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「創造と変革をドライブする経営とは何か?」【F17-5A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その6)は、「経営者が今の事業に盲目的にならないためには」「日本のIT企業が世界的プラットフォーム企業になるには」というテーマで議論しました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年2月21日〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 5A
創造と変革をドライブする経営とは何か?
(スピーカー)
鉢嶺 登
株式会社オプトホールディング
代表取締役社長グループCEO
村上 臣
ヤフー株式会社
執行役員CMO
山口 文洋
株式会社リクルートマーケティングパートナーズ
代表取締役社長
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授
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【前の記事】
【本編】
琴坂 組織として、社内文化を作っていくパートとして、やはり上に立つ経営幹部、もしくは経営者自身が判断能力を培うとか、自分の事業に盲目的にならないように努めなければならないと思いますが、特に意識されていることはありますか?
自身が取り組んでいることばかりに集中していると、世の中がいつの間にか変わっているということが起こりかねません。
それはどのように防いでいけばよいとお考えですか?
経営者が今の事業に盲目的にならないためには?
村上 非常に難しいですね。
鉢嶺 我々に共通しているのはやはりネット系だということですよね。
ネットの波に乗り続けるということは、至上命題なのかなと思います。
私も一時期、これは波が来ているけれど乗らなくてもいいだろうと判断して、後々になって後悔し続けた経験があります。
常に波に乗り続けなくてはなりません。
琴坂 「波に乗る」というのは具体的にどのようなことをされているのでしょうか。
鉢嶺 これからソーシャルが来る、動画が来る、ゲームが来るといった時に、必ずそこにベットし続けるということが、本業に対しても非常にプラスになります。
それがたとえ飛び地であっても最終的にはプラスになるのだということが、今でこそ分かるのですが、やはり投資家からもなぜ広告代理業なのにゲームをやるのですか?というようなことを言われるわけです。
「そんなことをするんじゃない」という大株主からの意向もあり、結局できなくて、そのことを今でも非常に後悔しています。
琴坂 今は意識的に、ラーニングという意味でのベットをきちんとされているということでしょうか。
鉢嶺 ラーニングもそうですが、どちらかというと、それをやらないと会社が衰退していく怖さがあります。
かつ、そのようにやっていることが、本業にとってもプラスになると。
琴坂 本業にプラスになるかもしれないからという理由でやっているのか、それとも全然実にならないかもしれないかもしれないけれどそれでもやっているのか、どちらでしょうか。
新しい知見を取るためにやられているのでしょうか。
鉢嶺 知見を取るためではなく、むしろその領域できちんと勝ちに行こうと思ってやるんです。
そこで真剣にやったことで得られたノウハウが結果的にマーケティング事業の方に返ってきて、マーケティング事業のクライアントにそのノウハウを提供できたりします。
そのようにサイクルが回っている感じですね。
琴坂 そしてその領域で勝つと。
ただ、それを経営サイドとして見た場合には、そこから学ぼうという姿勢であるということですかね。
鉢嶺 はい。
村上 私は真の意味での、伸び悩み事業のターンアラウンド(事業再生)をやったことがないのですが、それこそネットというのは市場全体が常に人口暴発的な感じで伸び続けているので、そこに乗っている以上は、やはりシェアを取れば伸び続けることが保証されているんですよね。
それは非常に幸せなことで、私もYJキャピタルというCVCのパートナーを務めていますが、投資先を見る時には、どれくらい大きい市場なのか、そのうちどのくらいのシェアが取れるのか、そしてそのやり方を判断します。
そこに乗っかっている以上は、市場が大きければ、10%でもシェアを取れていれば、結構な額になるわけです。
しかし市場が小さければ、シェアを100%近く取っていたとしても売り上げは知れていますし、結構厳しいね、という感じになります。
今ヤフーがEC(Eコマース)革命ということで、ECに力を入れていますが、それは日本のネット広告市場が2兆円ちょっとくらいのところにあり、EC化率はまだ10%程度ですから、全体は何十兆円、リテールを含めれば100兆円規模の市場であることからすると、まだまだポテンシャルがあります。伸びることが約束されています。
ネットも伸びています、ECもネット化率も上がるでしょうと考えると、やはりフルベットした方が、実入りがいいよね、ということで積極的に取り組んでいます。
琴坂 その時に、村上さん独自のアイデアを作っていくというか、伸びているから何でも投資する、ということではもちろんないと思いますが、その辺りはいかがですか?
