【NEW】ICC サミット FUKUOKA 2025 開催情報詳しくはこちら

5.電通のスタートアップ支援は「クリエイティビティ」の投資【終】

平日 毎朝7時に公式LINE@で新着記事を配信しています。友達申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! Youtubeチャネルの登録はこちらから!

「新しすぎるアイデアが伝わると、事業が加速する」5回シリーズ(最終回)では、広告やマーケティングにおけるメッセージの創り方へと話題が広がります。そこで必要な「客観的な目線」とは? 会場からの質疑応答とあわせて、ぜひご覧ください。

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミット FUKUOKA 2018のゴールド・スポンサーとして、電通様に本セッションをサポート頂きました。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018 は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2018年2月20日・21日・22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 8F
新しすぎるアイデアが伝わると、事業が加速する
Supported by 電通

(スピーカー)

片山 智弘
株式会社 電通
ビジネスディベロップメント&アクティベーション局 プロデューサー

澤山 陽平
500 Startups Japan
マネージングパートナー

鈴木 契
株式会社 電通
関西支社 マーケティング・クリエーティブセンター コピーライター

(モデレーター)

菅原 健一
スマートニュース株式会社
ラージアカウントセールス責任者 兼 アドプロダクトマーケティング責任者(登壇当時)

「新しすぎるアイデアが伝わると、事業が加速する」の配信済み記事一覧

連載を最初から読みたい方はこちら

最初の記事
1.スタートアップを支援する登壇者が「新しすぎるアイデア」の伝え方を徹底議論!

1つ前の記事
4.聞き手が共感できるストーリーをどのように伝えていくのか?

本編


鈴木 例えば企業広告は、その企業のビジョン、つまり「目指す状態」を語ることが多いのですが、受け手側は、「この企業は本当にそのビジョンを実現できるのだろうか」という冷静さを持って見ていると思います。

電通として、そういう受け手側の心情を考慮した、客観的な視点からのアドバイスもできると思います。

企業広告の場合、スケールの大きな未来を語る際は、映像のクオリティが高くなければ説得力がなくなってしまいますので、クリエイティブの力を活用する必要があります。

iPhoneの広告が良い例ですが、本当にプロダクトやサービスそのものの価値が高い場合ですと、製品のみに注力するだけで十分に伝わります。

事業の初期からコアコンセプトを練り込む

片山 各マーケティングフェーズにおけるメッセージの作り方においても、同様のことが言えると思います。

一番最初は、「すぐに○○ができます」や「○○円で○○が可能になります」のような分かりやすいユーザーベネフィットをデジタルバナー広告などに使います。

次の段階で、「こういう新商品が発売されています」や「何万ダウンロード達成しました」というような実績をベースにしたメッセージに変わり、その後テレビCMになります。

大きい企業として成長すれば、最終的にCSR活動に予算を使うようになります。

つまり、段階を追うごとに、メッセージやアピールする内容が変わっていきます。

株式会社 電通 ビジネスディベロップメント&アクティベーション局 プロデューサー 片山 智弘 氏

鈴木 だからこそ最初の段階で、コアになるコンセプトを練りこんでおく方が良いのです。

そうすることでコミュニケーションに一貫性が生まれますし、後々のマーケティングコストも抑えられます。

最初にやっておくほうがお金がかかりません。

先日、ロボットを使ったPRのプロジェクトがありました。

その際、最初の開発段階からチームに入らせて頂いたので、「こういう見せ方にする前提で、こういうデザインにした方がいいのではないか」というディスカッションができ、最終的にアウトプットが上手くいきました。

株式会社 電通 関西支社 マーケティング・クリエーティブセンター コピーライター 鈴木 契 氏

菅原 例えばCMを作るにしても、その前にやるべきことがあるし、逆にCMの頃に呼ばれても、言うべきことはまだないという場合もあるということですね。

鈴木 そうなんです。

マーケティングのプロセスにおいて、プロダクトはできている、言うべきことも決まっていて、どう言うかの時点で呼ばれてなんとかしてくださいと言われる、みたいな広告敗戦処理説というのがあって(笑)。

