起業直後の企画書で振り返る「freee」創業と資金調達 – INDUSTRY CO-CREATION(ICC)

起業直後の企画書で振り返る「freee」創業と資金調達

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ビジネス・ブレイクスルー大学大学院の「アントレプレナーコース」が2016年4月に開講しました。ICCパートナーズ小林雅が担当した「スタートアップ企業のビジネスプラン研究」全12回の映像講義について、許諾を頂きまして書き起し及び編集を行った内容を掲載致します。今回の講義は、freee株式会社 代表取締役 佐々木 大輔 氏にゲストスピーカーとしてお話し頂きました。

60分の講義を3回に分けてお届けします。 (その2)は起業直後の企画書をご紹介頂きながら、「freee」の創業と資金調達について語って頂きました。ぜひご覧ください。

登壇者情報
2015年11月27日収録
ビジネス・ブレイクスルー大学大学院「アントレプレナーコース」
スタートアップ企業のビジネスプラン研究
「freee」
(講師)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社 代表取締役
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授 
(ゲストスピーカー)
佐々木 大輔
freee株式会社 代表取締役
(アシスタント)
小泉 陽以

その1はこちらをご覧ください:クラウド会計ソフトのリーディング企業「freee」の成長ストーリー


freeeの創業期のビジネスプラン

小泉氏 ここまで事業のお話を伺ってまいりましたけれども、続いては創業時のビジネスプランを見せていただきます。

小林氏 ロゴに注目ですね。

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この人は一体誰なんでしょうか。

小泉氏 誰なんですか。

佐々木氏 これは誰なんでしょうね。

これからお見せする4枚は、僕が起業した後「起業したんですか、お話きかせてください」とよく昔の仲間に言われたのですが、何にも持たずに行ってただのニートだと思われるのが嫌で、こんなことやってるんだよ、というのを紹介するための企画書という形で作りました。

資金調達はその後だったので、創業当時に持っていたものを持ってきました。

創業する前にロゴを作ったのですが、そのコンセプトはクラウドからあらゆるビジネスのCFOになれる、そんなサービスを作りたいということで、Cloud Financial Officerという意味を込めてCFOという名前をつけました。

小林氏 雲の上に座ってますね。

佐々木氏 Cloud Financial Officerは人なので、人じゃないとダメだろうということで、人を雲の上に乗せてこんなロゴにしました。

小林氏 人から鳥になったということですね。

これは結構重要な判断で、これだとアウトソーシングしている会社ですかとか、多分イメージが伝わりにくかったと思います。

プロダクトの名前がfreeeで、ロゴも非常に洗練されたものになっていて、ここの部分のブランディングは大きな判断だったような気がします。

佐々木氏 CFOというのは高尚な概念なので、僕たちがターゲットにしている中小企業、個人事業主の方には身近に感じられないんじゃないか、というのがありました。

小林氏 そもそもCFOと名のつく人って世の中にそんなにいないですからね。

佐々木氏 最初は概念からきてしまうので、マーケティングをこうやっていこうというのを考えるよりも、どんな構想かというのがそのままロゴとか会社名に反映されてしまうという分かりやすい例だと今振り返ると思います。

小林氏 受講生の方、恐らく頭でっかちに考えるとそうなるということですね。

佐々木氏 実際にどういうことを考えていたかというと、

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課題として、例えばB to Bの現場で取引をする時に、買う側であれば発注をするという作業があって、発注して実際に納品されると会計ソフトに記帳して、ある時銀行からお金を払うとそれをまた会計ソフトに記帳して、という作業があります。

一方で、請求する側から見れば、請求書を発行してそれを会計ソフトに記帳し、入金があったら入金を確認してそれをまた会計ソフトに記帳する。

似たようなことを両側でやってるし、それを別々の人がやっていたりするので、非常に多くの手間がかかっています。

試算してみるとだいたい6,000万時間ぐらいあるといったことを構想して、なんとかこの問題を解けないか、ということを当時考えていました、

それに対するソリューションというのは、

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クラウドを通して簡単に受発注ができる仕組みを作っておけば、あとはそれが出来るだけで自動で会計帳簿がついていく、ということができるんではないかと考えました。

これによって、自分たちの会社がやっている経済活動をクラウド上に記録していくだけで、全部勝手に取引が成立されていくし、決済もされていくし、色んな分析ができるようになる、という新しい世界が作れるんじゃないか、ということを当時言っていました。

