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「私が観光庁長官だったら…」トラベル業界の経営者が語る”観光立国プラン”【K16-4D #8】

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「成長するトラベル市場のビジネス・チャンス」【K16-6D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その8)は、ヤフーによる一休買収の裏側と、日本にもっと旅行者を呼ぶためのアイディア等を議論しました。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 4D
「成長するトラベル市場のビジネス・チャンス」
 
(スピーカー)
篠塚 孝哉
株式会社Loco Partners
代表取締役
 
榊 淳
株式会社一休
代表取締役社長
 
塚本 信二
米ダフル インク
共同創業者
 
(モデレーター)
柴田 啓
株式会社ベンチャーリパブリック
代表取締役社長

「成長するトラベル市場のビジネス・チャンス」の配信済み記事一覧

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【本編】

柴田 一方で、一休さんがヤフーに買われて残念だった点は?

オフレコでもかまいません。

20期連続増収増益のヤフーで感じるプレッシャー

 ヤフーの方がいらしても話せることですが、弊社が上場していた時よりも、利益に対するプレッシャーが強いと感じます。

柴田 なるほど。

 ヤフーさんは20期連続増収増益を継続しております。

9月に入り、ちょうど来年(2017年)下期予算の見直しを行っていますが、以前弊社が上場していた時は、「明日予算を出さなくてはいけないけれど、どれぐらいの数字でいく?」といった創業社長との会話で成立していました。

ヤフーさんはやはり大きい会社なので、一ヶ月位前から担当者の方々が摺り合わせを始め、最後 僕のところに申請が届くという形に変わりました。

柴田 利益重視になると、今後投資はしづらくなるのでしょうか?

 eコマースの流通革命といった事業は利益が下がる形でも進めていらっしゃるので、投資がしづらくなるとは考えておりません。

ただ、きちんと中期的な進め方を提示することが必要になってくると思います。

やるべきことに直線距離で向かって行くよう、マネジメントしていかなくてはならないと考えています。

柴田 一休さんとヤフーさんのディール(取引)は、もしかすると日本のテクノロジー業界における今世紀最高のM&Aなのではないかと僕は考えています。

買収額は1,000億円、さらにキャッシュ(株式交換ではなく現金での買収)での決済でしたよね?

 はい。

柴田 日本で1,000億円のキャッシュディールは中々ないと思うのですが。

森さん(森 正文氏、㈱一休 前代表取締役社長)の立場からすると素晴らしい結果だと思うのですが、残された社員にとって100点満点のうち何点位の結果だったのでしょうか?

ヤフー、一休買収の舞台裏

 M&Aの発表日に実際何が行われたかというと、弊社は上場していたので15時に株式市場がクローズしてからそのことを社員にアナウンスしました。

創業社長である森さんが、一休をヤフーに売却することにした旨を話し、直後にヤフーの宮坂社長がいらっしゃり、話をしました。

その場面で200人ほどいる社員の50人位は泣いていました。

一休という会社に入社し、一休という会社のサービスを愛して止まない社員が多いので、それが売却された直後の社員の反応です。

柴田 複雑な心境だったということですね。

泣くといっても色々な感情がありますが、どのような感情が込み上げて来て泣いたのだと思いますか?

 一言で言うと「悲しい」という感情です。

柴田 なるほど。

 ただこれは売却直後の話です。

今、実際どうかというと、ヤフー側からは「全部指示通り動いてくれ」という雰囲気はなく、僕の責任で業務を行っています。

ヤフーからの出向者も、現時点では希望した方だけ受け入れているので、社員は今までと同じ状況で働いています。

柴田 なるほど。

少し視線が変わりますが、もし榊さんが小澤さん(小澤隆生氏、ヤフー㈱ 執行役員。ヤフーのショッピング事業を統括)の立場になったらまず何を行いますか?

例えばeコマースの投資はストップして全部旅行や飲食に向ける等、僕だったらこうするという意見があると思いますが?

