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【名言】「100年先を見て責任を取る」太宰府天満宮・西高辻氏が語る決断の仕方【F17-2C #3】

ICC FUKUOKA 2017 Session 2C「伝統から革新を生み出す挑戦者の取り組み」

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「伝統から革新を生み出す挑戦者の取り組み」【F17-2C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その3)は、太宰府天満宮の西高辻さんと春光院の川上さんに、100年先を見据えてどんなアクションを起こしているかについて議論して頂きました。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております

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▶「伝統から革新を生み出す挑戦者の取り組み」の配信済み記事の一覧

中竹 では、今ちょっと綺麗な話をしましたが、今日テーマは伝統から何を挑戦して革新したかということです。

今日はせっかく来ていただいた皆さんに何か持ち帰ってもらうために、ここにいる方もあとから読まれる方も、こういう伝統の中でどう切り開いたか、ということが結構学びとか気付きになると思います。

その点、苦労話も含め、ジレンマの中で戦った部分とか生み出した部分をお話いただければと思います。

100年後、200年後に「あいつやっぱり正しかったな」

川上 私はジレンマをあまり感じない人間なので、そこは難しいんですが、

中竹 鈍感力ですかね。

川上 鈍感というか、人の意見は聞くんですが、判断されるということに対しては、現時点での良い悪いの判断はあまり意味がないと思っていて、結局伝統産業の世界は基軸、時間のスパンがすごく大きいんですよね。

今これがダメだから100年後、200年後それが本当にずっとダメだということは、まずないと思うんです。

だから、革新は最初は違うことをやろうとするわけなので、恒常性に反することをやるわけですよね。

新しいことをやろうとする、安定を奪おうとするので、もちろん叩かれるんですよね、今のままでいいと言う人はいっぱいいるので。

でも新しいことをやらない限り絶対残らないわけでもあるし、言ってみれば変化が起こることによって維持ができる、という考え方で考えていくと、もちろん叩かれるのは当たり前ですが自分がやることに対して今、判断されてもどうでもいいやと思っています。

結局100年後、200年後に「あいつやっぱり正しかったな」でいいと思うんですよ。

その程度で考えているので、あまり苦労はないですね。

釈迦が世界で一番最初の認知心理学者

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中竹 大勢の外国人の方が川上さんのところに(座禅を体験するために)来るわけですが、それに対するアレルギーみたいなものは地域にあったんですか。

川上 海外の方が来ることに対するアレルギーはないんですが、一番アレルギー反応的に思われたのが、私のマインドフルネスに対する取り組みですよね。

科学を使って宗教を分解しよう、解明しようとするアプローチは今でも批判を浴びています。

太刀川 確かに見たことあります。

川上さんの印象的な写真で、脳波を計測する機械をガチャっとかぶって撮ってるやつ見たことあります。

川上 同志社大学でNIRSといって、近赤外線を使って脳の血流を測っているんです。

ICC FUKUOKA 2017 Session 2C「伝統から革新を生み出す挑戦者の取り組み」写真提供:川上さん

瞑想中は脳のどの部分が活発になっているか、なっていないかというのを測っていたんですが、意外とお坊さんって嫌がるんですよね、科学が入ってくるのを。

何故かというと、宗教家は多分そうだと思うんですが、宗教と科学は一般論でいうと正反対の場所にあるものだという考えが多いのですが、そこのところをぶっちゃけ言うと一緒だろう、というのが僕の考え方です。

ただお坊さんがアレルギー反応を示す理由は、座禅とか宗教的な儀式というのは崇高なものであって、理解できないものである、ということが前提にあるんですよね。

でもそれを理解しようとするのは、ある意味でのスピリチュアルなものを奪ってしまうとか、自分の権威をキープしているもの、いってみれば崇高なイメージとかスピリチュアリティとか、そういうものを奪われると思ってしまうんですね。

だから私がやっていることに対してかなりの反感はありますね。

中竹 分かりやすいですね、確かに仏の世界に科学が進入すると、なんかご法度な感じがありますもんね。

川上 仏さん、それこそ釈迦が世界で一番最初の認知心理学者じゃないかというのが僕の見解でもあるし、アインシュタインも似たようなこと言っているので、科学を使ってもいいんじゃないかなと思います。