これは壮大なストーリーで、まだ方向性はあまり変わっていないと思うんですが、全然何合目にも行っていないという状況だと思います。

これだと「何お前バカなこと言ってるんだ」という感じなので、もうちょと具体的にはこういうことをします、というのを当時持っていたのがこちらです。

スライド21

クラウドとはいえいきなり凄いものは作れないので、まずやりたいこととしては、クラウドのヘビーユーザーが使える簡単な会計ソリューションを作るということでした。

「こんな特徴を持っているといいんじゃないか」というものがいくつかあって、会計の知識がなくても使えるとか、どんなデバイスからでも使えるとか、あとは業務プロセスと連動していて、請求書発行すると会計帳簿が自動でつくとか、税理士さんと共有できるとか色々機能を考えていたんですが、結局簡単に使えるということと、最後の機械学習で自動で入力できる、というのを主なコア機能とし、最初のfreeeはその2つに絞ってリリースしました。

やっててよかったと思うのは、この時にクラウドのヘビーユーザーだけをターゲットにしてやろうということを決めていたので、実際にリリースした時に起こったのが、アルファブロガーの人たち等インターネットを使いこなしている人たちに使われるプロダクトになりました。

それは最初から意識していて実際に上手くいったことなので、本当によかったと思います。

小林氏 ちなみに、初めてのプロダクトの名前はCFO.COMですよね。

CFO.COMにしなかった理由は何かあるんでしょうか。

佐々木氏 これだと分かりにくいな、というのがありますね。

あと検索しても見つからないだろうし、呼びにくいし、freeeという方がコンセプトとしてもなんか簡単になる、楽になるというのがイメージしやすいんですが、CFO.COMだと余計小難しくなりそうな雰囲気もあるなと思い、思い切って変えました。

小林氏 面白いですね、会社の名前をつける時はそういうのを考えずにつけたわけですよね。

小泉氏 社名を変えようと思った時に、思い切って変えるか変えないかという判断とタイミングは、どのように考えればいいんでしょうか。

小林氏 例えばMIXIは、昔はイー・マーキュリーという会社だったんです。

MIXIというサービスは、Find Job!という人事採用のサービスの新規企業としてMIXIが出てきたんです。

そして、MIXIが伸びてきて上場する時に、会社名もMIXIにしましょう、という感じになったんです。

どちらかというと、プロダクト名等がポピュラーになってくると、会社名も合わせた方が分かりやすいよね、というところです。

佐々木氏 僕は起業した感想として言うと、会社名は割と早く変えてしまった方がいいと思っています。

実際6万円ぐらいかかるので起業したての頃はちょっと抵抗があって変えないんですが、例えばメディアに出る時に、一時期僕たちはCFO株式会社でfreeeというプロダクトを提供していたことがあるんですが、メディアに出る時に「会計ソフトを提供するCFO株式会社云々かんぬん」と紹介されて、freeeが一言も出てこなかった、ということがやはり起こるんですね。

それってすごくもったいないし、それだったら会社名を6万円かけて変えても、最初の頃なんて、変えなきゃいけないのはウェブサイトと、名刺なんてすぐ使ってしまうので、最初は気軽に変えちゃっていいんじゃないかな、と僕は思っています。

小泉氏 創業当時にクラウドの可能性は強く感じていらっしゃったんですか。

佐々木氏 Google時代にクラウドが身近にあって、それを広めていくという仕事をしていたので、これは絶対に可能性があると思っていて、人を説得する上でも数字があった方がいいと思い、色んなリサーチをしていました。グラフで「クラウドサービスこれから来るよ」とか、中小企業では特にクラウドが広まっていないからオポチュニティーがあるんだよ、ということを言っていました。

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freeeの創業期の資金調達

小泉氏 これからは創業時から現在までの資金調達について振り返っていただきます。

佐々木氏 創業したのが2012年7月なんですが、そこから半年ぐらいでSeedラウンドという形で5,000万円位を調達しました。

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当時は僕と共同創業者(横路さん)と新しく入ったメンバー1人(平栗さん)で3人の体制でやっていて、その翌年の2013年の3月にfreeeを世の中にリリースをして、非常に良い反響がありました。

2013年5月ぐらいに有名なピッチ・コンテストで優勝する等、世の中での認知率が広がっていき、その年(2013年)の7月に2億7千万円を調達しました。

この時点では事業所数は7,000ぐらいでしたが、その翌年にまた大型の資金調達を進め、2014年は合計で14億円、今年2015年の8月に35億円の大型の資金を調達しました。