各事業にユーザー目線で物申す
村上 私が今やっていることはヤフーの中でも特殊で、私だけクロスファンクショナルに動いています。
どちらかというと、ゲリラ戦傭兵部隊なんです。
ですので、事業責任PLは各カンパニー長が持っていて、ECですと小澤(小澤 隆生ヤフー執行役員コマースグループショッピングカンパニー長)が持っていたりします。そこに対して私は、アプリであるとか、UXなどで社内支援をするコンサルのような立場です。
琴坂 そうすると村上さん自身がナレッジを媒介する部隊になっているという言い方の方が正しいのかもしれません。
村上 そうですね。
私自身はモバイルに関する利益目標や、モバイルのDAU(デイリー・アクティブ・ユーザー数)という目標を持っています。
それに対して、全社を支援することで、どのようにしてレバレッジを効かせて、全体を押し上げていくかということが私個人の使命になっています。
琴坂 それが結果的に会社全体のイノベーションにつながっていくと。
村上 社内で半ば喧嘩のようになることも、よくありますよ。
例えばの話ですが、メルカリの伸びを背景に、ヤフオクを何とかしないとまずいのではないかと指摘することで、ヤフオクと殴り合いになるようなことはままあります。
ただそれは、彼らとしてみれば既存事業のPL責任を負ってやっているということ、そして私が社内でも一歩引いた目線、ユーザーに近い立場で物を言うことを心掛けていることを鑑みれば、いたって健全なことだと思います。
アプリにしても、この動きは変だ、使いにくいというようなフィードバックをしますし、事業に対しても世の中がこのような流れになっている以上、ここはアジャストした方がいいのでは?というように、いろいろなカンパニーを回って物申していくという役割を担っています。
琴坂 ユーザー視線での考え方や発想で、意見をぶつけていくということをなさっているのですね。
鉢嶺 事業家であるお二人を先生としてお伺いしたいのですが、今インターネットのマーケットは伸びています。
ただネットのインフラビジネスは全てアメリカの企業に持っていかれてしまっています。
日本のネット企業が本当の勝ち組になるためには、日本発の世界的プラットフォーム企業を作らないとダメなのではないかという仮説もありますが、そこに対してはどのようにお考えでしょうか。
日本企業が世界的プラットフォーム企業になるには
山口 インターネット産業は広大ですが、弊社では今は完全に、ゼクシィをはじめとする結婚・出会い・婚活のような領域と、車や部品を買うためのカーライフ、そして教育というようにドメインを決めており、ここでインターネットというテクノロジーを使って、人々にどのようなインフラを提供するかということを考えています。
我々の場合、ヤフーさんとは違って、今申し上げた3ジャンルについて国内外のマーケット責任を持っています。
最近の例を挙げれば、オンライン教育市場で世界のプラットフォーム市場になるべく、「Quipper(クイッパー)」という会社を買収しました。
教育分野は、実は日本を含めたこの東アジアから東南アジア、もしくは中南米市場では、まだ我々がオンライン教育プラットフォームのインフラになれるという自信があります。
EdTechというのは、非常にビジネスが難しく、あまり盛り上がっていません。
シリコンバレーを含めた北米マーケットは、完全にレッドオーシャンで勝ち組がほとんどいません。
それはなぜかというと、北米やヨーロッパでは、民間の教育産業が極めて小さいんですね。
大学受験のような画一的な制度があまりなく、塾、予備校、通信教育といった市場が全く育っていないので、EdTechといっても、フリーミアムのラーニングマネジメントシステムなど、全くマネタイズができないところばかりです。
ただ東アジアから東南アジア、そして中南米は、中国の科挙制度に倣った歴史を持つ日本のセンター試験ではないですが、画一的なペーパーテスト社会なんですよね。
そこには教育産業があり、教育環境格差もあり、皆モバイルを持っています。
発展著しく、ライフスタイル系の日常消費よりも、白物家具や自動車など、ライフイベント系の消費形態で、今は子どもの教育を何とかしたいという段階、日本の1970代前後くらいの国情であることが多いです。
塾などもでき始めているので、そこにオンラインの教育プラットフォームをグローバルに展開していこうと、現在6ヶ国ぐらいに参入しています。
しかし、そこにシリコンバレー(の企業)が出てこないんですよ。
なぜだろうかと思い、私もシリコンバレーに行って彼らとよく話したのですが、いわゆる受験制度のようなものを全く理解していないので、そこにビジネスチャンスがあるということも分かっていません。
中国では今、淘宝(タオバオ)などを含めたビッグプレイヤーがオンライン教育を提供していますが、彼らは目前の大規模な中国市場に集中してしまっているので、その間に、東南アジアや中南米市場を取りにいければ、まだ可能性があるのではないかと、頑張っているところです。
村上 弊社の場合はヤフー・ジャパンなので、これはもう仕組み上、契約上、日本語の、日本国内の事業ドメインに限定されているので、その中で動かざるを得ません。
とはいえ、ヤフーの名前を使わなければ日本の枠を出ることも可能ではあるので、今まさに、YJキャピタルで投資先を伸ばし、お互いに利益を上げていくというように、これまでとは異なる戦略で世界に打って出て行っているところです。
YJファンドは2号ファンドということで、投資先はほとんどが海外ですが、200億円規模でやっているので、CVCとしては存在感が出てきていると思います。
琴坂 私からも一つお話しさせていただきたいのですが、もう少し、20年、30年のタイムスパンで考えてみた方がいいのではないかと思っています。
なぜかというと、毎回勝負がついたと皆が思っても、必ず異なるイノベーションが発生して、世の中の形が全く変わっていくということが繰り返されています。
80年代にも、製造業は日本が全部取った、世界の製造業は終わったと思ったのに、やはり全てが情報産業に変わっていったという流れがあり、その流れは今後も続いていくと思います。
現時点での勝負は既についています。
そこでいくら頑張っても無理だと思っています。
ただ、教育など、これからの分野はまだいくらでもあるので、そこに投入していけば、逆に今この出来上がったスタートアップのインフラを使っていけば、まだまだ大きな可能性があるのではないかと思っています。
(続)
続きは 組織変革を実現する社内コミュニケーションとは? をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/Froese 祥子
【編集部コメント】
村上さんの徹底的なUXへのこだわりや、山口さんの事業の可能性を弾く「ロマンとソロバン」、どちらも過去に関連したトピックでの記事があります。勉強になりますのでぜひこちらもどうぞ(榎戸)。
他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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