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「妖怪ウォッチ」のレベルファイブ日野氏が語る”プロデューサーの哲学”【F17-10A #3】

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「 レジェンド対談『龍が如く×妖怪ウォッチ』 – メガヒットを生み出すプロデュース力を徹底議論」【F17-10A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!10回シリーズ(その3)は、レベルファイブ日野さん、セガゲームス名越さんそれぞれにコンテンツを創る際にプロデューサーとして意識していることをお話し頂きました。ぜひ御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。

本セッションは、株式会社グッドラックスリーにサポート頂きました。


【登壇者情報】
2017年2月21日〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 10A
レジェンド対談「龍が如く×妖怪ウォッチ」――メガヒットを生み出すプロデュース力を徹底議論
Supported by 株式会社グッドラックスリー

(スピーカー)
日野 晃博
株式会社レベルファイブ
代表取締役社長/CEO

名越 稔洋
株式会社セガゲームス
取締役
コンシューマ・オンラインカンパニーCOO
エンタテインメントコンテンツ統括本部 統括本部長

(モデレーター)
井上 和久
株式会社グッドラックスリー
代表取締役CEO

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【本編】

井上 日野さんにも伺っていきたいのですが、日野さんはジャンル的にも、「レイトン教授」から「イナズマイレブン」、「ダンボール戦機」、「二ノ国」、「妖怪ウォッチ」も含めて、かなりいろいろなジャンルを手掛けていらっしゃいます。

日野さんの創りたいもの、というような独特な世界観があるような気がしているのですが、この「求められているもの」と「創りたいもの」というテーマの中で、意識されていることなどはあるのでしょうか。

顔が見えている人に向けて作る

日野 名越さんと少し考えが似ているかもしれませんが、本当に自分が創りたいものを作っているつもりはあまりなく、逆に誰を楽しませるかというような、いわゆる甘いものが好きな人のために甘い料理を作るように心がけているような感じがあります。

もちろん作るからには自分の好みや好きなものを存分に活かして作るのですが、やはり、今回は誰に向かって作ろうかなということを毎回意識しています。

名越さんが先ほどおっしゃっていたことも、横で頷きながら聞いていたのですが、明確に顔が見えている人に向けて作ることが、ヒットの最大の秘訣です。

宮崎駿さんも「千と千尋の神隠し」の時に、友人の娘のために作ったということをおっしゃっていたように思うのですが、そういう明確に見えている人を想像しながら作るとブレませんので、いつもそれを心掛けています。

誰に作っているのかを忘れないようにしています。

井上 なるほど。何本も作ってきた中で、途中でうっかり分からなくなってきたりだとか、外してしまったりというようなことはありませんか?

日野 開発中止にします。

井上 やはり中止になるのですか。

日野 そうですね、もう無理だと途中で思う時や、これは誰も楽しませられないと思う時は。

井上 大体どのくらいの企画があって、世に出るのは何割くらいなのでしょうか?

日野 8割くらいは出していますが。

それでも2、3年に1本くらいは、作った後に出さないというものもあります。

井上 なるほど。

名越さんも同じようなことがありますか?

気持ちとリンクしていないと結果は良くない

井上 要は作っているうちに、ターゲットなどが分からなくなったりしたり、ぶれてきたりということが。

日野 聞いてみたいですね。途中でこれは売れないかも、誰も喜ばないかもと思うようなことがありますか?

名越 最近はないけれど、以前はありました。

大きい会社だからというような言い方が適切か分かりませんが、やらざるを得なかったプロジェクトがいくつかあるんですよね。

井上 政治的にとか。例えば?

名越 言えません。それは言えないでしょう。

でも大体そういうケースは、やはり気持ちなども含めてリンクしていないので、結果はよくないですよね。

井上 なるほど。

名越 すごく後悔しますよ。

井上 弊社は小さい会社ですが、「さわって!ぐでたま」のヒットもあるので、IPもの(有名キャラクターの版権を使用した企画)でこんなのをやらないかとお誘いを頂くことがあります。

中には、とても良い話もあるのですが、創りたいというクリエイターが社内におらず、作るイメージがつかないものは作れないということで、お断りすることもあります。

ターゲットの顔が見えてこなくなる時

名越 ゲームというのは、たくさん遊んでくれる方がいるけれど、一方、自分自身も年を重ねていくうえで、段々、ターゲットの顔が見えてこなくなるような時というのはありませんか?

