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7. 今後ノーベル賞級の発見が期待される量子テクノロジー分野

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ICCサミット KYOTO 2021のセッション「テクノロジーはどこまで進化するのか?」(シーズン4) は、ディープテックに精通する4人のスピーカーが集合! 全9回シリーズ(その7)は、引き続き北川 拓也さんの「量子テクノロジー」の4つの注目ポイントについて。10年、20年後に花開く技術と言われていますが、そのときに実現することとは? ぜひご覧ください。

CCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 プレミアム・スポンサーのベクトル にサポート頂きました。


【登壇者情報】
ICCサミット KYOTO 2021
Session 9C
「テクノロジーはどこまで進化するのか?」(シーズン4)
Supported by ベクトル

(スピーカー)

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員CDO(チーフデータオフィサー)グローバルデータ統括部 ディレクター
※登壇当時

清水 亮
ギリア株式会社
代表取締役社長兼CEO
※登壇当時

丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO

鷲谷 聡之
株式会社ACSL
代表取締役社長 兼 COO

(モデレーター)

西脇 資哲
日本マイクロソフト株式会社
コーポレート戦略統括本部 業務執行役員 エバンジェリスト

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最初の記事
1. テクノロジーの雑談シーズン4、まずは気になるスマホアプリの話題からスタート

1つ前の記事
6. 理論物理学者が語る、みんなに知ってもらいたい超電導物質の話

本編

今注目すべき4つの量子テクノロジー

北川 量子テクノロジーで今注目すべきことは、4つあります。

皆さん、覚えて帰ってくださいね。

1つ目は「量子コミュニケーション」で、量子インターネットと言われるもの。

2つ目が「量子コンピュータ」。

3つ目が「量子センサー」。

…4つって言いましたけど、3つですね。

清水 結構いい加減(笑)。

北川 (笑)。

 だいたい研究者はいい加減です。

北川 一番初めにおそらく来るのが、量子センサーかな?

ごめんなさい、「量子シミュレーション」が、4つ目です。

量子シミュレーションは、いわゆる化学反応などを、量子力学を使ってそのままシミュレーションすることによって、実験をせずして結果をある程度予測しようという技術で、これがたぶん5年から10年の単位で来ます。

 10年だね。

北川 はい。

量子インターネットも、5~10年ですね。

もうちょっと早く、5年ぐらいで来るかもしれません。

量子コンピュータは残念ながら、おそらく15~20年の単位だと、僕は読んでいます。

これらが一気に、ここから20年で花開くので、これはぜひ皆さん、勉強していただきたいです。

西脇 ここから10年、20年。

なんでそんなに花開くのに時間がかかるんですか?

北川 言ってやってください、丸さん。

 (ため息をついて)……科学というのは、そういうものなんです。

(一同笑)

西脇 いやいや、「そういうものなんです」では納得できないから(笑)。

MRIは量子センシングに置き換え可能

清水 ちなみに量子センサーは、何ができるようになるんですか?

北川 量子力学をなぜ僕らは日々見かけないかと言うと、すぐ壊れるからです。

触るとすぐ壊れる性質が量子力学なので、マクロな大きさになった瞬間に普通パーンって壊れるんですよ。

それを利用して、ということはすごいセンシティブなので、キュービットを準備して、例えば血流に流れている鉄分の量やスピンなどを、センサーを近づけて測るみたいなことをやろうとするのが、量子センサーなんですよ。

qubitって? スピンを例にした説明(物理とか)

清水 血流の中のスピンって、あのスピンですか?

北川 そうです。なので、基本的に医学で使われているMRIとか、すべてのものは全部量子センシングに置き換えることが可能なんです。

核スピンの向きを揃え超高感度MRIを実現(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)

清水 なるほど。

北川 だから、基本的にMRIの置き換えだと思ってください。

清水 MRI、確かにそうですね。

北川 なので、そういうものが全部できるようになります。

鷲谷 それができると何が変わるんですか? MRIでいいじゃないですか。

北川 なんで地球を見ることに興味があるのに、人体を見ることに興味がないの!?

鷲谷 答えは知っていますけど、オーディエンスのために振ったんですよ(笑)。

(一同笑)

清水 あれですよね、fMRI(磁気共鳴機能画像法)がもっと精度が高くなって…。

北川 めちゃくちゃ精度が高くなります。

清水 今、非常に雑だから、それが非常に細かくなるということは、脳の活動をリアルタイムでモニタリングすることができて……。

北川 そう! もっと言えば、今は脳内のニューロン1つの動きなんて分からないですよ。

清水 分からないですね。

北川 このセンシングで測って、脳内解像度がナノメーター単位にいったら、量子センサーで脳のマッピングが、もしかしたらできちゃうかもしれない。

清水 脳をコピーできると?