これは、もう試合は10−0で負けていて、どうがんばっても4点しか返せないような状況です。

そこで試合終了になって、CMがうまくいかない、広告が悪いと言われる。

悲しいですよね。

菅原 僕も今日知って驚いたのですが、つまり「できあがった製品の広告を作ります」ではなく「事業そのものをお手伝いする」という立場で、事業を始める初期段階から、電通さんがチームに入って頂けるということですね。

スマートニュース株式会社 ラージアカウントセールス責任者 兼 アドプロダクトマーケティング責任者(登壇当時) 菅原 健一 氏

片山 CMOの皆さんは、インターネット業界出身だったり、元は事業会社の製品担当だったり、と(テレビCMなどのマス広告とWEBなどの刈り取り型の広告、そしてその全体の数値の統合管理と全工程を理解してできてしまう)フルスタックの方はあまりいらっしゃらないと思うので、マーケティング施策においては、私たち広告代理店の強みを活用して頂きたいです。

コアメッセージと会社の目指す姿を一貫したストーリーとして組み立て、検証し、どういう結果を得たいかという目論見を明確にした上でテレビCMを打ち出すと、成功確率が上がります。

菅原 マーケティング予算を正しく、健全に使えるようになるということですね。

鈴木 そういうことです。

僕の机の引き出しの中に、死屍累々と没コンテの山があります(笑)。

What to say(何を伝えるべきか)が決まっていない段階での話は結局無駄になります。

コンテを作るのは結構大変なんですが、そういう無駄が起こっているということです。

コミュニケーションの正しいオリエンテーション(コミュニケーションの目的、何を言うか、どんなトーンで言うかがまとまったもの。仕様書のようなもの)は、ジャンプ台を作ることです。

それは誰が跳んでも跳べるジャンプ台で、軸となります。

それがあれば、どんなデザイナーに頼んでも、そこそこのものが上がってくるようになります。

しっかりしたステートメントを作っておくと、軸がぶれなくなります。

会社側も代理店側もプロジェクトを進めやすくなります。

視野狭窄に陥らない客観的な目線も必要

澤山 そういうサポートを活用するもう1つのポイントは、自分ではなかなか見えないところに気づけることではないでしょうか。

500 Startups Japan マネージングパートナー 澤山 陽平 氏

事業を進めていると、どうしても視野が狭くなってしまいがちです。

面白かったのが、「Voicy」の緒方さん(同社代表取締役CEO・緒方 憲太郎氏)の話です。

▶参考:「Voicy」は、“声のブログ”が集まる音声配信プラットフォームで新しい放送を創る(ICC FUKUOKA 2018)【文字起こし版】

もともとご自身がスタートアップを支援していて「視野狭窄ぎみになっていますよ」と指摘する側だったのに、いざ自分が事業を始めてみると「無理だ、どんどん視野が狭くなっていく」と(笑)。

VCや広告代理店など、色々な立場の視点を取り入れることで、違う角度からも事業を考えられるようになると思います。

鈴木 例えるならば、事業とは自分の子どもじゃないですか。

可愛くて可愛くてしょうがないから、親戚が集まった場でビデオを見せたりする。

でも他人にとってはどうでもよかったりするんです。

(一同笑)

そこで自分を客観視することが必要です。

弊社としてはその客観的な目線を提供します。

大企業との広告作りで培った「TANTEKI」のアイデアを伝えるスキルは、スタートアップ企業にも貢献できる、価値のあるものだと思っています。

菅原 議論を続けたいところですが、お時間も残り少ないので、質疑応答に入りたいと思います。

電通出身の起業家が少ないのはなぜか?

質問者1 ベンチャーキャピタルのD4Vの伊藤と申します。

電通さん出身の起業家をあまり見かけないのはなぜでしょうか?

