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「経営を支える副社長たちが語る創業者との二人三脚」【F17-3A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!10回シリーズ(その3)は、創業者の圧倒的個性に「敵わないな!」と思う部分をお話し頂きました。KLab五十嵐さんが語る真田さん、gumi川本さんが語る國光さんがリアルです。是非御覧ください。
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017のプラチナ・スポンサーとして、Motivation Cloud (Link and Motivation Inc.) 様に本セッションをサポート頂きました。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日・22日・23日開催
Session 8A
経営を支える副社長たちが語る「創業者との二人三脚」
Supported by Motivation Cloud(Link and Motivation Inc.)
(スピーカー)
五十嵐 洋介
KLab株式会社
取締役副社長 COO
川本 寛之
株式会社gumi
代表取締役副社長
榊 淳
株式会社一休
代表取締役社長
成田 修造
株式会社クラウドワークス
取締役副社長 兼 COO
(モデレーター)
岩瀬 大輔
ライフネット生命保険株式会社
代表取締役社長
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【前の記事】
【本編】
岩瀬 それでは一つ目の質問です。
それぞれ強みと弱みを補いながら経営を行うという話が、先ほど五十嵐さんからもありました。
こういった場(カンファレンス等)に登壇したり、インタビューが記事化されたりする名物社長4名ですが、社長の皆さんを実際に近くで見てきて、圧倒的な個性に「かなわないな」と思った瞬間や、エピソードをお伺いできればと思います。
五十嵐さんからお願いします。
創業者の圧倒的個性にかなわないと思う瞬間は?
五十嵐 そうですね、毎日圧倒させられているのでどこから話せば良いのかという所があるのですが(笑)
創業者である真田を見ていて、真似できないなと思う能力と、真似できるなと思う能力に分解されるのですが、圧倒的に真似できないなと思うのは、創業者独特のものだと思いますが,
胆力と言うのでしょうか、やはり度胸が違うんですよね。
「できないとは思っていないんだろうな、この人は。」と感じることが節目節目であります。
岩瀬 例として何かエピソードはありますか?
五十嵐 直近のものは生々しすぎて言えないので、もう時効の昔話をすると、KLabでは
ゲーム事業を行う前は、モバイルのSI事業、受託開発を行っていました。
普通の受託をしても面白くない、儲からないので、大規模なモバイルサイトや、高負荷、アクセスが集中し、すぐダウンしてしまいかねないサイトの構築を行っていました。
「弊社は技術者集団で、匠の技でシステムを作るので絶対サイトは落ちません」ということを売りに営業をしていて、実際その点に困っている急成長中のモバイル業界ナンバー1、ナンバー2のポジションにいるような会社さんのシステムの裏方をさせていただいてました。
このような営業を僕自身が自信満々で行い、それまでベンダーであった会社から弊社へ変えていただいたのですが、カットオーバー(本稼働)の日、システムをダウンさせてしまうという事態が起きました。
事業規模がものすごく大きい訳ですから、ユーザーさんからのクレームも沢山来ますし、経済的な実損も大きい。
会社に与える赤字の金額も大きい。
当時の会社の状況は、20億円位の売り上げで、なんとか2億円利益が出るかなくらいだったと思います。
しかし、その案件を焦がすだけで、その時点だけでもすでに2億円超の赤字が確定したんですよね。
岩瀬 それは開発費用も持ち出ししていたということですね?
五十嵐 受託は受注金額が決まっているので、それを越えての回収ですとか、例えば人員を投下して収拾を図ろうというコストは、会社が潰れない限り持ち出しが当然ですよね。
この時「これはもう、2、3日頑張ってメンテナンスしたくらいではどうにもならない。一から作り直さないと治らない」ということに僕自身も気が付いてしまいました。
お客様にどう説明すれば良いかも分からない訳です。
受託事業での大失敗に対するKLab真田氏の反応
岩瀬 聞けば聞くほど深刻な話のような気がするのですが・・・。
五十嵐 本当に深刻な話です。
想像してみてください。皆さんの会社の本業を支えるシステムの開発を、受託会社に任せた。
その会社が自信満々で営業してきたので「この会社は大丈夫だ」と思い、サービスを任せたところ、カットオーバーの日にシステムを落とされ、ユーザーさんからはクレームメールしか届かない。
そして本業の売上が、その瞬間から0になる訳です。
そのお客様の怒りは、大変なものになりますよね。
そして数日ではシステムが直らないと分かった時、事業責任者である僕の絶望感は相当ものでした。
岩瀬 その時の真田さんは?
五十嵐 もちろんその時、真田に最悪の報告をする訳です。
深夜にシステムを刷新するためのメンテナンスを行い、早朝にカットオーバーをしてすぐにダウンしたので、自宅で就寝していた真田を朝方5時くらいに叩き起こし、「こんなことが起こっています」という最悪のニュースを伝えました。
真田は狼狽する訳でもなく、普通に会社に来て報告を聞き、お客様に謝り説明する所から一緒に対応してくれました。
この時僕が進言したのは、「すみません真田さん、これは少なくとも1、2ヶ月という期間をかけなければ治せません。最悪の場合、移管前のベンダーさんにもう一度サービスを切り戻し、預かり直してもらうお願いをした方が良いのではないか?」というものでした。
岩瀬 そこまでの事態だったんですね。
五十嵐 その時点では原因も特定できておらず、当然勝算も全く立たない状況でした。致命的な損失をお客様にも自社にも与えてしまう前に、損切りをした方が良いのではないかと考えました。
1、2ヶ月かけてシステムを改修し、やり直しをしても上手くいかなければ、傷口がどんどん広がる訳ですよね。
「ここが引き時かもしれないので、頭を下げた方が良いのではないか?」と伝えました。
真田は「いや、それをするとリベンジのチャンスごと無くなるので、やるべきではない。」と平然と言いました。
会社の1年間の利益が飛び、さらに巨額の負債が膨らむかもしれない。
僕は元々技術屋なので、システムのことについてはCTOと僕が一番詳しかったのですが、その状況で進言しても、真田は既にリベンジすることしか考えていなかった訳です。
岩瀬 10年位前の出来事ですか?