日野 あります。

顔が見えてこなくなるというか、自分が暴走している時がありますよね。

これを、多く配信されるような場で言うと適切でないかもしれませんが、「イナズマイレブン」というタイトルは、今も最新作を作っていますが、最初は子ども向けに作ったんですね。

画像出所:イナズマイレブンシリーズ

▼▼
「イナズマイレブン」は、レベルファイブが製作し、2008年8月22日に発売されたニンテンドーDS用収集・育成サッカーRPG。および、それを原作とした漫画、テレビアニメ、映画、CDドラマ、舞台作品。サッカーをテーマに収集・育成要素を盛り込んだ、異色のロールプレイングゲーム。プレイヤーは弱小サッカー部のキャプテンとなり、部員の勧誘や練習試合を繰り返しながらストーリーを進行させてフットボールフロンティア全国大会での優勝を目指す。(Wikipedia
▲▲

子どもたちが大喜びしてくれるだろうと思って作って、ヒットして、1タイトルで160万本売れるところまでいったわけです。

それでシリーズを重ねていったのですが、その過程で、女性ファンが増えてきたわけです。

井上 ターゲットが想定よりも広がったと。

日野 そうです。女性ファンが増えてくると、その声も聞こえてくるようになり、一部の意見や、子どもたちの意見と異なる声が出てくるわけです。

そうすると、どういうテーマにして、どういうキャラクターにするかというところに、変化が出てくるんですよね。

自分を含めてスタッフが、どうしても自分たちに年齢の近い人たちの意見をより聞きたがるようになってしまうわけです。

子どもたちのために作ったはずなのに、徐々に、よりかっこいい男の子をたくさん出そうとか、自分たちも楽しみたい、自分たちもそういう人たちとセッションして楽しんでいきたいと。

最初はこちら側の人の顔を見ていたのに、別の側でニコニコしている人たちの顔も見始めて、どっちの方向を見ればいいのか分からなくなる、そういうこともありましたね。

一方向へ向かってずっとやり続けた結果、周囲の人たちが、最初のターゲットに向かって一途に思っている”自分”を買ってくれるというのがいいと思うのですが、ターゲットの顔と言いますか、向いている方向がぶれてしまうと、迷走してしまう可能性があります。

井上 「龍が如く」の場合は途中で、迷走したりはしませんでしたか?

名越 スタッフとはありましたよ。

やはり女性が増えていったりとか、最初はほんの数%しかいなかったのに、今では、20~25%、つまり4~5人に一人は女性です。

けれども、気にしていません。

切り捨てたはずの海外でもヒット

井上 海外も、切り捨てていたはずなのに、売れていますよね。

名越 そうなんですよね。

台北や香港のマーケットが良くなってきているので。

売り場を見ていても、10年前と様相が全く違います。

昔は、アジア圏は日本の売り上げに対して数%程度だったのですが、今は日本の売り上げの4割くらいはアジアですね。

井上 4割、すごいですね。

名越 欧米は欧米で難しかったのですが、「龍が如く0」が遅ればせながら出て、自分でもびっくりしたのですが、メタスコアが85だったんですよ。

(編集注:メタスコアとは、「Metacritic(メタクリティック)」というウェブサイトが開示している映画、ゲーム、音楽などのタイトルに対して付けた得点。得点は、さまざまな有名評価サイトでのレビューをまとめて数値化したもので、レビュー指標として参照される)

なんでやねん、と思いました。

結構、今売れているんですよね、欧米でも。

そろそろ20万本近くになります。

よく分からないのですが、そうして積み上げていって、日本の半分以上という状態になったら、下手したらワールドワイドで100万本に到達するかもしれませんよね。

井上 ただ海外で売れているからといって、海外向けの施策を行っているわけではないですよね。

名越 全然気にしていません。和製ゲームで評価されたいので。

極端な話、意見もあまり聞く気はありません。

井上 なるほど。

名越 向こうもそれは気にしていないと思うんですよね。

ローカライズは極めて正確にしたいけれど、ボイスオーバーはしない方がいいのではないか、等いろいろ考えています。

(続)

続きは 「龍が如く」総監督・名越稔洋氏が語る、”想像を超える”ゲームづくり を配信予定です。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/鈴木ファストアーベント 理恵

【編集部コメント】

「龍が如く」に女性ファンがいるように、ターゲットとして外した存在が、結局「顔が見えている人」に一途に作られた作品のファンになってくれるという現象が非常に面白いなと思いました。求心力は伝搬するというか、突き詰めた良さが大事ですね!(榎戸)

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