優秀な人が多いのに、なぜこちら側に来る人が少ないのかと思っています。

鈴木 僕は今19年目でもうすぐ20年目なのですが、体質だと思います。

電通にいる社員は、「請負業」という立場を刷り込まれてしまっている、もしくは、「媒介者」的な立場なので、そこから抜け出す勇気がないのかもしれないと感じることがあります。

電通内でも以前、一橋大学の楠木先生をモデレーターとして、1年かけて新しい事業を開発するというプログラムを実施したことがありました。

そのときに、自分で考えた事業を役員の前でプレゼンしました。

「いいね」と言われ、「これをやるのか?本気でやるのか?」と問われて、だんだんプロレスの煽りみたいになってきて(笑)。

結局自分はできなかったです。

それと本当に心中できるかと言われると、難しかったのです。

写真左より片山氏、澤山氏、鈴木氏

新規事業開発のプレゼンテーションを一から全部、実際に自分で作ってみて感じたのは「自分にはこれはできない、起業家の方は尊敬に値する」ということでした。

新規事業のアイデアを出す際も、メディアのようなサービスを発案する社員が多いので、「媒介すること」に喜びややりがいを見出す人たちが集まっている場が電通、ということかもしれません。

菅原 片山さんはいかがですか?

片山 私はずっと、入社してから新規事業部なので、広告を作ることはほとんどありません。

受託体質というと悪い意味もありますが、起業をするよりもリソースがたくさん使えることと、逆にクライアントさんとビジョンややりたいことを共感しあえれば、年齢や年次に関わらず仕事ができることが、電通の魅力だと思っています。

そもそも、大企業の末端の人間なのに、今のように会社の代表として出て話をしているというのが、その風通しのいい証拠だと思います。

私の場合、実際に自分がシードステージの会社を経営していた時よりも、予算や部下の数が多いので、楽しく仕事ができています。

ただ、絶対数は少ないですが、最近は会社を辞めて起業をする人も増えています。

マネージングクラスや役員クラスで起業する人もいるし、電通ベンチャーズに移籍した人もいます。

電通のスタートアップ支援は「クリエイティビティの投資」

質問者2 アイレップの北爪と申します。

この電通さんのサービスは、鈴木さんや片山さんが自主的に行っていることを会社が認めている形なのか、それとも、スタートアップを支援することでいずれ大きなビジネスにつなげたいという電通の意志なのか、どちらなのでしょうか?

鈴木 自分の意志を会社に応援してもらっている感じです。

この活動については、「クリエイティビティを投資している」と思っています。

僕はアメリカのコロラド州デンバーでやっている「Fort Collins Startup Week(フォート・コリンズ・スタートアップウィーク)」というカンファレンスに行く機会があって、そこでの助け合うコミュニティの空気感がすごく良いと思いました。

▶参考:「シリコンバレーの次」はアメリカの赤い大地に(NewsPicks)

振り返って、小さな町でそれができているのに、自分たちはできていないなと思ったのがきっかけです。

自分がコミュニティに何かを差し出して、コミュニティから何かをもらう、そういうことがしたくてやっています。

まずは、コミュニティの中で僕のスキルを活用して頂く。

そうすることで新しい産業が生まれれば、結果的にそれが電通のクライアントになるという流れです。

片山 私も思いから先行して始まっています。

KPI、KGIの話がちゃんとできて、かつ顧客獲得以降のサービス内部指標や事業目標のことを話せて、事業も並走できるような人材が必要になると思うので、自分のスキルアップになるとも思っています。

会社組織の中では、オフィシャルな形でサービスを提供しています。

メンバーも10人いて、それぞれ電通デジタル、電通アイソバーや電通テックから来ています。

菅原 ありがとうございました。

お話を続けたいところですが、時間いっぱいになってしまいました。

お三方に今一度、大きな拍手をお願いします。

(終)

平日 毎朝7時に公式LINE@で新着記事を配信しています。友達申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! ICCのYoutubeチャネルの登録はこちらから!

編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/浅郷 浩子/本田 隼輝/尾形 佳靖/大塚 幸

【編集部コメント】

片山さん、鈴木さん、澤山さんの、スタートアップ支援に懸けるアツい想いをお伝えいただきました。スピーカーのお三方、モデレーターの菅原さん、貴重なセッションをありがとうございました!(尾形)

最後までお読みいただきありがとうございます!他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

更新情報はFacebookページのフォローをお願い致します。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!