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Creemaがハンドメイド市場で挑む、市場を創る「文化づくり」【F17-4D #6】

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「新しい市場を創造するための成功の鍵」【F17-4D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その6)では、クリーマ丸林さんに、「クリエーターから物を買う」文化が日本に根付いていない中で、どのようにハンドメイドマーケットプレイス事業を拡大させてきたのか語っていただきました。是非御覧ください。

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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 4D
新しい市場を創造するための成功の鍵とは何か?

(スピーカー)

明石 岳人
ワンメディア株式会社
代表取締役
(当時 スポットライト株式会社/2017年11月1日より社名変更)

中山 亮太郎
株式会社マクアケ
代表取締役社長
(当時 株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング/2017年10月1日より社名変更)

宮田 昇始
株式会社SmartHR
代表取締役CEO

丸林 耕太郎
株式会社クリーマ
代表取締役社長/クリエイティブディレクター

(モデレーター)
田中 良和
グリー株式会社
代表取締役会長兼社長

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【新】新しい市場を創造するための「成功の鍵」とは?【F17-4D #1】

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本編

田中 それでは丸林さんにお伺いします。

今までやってきた中で「このあたりが障壁だったな」と思うことを聞かせてください。

丸林 ハンドメイドマーケットプレイス事業、CtoCのコマースは最近増えているので、ハンドメイドマーケットプレイスも簡単に成功できそうというイメージを持たれている方が多い印象がありますが、全然そんなことは無く非常に大変です。

多くの時間、資金、競争力を要する事業であるという現実を嫌というほど痛感しました。

丸林 市場の話としては、障壁になったことは2つあります。

1つは2010年にサービスリリースしたのですが、そもそもCtoCのコマースはヤフーオークションくらいしか浸透していませんでした。

さらに、ハンドメイドマーケットプレイスという業態自体が日本で初めての会社だったので、そもそも「クリエイターから物(=作品)を買う」というカルチャーがないという状態にあり、今振り返ると怖くなるくらい、最初の2~3年は取引が本当に進まない状況でした。

これは最大の障壁でした。

2つ目は競争の観点です。実際の取引は全然少ないのに、クリエーターの方々はどんどん集まってくれていたことから、大企業はそれを見てそこそこ上手くいっているという判断をされたのか、信じられないくらいのスピードで30~40社の参入がありました。
ドコモさんや博報堂さん、サイバーエージェントさんなど巨人のような大企業も多く含まれていたので、絶対に負けないと自分やチームを鼓舞し続けていましたが、本音を言えば本当に怖かった。

この2つが最大の障壁だったと思っています。

馬鹿になってやり続けて障壁突破

田中 それをどのように乗り越えられたのですか?

丸林 最初の、あまりにも取引が進まないというところについて言うと、そもそも個人のクリエイターから物を買うというカルチャーが無く、それが楽しく素敵な買い物体験だということを広めないといけないというフェーズであると判断しました。

正直なところ非常にきつかったのですが、徹底的にプロダクト改善をしながら、同時に自分たちの手でカルチャーを作るというイメージでリアルイベントをたくさん開催しましたね。

日本でもドイツでもやりました。日本全国色々なところで小さいものから大きなものまでイベントをやり続けて、個人の作り手から作品を買うということは農家の人から直接野菜を買うのと同じように、クリエイティブで楽しいことなのだと広めようと思い、非常に多く開催していきました。

それが現在の、ハンドメイドインジャパンフェス(東京ビッグサイト)等のビッグイベントにつながっています。

イベントのネットサービスへの影響は数値化できません。KPIにも出ませんし、大きなお金もパワーもかかりますし、中長期的な話で、今でも明確な答えは分かっていないのですが、やり続けたことで、市場やカルチャーを拡げ牽引してきたという自負はあります。

そういうことを同時進行的にやっているうちに、少しずつ潮目が変わっていきました。当然社会の価値観の流れというものもあったと思いますが。これが取引を増やすためにサービス開発以外にやったことです。

丸林 大企業との競争というところで言うと、多くの会社が参入してきたものの、意外と上手くいかない中で、ほとんどの会社が撤退していきました。

僕たちがそこの障壁を超えたのは「馬鹿であること」だと思っています。とにかくこの事業が好きで情熱を持って取り組んでいるという事実と、とにかくナンバーワンに執着したことです。

先行事例がないんだから、市場があるか無いかなんてわからない。だからとにかく事業に愛を持ち続けて、市場のナンバーワンプレーヤーになるのだと皆で信じ込んで、それを馬鹿みたいに本気になってやり続けたので、目先の細かなKPIなどはほとんど見てませんでした。

とにかくやり続ける前提で「やめる選択肢は無い」という状態に自分たちを追い込んだ。気づいたらどんどんクリーマは成長していって、どんどん競合企業はいなくなっていった、というのはありました。

だから馬鹿になってやり続けることは、結構重要な障壁突破の鍵なのではないかと思っています。当然リスクもあるので、前提によりけりですが。笑

田中 僕はオタク気質があって家に居るのが好きなので、インテリアや家、建築そのものにも強い興味があるのですが、東京デザインウィークにも出されていましたよね?

