「郵便」はソーシャル・イノベーションの代表事例(ミラツク西村) – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

「郵便」はソーシャル・イノベーションの代表事例(ミラツク西村)

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「ソーシャル・イノベーションの インパクト創出」の(その2)のミラツク西村さんによる「ソーシャル・イノベーションとは何か?」に関するプレゼンテーションです。ソーシャル・イノベーションの事例として「郵便」などが登場します。ソーシャル・イノベーションとは何か?を知りたい方は是非ご覧ください。

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登壇者情報
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 1C
「ソーシャル・イノベーションのインパクト創出」

(スピーカー)
太刀川 瑛弼
NOSIGNER株式会社 代表取締役

前野 隆司
慶應義塾大学 教授

米良 はるか
READYFOR株式会社 代表取締役 CEO

(モデレーター)
西村 勇哉
NPO法人ミラツク 代表理事

「ソーシャル・イノベーションのインパクト創出」の配信済み記事一覧

ソーシャル・イノベーションと何か?

西村 今回は、「ソーシャル・イノベーションのインパクト創出」というテーマについてお話をさせて頂きたいと思います。よろしくお願いします。

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ソーシャル・イノベーションについて、太刀川さんのお話を見える化します。

経済学者のヨーゼフ・シュンペーター(Joseph Alois Schumpeter)は、「新結合(neue Kombination)」という言葉を使って、今までになかった新しい組み合わせがイノベーションに繋がると定義しています。

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つまり、発明や発見ではなく、単なる組み合わせでもなくて、今までになかった新しい組み合わせを考えようとすることがイノベーションだ、と。

組み合わせには、モノとモノの組み合わせもあれば、色々な価値同士の組み合わせもあります。

単なるモノ同士や技術の組み合わせではなく、例えばモノと価値の組み合わせを考えていくことが、ソーシャル・イノベーションに繋がっていくのかなと思います。

ここに、社会価値、顧客価値、技術価値、事業価値の4つがあります。

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顧客価値とは、お客さんが欲しいと思ってくれるかどうか。

技術価値とは、それが実現可能かどうか。

事業価値とは、インカムとアウトカムのバランスがきちんととれているかどうか。

社会価値とは、普遍的に困っていることやニーズに社会的意味があるかどうかということで、皆なるべく雨の中で寝たくないから屋根がある、というようなことだと思うのですが。

それが段々と複雑化してきていて、よく分からなくなってきているので、ソーシャル・イノベーションと言われると少し不思議な感じがするのですが、太刀川さんが仰ったように、何千年も持続しているようなもののほとんどには、社会価値が組み込まれています。

社会価値が小さくなるといったこともあるので、社会価値がすごく小さいプロダクトを創ることもできます。

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逆に、社会価値がとても高いのだけれど、全然儲からなかったり、持続不可能であったりするものを創ることももちろんできますし、

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すごくよいアイディアなんだけれど、実現不可能なものを創ることもできます。

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例えば、米良さんが携わっておられるクラウドファンディングという仕組みは、恐らく20~30年前にもニーズがあったと思いますが、誰でも簡単にアクセスしてお金が払えるようなインターネットの決済システムがなかったので、技術やコストの面がネックになり実現できなかったということもあり得ます。

「郵便」はソーシャル・イノベーションの代表事例

まさに太刀川さんが仰られたような、世の中に浸透しているものを例に出して、「切手」を先程の4つの価値に分解してみます。

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世界最初の切手は、ローランド・ヒル(Rowland Hill)によって19世紀に発行されました。

前野先生のSDMで授業をする時に使っているものですので、少し大学の先生っぽいスライドですけど、これはソーシャル・イノベーションの例です。

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もともと郵便は、受け取った人が支払うという「後払い制」、つまり今で言う「着払い」だったんですね。

そうすると、受取人は自分が要らないもは受け取らないので、当たり前ですがコストが跳ね上がるんですよ。

郵便配達員の移動コストが残っているので、受け取らなかった分が他の受取人に全て乗っかる訳です。当時、ハガキ1通を田舎から都会まで送ると、5万円から6万円もしました。

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しかも、受取人が郵便料金を支払う仕組みなので、受け取りを拒否する人もいました。

封筒の表にびっしり文字が書いてあれば、受け取った瞬間に聞きたかったことが分かり、もうそれでよいので、手紙が届いても受取人は支払いを断ってしまうんです(笑)。

そんないたちごっこみたいなやり方が発達していたのが、当時のイギリスです。

それを解決しようと考え出されたのが切手です。

切手は前払いなので、受取人が郵便料金を支払わなくてもよい仕組みになります。

そこに印刷という技術価値を組み込むことで、切手の大量印刷が可能になり、遠くに安く届けることができるという社会価値が達成され、需要と供給のコストバランスがとれてサービスが持続する。

