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「伝統から革新を生み出す挑戦者の取り組み」【F17-2C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その4)は、NOSIGNER太刀川さんに、デザインを用いて伝統に向かう時の2つのアプローチについてお話頂きました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
▶「伝統から革新を生み出す挑戦者の取り組み」の配信済み記事の一覧
中竹 太刀川さんは色んなメディアに出て色んな活動をされていますね。
太刀川 今 正にデザインの話が出てきましたが、NOSIGNERのウェブサイトを開いてください。
デザインを用いて伝統に向かう時に、大きく2つのアプローチがあって、1つは既に伝統が流れている状態、例えば今の西高辻さんの状態は既に伝統という脈が流れている状態を現代の人達が楽しめるとか、現代が求めるものとピントを合わせ直すという、ピントの合わせ方の話があるなと思います。
新しいお客さんと繋がり直さなければいけない
太刀川 例えば僕等でいうと「和える」というブランドがありますが、「和える」は伝統産業ですごく伸びているブランドです。
そこのデザインディレクション、全商品のデザインとロゴ等のグラフィックをやっています。とにかく伝統産業は市場が小さくなっていっているんですね。
この20年間で5分の1ぐらいになってしまっているんですけど、そんな中で矢島里佳さんという社会起業家が始めたんですが、ひょっとしたらベビー・キッズ用品だったらチャンスがあるんじゃないかと。
ベビー・キッズの伝統ブランドを作りたい、0から6才のブランドを作ろうといって作り始めました。
このようなブランドで、京都と東京にお店が出ています。
伝統産業で新しい分野のブランドを作って成功するのはなかなかレアなことなので、割と伝統産業でも代表的な成功事例として扱ってもらっているところはあるんですが、これのポイントは、新市場の創出なんですね。
新しい市場はどこにあるのか、今まで作っていたものと大して変わらないけれど、お客さんが変わっただけです。
今持っている伝統軸の中でだんたん下がってきてしまっているんだとしたら、新しいお客さんと繋がり直さなければいけなくて、その関係性の接続の仕方を変えるのが1つ目の分かりやすいアプローチなのかなと思います。
「デザインしない」というリブランディング
太刀川 それとは別に、ホームページにはまだ載せていないのですが、海苔とお茶の「上から読んでも山本山。下から読んでも山本山」さんという会社がありますよね。
最近、その山本山のリブランディングをしていて、山本山の11代目の山本奈未さんたちと2018年の本店リニューアルに向けて進めています。ロゴもデザインし直しました。
山本山さんのウェブを見てもまだ何も変わっていません、ウェブはこれからやります。
▶ 山本山11代目が語る、“50年先を見据えた”リブランディングにおける「前提条件」
どう変えたかというと、山本山は今年327年目になるのですが、煎茶を日本で初めて扱った茶商であり、江戸時代に玉露を開発したりしている、古いお茶屋さんであり海苔屋さん。江戸の老舗なんですね。
太刀川 海苔屋さんのイメージがすごく強くて、今は売上の8割が海苔ですが、お茶屋さんの精神は今でも生きてるし、そういうところが世の中に伝わってないのはもったいないと思いました。
ロゴを変える時に、彼らが持っている江戸時代の資料とかをいっぱい見ていったら、元々山本山ではなくて、山本嘉兵衛商店だったんですね。
そして山本嘉兵衛商店だった時のちらしというか広告が残っていて、山本嘉兵衛という字がめっちゃかっこいいんですね。
あの時代の公認書体というのは御家流というんですが、それで書かれた「山本」の字がすごくかっこよかったので、その「山本」の字をそのまま引っ張ってきて、327年ぐらい前のフランスベースの書体とそれをマージさせて、今までどこからやってきたか分からないアルファベットと50年前にCMをうつ時に作られた「山本山」の字を、もう1回江戸時代から続く山本嘉兵衛商店の源流に戻す提案をしました。
太刀川 源流には可能性があるからそっちに戻ったほうがいいんじゃない、ということで、新しいものをデザイナーが加わってデザインしているんだけど、その核となるロゴは「デザインしない」ことを選んだのが山本山のリブランディングです。
それはパッと見ても分からないかもしれないんですけど、文脈としてはそういう意識で繋げていくべし、というのは、インターナル(内部的)にはすごく分かりやすくなっていくわけですよね。
デザインが伝統へ向かう2つのアプローチ
太刀川 伝統に深く繋がっていくこと、新しいお客さんと繋がっていくこと、その両方をこれからやらなくてはならないわけです。
この両方をバランス良くできて初めて、「うん、良いものになった」という感覚がでてきます。源流と繋がっているにも関わらず、今の人達とも手を握れている、それが、適切に伝統を継続できている状態なのではないでしょうか。
中竹 西高辻さんのお話と逆といいますか、100年先を見据えて責任を取るというパターンと、太刀川さんは逆に更に深く歴史の奥に入り込んで、そこから「デザインしていない」と言っていましたが、リデザインしたという感じですかね、
太刀川 そうですね、掘っていくというか、どのプロジェクトでもそのプロジェクトでしかできないこととか、そのプロジェクトにあるポテンシャルが最大化したら、やっぱり上手くいくわけですよ。
100%恵まれたプロジェクトというのは世の中にはなくて、ただそのプロジェクトでしかなし得ない重要なコンセプトが、どのプロジェクトにだって掘っていくとあるかもしれないわけです。
そこに流れてきたものを受け止めないでデザインだけをパッと作っても、なかなか上手くはまるか分からないんですよね。
なので、そういうことはすごく意識しますし、それがはまったデザインというのは、玄人受けなのかもしれないですけど、少なくても見る人には伝わったりするんですよね。
「そういう文脈と接続しようとしたのね」ということが。
そこはなんと言えばいいんですかね、ゴニョゴニョとした感じで申し訳ないんですけど、そこと接続することは、僕の中ではものすごく大事なことのような気がしてるんです。
表現をするというより「しない」んですけど、そこで繋がりをどんどん見つけていくということは、いかに表現に制約を作っていくかということでもあるので、その適切な制約を見つけてそこに落とし込んでいくというのは、すごく大事なことのような気がしています。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/城山 ゆかり
続きは 縦割りになりがちな京都の伝統工芸をチームにして世界に挑む(電通 各務) をご覧ください。
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【編集部コメント】
続編(その5)では、電通の各務さんに縦割り化している京都の伝統産業をどう横に繋ぐかについて、手がける「GO ON」プロジェクトと併せてお話頂きました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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