丸林 はい。3年間くらい連携して一緒にイベントやらせてもらっていました。

田中 そのイベントで偶然お会いしましたね(笑)。

丸林 そうですね。色々やって来ました(笑)。

田中 クリーマさんについて思ったのですが、「どこまで大きくなるのか問題」というのがあると思います。

何故かというと古いところではヤフーオークションや、モバオクがあり、やはり無限に伸びていくものではないと思います。バイラルやCtoCで伸びるものはどこかで早く成長する時期もありますが、どこかで頂点を打ってしまう場合があります。

困るのは、その頂点が低いところで終わってしまうことですが、往々にして良く起こることだと思います。

従来のCtoCのオークションは、今ではメリカリが非常に成功しています。デバイスやユーザー層が全く違うところで、同じようなサービスを全ジャンルでやることで時代を変え、今やヤフーオークション、モバオク、メルカリというものが存在しているのです。

バーティカルなCtoCでは今回チケットキャンプさんが登場しましたが、本当にこれからもバーティカルCtoC領域というものがどんどん出てくるのか、それとも例外的に2、3個しかない領域なのか。

チケットや、本やハンドメイドはありますが、何でもかんでも、例えばコップとかパソコンのCtoCマーケットがあるかというとそれは無いという、どこかに分水嶺があると思います。

自分はハンドメイドに特に詳しいわけではないですが、知らない人からすると、ハンドメイドのCtoCマーケットはそんなにあるのかと思います。その中で事業展開しているわけですから、CtoCだけでなく、BtoCも含めて、広義のハンドメイド市場というのは非常に大きなものになり得るのでしょうか。

例えば、家具だったらニトリさんは非常に売れています。1割でも2割でも、それがハンドメイドになれば、それはとてつもない流通量になると思いますが、そういったことなのか。

ハンドメイド × CtoCというマーケットが小さいのではないかという説をどう思われますか。また、どうどう乗り越えていきますか。

新しい文化を作って消費の形を変えたい

丸林 先ず頂点問題についてはVCや投資家の方々とも散々議論しましたが、正直どこが天井なのか分かりません。

ただ、社会的な価値観の流れとして、「誰かが決めたいいものを当たり前のように消費する」みたいな感覚って”イケていないよね”というような価値観が広がっていることは間違いはないと思っています。

「どうせなら自分らしい物、共感できる物語に囲まれて暮らした方が楽しいよね。」

「野菜をお気に入りの農家さんから直接買った方が、なんか美味しいし、大切に思えるし、安心できるよね。」

みたいな感覚です。

丸林 一方で作っている人がどれだけいるかと言うと、このサービスを始めた当初は自分の感覚で、音楽でメジャーデビューしていないけれど優秀な人材がどれだけ沢山いて、そこまで有名ではないけれど優秀な画家さんがどのくらいいるかは感覚的にわかっていたというのがありました。

実際にサービスを作ってきて、その感覚は確かだったと自負しています。日本だけでも100万人はいらっしゃるだろうと。そう考えるとまだまだ全然頭打ちではなくて、そもそものポテンシャルはあるかと思います。

最初に「カルチャーを作ってきた」という話をしましたが、どちらかというと僕たちは買い手側に、お買い物がもっと楽しくハッピーになるとか、どうせ買うのであれば作り手本人から買う体験の素敵さとか、そういった消費の価値観を拡げることの方が超えないといけない課題だと思っています。

どこまで規模が伸びるかというのは最終的には分かりかねる状態です。

田中 厳密な推計はあったとしても計算根拠が分からなかったりするものです。ビジョンというか自分の感覚の中で10年後、20年後のことを考えるといかがでしょうか。

ハンドメイドでは何が一番売れているのですか?