小林氏 この資金調達を見ていただくと分かるんですが、まず最初のプロダクトを作るために5,000万円必要だったということですね。

5,000万でまずプロトタイプ及び初めのバージョンを出し、その次のSeries Aでは3月に出したプロダクトのフィードバックを基に、そして有名なピッチ・コンテストに優勝する等、ある程度、注目度を高めてから2.7億円の資金調達をしました。

そして、2013年の年末の確定申告シーズンで一気に伸びました。

一気に数字が伸びたこともあり、そこで評価が高まったので、さらに8億円、6億円というような資金調達ができました。

そして更にそのお金を調達して、時期を見ると分かるんですが4月とか10月なので、また年末の確定申告シーズンで大規模な広告投資を行って、さらに数字が伸びることになり、実績が積み重なって35億円の資金調達という、私も想像もしなかった資金調達額になりました。

株式市場とか景気とかに左右される部分はあるんですが、非常に理想的な資金調達計画になっていると思います。

小泉氏 計画をしてこの調達額になったんでしょうか。

佐々木氏 創業時からこのとおりに計画していたわけではありませんが、調達する度に毎回計画を引き直して、今のタイミングでこれくらい必要、というのは計算してやっていました。

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小林氏 どんどん夢が膨らんでいくというか、とても面白いんですよ。

「こんなに調達するんですか」と計画を見てびっくりするんですが、起業家は周りの環境によって発想が変わっていきます。

最初は小さな夢だったかもしれないけど、環境が整ってくるとどんどんビックになっていって、発言も経営者らしく、大物起業家らしくなっていき、それを実現していきます。

初めは小さいかもしれないけど、こんなふうになるとやがて大きくなってくるんじゃないかと思います。

小泉氏 一番最初のほうに、シリコンバレーのベンチャーキャピタルからも投資をしていただいているような記載がありましたが、これはどの段階で調達していたんですか。

佐々木氏 一番最初からです。

DCMというベンチャーキャピタルで、投資委員会でプレゼンするのも全部英語でビデオカンファレンスでシリコンバレーと中国を繋いでやったのですが、Googleでやっていたことと一緒だな、起業しても意外と同じようなことをやるんだな、と当時思いました。

ALBERTのCFOをやっていた時にスタートアップでの資金調達の経験はありますが、それ以上にGoogleの社内でアジア・パシフィックに予算を取ってくる、というのはほぼ資金調達に近いようなプロセスでした。

何が近いかというと、大きいことを言わないとお金が集まらないんです。

大きい計画を立てて、アジア・パシフィックでこれだけ成長の機会があるんだ、ということを見せて始めて「じゃあこれだけあげるよ」というふうになるんですが、それでは足りない、もっと大きな機会がここにはあるんだ、というのを上手く交渉する、ということをやっていたので、Seedラウンドの時の投資委員会で、起業してみてやってることが似てるなと思いました。

小林氏 結果として、日本のベンチャーとしては珍しいんですが、Series B2ぐらいまではほぼ海外の投資家なんです。

Series B2になるとシンガポールの投資家なので、契約書は全部英語ですね。

Seedラウンドで資金調達をしたDCMは、日本人がいるシリコンバレーのベンチャーキャピタルなので、契約書は日本語でした。

Series B2になって、シンガポールの政府の投資会社が投資するような会社になり、最後リクルートさんのような日本を体表する企業がドカンと数十億単位で投資するような会社になったということですね。

小泉氏 なぜ日本ではなく、海外の投資家さんをお招きしたんですか。

佐々木氏 ビジネスモデル的に分かりやすいというのがあったと思います。

日本のベンチャーキャピタルだと、そもそもクラウドサービスで成功した会社がないので、どこもベンチマークとできないですし、「そもそもクラウドは次来るんですか」という話から始まってしまいます。

海外の投資家の場合、クラウドサービスというのは、例えばSalesforceに始まり色んな成功モデルが出てきていて、「会計ソフトをまだクラウド化してないの?」という状況なんです。

