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「大人の教養シリーズ『読書』〜ビジネスパーソンこそ本を読め!(シーズン3)」、全10回シリーズの(その8)は、シニフィアン朝倉 祐介さんが読書歴を紹介します。小説が大好きだった少年時代、競馬の騎手の候補生になってから、社会人になってからの読書を振り返ります。朝倉さんが選んだ1冊、そして本当に影響を受けたという3冊の雑誌とは?ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティング様にサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 11E
大人の教養シリーズ「読書」〜ビジネスパーソンこそ本を読め!(シーズン3)
Supported by リブ・コンサルティング
(スピーカー)
朝倉 祐介
シニフィアン株式会社
共同代表
北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員CDO(チーフデータオフィサー)グローバルデータ統括部 ディレクター
関 厳
株式会社リブ・コンサルティング
代表取締役
(ホスト)
嶋 浩一郎
株式会社博報堂 執行役員/株式会社博報堂ケトル エグゼクティブクリエイティブディレクター
渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授
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▶大人の教養シリーズ「読書」〜ビジネスパーソンこそ本を読め!(シーズン3)
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最初の記事
1.シーズン3突入! 経営者が自らの読書を語り、影響を受けた一冊を語る
1つ前の記事
7. なぜ量が質に転化するのか、論文から読み取るビジネスへの学び
本編
朝倉 北川さんの話を受けた後だと、話すことが何もなくて困ってしまうのですが(笑)、自分の経歴とその時何を読んでいたのかをつらつらと書いてみました。
僕も北川さんと同じく兵庫県西宮育ちです。
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朝倉 祐介
シニフィアン株式会社
共同代表
兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の調教育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社を経て、大学在学中に設立したネイキッドテクノロジー代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、シニフィアンを創業。同社では、Post-IPO/Pre-IPO双方のスタートアップを対象とする経営支援事業、並びにIPO後の継続成長を目指すスタートアップを対象とした産業金融事業を通じて、スタートアップに対するリスクマネー・経営知見の提供に従事。主な著書に『論語と算盤と私』『ファイナンス思考』。株式会社セプテーニ・ホールディングス社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。
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小中学生の時は基本的に小説が大好きで、日本人では芥川龍之介や筒井康隆が本当に好きでした。
▶芥川龍之介(新潮社)
▶笑犬楼大通り 偽文士日碌(筒井康隆ホームページ)
筒井康隆にちょっと人格を歪められた感じがあるんじゃないかなという気がします(笑)。
▶小説家 筒井康隆さん「社会への違和感 創作の源」|NIKKEI STYLE
司馬遼太郎はテッパンですね。
あとは、これだけ異質ですけれども、『グミ・チョコレート・パイン』、そういうものが好きでした。
騎手の候補生時代は血統辞典を熟読
朝倉 中学校を卒業後、競馬の騎手の候補生になりましたが、その時は競走馬の血統辞典(『サラブレッド血統事典』をずっと読んでいました。
(一同笑)
ヘイルトゥリーズン系やノーザンダンサー系など、いろいろなブラッドラインを遡っていったらいろいろな馬がいて、そうした祖先の血が子孫の素養にこう効いているのかとか、リファール系というものすごくマイナーな血統がこんなところで生きているのかとか、そういうことを知るのが好きでしたね。
『鍛えて最強馬をつくる』という本はミホノブルボンという馬を調教した戸山為夫調教師が書かれた本ですが、独自の視点による競走馬の調教論が述べられています。
▶久米裕選定 日本の百名馬 ミホノブルボン(アイケー血統研究所)
競馬は2億円、3億円するすごく高い馬が1,000万円の馬と一緒に走る世界ですが、競走馬には距離の適性があって、だいたい日本の平地のレースだと、最短は1,000mから最長は3,600mで、短いものはスプリンター、長いものはステイヤーといわれます。
戸山調教師には、基本的に競走馬は全部中距離ランナーで、スプリンターやステイヤーは血統とはあまり関係なく、どれだけ鍛えるか次第なのだという持論がありました。
なかなか伝わらないかもしれせんが、当時、栗東トレーニングセンターの坂路という、普通1日2本走ったらどの馬もバテバテになる坂道を、ミホノブルボンに1日5本走らせ続けるという鬼のようなスパルタ調教を続けて、皐月賞とダービーの二冠を獲らせたという逸話があります。
そうか、鍛えたらなんとかなるんだなと思いました(笑)。
(一同笑)
渡邉 10倍のトレーニングをすると、質的に違うというような。
朝倉 そうなんですよ。
渡邉 関さんの目が今すごく輝いていますね。
関 私は高校時代、競馬ばかりやっていたので、まさかここでミホノブルボンの話が来るとは思わずに、賛成と言うわけではないのですが(笑)、非常に面白いですよね。
朝倉 そうですね。その時はそういう馬の本ばかり読んでいましたね。
社会人になってからは人の生い立ちや一生を書いた本が好きで、この間亡くなられた三井住友銀行の西川善文さんの回顧録『ザ・ラストバンカー』や『エメラルド王』を読みました。
『エメラルド王』は、コロンビアでエメラルドを採る日本人の話で、最後マフィアに撃たれたという話です。
そういう本が好きだったなと思って、つらつらと挙げました。
そんなたいした話はありませんが、今日のこの場はどんな場かあまり分からずに、ファーストインプレッションを大事にしようと思って、事前の下調べをせずに来ました。
座右の書を表明する居心地悪さ
朝倉 「仕事のための教養」とか、「ビジネスに効くアート」のようなアプローチはすごく苦手で、「効かなくていいじゃん」というように、それはそれとして、自己目的として楽しめばいいのではないかと思っています。
ただ、ビジネスカンファレンスの文化枠では、何かしらビジネスに関連付けて話さなくてはいけないし、取材などでもたまに仕事と本の関係を聞かれることがありますよね?