 当たり前のことですが、ヤフーという会社がメディアでトラフィックを持っている間に、eコマースの領域で収益が上がる体勢に持ち込むことを真剣に考えると思います。

このことは実際行っており、その結果一休を買収されたのだと思います。

後は、ヤフーという会社の中にトラベル予約と飲食店予約があり、一休の中にもお客様のセグメントは異なりますが同じ業務があるいうところで、一緒にできるところは統合していく判断をヤフー側にいれば考えるのではないかと思います。

Relux 篠塚さんの経営戦略

柴田 では、またここで視点を変え、篠塚さんに質問です。

イグジット(会社をM&Aなどで売却することやIPOすること)について考えたことはありますか?

篠塚 IPO(未上場企業が株式上場し投資家に株式を取得させること)やM&Aについては勿論考えます。

柴田 では具体的に、自分にとって理想のイグジットとはどういうものだと思いますか?

篠塚 抽象的な回答になってしまいますが、私はプロダクトを重要視しているので、プロダクトが伸びる仮定で最も良いオプションを選びたいと思っています。

柴田 例えば時価総額はこれぐらいになりたい、先程の森さんのストーリーのようになりたい、IPOしたい、NASDAQに上場したい等色々あると思いますが。

創業者間で議論していますか?

篠塚 議論はしていますが、私は大それた目標を目指す経営スタイルではありません。

資本金200万円を準備し、生き残るために何でもするといった気持ちで、ビジョンもなく一人で起業しました。

現在も、その気持ちに変わりはありませんが、Reluxというサービスを通じ、世の中の旅行体験をより良くしたいと考えています。

Reluxを利用すると旅行が少し良くなると感じていただけることをやり続けているということです。

「目標を絶対達成する」という気概は持っていますが、半年ないしは1年位の事業計画を着々とこなすというだけで、イグジット時の一休さんのように時価総額1,000億円を目指すといった気持ちは全くありません。

現時点では上場をしていないので、その部分を伸ばす意志があり、サービスも拡大したいとは考えますが、それ以上でも以下でもありません。

柴田 なるほど。

DUFL塚本さんの経営戦略

柴田 次は塚本さんに対する質問ですが、アメリカでアメリカ人の共同創業者とDUFLを起業されていますが、立ち上げる仮定で色々なことを話し合ったと思います。

その中で、イグジットや会社のフェーズについてどの様な事を話し合いましたか?

塚本 この内容はオフレコベースでお願いします。

(オフレコのため非開示となっております)

柴田 なるほど。

塚本 昨日発表されたタイムリーな話題ですが、「Washio」という弊社からすると非常に頑張って事業に取り組みしていた米国のオンデマンド洗濯アプリが17億円程度調達した後に、シャットダウン(倒産)しました。

洗濯代行サービス「Washio」の倒産にみる、オンデマンドサービスの限界

24時間程度でクリーニングを返却するという無理なビジネスモデルではあったのですが、多くの人達にとって「Washio」がなくなることは、生活サイクルの一部が無くなったということに本気で嘆いていました。

サービスを提供するには責任が必要です。

ライフスタイルに入り込む以上、それが無くなるということだけは避けたいと真摯に考えています。

柴田 なるほど。

段々時間も無くなってきましたので、最後の質問は一つ二つということにしたいと思います。

また、少し視点を変えますが、もし自分が日本の観光庁長官だったと仮定して、観光振興のため100億円の予算が下りたとした場合、この予算を何に使うか教えていただきたいのですが。

篠塚 柴田さんとは事前に綿密なブリーフィングを行ったのですが、先程から全く想定外の質問ばかり飛んできています。(笑)

今の質問も全く聞いていない内容なので、ゼロベースで考えなくてはならない状況です。

この話をしながら、実は今少し時間を稼いでいます。

(会場笑)

もしも自分が観光庁長官だったら

塚本 では、オンライントラベル業界でありながら少し違ったポジションでもあるので、言いやすい僕から始めて良いでしょうか?