丸林 インテリアやアクセサリー等、かなり分散しています。

全部の家に絵が飾られるようになって欲しい

田中 例えばインテリアを例にすると、感覚的で良いですが日本で売れているインテリアのどれくらいはハンドメイドになると思ってらっしゃいますか。

またはこうしたいというお考えはありますか。

丸林 そこについてあまり真剣に考えたことはありませんでした。もともとの家具市場がどのくらいあるのか良く分かっていないところもあるのですが。

田中 勝手なイメージですが、友達の家に机等の家具が10個や20個あるという時にその中で2個くらい、例えばソファーとテレビ台はハンドメイドになると思っていれば、10個中2個だったら2割、20個中2個だったら1割になります。

実際はテレビ台とソファーの価格は違うのでお金に換算するとそんなに簡単な話ではないですが。

ばくっとした未来感として、友達の家に行っても1つあるか無いかなら、5%や3%のビジネスになりますし、どこの家でも1個か2個はありますというのであれば1割、2割のビジネスになりますし、半分くらいあるなら5割になりますし、そういうのがありますよね。

丸林 半分は狙っていません。ただ、全部の家に絵が飾られるようになって欲しいとは思っています。

今日本では文化として部屋に絵を飾ることはハードルが高いと思いますが、僕は家に常に5作品くらいおいています。それはとても価値のあることだと思っているので、それを広げていきたいと思っています。

家具でもインテリア雑貨でも一部でも構わないので、例えばキャンドルを灯す等の文化が広まっていって、その全てに手作りで作ったものが入っていたら良いなという希望があります。

田中さんがおっしゃったことで言えば後者の、家の中での10%や20%くらいのものが、大切な人から貰ったとか自分で作ったとか、共感する作り手さんから買ったという様なものが入ってくると、毎日の生活がハッピーになってくると思っています。

ちなみに、僕はお皿やグラス等の食器は全て手づくりの品で揃えているし、リビングの半分はクリエイターの作品で構成されています。すべてに思い入れがあるし、会話も弾むし、とてもいいものです。

他社が参入してきても競合意識を持ち過ぎない

田中 こちらの分野はもう一つメジャーな話題があると思います。大きな資本力のある会社が同じことをやったらどうするのかという問題です。

例えば、100兆円使ってフェイスブックの仕様を完全にコピーしてマーケティングしても、もう追いつけません。つまりある一点を超えてしまうと追いつけないということはあると思います。

最近もメルカリさんが某企業を買収しましたが、ああいったプレーヤーが同じことをやるというのもあり得る訳です。

お金も技術力もサービス力もあるところが同じことを感じ始めて、人員も資金も2倍ということがあるかもしれません。

そこで一度競り負けてしまうと、上手く座標を変えないと勝ちにくいということがあると思います。そういったことが今までもあったと思いますが、もっと大きな会社やシナジーのあるポイント連携出来る会社が同じようなビジネスをやるとなったらどう考えますか?

丸林 例えば相当なユーザー規模を持っている会社さんが参入するなど、既にこれまで本当に色々なことがあったので、一定程度の経験はしてきたと思っています。

その中で僕たちの事業にとって大切だと思っているのは、あまり競争意識を持ちすぎないことです。例えば、向こうがこうやってきたからこっちはこうやるということをやり過ぎると、誰かを見て違うことをやろうということになっていって、本質がぶれていくと思います。

僕たちのサービスは頑張っているクリエーターを応援するというのがテーマです。クリエイターは感度が高いので、ちょっとでもずれたことをやり始めたら皆気づきます。

とにかく自分たちの本質を見続けて自分たちと戦い続けることが先ずは重要だと思っています。

一方で現実として競争は存在するので、テレビCMに何十億つぎ込むという話も聞こえてくることがあります。そういった場合、僕たちも一定の資金を投じ成長戦略を実行する必要が出てきます。そうなると僕らのようなスタートアップは、お金を集めなくてはなりません。

今日いらっしゃっているグロービス・キャピタル・パートナーズさんやKDDIさん等にも応援(投資)して頂いていますが、必要な資金等があればそういった経済的な要素を伴う競争もある程度は必要です。

しかし、やはり僕は、自分たちはそもそもこのサービスは誰のために何のためにやっているのかということをとにかく見続けるというのが重要だと思っていて、社内でもあまり競争の話はしません。

自分たちのビジョンを言い続けて、そのために出来ることを徹底的にひたすらやり続けています。回答になっているかわかりませんが。

田中 今のお話が回答になるか、3年後ぐらいにわかるでしょうね!楽しみにしています。

時間もありますので、最後に質疑応答に移りたいと思います。

何か質問ある方いらっしゃいますでしょうか。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸

【編集部コメント】

丸林さんからのお話しは、”文化”や”価値観”といった、定量化や可視化がしづらい経営の取り組みがたくさん出てきていて非常に勉強になりました。北欧、暮らしの道具店の青木さんなどのお話しにもあるような、世界観が多様な人が集うマーケットプレイスに反映されているというのが凄いです(榎戸)

続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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