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ヘラルボニーの松田 文登さんは、知的障害のある作家による純度の高いアートで新ジャンルを創出しています。パリコレ進出や財団設立を通じ、一過性のビジネスではなく歴史に刻まれる「運動」として展開。歴史的文脈(通時性)と接続し、独自の評価軸で世界的な価値を高める組織戦略とビジョンを語ります。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 12C
日本の工芸・アートの価値を高めるには?
Supported by EVeM
(スピーカー)
飯倉 竜
J-CAT
代表取締役CEO
石上 賢
丹青社
B-OWND プロデューサー
上町 達也
secca
代表取締役
松田 文登
ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO
(モデレーター)
各務 亮
電通
クリエイティブ プロジェクト ディレクター
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▶『日本の工芸・アートの価値を高めるには?』の配信済み記事一覧
障害のある作家のアートで新たなジャンルを切り開く、ヘラルボニー松田さん
各務 では、松田さん、お願いします。
松田 ありがとうございます。

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松田 文登
ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO
ゼネコンにて、被災地の再建に従事、その後、双子の松田崇弥と共にへラルボニーを設立。4歳上の兄・翔太が小学校時代に記していた謎の言葉「ヘラルボニー」を社名に、福祉を起点に新たな文化の創造に挑む。ヘラルボニーの国内事業、主に岩手での事業を統括。岩手在住。双子の兄。Forbes JAPAN「CULTURE-PRENEURS 30」選出、第75回芸術選奨(芸術振興部門)文部科学大臣新人賞 受賞。著書「異彩を、放て。―「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える―」。
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これまでお話しいただいた内容とはジャンルが少し違うかもしれませんが、私たちの事業では日本全国、そして世界の作家約300名と契約しています。

彼らの作品を見た時、圧倒的な純度の高さや美しさ、AIには一切左右されない豊かさが存在していると強く感じます。

点を打ち続ける、円を描き続けるなど、ずっと何か同じことを繰り返す、民藝の「用の美」に非常に近い概念を表現する作家が所属しています。
テキスタイルになると、「マリメッコっぽい」「ミナ ペルホネンっぽい」と言われることもあります。
最近は「ヘラルボニーっぽい」と言われることもあり、ヘラルボニーという新たなジャンルを運動としてどう作っていくかはすごく意識しています。
兄が発明した「ヘラルボニー」という言葉
松田 根底にあるのは、兄・翔太の存在です。
兄は重度の知的障害を伴う自閉症があります。

でも、兄がかわいそうと言われることに違和感を覚え、障害のある方がつくる作品を見た時、純度の高さに衝撃を受けました。
▶︎4. 既存のルールに乗ったうえで、西洋の評価基準に挑戦するヘラルボニー
兄はアーティストではないですが、「ヘラルボニー」という言葉を作った発明家だと思っています。
彼の発明であるこの言葉そのものの意味や価値が変わってきていると、すごく思いますし、この言葉を作れたのはすごく嬉しいことです。
ジャンルを作っていく上で、どうあり続けるかを考えており、こういう意見広告をよく出稿しています。


作家の親御さんからもらった連絡をそのまま意見広告にしました。
ヘラルボニーが作家さんに支払うロイヤリティは4年間で25.5倍に増えています。
私の兄と同様、重度の知的障害のある方の収入が変わってきていて、石上さんの言う、商業のマーケットもできてきています。
ヘラルボニーはIPから始まっており、原画、IP、ブランドの3つを持っているのが面白いところです。
中でもIPが大衆的に広がっていて、売買の市場が大きく動いています。
IPを通じて、作品を見たいという方たちによってアートが動いていくというのは、普通とは逆です。
普通はアートを作って、どう商業化、IP化して儲けるかと考えますが、それとは逆のジャンルが出来上がっています。
これを、どういう形で社会に放っていくか、考えています。
パリコレの舞台でアンリアレイジとコラボレーション
松田 今、世界中の作家と連携していこうとしており、いろんな作家と連携できるプラットフォーム(HERALBONY Art Prize)を作っています。

昨年(2025年)はそこにたくさんの応募があり、今年はさらに増え、75カ国の作家から応募がありました。
今、双子の崇弥がパリに行っていますが、パリでANREALAGE(アンリアレイジ)、作家と一緒にフロントロウでショーを見ました。


▶HERALBONY、アンリアレイジと共にパリ・ファッションウィークへ!「生命の可視化」をテーマに契約作家18名によるアートがランウェイを彩る(PR TIMES)
▶︎anrealage26ss_heralbony(ANREALAGE)
アンドリュー・ボルトンという人が、メトロポリタン美術館のファッション史の首席キュレーターで、METガラ(メトロポリタン美術館で開催されるファッションの祭典)の全てを統括しています。
障害のある方のアートのショーは世界で初めてだっていうことです。

マーケットというよりも、何に接続させていくか。
重度の障害がある方がここまで収入を得られたこの構造は、今までになかったと思います。
このなかった構造をもって、日本から世界のマーケットを本気で強くしていきたいと思っています。