五十嵐 そうですね、もうそれぐらい経ちます。
2006年位のことだったと記憶しています。
創業者にしかない「蛮勇」
岩瀬 10年経ち、五十嵐さんの立場も変わり、色々な修羅場もくぐって来て、その時の真田さんの心境や、なぜそのようなリアクションをとったのかということを、今分析するとどのように思いますか?
五十嵐 勇気が「知勇」「蛮勇」二つに分けられるとすると、真似できない部分は「蛮勇」の部分なんです。
左脳で論理的に考えてしまうじゃないですか?
いくら損害が出る、こういう人を投入すると何ヶ月かかる、ここがシステムのボトルネックだと、僕は考えてしまうのですが、真田は多分「弊社のメンバーなら、なんだか分からないけれど、できるだろうな」という。
岩瀬 良い意味で根拠のない自信。
五十嵐 そうです。
良い意味で根拠のない自信というもの。
後は恐らく「知勇」の部分で、「最悪これ位損失が膨らんでも、ファイナンスをこうすれば良い」とか、「何々を手当てすればこうできる」という部分も当然彼なりにあったはずだと思うのですが、そういった細かい所は一切僕達に気にさせず、決断しているのだと思うんですね。
岩瀬 なるほど、それはやはり大将の胆力、創業者ならではのものですね。
五十嵐 そうですね。
今でこそ違った決断もできるかと思うのですが、当時の僕は現場指揮官でありながら、いかに撤退するかということを社長に進言してしまう位のヘタレでした。
創業者の不屈の精神、決断力、いつでもリベンジすることを狙っているんだなと感じたエピソードです。
岩瀬 ありがとうございます。
とても良い話ですね。
真田さんは、いつもニコニコされていて懐深い感じがするのですが、ちょっとやそっとのことでは動じないのですか?
五十嵐 そうですね。
僕がやはり敵わないなと思う所は「胆力」と、今言っていただいた「笑顔力」というものがあると思っています。
(会場笑)
本当の窮地でも、真剣にはなるのですが、深刻になりすぎないという所はすごいと思います。
岩瀬 どこか楽天的な部分が必要なのかなという気もしますね。
ありがとうございます。
岩瀬 では、川本さん、窮地を乗り越えて来たgumiはどうですか?
國光さんを近くで見ていて、ここはすごいなという所は?
「未来しかみていない」gumi國光氏
川本 私が今の立場になって分かるのは、圧倒的トップダウンというものでしょうか。
これまでCFOをしていたので、決まったこと、國光さんがやりたいことに対してボトムアップというか、「ここを潰していくと最もリスクが少ない」という考え方をしていました。
事業責任者になった今でも、ともすれば、対処療法的に3年後こうなっているかもしれないと今から積み上げて試算してしまいがちな癖があります。
國光さんとたまに話すと、「いやいやそうじゃなくて、あなたは何のメッセージを従業員に出すの?」という所から始まるので、当然役割分担はあれど、これは今私自身が学んでいることかなと思います。
岩瀬 トップダウンというと、上から命令するというイメージではなくて、未来志向で遠くを見ているということですね。
川本 そうですね。
例えばモバイルゲームでいうと、「成熟産業だけれど、その中で勝ち残る将来のゲーム会社の像は何か?」というような所から落とし込んでいく。
それと今を繋いでいくという考え方は、一つ大きなポイントとしてあるなと思います。
岩瀬 それは現場を持っていないから、そこに集中できるような気がします。
だから現場を任せてしまうのかなと感じます。
日々デイリーのオペレーションをしていると、どうしてもそこから発想してしまうので、全てを任せ、遠くを見ることでさらにそういったことができるのかなと思いました。
川本 そうですね。
だから今の私の仕事は、基本的には國光さんを現場に一切降臨させないということをしています。(笑)
降臨させると現場がぐちゃぐちゃになるので、それを何度も何度も経験してきました。
(会場笑)
gumi自体の波乱万丈な歴史よりも、社内はさらに苦労してきたので、その苦労を今、社員にさせないよう私が防波堤になっているという所です。
岩瀬 未来志向も、適度な未来志向というものがあると思っています。
弊社の出口はすごく歴史の本を出しています。
だから、100年単位くらいで考えるので、あまり参考にならない時もあるのですが(笑)
(会場笑)
10年後ですとか、そこから逆算して今のアクションに繋がる未来志向くらいが良いですよね?
川本 そう思います。
たまに、取締役会でとある議案が上がり、賛否が分かれた時、「いやそもそも、イーロン・マスクは…」と言い出す訳です。
(会場笑)
聞いている僕達は「いや、関係ないし」と思いながら、「イーロン・マスクは今の事業をしながら未来を考えて、宇宙にも取り組んで、〇〇も取り組んで…」と話し始め、このように國光さんに押されて取締役会が進んでいく場面が結構あります。
それは将来のことしか見ていない部分が強いので、敵わないというよりも、あれが圧倒的な個性なんだろうなと思っています。
岩瀬 素晴らしい。
ありがとうございます。
(続)
続きは 【執念】クラウドワークス成田副社長が語る吉田社長の「圧倒的しつこさ」 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/鎌田 さくら
【編集部コメント】
私も某企業での社長室時代、2050年に起こる人類の危機について社長に問いかけられて呆然としたことがあります(榎)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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