北川 いや、コピーはできないですけれど、センシングはできます。

清水 まずセンシングするということは、エミュレーション(模倣)できるようになるかもしれない。

北川 そうですね、かもしれないですね。

人間の体内の中での一番小さな単位はおそらくニューロンレベルで、マイクロンぐらいの大きさなので、17のマイナス6乗ぐらいの解像度は本当は欲しいのですが、今の技術ではそんなのは望むべくもないので、これを量子センシングでやると。

清水 ということは、今可視的に分からないけれど、電流がどのぐらい流れているかも、もしかしたら量子センシングならできますか?

北川 可能性があります。

清水 それは非常に面白いですね。

北川 夢がありますよ。

清水 夢がある。風が可視化されるより全然面白いですよ、そのほうが。

▶編集注:本記事Part.5で、鷲谷さんが風を可視化する「ドップラーライダー」を紹介。

(一同笑)

北川 ありがとうございます。それは比較すると可哀そう。

 なんか2対2になっている感じ。

(一同笑)

超伝導物質の最大温度の変遷

西脇 さっき量子テクノロジーが花開くまで10年、20年かかるというお話でしたが、何がハードルになっているんですか?

北川 いくつかありまして、超伝導物質に関しては、-270℃ぐらいのものは50年前に見つかっていて、約-130℃のものが30年前ぐらいに見つかって、両方ノーベル物理学賞を獲っています。

▶編集注:ジョン・バーディーン、レオン・クーパー、ジョン・ロバート・シュリーファーの3人が「超伝導現象の理論的解明」で1972年に、ヨハネス・ベドノルツとカール・アレクサンダー・ミュラーが「酸化物高温超伝導体の発見」で1987年にノーベル物理学賞を受賞。

超伝導の歴史をまとめました!(成蹊大学理工学部)

それが今、室温超伝導と言われる15℃、常温域に上がってきていて、その物質を見つけるのがとにかく難しかったのです。

摂氏15度、室温超伝導状態を世界で初めて実現。しかし実用化にはまだ壁(エンガジェット日本版)

面白いのが50年前、-270℃ぐらいの超伝導物質が見つかったとき、理論的になぜその超伝導物質が起こるのか説明した後に、超伝導物質の最大温度は-233℃だという理論が出たことがあったんですよ。

西脇 その理論が崩れたと?

北川 つまり、超伝導化するメカニズムが、1個以上あったんですよ。

 面白いね。

北川 それで、30年前ぐらいにノーベル賞を2回獲ったんですよ。

だから超伝導物質は非常に複雑で、実はメカニズムが1つではなくて、たぶん10個ぐらいあるんじゃないかと今思われています。

だから実験屋が理論よりも先行しているんですよ。

 まだやっぱりサイエンスがね……。

北川 全然分かってないんです。

これは面白くて、だから、そういう物質の進化とかもあるし、量子コンピュータにいたっては、基本的にはエンジニアリングの問題も大きくて、今IBMやマイクロソフトもやっていますよね。

トポロジカルでマイルストーンをやろうとしていますが、例えばマイクロソフトのトポロジカルキュービットを作ろうとしている人たちに何が難しいか聞くと、そもそも「マヨナラフェルミオン(※)」という、僕はこれを研究していたのでよく分かっているのですが、そういう物質ですらあるかどうか証明されていないのです。

▶編集注:超伝導: マヨラナフェルミオンが潜伏していそうな場所|AIMR (tohoku.ac.jp)

去年、マイクロソフトの人がMajorana fermionの証明論文を『Nature』に1本出したのですが、間違ってましたと言って、1回サブストラクション(理論と研究の方法論をチェックすること)をしているんですよ。それぐらい難しい。

 ……まあ、オーディエンスが(話についていけず)シーンとしてますけど。

(会場笑)

北川 だから本当に実現される前に、ノーベル賞がたぶん3個ぐらい出る可能性があるということなんです。

西脇 かなり先ね。

北川 でも20年。

今こそサイエンティストの応援を

 だから、今のフェーズでは、サイエンスに皆さん投資すべきなんですよ。このフェーズはね。

100年前、200年前にやってきたことが本当に今出てきているということは、これから100年、200年後に出てくる未来を見るには、今この量子テクノロジーに対してサイエンティストの応援をしていかないと、リアルテックは生まれないんです。

みんな、すぐ目の前だけを見て「明日どうなるの?」「いくらになるの?」と言うでしょう?

