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ICCカンファレンス KYOTO 2016 において大好評だった「ベンチャー投資最前線 – 次のビック・ウェーブはどこにあるのか?」【K16-5B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その4)は、スクラムベンチャーズ宮田さんにシリコンバレーを中心とする米国ベンチャー投資の事例と注目分野について語って頂きました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 5B
「ベンチャー投資最前線 – 次のビック・ウェーブはどこにあるのか?」
(スピーカー)
今野 穣
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
パートナー COO
榊原 健太郎
株式会社サムライインキュベート
代表取締役CEO
千葉 功太郎
慶應義塾大学
SFC研究所 上席所員
宮田 拓弥
Scrum Ventures
General Partner
(モデレーター)
佐俣 アンリ
ANRI
General Partner
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【前の記事】
【本編】
宮田 我々は現在50社ほどに投資をしているのですが、その中でも特徴的な3社をご紹介したいと思います。
一番左が、最近投資をした「Civil Maps」という地図の会社ですね。
今回、Ford Motorと一緒にシードステージに投資をしました。最近ニュースでもよく話題になりますが、スマートフォンの次のデバイスは何なのかと言った時に、今一番注目されているのは車です。
我々も車系に結構投資をしており、最近この自動運転の地図の会社に投資をしました。
UCバークレー(University of California, Berkeley)の中で、クラウドで自動運転のマップを作るという概念で、非常に面白いなと思いました。
自動運転というのは2021年にできる、あるいはできないと色々と議論がありますが、実はこの1年くらいで一気に商用化されるという流れになってきました。
現状でいうと1社当たりでは「テスラ」が最も沢山のマップを持っているのですが、それでも1社では3Dのマップを作るのは難しいということで、「Civil Maps」は実はOEM(Original Equipment Manufacturer)ですね、自動車メーカーの色々なところからLiDARとかVelodyneのデータをクラウドで集めて、完璧なマップを作って返してあげるという、「クラウド3D自動運転マップ」を作っている会社です。
佐俣 では1社だけではなくて、色々な会社と組んで補完していくという。
宮田 そうですね、現状で言うと、皆さんのご想像通り、Googleやテスラは自分達でマップを作って自分たちの強みにしようと思っているのですが、理論上、他の自動車メーカーなんかは1社では明らかにできないということで、彼らのプラットフォームには実は名だたる自動車メーカーが乗っています。
それぞれが車で採ったLiDARやセンサーの画像を上げてくれて、道の白線の情報や、信号、速度の情報などを集めていって、メーカーが違ってもそれぞれの車が同じ判断ができるようにするという、そんな技術ですね。
というのが1つ目ですね。
ハードウエアで言うと、僕らはスマートフォンの次に「車」と「家」と「お店」の3つがスマート化すると思っていて、そこに投資をした1つの事例です。
2つ目が、「Revolution Credit」。フィンテックの会社ですね。
金融の分野では、日本も昨年1年間で100億円投資がありましたが、アメリカでは現在1.2兆円くらい、つまり日本の100倍くらいフィンテックにお金が集まっています。
ただレンディング(融資)などは割とやり尽くされたので、新しいところで、最近こういう信用系が始まっています。
ブロックチェーン(分散型ネットワーク)などは日本でも流行っていると思いますが、これは、行動経済学がベースになっています。
日本と同じで、クレジットスコア(信用情報)というのは基本的には1つ決まっていて、そのスコアが基準までいかないとクレジットカードが作れないようになっています。
佐俣 これは個人向けということですか?
宮田 これは基本的に、B to B to C(Business-to-Business-to-Consumer)ですね。
彼らはクレジットカード会社向けにクレジットスコアを売っているのです。
既存のFICOというスコアがあって、それだと例えば僕みたいな外国人というのは、アメリカに住んでいる時間が短いので、いくらお金を返せる能力があってもなかなか沢山お金が借りられなかったり、クレジットカードが作れなかったりするのですけれども、実態としては当然返す能力があります。
彼らは行動経済学の理論を使って、既存の信用スコアが反映していないそういった実態を反映するのです。
具体的にどういうことをするかというと、クレジット会社で信用調査に落ちた人の電話番号をもらって、この会社がそのユーザーにSNSを送り、そのユーザーがもう一度お金を借りたければ彼らが作ったゲーム、これは本当にゲームなのですけれども、結構複雑なゲームをすることによって、その人の金融リテラシーや返済能力とか金融に対する考え方というのをリアルタイムで判別します。
そして、クレジットカード会社さんにこの100落ちた内の20パーセントの人の、この人とこの人はクレジットカードを作ってもきちんとお金を返してくれるので、お金を貸しても大丈夫ですよという独自のスコアを作っているのです。
佐俣 ほう。
簡単に言うと、クイズみたいなことをやって、よく解ける人はリテラシーが高いから大丈夫だろうということなのですね。
宮田 この人はちゃんと返済するよ、ということを言うと、本当にそうなのです。
実際に、かなり大手のクレジットカード会社が裏側で使っているというサービスですね。
これもフィンテックの1つです。
最後は「LE TOTE」です。最近日本で流行りの、人工知能を使ったeコマースの会社ですね。
僕らが投資した中で一番古い、4年前に投資をした会社なのですが、彼らは何をしているかというと、洋服のシェアリングサービスです。
簡単に言うと、月50ドル払うと洋服が借り放題になるというサービスなんですね。
それで儲かるのかと。
ちなみに言うと、「airCloset」より早くできたサービスです。(笑)
(全員笑)
佐俣 これは榊原さん、参考にされたのですか?