仏教は理論的なんですよね。

だから科学的アプローチを使ってもいいし、でも一歩引いてみるという考え方は元々仏教にあるので、そこのバランスを上手く考えていくのが仏教の伝統と革新じゃないかなということで、私は、マインドフルネスをやりつつ、今だに禅僧でもあるという形です。

中竹 面白いですね。

100年に1回の大改修を迎えた「竈門神社」での取り組み

中竹 今 仏教の話を聞きましたが、神道の世界ではどうでしょう。

西高辻 革新という意味でいうと、スライドをお見せしますが、

中竹 今日スライドが素晴らしいので、ラッキーだと思ってください。

西高辻 取り組みとしては、太宰府天満宮では様々な現代アートのアプローチを行っていますし、兼務している竈門神社でも色々な取り組みを行っています。

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太宰府はもともと7世紀から12世紀まで九州を治める役所も置かれ、九州の中心だった場所です。

その役所の北東方角にあたる鬼門封じの山で、天神地祇をお祀りした場所に鎮座するのが竈門神社です。

空海とか最澄もみんなここに入って、特に最澄は1年以上いて国家鎮護の祈願をしてその後遣唐使として渡った、という場所です。

他にも山内に巨岩の古代の祭祀遺跡も残っており、江戸時代には修験道の聖地として信仰され、山伏達が住んでいた場所でもあります。

この竈門神社は数年前に100年に1回という大改修に当たる年で、何かできないかと考え、大きな取り組みを行いました。

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本殿は昭和初期に再建されたものですが、銅板を葺き替え光が入りやすいように修繕を行い、我々が執務をする社務所、御守りや御札をお渡しする授与所も、大きく変えました。

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中竹 綺麗ですね、これ。

西高辻 すごく高さがあるところで寒いので、2つリクエストを出して、1つは屋内型にして欲しいということと、もう1つは先程 川上さんもお話してあったこととも重なりますが、100年後のスタンダードを作って欲しい、という話をしました。

やはり先程おっしゃったように、100年、200年、その先の単位で神社はものごとを考える時に、今ではなくて100年後に時間軸を置こう、ということを考えてやりました。

その中で、授与所の壁にはポルトガル産の淡いピンクの大理石を使用しました。

神社は木のイメージがすごく強いんですが、設計をお願いしたインテリアデザイナーの片山正通さんが、石で変わらないものを表したい、そして色んな方の願いごとが叶うようにという願いを込めて、細く短冊状にした石を壁に貼り合わせています。

ICC FUKUOKA 2017 Session 2C「伝統から革新を生み出す挑戦者の取り組み」 ICC FUKUOKA 2017 Session 2C「伝統から革新を生み出す挑戦者の取り組み」

また、色んな色を使って、好きな色で絵馬を書ける台を設けています。

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桜が御神紋なので、桜を壁や上部にあしらっています。

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外にはイギリスのジャスパー・モリソンというプロダクトデザイナーの方に作ってもらったベンチを置いています。

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縁結びのお社でもありますので、カップルが来て座れる御影石でできたベンチで、座面が回転します。

改修後4年程経ちましたが、例えばお参りは当時20万人ぐらいだったのが、今は100万人近くお参りをいただけるような神社になりました。

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100年先を見て責任を取る

西高辻 初めこのような形で、と提示した時に、内部的にも99%の方が反対されましたが、私と父で、100年間の責任を取れるのは自分たちだけだ、という想いもあったので、それで決めてやりました。

逆に先を見てどうあるかということを考える、川上さんの話しではないですが、そういう時間スパンを持って考えることが大事だと思ったのと、やることに責任を取りきると。

1つは歴史も調べて、どういう歴史があってどういう取り組みを過去に行っているかということを、理論武装ではないですが、それを守った上で自分はどこまで踏み出すか、というのを考えてやった事例です。

中竹 素晴らしいですね。

最後の言葉の「100年先を見て責任を取る」、この言葉皆さんメモった方がいいですね、今日のキーワードだと思います。

実はまだ他にもあるんですが、西高辻さんがやったチャレンジの1つの例ですね、ありがとうございます。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/城山 ゆかり

▶続きは 327年の伝統を持つ「山本山」と取り組むリブランディング(NOSIGNER太刀川) 

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【編集部コメント】

続編(その4)では、太宰府天満宮の西高辻さんと春光院の川上さんに、100年先を見据えてどんなアクションを起こしているかについて議論して頂きました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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