西脇 いいこと言うねえ…。

 だからCo-Creationするためには、研究者にどれだけお金をかけて静かに研究させるかなんですよ。

北川 それで、僕のハーバード時代の指導教授の1人が、厳密に言うと指導教授ではなかったのですけど、良くしてくれていた教授の1人が、量子センシングと量子コンピュータのゴッドファーザーみたいな人で、今その人と実は一緒にいろいろと推進しているんですよ。

 分かりました、うちがお金を出しましょう。

北川 ありがとうございます!

(一同笑)

西脇 量子テクノロジーで、いろいろなことが改善される。

量子コンピュータは処理が速くなりますとか、精度が良くなりますとか、そんなことぐらいしか語れませんが、それがとんでもないことを生み出すということですよね。

速くなるとか、精度が良くなるレベルじゃないと。

北川 そうですね、「処理が速くなる」は、厳密には嘘ですね。

西脇 なるほど。一般論ではそう言われてますけどね。

北川 まあ非常にザックリ言うと、そうなるんですけど。

西脇 ああ、ザックリはいいけれど。

北川 ザックリ言うとそうなんですが、厳密に言うと、得意な問題と不得意な問題があって、得意なものに関しては圧倒的に速くなります。

清水 メリットで言うと、速くなるということですね。

北川 そうそう、メリットで言うと、メカニズム的には速くなることではないんです。

だから3億年かかっていた計算が3秒になるとか、そういう速さです。

いわゆるコンピュータサイエンスでいう、「速くなる」というコンセプトはちょっと違います。

exponential(指数関数的、急激)に速くなるので、ちょっと次元が違うんですよね。

清水 ちょっと嘘か本当かよく分からないんですけど、前、量子アニーリングをやられていた門脇(正史、現筑波大学助教授)さんにいろいろ聞いたりして、D-Waveとか、お試しで量子コンピュータを24時間500万円で借りられるらしいんですよね。

量子アニーリングとは何か? 機械学習を飛躍させるD-Wave実装の原理 日本生まれの最先端技術がもたらす未来とは|ビジネス+IT (sbbit.jp)

「500万円で、24時間しか使えないのかあ」って話をしたら、「大丈夫です」と。

なぜなら、たいていの問題は10ナノ秒ぐらいで解けてしまうから、24時間分使い切ることはほぼないですみたいなことを言われて、それ儲からないじゃんて、すごく思いました(笑)。

西脇 逆にね(笑)。

NEC、D-Waveの量子コンピューティングサービス「Leap Quantum Cloud Service」を販売開始、日本語によるサポートも提供 2021年12月7日(クラウド Watch)

北川 ちなみに量子アニーリングは、厳密には量子コンピュータよりは量子シミュレーションに近いものですね。

清水 まあ、一般的な量子コンピュータじゃないですからね。

ただ、量子原子を用いた、何かしらの計算最適化という点では結構面白いので、僕もちょっとかじったんですよ。

いわゆるブースティング、機械学習のパラメータ探索とかで、「量子ブースト」がちょっとだけ話題になったことがあって、実際試してみようといろいろ試すと、普通のパソコンでやったほうが速い(笑)。

北川 そうです。今はそうです。その状況があと5年、10年続きます。

西脇 そういうことですよね。

サイエンスのこのテーマでどこまで進化するかということに関しては、めちゃくちゃ進化するんだけれども、今はそういう過程ではないし、むしろそこに投資をしたり、研究者に注目するような目線を向けてあげてください。

量子テクノロジーのリテラシーをもっと上げたい

北川 やっぱり僕が不安なのが、世界的にこれだけ量子テクノロジーが本当に来そうな状況があるのに、リテラシーが上がらないんですよ。

ザックリとした、さっきのような理解がはびこり過ぎているので、日本人のコミュニティとしてリテラシーを上げていかないと、「投資しよう」ってならないんですよ、怪しいから。

「なんか怪しいね」「みんなフワフワしたことを言ってるね」でずっと終わっていて、もう少しリテラシーを上げるために、丸さんに頑張ってもらいたいなと僕は思っているんです。

 ……任せてください。

(会場笑)

西脇 さあ、丸さん、行きましょうか?

 ほら、皆さん、飽きちゃったでしょう?

北川 (笑)すみません。

 さあ、皆さん、ご注目ください。皆さんのもとに僕は降りていきます。

西脇 (笑)何のこと?。

 僕の今一番熱いテクノロジーでいいんですね?

西脇 はい、いきましょう!

(続)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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