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「成長するトラベル市場のビジネス・チャンス」【K16-6D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その7)は、高級ホテル・旅館予約サイトである「一休」榊さんと、「Relux」篠塚さんに、それぞれの強みと弱点を壇上で議論して頂きました。榊さんにはヤフーグループとしての強みについてもお話頂き、業界で貴重なディスカッションとなりました。是非御覧ください。
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【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 4D
「成長するトラベル市場のビジネス・チャンス」
(スピーカー)
篠塚 孝哉
株式会社Loco Partners
代表取締役
榊 淳
株式会社一休
代表取締役社長
塚本 信二
米ダフル インク
共同創業者
(モデレーター)
柴田 啓
株式会社ベンチャーリパブリック
代表取締役社長
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【前の記事】
【本編】
柴田 では、次の話題に移りましょう。
僕は、榊さんと篠塚さんはとても面白いコントラストだと思っています。
なぜならば、事業領域が正面から重なっていますよね。
篠塚 そうですね。
柴田 レストラン予約を既に手掛けているか、いないかという違いはあると思いますが、「高級な宿泊市場」という意味では重なりますよね。
お互いに多分意識していると思います。
実際のところを教えてほしいのですが、お互いに「あいつイケてるな」と思う点と、「イケてないな」と思う点を2点ずつくらい披露していただけますか?
(篠塚・榊、両氏が戸惑う)
篠塚 僕からですか(笑)、よろしければ先輩からお願い出来ますか(笑)?
(会場笑)
「一休」と「Relux」それぞれを褒め合う
榊 わかりました(笑)。では私から、まずイケてるなと思う点から。
先程、篠塚さんがチーターと提示したのを聞いていてなるほどと思ったのですが、キュレーテッド・コンテンツの配信方法等、お客様とのコミュニケーションが非常に上手いと思います。
プロダクトもアプリが予約の半分を超えていたり、Chatbotに取り組み始めていたり、ポケモンGOのプロモーションをしていたり、セールスランキングを人気投票にしたメールを配信して旅行意欲を掻き立てていたり、これらは全て弊社の社員が「なぜうちでも取り組みしないのか?」と僕にメールしてくる内容なのですが。
(会場笑)
上手いと思います。
柴田 では上手いと思う点からいきますか?
篠塚 ありがとうございます。弊社はスピードしかないので、裏では設計を最低品質に保ち、スピード重視でリリースをしているだけなのですが。
一休さんが本当に強いなと思うところは、やはり顧客設定だと思っています。
我々のビジネス対象はクライアントサイドとユーザーサイドがありますが、クライアントサイドのライフタイムバリュー(顧客生涯価値)を確保できるビジネスモデルは非常に強いと思っています。
つまり、クライアントサイドの維持継続によってボラティリティーが生じる難しいサービスです。
榊 クライアントとはホテルですか?
篠塚 そうです、ホテルです。
リクルート的モデルとも言うかもしれませんが、一度獲得したクライアントと継続的にコミュニケーションを取っていることが非常に強いです。
具体的には、一休さんにはタイムセールというプロダクトがありますが、営業担当の方が宿としっかり話をして「この時期の集客課題をうちで解決しましょう」という形で最低価格保証の宿泊プランを出すのですが、インパクトが非常に大きいです。
弊社のクライアントさんがタイムセールででていると、弊社のキャンセル率がぐっと上がるので、多分一休さんに動いていると思います。
実際、KPI(重要業績指標)からも明確に分かるのですが。
こういった点が私はかなり強いなと思います。キュレーテッドなメディアであるというところも非常に強いポイントかなと思っています。
柴田 ではずばり、一休さんのイケてないところはどこか?2つ教えて下さい。
「一休」と「Relux」のここがイケてない
篠塚 イケていないという意味ではないのですが、1つ目はヤフーさんの傘下になったことは非常に気になっています。
独立してブランディングもしっかりしていた一休さんが、じゃらん、楽天、ヤフートラベルのような「色」に近づいてしまうのではないか、という印象はございます。
2つ目は、先ほどと逆説的にはなりますが、タイムセールの集客インパクトが非常に強く、フラッシュセールス的な山を作っているので、宿の立場から見ると苦しい可能性があるのではないかと思います。
このような意見をすみません、大変恐縮です(笑)。
柴田 宿からそのような話が漏れ聞こえる?
篠塚 たまに聞きます。
弊社には「タイムセールがないのでやりましょう」といった営業を頑張っているという話を、社員からも聞きます。多分これは現場からも上がっている、顕在化した話かと思います。
あのー、すいません(笑)
(会場笑)
榊 おっしゃる通り、耳の痛い話です(笑)。
柴田 じゃあ榊さん、あえて後輩に助言をお願いします。
榊 はい。
僕は本当にReluxさんが小規模な時から大好きで、以前WIT(”Web In travel”=オンライン旅行業界のカンファレンス)でも柴田さんに「競合はどこか?」聞かれて時、「Reluxです」と答えたのですが、その際に篠塚さんが「ありがとうございます」と答えたのを覚えています。
篠塚 私も覚えています。
榊 当時のReluxさんの良かった点は、顧客を割と限定していたことです。
Facebook等から判断して、会員をクローズなマーケットで展開していたので、これは面白いと思っていたのですが、いつの日か今は解放されていますよね。
その点は、顧客としての楽しみが減ったかなと思います。
柴田 スケールアップを目指すと、やはりそうなってしまうのでは?