こういう成功例があるよね、というイメージが湧きやすい投資家が海外にいたということだと思います。

小泉氏 今も主に海外の投資家さんでしょうか。

佐々木氏 今はリクルートさんも含めて国内の投資家もいますし、引き続き海外の投資家もいます。

小林氏 日本と海外の投資家からの期待感が非常に高いというのがfreeeの特長です。

小泉氏 ここまで調達されると、次のステージとして上場等を考えるんでしょうか。

佐々木氏 将来のステージとしてはもちろん考えます。

ただ、それが次のステージなのかというのはまだ分かりません。

小林氏 多分来年の確定申告が終わる頃には、「次は3桁億円ぐらい調達して、また大きくビックに行くんだ」ということを言ってると思うんですけどね。

小泉氏 上場するかしないかの判断は、どう考えたらいいんですか。

小林氏 上場するかしないかというのは判断が分かれます。

第1回目の講義で出てきたクラウドワークスさんは、予定より1年早く、そもそも早いタイミングで上場して、株式市場から資金調達をするという判断をしています。

更に最近数十億円を株式市場から調達していますが、そういったところが向いているという判断というのがあります。

freeeの場合は対極で、未公開の会社でも50億円ぐらい調達できるという環境を上手く利用しています。

株主数も多くなく、ある意味和気あいあいとした株主総会で、変な質問を言うことはないんです。
いいじゃないか、みたいな感じで終わるんですが、その株主総会の手間とか情報開示、パブリックに出すということはつまり競争相手に対しても情報を開示しなければいけないので、どっちの考え方をするのか、というのがあると思います。

どちらが正しいということではないと思いますが、経営者としての考え方や、また上場したら上場したなりに信用等が増すので、クラウドワークスのような会社はそれによって仕事の信頼性やクラウドワーカーの認知度が上がり、更にいうと日本ベンチャー大賞を受賞したのは上場したからで、やはり目に見えて分かりやすいというのがあります。

そういったメリットを享受しやすいというのが上場であるといえます。

落ち着いて経営する場合、特にクラウド型のビジネスというのは、月額そんなに高くない金額である程度先行投資をして当面はずっと赤字で、ということになるので、株主からの目というのは長期的に見てもらえた方がいいと思います。

そういった点で、正しい経営をしているんじゃないかと思います。

創業期のfreeeのオフィス風景

小泉氏 従業員数ですが、一番最初の創業時は3人で始められたんですね。

佐々木氏 最初2人だったんですが、すぐにもう1人入りました。

小泉氏 その時のメンバーはとういう方だったんですか。

佐々木氏 その時のメンバーの写真がここにあります。

スライド12

左が共同創業者の横路で、彼はもともとSONYのエンジニアでした。

2人で最初開発をしていましたが、その後に昔のGoogle時代の同僚の大学時代の友達ということで、平栗という人が入ってきました。

司法試験3回落ちて、もう就職もできないし何もすることがなく、

小林氏 当時何歳だったんですか。

佐々木氏 31才です。

小林氏 31才ニートですよ。

佐々木氏 31才無職、職歴無しということで、ゼロからやり直してベンチャーで大逆転したいというので、無給でいいから働かせてくれということで来ました。

参考資料①:平栗さんはICCカンファレンス TOKYO 2016の「生きるとは何か? 働く喜びとは何か?」に登壇頂きました。
参考記事②:東大法学部卒(31歳・無職)が半年でプログラマーになれたのは生存本能のおかげ~『freee』開発者・平栗遵宜さん

小泉氏 お友達のお友達なわけですよね。

小林氏 直接知らないんですよね。

佐々木氏 知らないです。

ただ友達の評価は高くて、絶対何とかなると思う、と言うので来てもらいました。

最初は完全に自分の手金でやっていたので、さすがにもう1人雇う余裕はなかったので最初はもちろん無給でやってもらっていましたが、このSeedラウンドが決まったので彼にちゃんとお給料を払い始めることができました。

小泉氏 右のお写真はどこで撮ったものですか。

佐々木氏 両方同じ場所なんですが、これは僕の住んでいたマンションの居間です。

小泉氏 これがスタートアップ時のオフィスですね。

佐々木氏 そうです。

この裏にはベットルームがあって、Seedラウンドで資金調達ができたので、このあとオフィスを別途借りることができました。

この時は最大4人ここにいたんですが、4人だと狭苦しくて大変だった時期もありました。

小林氏 平栗さんは幹部になって、ニートから幹部ですよね。

佐々木氏 今は開発部門の責任者をやっています。

小林氏 人生大逆転ですね。

佐々木氏 既に10年分を取り返したと言っています。

小林氏 結婚もして、人生変わったんですよ。

それがやっぱりベンチャーの醍醐味ですよね。

小泉氏 続きまして、リリース断行ということですね。

(続)

編集チーム:小林 雅/城山 ゆかり

続きはこちらをご覧ください:急成長を続ける「freee」の事業計画から逆算した幹部採用とカルチャー作り

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ICCパートナーズ(ICC Partners Inc.)は産業を共に創る経営者・経営幹部のためのコミュニティ型カンフ ァレンス「Industry Co-Creation(ICC) カンファレンス」の企画・運営および新規事業創出・アライアンスなどのアドバイザー業務を行っています。