100億円があれば、まず欧米からの集客に使います。

先程の通り、アメリカからの旅行者は日本に来る旅行者の5%程度しかおりません。

米国に住んでいると、米国人は日本に対して「宇宙に行く」というぐらい遠いイメージを持っていると感じます。

実際は、サンフランシスコからだと10時間程度で日本に来ることができるので、ロンドンやイタリアの方が遠いです。

多分、アジアからの旅行者は、特別なことをしなくともこれからも来ると思います。

一方、GDPの大きいアメリカや欧州では「Far Eastと言うだけに」といったジョークが使われるほど日本は遠いイメージを持たれており、その上テレビつけると「Discover China」の宣伝ばかり流れている状態なので、そこをなんとかしなければと感じます。

観光庁長官になることはないですが、100億円があればそのグリーンフィールドに利用すると思います。

柴田 アジア以外からの旅行客を獲得する方法を考えるということですね。

 今の話から考えると、僕は旅館のビジネスを行っているので、やはり旅館を外国の方に進めたいと強く思います。

例えば、欧米人の友人が日本に来て、何をすべきか問われた時、僕は旅館に行くことを勧めています。

京都であれば俵屋さん、柊家さん、炭屋さん等、お寺の中に泊まるような経験が出来る旅館があります。

それらの旅館を予約するよう話すと、彼らは必ず「値段が高い」と言います。

高いと思ったとしても行くべきだと勧め、実際に泊まると彼らはものすごく喜んで帰って来ます。

これは欧米の方々の特徴だと思います。

「What is 旅館?」ということを欧米の人達に発信すべきだと思います。

柴田 では、そのためには100億円をどのように使いますか?

 やはりウェブ上のコンテンツに使います。

欧米の特殊なマーケットだと思いますが、「旅館に泊まって良かった」という情報が、キュレーテッドメディアにしっかり残るよう攻めていくべきだと思います。

柴田 弊社の「trip101」でもその取り組みをしたいと思います。

 はい、そのような取り組みが必要だと思います。

実際、先程の旅館から話を聞くと、泊まっている客層は例えばフランス人のLGBTの方が多いといったように非常に偏っていることが分かります。

特殊なマーケットにその市場は存在しているので、そこを狙うメディアに発信することは有効かと思います。

柴田 なるほど。

篠塚さんは考えられましたか?(笑)

篠塚 今の間、だいぶ考えました。(笑)

私は「変数が何か?」考えました。

日本のパスポートを持っていると気付きませんが「入国難易度」、国から国への移動である「交通手段」、そして「現地の体験」という3つの変数があると思います。

飛行機の発着数は、そのまま訪日旅行者数に影響します。

私であれば、まず安全を担保するためセキュリティーシステムを高めつつ、入国難易度を下げます。

そして、日本には国際空港として利用できる設備の整った空港が多く存在するので、それらの空港で航路を増やすことを考えます。

この2点に予算の90%程度のお金を使いたいと思います。

体験については既に高いレベルを持ち合わせていると感じるので、榊さんのお話の通り情報を流すということで良いと思います。

この点に残りの予算10%程度を利用したいと思います。

柴田 ありがとうございました。

では最後に、用意いただいたスライドがあるのでそれをベースに進めます。

塚本さんは若干特殊ですが、ここにいるメンバーは旅行のプロです。

インサイダーが勧める、とっておき、お忍びの旅行先についてシェアしていただきたいと思います。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/鎌田 さくら

続きは 【最終回】トラベル業界の経営者がこっそり薦める「とっておきの宿」 をご覧ください。
https://industry-co-creation.com/industry-trend/9860

【編集部コメント】

続編(その9)では、番外編の議論として、旅行のプロでもある登壇者がオススメする宿をご紹介頂きました。必見です。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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