アドバイスも含め、何かコメントを頂ければ嬉しいです。ありがとうございます。
精神性や豊かさを見つめて新たな運動を起こす
各務 松田さんは、すごくユニークな言葉で価値を定義してくださっていたと思います。
松田 「ほんとうのさいわい」ですね。
障害のある作家のアートは、一番純度の高い精神性のあるアートだと、強く思っています。
例えば、ジャン・デュビュッフェ(1901~1985)という人が1945年に、「アール・ブリュット」を提唱しました。
▶アール・ブリュットについて(滋賀県立美術館)
制度化された芸術は既に飼い慣らされているとし、芸術的な教育を一切受けていない人たちによるアートを総称したものが、アール・ブリュットです。
芸術の見方そのものを変えることによって、新たな美しい形があると提唱したわけです。
しかし、その時から今までマーケットはそこまで動いていないというのが現状ですので、マーケットを動かすことを狙いにいきたいと思っていますし、そういう精神性や豊かさとは何かみたいなことはいつも考えています。
各務 昨日は、宮沢 賢治の思想をブランドに取り入れて、人間性をどんどん解放しようとしているというお話もされていましたよね。
▶7.賢治の思想で世界へ挑む!ヘラルボニーが描く「岩手」のイーハトーブ
松田 はい、だいぶ入れていますね。
各務 人間がより人間らしく、とらわれずに生きていく形、それも、工芸・アートの価値は何かを考えるためのヒントになるように感じましたが、何か補足いただけることはありますか。
松田 あくまで、運動という意識を作れるかだと思っています。
柳宗悦(1889~1961 )の民藝運動やアーツ・アンド・クラフツ運動のように、ヘラルボニーという運動は何なのかを考えると、本当の意味で一つのジャンルを作れる可能性があるのではないかと思っています。

LVMHイノベーションアワードに採択された際、「ヘラルボニーはこんなに簡単に、世界中の作家を集められるプラットフォームを作れるのか」と言われました。
▶ヘラルボニー、フランス・パリに新たに子会社「HERALBONY EUROPE」を設立(ヘラルボニー)
調達コストがとても安いようで、それが評価対象になったようです。
私たちは、世界中の作家にアクセスできるマーケットをもしかしたら取れるかもしれないポジショニングにいます。
そう考えた時、何を提唱するのかについてより考える必要があり、だからこそ石上さんにいろいろ聞きたいと思っています。
石上さんとは、昨日もいろいろ話していました。
価値向上に不可欠な「通時性」の視点
各務 スタートアップが財団(ヘラルボニー財団)を使って、世界の中に権威付けの機構自体を作りにいくというのは、すごい取り組みというか、戦略的な動きだなと思います。
▶「兄が幸せな社会」を目指してーヘラルボニー財団を設立(ヘラルボニー)
権威のある人たちや学術者を巻き込んだり、口説いたりするのは、やはり歴史がないとなかなか難しいのではないかと思ってしまいます。
どういう発想、考えであの財団を立ち上げ、人を巻き込んでいったのかについて、教えていただけますか。
石上さんも、何か質問があればどうぞ。
石上 メトロポリタン美術館はMoMAのように近現代のアートだけを展示しているのではなく、博物館なので、ファッションにもきちんと価値付けをしなければいけないということで、数年前、地下にファッションだけのエリアができました。
美術館の良さは、歴史に刻まれることです。

松田 そう、そこですね。
石上 先ほどおっしゃった、ヘラルボニーが独自のカテゴリーを作り出すというのはすごく重要だと思う一方、単体で見ても物の価値は生まれないと思います。
アートには、「通時性」と「共時性」という2つの概念があります。
通時性は、長い時間をかけて価値を測る性質、共時性は、『鬼滅の刃』が分かりやすい例ですが、その時代、その瞬間にめちゃくちゃ話題になるような性質です。
ゴッホが生きていた時、彼の作品には全然価値がなかったわけですが、通時的に見るとめちゃくちゃ価値がありましたよね。
ヘラルボニーの価値を高めようとすると、過去の精神障害のあった表現者たちやアール・ブリュットなどを文脈として価値を高めていかないと、現時点での価値も高くならないのではないでしょうか。
なぜ今ストリートアートがめちゃくちゃ評価されているかと言うと、アメリカの抽象表現主義、その前の別の主義などの各ムーブメントが引き継がれてきて、今の時点で、それらがきちんと継承されていることが分かるからです。
これからヘラルボニーは、そういった全体の設計をされるのだろうなと勝手に思っています。
松田 本当ですね、まだ答えは出ていないのですが(笑)。
いろんな考えがありますね、でもその通りです。
石上 その時、誰がその価値を決めるか。
例えば、メトロポリタン、MoMAのような美術館に所蔵されるということは、歴史に点を打つことなので、評価機能になっているということだと思います。
松田 そうですね。どう運動を作っていくかは、すごく考えていますね。
「兄が幸せに生きる社会」を願って財団を設立

各務 少しアングルが違う話になりますが、今、反DEI(Diversity, Equity & Inclusion)など、世の中でむき出しの欲望がアメリカ中心にどんどん出てきています。
ヘラルボニーの活動への影響や、挑戦しようとしていることなどはあるのでしょうか。
松田 ヘラルボニーはアートから始まっておらず、そもそも福祉を前提として始まっています。
双子で作った財団は、最重度の障害のある人たちが「生きていて良かった」と思える状態にするのが目的です。
福祉活動は、営利団体に見えてしまうと、搾取していないのに搾取構造に見えますし、福祉の難しさは、村社会のような要素が存在している点です。
どう均衡を保つか、どれを以て一つの線にするかを考えた時、自分たちの兄が豊かに暮らせるようになるためには、財団が選択肢となりました。
自分としても、本気でしたいことの一つです。
例えば、医療的ケア児の親御さんに向けて、大規模な講演会を九州でやらせていただいた時、「ヘラルボニーの活動はすごく応援しているけれど、私の娘は手が動かせるだけなので、応援したいけど見るだけで苦しくなってしまう時がある」というコメントをもらいました。
こういうコメントをもらう瞬間は多く、本当にいろんなグラデーションがあるけれど、福祉の起点を作ることによって生まれる価値があるのではないかと思っています。
ヘラルボニーを、会社という作品として捉えているかもしれません。
各務 なるほど、ありがとうございます。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成


