価値創造

上町 石上さんが言っていた「OS」という言葉を僕も使っていますが、僕の場合、もう少しものづくり寄りのイメージで使っています。

価値が毀損されている原因は何かという問い2とつながるのですが、そもそも工芸がきちんと仕事になっていた歴史と比較してみると、寺院が強かったという明確な違いがあります。

幕府や藩は大クライアントで、大量に仕事があって、しかも高い要求をされて、とんでもないクオリティのものを生み出していたわけですよね。

今見ても、敵わないと思うくらいすごい技巧が施されています。

寺院が力を失ったということは僕から言う話ではないですが、客観的に見ても、檀家が減っていたり、寺家の方にお伺いしても、文化を育てるほどの体力があるわけではなかったりします。

でも、守っていかなければいけない。

寺院にもう一度集めるほうがいいのか、それとも寺院に代わる、工芸が生み出されるためのフィールドというかOS自体を再発明する必要があるのかは、僕も答えがまだなくて、石上さんと議論したいし、しているところです。

それが発明できれば、まずはきちんと仕事になり、きちんと出口ができて、継承されていくシステムになっていくと思っており、これは僕自身が見つけたいものです。

一方で、それを大きな資本や権力だけに任せると時間がかかりそうです。

何か自分たちでできることがないかと考えた時、自らの産地にある技術を活かしながら、今求められる日常のプロダクトを作って新しい産業を作ることで資本力を持って、伝統を維持するために技能者を教育し、観光につながるすごいコンテンツを生み出すというサイクルを回していけたらいいなという思いがあります。

我々がデザイナーとして関わらせていただき、共同創業みたいな形で取り組んでいるARASにヒントがあると思います。

▶︎「石川樹脂工業」は、1,000回落としても割れない食器「ARAS」を通して樹脂の可能性を世の中に拡げていく(ICC FUKUOKA 2024)

ARASは、山中漆器産地の木地職人の技術をもとにしています。

戦後1947年頃に、高度経済成長に合わせて樹脂胎のベークライトなどを使って漆風の塗料を塗った、樹脂胎漆器を作って一大産地になったのです。

ただ、それが斜陽産業化した時、その樹脂成形技術を活かして今求められる食体験を作るための道具を実現し、きちんとビジネスになったわけです。

6年目で売上20億円が見えてきており、ここまで体力をつけられると、自分たちの文化を支えている伝統文化を自らの力でもう一度磨くことが選択肢に入ってくるのです。

これは、各地でできることではないかと思います。

各務 素晴らしいですね。飯倉さん、お願いします。

物語をベースにしたブランド構築

飯倉 簡単に言うと、「物語(ナラティブ)をベースとしたブランド構築」とスライドにある通りで、シンプルにナラティブをベースとしたブランドがあれば、高く売れるので、今日も議論にあった通り、そのブランドをどう作るかということだと思います。

作り手自身がブランドを作れれば一番いいですが、できないことも多いので、難しい時は信頼できるパートナーと一緒に取り組めればいいと思っています。

観光において、我々の今の立ち位置はすごくはまっています。

でも観光ではなくても、何かブランドを作る時にご相談いただければ嬉しいですし、私自身も地域や事業者のベストパートナーになりたいと思っていますので、今後も何かお役に立てればと思います。

引き続き、よろしくお願いします。

今日はありがとうございました。

各務 飯倉さんが共有してくださったのは、日本の工芸や芸能に短期的にしっかりとお金を支払ってくださるのは、欧米の日本文化ファンということですね。

ただ、上町さんが課題提起してくださったように、本来は、かつて旦那衆が文化を育てたように、ICCにいらっしゃっているような方々が用の美として工芸・アートを楽しんでくださる市場も国内に作っていかないといけないということですね。

先ほど頂いた、工芸の勝ち筋をどう作るかというご質問への答えかと思います。

最後に松田さん、「運動体」というキーワードについて一言お願いします。

普遍的価値を問い続ける「運動体」としての未来

松田 自分自身にとってすごく勉強になるセッションだったなと思います。

財団を作って、それを通じて環境問題を解決するパタゴニアなどのブランドもそうですが、ブランドはやはり作品だなと思うので、それと同様に、私たちも一過性のもので終わらない、普遍的な価値は何かを問い続けていくための運動体でありたいと強く思います。

皆さんと出会えたことはすごく大きいので、今後テキストなのか論文なのか、何かにまとめて、それをどうやって価値付けて、全体の産業をどう作っていけるかという視点を盛り込んでいきたいです。

結局は、「豊かに幸せに生きられればいい」という人が増えればいいと思っており、それに尽きるなと思いました。

今日はありがとうございました。

各務 ありがとうございました。

工芸・アートを産業に昇華させる、価値を高めるにはどうしたらいいかについて、一言で表せられるなら表したいのですが、正直、課題が多すぎて全部やらなければいけない、だからこういう運動体が必要ということですね。

壇上に集まってくださった、世界を切り開く松田さん、美しい商品に仕上げられる上町さん、価値を世界の中でしっかりと認められるための権威付けや文脈付けをしてくださる石上さん、そして実際にビジネスに変えてくださる飯倉さん。

1つのエコシステムが、この4人の中でもできています。

ICCという素晴らしい舞台をお借りしながら、聞いてくださっている皆様と共に、引き続き、この議論を継続していきたいと思いますので、どうぞお力添えくださいませ。

皆様、本日は本当にありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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