そういう話をすることを期待されている場では、何かいいことを取り繕って言いますし、本がビジネスに役に立たないわけはないので、役に立つような切り口で話しますが、何かそういう打算的な感じが気に食わないというのはありますね。
とは言え、もちろんその時々で、ビジネスや仕事などの実利に効く本はきっとあると思っています。ただ、それにしても、タイミング次第なんですよね。
結局、その時にビタッと自分にはまるものを読まないと、あまり役に立ちません。
僕が会社経営に携わっていた時は、『失敗の本質』を読むと「ああ、同じだ」と強く感じましたし、『「空気」の研究』を読むと、グサグサ刺さるところがありました。
一方で、そういうところから少し離れた時に、ベン・ホロウィッツの名著『HARD THINGS』を読んでも、それほどピンとこずに、「別によくあるよね、これぐらい」と思って、あまり刺さりませんでした。
ですから、その時々に正しいものに当たらないと、効果の効き方も違うのかなという気はします。
あとは座右の書を表明することに居心地の悪さがあります。
今回、事前に自分が影響を受けた本を挙げるというお題をいただいて、これは試されているなという気がしました。
読書というのは、他人の目を気にせずに自分一人でこっそり本に向き合う行為である一方で、「自分が影響を受けた本」を外に発信する時は、どうしても、外の目が気になり、自分が本当に何が好きか、何に影響を受けたかよりも、「何に影響を受けたと思われたいか」という邪念を持って本を取り上げるわけです。
人によっては教養書や古典を挙げたり、「プラトンの『国家』が好きです」と言ってみたり、歴史書を挙げてみるとか、ちょっと変化球的に小さい時に読んでいた絵本を挙げてみるとか、やり方はいろいろあると思いますが、特定の本を挙げる以上、「どう思われるか」という自意識から逃れることはできないので、公の場で座右の書を紹介するというのはものすごくやりづらいなと思いました。
大人にもすすめたい知の道先案内書『小論文を学ぶ』
朝倉 自意識に陥ったあまり何を挙げればいいのだろうと悩んだ末に挙げたのが『小論文を学ぶ』という本です。
嶋 これは僕も読んだことがありますが、これを選ばれたんですね。
朝倉 ええ。これは大学受験の参考書で、小論文の書き方を書いている本ですが、正直、別にこれを読んだからといって、たぶん小論文を書くのが上手にはならないと思うのですよね。
(会場笑)
長尾 達也さんという名古屋の高校で倫理や小論文の授業を担当していた先生が書いた本ですが、なおかつ山川出版社から参考書が出ているのが面白いところです。
「知の構築のために」という副題がついていて、大学受験をする高校生を念頭に書かれた本ですが、この本の素晴らしい部分は第2部です。
著者は、小論文の参考書というパッケージをもってして、高校生たちにリベラルアーツというか、知の道先案内をしているのです。
第2部だと、例えば、「近代的知のマトリックス」という図があって、横軸に世界観・自然観、人間観・社会観、学問方法論、縦軸に二元性、分析性、合理性といった、まさにさきほど北川さんのお話にあった還元主義もここで出てきます。
渡邉 出てきますね。
朝倉 こうした近代的知のマトリックスをいかに打ち破るかが現代的なテーマなんだといったことが書かれています。「20世紀的知のマトリックス」というのは、多元主義であり、システム思考であり、複雑系なんだみたいなことを、高校生に読ませるのです。
大人になって今読んでも非常に面白いと思います。結局小論文の書き方は全然教えてくれなくて、けれども、これから大学に進学したい、学問をしてみたいと思う若い人たちに、小論文の参考書という体(てい)を取りながら、今言ったように”知の見取り図”を示しています。
渡邉 これは「トロイアの木馬」(※)のように小論文という姿で高校生の心にすっと入り込んで、中から本質的な知という兵隊が一気にたくさん出てきて、それによって征服されていくみたいな感じなんでしょうか?