しかも、当時封筒や手紙は既にあったので、切手をただ貼ればよいというす利便性を顧客に提供できるのです。

結果として、3,000円から4,000円くらいまで郵便料金が下がりました。

「息子から3千円の手紙が送られてきた、いや、送りたければ3千円払えばいいのか、それなら私にも送れる」という風に、翌年から利用者が2倍に増え、5年以内には30カ国にスケーリングし、日本では明治維新後にアメリカを経由して制度が導入されました。

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これは、今では当たり前のサービスとなったイノベーションの事例ですよね。例えば、切手は2014年度には1兆8,000億円売れており、これは、テレビ広告費の総額と同じくらいの産業規模になります。

1つのユニークなプロダクトが、完全に一般化し、産業化していく。産業化しているため、日本だけではなく、他の国々でも同様のシステムが使われています。

やれば儲かるのが分かっているから皆がやるのだし、やればよいことだと分かっているから、皆が受け入れるといった、そんな仕組みです。

ソーシャル・イノベーションといっても、ローランド・ヒルの切手の事例でもそうであったように、スタート時点では、「それは何?」「面白いアイディアだけれど、実現は難しいのでは?」という反応が返ってくることもあります。

実際に、出版された本の中では、郵便制度の実現までに13年を要したことや、自らが郵政大臣になったということも書かれています。

彼は学校教師だったのですが、敢えて権力者への道を選び、自ら実現にこぎつけました。

当たり前化するまでのプロセスは確かにあるんですけれど、どうやったら当たり前化できるのかということを、「インパクト創出」というテーマとして考えられるといいなと思っています。

日本のソーシャル・イノベーションの事例

これは太刀川さんが携わっておられるプロダクトですね。

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こういうのは現代における例ですが、伝統産業を衰退から守ろうという社会活動を見据えながら、伝統産業を日常用品として提案していくプロダクトです。

これにも太刀川さんが関わっておられますが、間伐材を利用することで人工林の荒廃をストップしようと、「ちゃんと売れるもの、欲しいものを創っていこう」と家具製作をしています。

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「楽しく食べることで健康を支えよう」ということでことで、ロート製薬さんが新事業を立ち上げています。

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降雨のバランスが悪くなっており、雨があまり降らなくてもビルの中で水が使えるようにしようということで、三菱重工グループさんが、ビル内の水循環システム(プライベートウォーターシステム)を作られたりしています。

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こういったように、ソーシャルとも新規事業とも言うことができるような、両面性を兼ね備えたものがソーシャル・イノベーションだと思っています。

ソーシャル・イノベーションの成長プロセス

ということで、今日お話をしようと思っているのは、ソーシャル・イノベーションが広がっていく6つステップについてです。

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アイディアを思いつき(Prompts)、誰かにそれを提案し(Proposals)、プロトタイピングし(Prototypes)、それが継続可能な状態になっていき(Sustaining)、スケーリングして(Scaling)、当たり前化していく(Systemic change)という6つのステージがあります。

そのプロセスで特に、継続可能になりスケーリングしていって、世の中にきちんとインパクトをもたらせるようになるところまでどうやったらもっていけるのかということを、ここにおられるお三方と一緒に色々とお話したいと思っています。

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スケーリングには方向性が3つあるんですよね。

「スケールアップ」というのは規模が拡大することで、例えば、太刀川さんが1人ではなくて太刀川事務所として5,000人の規模にスケールアップすることで、インパクトも大きくなります。

大きくなることが「スケールアップ」です。

一方で、皆が真似することを「スケールアウト」と言います。

例えば、病院は、それぞれ異なる法人が同じ形態を真似して運営している「スケールアウト」の一例です。

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ですので、「スケールアウト」も、広がりを作るという意味での新しいインパクトの作り方ということになります。

下方にある「スケールディープ」は質を高めるというようなものです。

いつもなかなかよい例が浮かばないのですが、例えば前からイノシシがやってきて、10回刺してやっつけられるか、1回刺してやっつけられるかのような話ですね。

1回刺してやっつけられた方が、その一撃は、明らかにクオリティーが高いんですよ。

そういう一撃のクオリティーのようなものが、「スケールディープ」です。

あることを達成するにあたって、インプットが少なくアウトプットが大きければ、とても効果的で、これを「スケールディープ」と呼んでいます。

これらの3つの掛け算がインパクトで、スケーリングには「大きくなる・広がる・質が良くなる」という3つの要素があるんだということを頭の片隅に置きつつ、ここからディスカッションに入りたいと思います。

(続)

次の記事を読みたい方はこちら

続きは 指数関数的なスケーリングを実現するソーシャル・デザイン(NOSIGNER 太刀川) をご覧ください。

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編集チーム:石川 翔太/小林 雅/Froese 祥子

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