篠塚 そうですね。当時をご存じの方がいらっしゃるか分かりませんが、ローンチ(立ち上げ)当初は会員審査制ということで僭越ながらもお客様を線引きしていました。
榊さんがおっしゃってくださった通り、全員を厳正に審査したクラブの様なモデルで展開していました。
柴田 それは、「そのモデルを続けていればあまり脅威にならなかったのに」ということですか?
榊 いえ、当時僕が「Relux」「Relux」とあまりにも言うので、社員皆が会員になる申請をしました。
結果実際に承認となったのは私だけで、他の社員は全員落ちました。
勿論、Facebook上にどこで働いているか書いてあるので、そこから否決されたということもあると思います。
それがある日、全員に承認されたというメールが届いたので、これはかなり本気で数字を狙いに来たなと感じました。
旅行の国内市場を盛り上げようと思った時に、非日常的な体験をするサービスを提供するのが我々高級に特化したプレーヤーの価値かなと思っていますが、Reluxさんはこれまで旅館に特化していたので、旅館について弊社は本当に勝ち目ないなと思っていました。
現在はホテルに進出するなど色々広げていらっしゃるので、弊社とは違う戦い方をされた方が面白かったのではないかなと思っています。
柴田 なるほど。
話を聞いていると、「当日予約アプリ」の話に似ていると思うのですが。
ご存じかもしれませんが、アメリカでHotel Tonightというアプリがありまして、日本でも当日予約を行う事業者がいくつか生まれました。
アメリカの「Hotel Tonight」は、スケール(規模化)の問題に当たったのか、段々予約できるウインドウが拡大されるようになって、今は他のOTA(=Online Travel Agency:ネット旅行業者)とほぼ変わらないものになってきている。
榊 そうですね。
柴田 やはり、同じような悩みがあるのでしょうか?
篠塚 はい、それはずっとあります。
ただ戦略的には最初から予定していた話で、始めから何でも予約できるようにしてしまうとコンテキストとしてカスタマーの方は何のサイトか分からなくなるので、弊社は本当に小さなサイズから始めました。
20社の旅館さんとの契約から始まったので、この状態で会員を解放しすぎると予約が取れないという負の連鎖となってしまうので、一旦は会員を厳選しました。
旅館との取引が拡大されたので、予定通り会員を解放し、ホテルも確保するようになったという3年計画で動いていました。
一方で、がっかりされる方も沢山いらっしゃったので、そこの調整を行っていきたいと考えています。
「一休」と「Relux」の経営者が入れ替わったら
柴田 では、明日もし篠塚さんが榊さんの立場、一休さんの社長になったらまず何をしますか?
篠塚 何をしますかね(笑)。
柴田 一休さんの何を変えたいですか?
さすがに資本関係を変えるのは難しいと思いますが。
篠塚 そうですよね。
弊社は一休さんについて相当研究しているのですが、皆さんの持つ一休さんのイメージはホテルと旅館予約という印象がとても強いと思います。
ところが、実際は今レストラン予約が圧倒的です。
ですので、レストラン予約への投資を強烈に強めて、ヤフーさんと一緒にその領域のナンバーワンを取りに行くといった絵を描くのではないかと思います。
柴田 なるほど。
篠塚 ただ既に取り組みされていることなので、実際と同じかもしれません。
レストランを予約する際、皆さんはまだ電話で予約していると思いますが、3年後は全員がオンラインで予約するようになると思っています。
榊 ありがとうございます。
柴田 榊さん、どうでしょう。さっそく取り組みますか(笑)?
榊 今おっしゃった通り、レストラン予約市場が、現在弊社の注力領域だと思っています。
柴田 では逆の立場で、もしポジションが入れ替わったらReluxをどう変えますか?
榊 そうですね、国内のトラベル領域はもうかなり成熟した市場になっていて、先程 篠塚さんがおっしゃったように、コマースの領域、例えば飲食、スパ、ビューティーの領域といった旅の予約だけではない領域に入って行くのが自然な流れかなと思います。
柴田 なるほど。
柴田 ヤフーさんの話が出たので、その件について少し聞きたいのですが。
榊 はい。
柴田 単刀直入にお聞きしますが、ヤフーさんのグループに入って、良かった点と悪かった点を教えていただけますか?
良かった点は、やはり50%アップのトラフィックでしょうか?
榊 トラフィックをいただけることは勿論良い点ですが、それ以外に、ヤフー自体が子会社なので、弊社に対する子会社のマネジメントが上手いと感じます。
弊社の独立性を担保しているという点は、世の中に知られていない事実かなと思います。
子会社というと語弊がありますが、ヤフーの株主構成を見ていただくと、アメリカのYAHOO INC.とソフトバンクが1/3位、残りの1/3は上場分となっています。
弊社の場合はヤフーが実質100%株主なので、ステークホルダーとしてのマネジメントが簡単ですが、一方のヤフーは複雑なマネジメントを受けています。
そのため、社長の宮坂さん(宮坂 学氏、ヤフー㈱代表取締役社長)も弊社をヤフー色に染めようとは全く考えていらっしゃらず、弊社を尊重して下さる点はやりやすい所です。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/鎌田 さくら
続きは 「私が観光庁長官だったら…」トラベル業界の経営者が語る”観光立国プラン” をご覧ください。
https://industry-co-creation.com/industry-trend/9859
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【編集部コメント】
続編(その8)では、ヤフーによる一休買収の裏側と、日本にもっと旅行者を呼ぶためのアイディア等を議論しました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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