▶編集注:古代ギリシャのトロイア戦争で使われた、巨大な木馬の装置のこと。兵士を中に潜ませて敵地へ侵入し、内部からの攻略に成功した。
朝倉 そうですね。山川出版社からこの本が出ているのも非常に面白いところだと思いますが、編集者と作家がノリノリで書いたのだろうなという様子が窺えて、面白い本だなと思いました。
これが影響を受けた1冊で、確かに考え方に役立ったなと思いますが、一方で本当に影響を受けたのはなんだろうと振り返ると、高尚な本というよりも、実は雑誌なのではないかという気がしています。
本当に影響を受けたのは3冊の雑誌
朝倉 『LOGiN』は昔のパソコンのゲーム雑誌ですが、これを読んでいなかったらこんなにパソコンやインターネットに興味を持たなかったと思いますし、JRAが出版している月刊誌『優駿』を読んでいなかったら競馬の騎手になろうとはたぶん思わなかったと思います。
▶編集者と読者の距離が近いパソコンゲーム誌『ログイン』(ゲーム文化保存研究所)
3つ目は東京大学新聞社の大学紹介のムック本(『東大は主張する』)で、別に東大を受験するつもりは全くなかったのですが、たまたま手に取って読んでみたら面白そうだったので、行ってみようかなと思ったのです。
高尚な本もあるけれど、本当に影響を受けたのは時事性のある雑誌だったのかなと、今回振り返りながら思いました。
渡邉 ガチで影響を与えている3冊じゃないですか。
朝倉 いや、本当はもっと高尚な本を取り上げたいんですよ。
(一同笑)
嶋 さっきのタイミング論でいうと、雑誌のほうが人生の要所要所にうまいタイミングで入ってくるみたいなところがありますよね。
朝倉 そうですね。ネット化が進むにつれてだんだん雑誌が元気をなくしているのは極めて寂しいことで、ウェブメディアとはまたちょっと違うんだよなという気はしています。
▶落ち込み止まらぬ雑誌 電子化路線も苦戦 – 産経ニュース (sankei.com)
嶋 「雑」であるところがすごく大事。
渡邉 敷居は低いし、かつ今を切り取りながらジャンル横断の情報を扱うので、その時に興味を持った自分にちょうどタイムリーなものが入ってくるというのが、きっとあるんですよね。
朝倉 (頷いて)行動を変えたという意味で言うと、間違いなくこの3冊は行動を変えています。
渡邉 自意識の末に、この自己開示があるという(笑)。
朝倉 そうですね、正直に言うと、ここですよね。
渡邉 素晴らしい。カッコいいですね。
嶋 『小論文を学ぶ』は再読します。ポチります。
渡邉 僕もポチろう。もうすでに検索しました。
嶋 B&Bでも売ります。
朝倉 大人が読んでもいい本だと思います。
渡邉 北川さん、ここの数冊を見て、いかがでしょうか?
宇多田ヒカルの歌を聴いて海外に行くことを決めた
北川 僕も本当に影響を受けたのは、宇多田ヒカルの歌だったりするんですよね。
宇多田さんが海外出身(※)なんだと思って、僕も海外に行こうと思ったのが、留学した理由でしたね。
▶編集注:ニューヨークで生まれ、親の仕事の関係で日本とニューヨークを頻繁に行き来していた。
渡邉 何その、一見カッコ悪い自己開示こそカッコいいみたいな(笑)。
(一同笑)
北川 本当に憧れたんですよ。
宇多田ヒカルはコロンビア大学だったので、間違えたのですが(笑)、海外に行こうと思った理由は本当にそうです。
▶編集注:北川さんはハーバード大学で数学と物理学を専攻し、同大学院物理学科博士課程を修了。
今、朝倉さんの話を聞いて、本当にそうだよなと思いました。
渡邉 面白い(笑)。
実は僕も北川さんと同じく1985年生まれです。宇多田ヒカルの歌が流れてきた時の自分との年齢の近さと作曲能力、英語能力にビビるみたいなことはありましたよね。
北川 ありました、ありました。
渡邉 さあ、夢中で話していると残り時間が少なくなってきました。
このままの流れで関さんのお話に入りたいと思います。
(続)
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続きは 9.リブ・コンサルティング関さん「1,000万円の読書投資には、それ以上のリターンがある」 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美
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