(編集注:「airCloset」はサムライインキュベートの投資先)
榊原 いやもう、アドバイス頂きまくりです。
宮田 古い会社なのですけれども。
(全員笑)
宮田 ただ、それだけだと目新しさはなさそうですが、僕が敢えてこの会社を挙げた理由があります。
非常に面白いのは、実は、レンタルでは全く儲からないということです。
これまではユーザーがお店に行って洋服を見て判断をして買っていた訳ですけれども、こういうレンタルを通して新しい嗜好を見つけてよければ買い取るということをしており、売り上げのほとんどが買い取りからになっています。
つまり、売上の半分以上は買い取りからなのですけれども、最後の「オンデマンド製造」というのは何かというと、僕らはこれから一つの大きな砦になると思っているのですが、ユーザーが買うだろうというものを予測してくることを言います。
今、例えば大手のアパレルメーカーさんも、こういうものがトレンドとして来るよと、じゃあそれをSML何千着作りましょうといって、当然ある程度売れ残りもある中で利益率が決まる訳ですけれども、「LE TOTE」がやっているのはレンタルというサービスなので、今までのeコマースと違って、貸して返ってくる、貸して返ってくるという風に、顧客との接点が非常に多いんですね。
ですので、その洋服がどれだけ着られているかとか、気に入れば買い取りになるということで、アメリカ中の女性が今どのような洋服が欲しいかということがデータとして蓄積され、それを利用してオンデマンドで細かくサービスを提供するのです。
驚かれると思いますが、今、インドだと1着単位でオンデマンド製造ができるんですね。
いわゆるプレタポルテのようなすごく高い洋服ではなくて、僕らが着ているような数千円とか数万円の洋服を1着単位で作られるという製造ラインがあるので、彼らはとても細かいプレディクション(予測)をして、ほぼ在庫が余らないレベルで人工知能で予測をして作っているという、そういうある種の新しいSPA(製造小売)のモデルです。
以上が3社です。
佐俣 なるほど。
これはやはり、アメリカのトレンドに近いのか、その中でも宮田さんの中でこれがいいなと思われているか?
宮田 基本的には大きなトレンドは似ていると思います。
当然僕自身の好きなカテゴリーはあります。ただファンドを始めて4年になりますが、4年前の2013年は「eコマース」と「ヘルスケア」に投資をして、その後、「データ」と「動画」に投資をして、昨年は沢山「IoT」に投資をして、今年は「車」「フィンテック」「人工知能」に投資しています。
そういう意味で言うと、先ほど申し上げたように専門領域はないのですけれども、その時の大きなトレンドとタイミングで投資をしていると言えますね。
佐俣 宮田さんが投資をされる時は、例えば日本の会社と繋げるとか、日本の会社にエクジット(売却)を実現するために日本のトレンドなどをチェックされながら投資されているのか、それとも完全にアメリカだけ見て投資されているのか、どちらでしょうか。
宮田 僕以外はアメリカ人が2人いて3人のチームで投資をしています。シリコンバレーとボストンとニューヨークとロサンゼルスで投資をしていて、エグジット(売却 or IPO)は全てアメリカなので、そういう意味では、僕は日本人なのですけれども、日本のことというのは基本的には投資のパラメーターには入っていませんね。
佐俣 それでは、日本の関係のために投資するということはあまり…向こうからも期待されていないしこちらも期待していないということでしょうか?
宮田 そういう意味で言うと、まさに「Yes and No」で、2013年というのはちょうど地震の直後ということもあり、日本人気が極めて低いタイミングで始めたので、日本売りというのは全くしていなかったのですが、実は昨年初めてシリコンバレーに安倍首相が来られたり、2020年にはオリンピックもあるので、実は今、日本人と絡みたいという風潮がシリコンバレーで高まっているのです。
ですから、今は結構「日本人です!」と言いながら投資をしているところがあって、ここから2020年までの4年間というのはかなり、アメリカ人も日本との繋がりで僕らを選んで投資をしてくれると思っています。
佐俣 シリコンバレーでもそういうことを感じられるんですか?
宮田 すごく感じます。
ロンドンでもリオでも盛り上がりましたから、オリンピックに向けて、自動運転やドローンなどは明らかに特区でやるのではないかというイメージがありますね。
そういう意味で言うと、これから4年、5年は、僕らの中では使えるものは使おうという意味で、オリンピックは充分に活用したいと思っています。
佐俣 なるほど。
ありがとうございます。
では、今野さん、国内のミドルステージからレイターステージについてお話をお願いします。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子
続きは、日本のVCファンドの代表格 グロービス今野氏が語る4つの注目投資領域 をご覧ください。
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【編集部コメント】
続編(その5)では日本のVCファンドの代表格グロービス・キャピタル・パートナーズ今野さんに現在、注目の投資領域と”推しメン”企業についてお話し頂きました。是非ご期待ください。
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