「ファン」とのエンゲージメントとは何か?【T16-3C #1】 – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

「ファン」とのエンゲージメントとは何か?【T16-3C #1】

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第一線で活躍するトップリーダー90名が登壇したICCカンファレンス TOKYO 2016の「ファンを創るプロダクト・サービス」のセッションの内容を公開しました。オイシックス高島さん、ウォンテッドリー仲さん、クラシコム青木さん、スマートエデュケーション池谷さん、そしてNewsPicks編集長の佐々木さんの議論を3回に分けて掲載いたします。「前編」は「ファン」とのエンゲージメントとは何か?です。是非ご覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 3C
「ファンを創るプロダクト・サービス」

(スピーカー)
青木 耕平  株式会社クラシコム 代表取締役
池谷 大吾  株式会社スマートエデュケーション 代表取締役
高島 宏平  オイシックス株式会社 代表取締役社長
仲 暁子   ウォンテッドリー株式会社 代表取締役CEO

(モデレーター)
佐々木 紀彦 株式会社ニューズピックス 取締役 NewsPicks編集長

「ファンを創るプロダクト・サービス」の配信済み記事一覧

佐々木紀彦氏(以下、佐々木) 早速セッションを開始したいと思います。よろしくお願いします。

まずは登壇者4人の方々に自己紹介をお願いいたしまして、その後、「ファンを作るプロダクト・サービス」というテーマについて議論を進めて行き、最後に質疑応答とさせていただきます。

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佐々木 紀彦
株式会社ニューズピックス
取締役 NewsPicks編集長

1979年福岡県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業、スタンフォード大学大学院で修士号取得(国際政治経済専攻)。東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。『週刊東洋経済』編集部を経て、2012年11月、「東洋経済オンライン」編集長に就任。リニューアルから4カ月で5301万ページビューを記録し、同サイトをビジネス誌系サイトNo.1に導く。2014年7月より、NewsPicks編集長を務める。著書に『米国製エリートは本当にすごいのか?』『5年後、メディアは稼げるか』(ともに東洋経済新報社)がある。

食生活を預けて頂けるファンを創る

それでは自己紹介ですが、まずはオイシックス高島さんからお願いしてもよろしいでしょうか。

高島宏平氏(以下、高島) こんにちは。自己紹介とのことですが、私は八百屋をしています。200億円くらいの売上高です。16年間やっています。

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髙島 宏平
オイシックス株式会社
代表取締役社長

神奈川県生まれ、東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了後、外資系経営コンサルティング会社のマッキンゼー日本支社に入社。2000年5月の退社までEコマースグループのコアメンバーの一人として活動。2000年6月に「一般のご家庭での豊かな食生活の実現」を企業理念とするオイシックス株式会社を設立し同社代表取締役社長に就任。2013年3月に東証マザーズに上場。その他、2007年には次世代のリーダーの1人として、世界経済フォーラムのYoung Global Leadersに選出される。同年、NPO法人「TABLE FOR TWO International」の理事となり世界の食糧問題に関わる活動に積極的に参加。2011年3月の大震災後には、一般社団法人「東の食の会」の発起人として復興支援活動を精力的に実施。2016年には越後妻有を魅力ある地域にしていくことを目的としたNPO法人「越後妻有里山協働機構」の副理事に就任し活動の場を広げている。

テーマにもある「ファンを作る」ということはわれわれの経営上極めて重要なことです。

と言うのも、われわれの事業というのは一回あたりの購入金額は5〜6千円なのですね。

そして、大根などを届けるのですが、この大根を届けるというのはすごく儲からないのです。すごく重たいし、体積を取るし、腐るし、非常に儲からない。

ではどうやって儲けるかと言うと、私たちはその大根を売るというアプローチはしません。

そうではなく、例えばお客様は1回だいたい5千円で、年間20万円くらいお金を落としてくださるのですが、こういう年間20万円使っていただけるお客様を何人増やしていくかというアプローチで仕事をしています。

すると必然的に、一回一回大根を売るのではなくて、年間で食生活をわれわれに預けていただける、いわゆる「ファンのお客様を何人作れるか?」というのがわれわれのビジネスモデル上の根幹になってくる。

このファンという言い方をお客様に対してするのはどうかという想いはありますが、リピートして継続して使っていただけるお客様を作っていくことこそがわれわれの事業のすべてであると思っています。

ですから、今日は他の方々からもいろいろ学びたいと思って楽しみにしています。よろしくお願いします。

佐々木 続いてウォンテッドリー仲さん、よろしくお願いします。

ココロオドル人を増やす

仲暁子氏(以下、仲) こんにちは。ウォンテッドリーというサービスをやっている仲と申します。

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仲 暁子   
ウォンテッドリー株式会社
代表取締役CEO

1984年生まれ。京都大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。退職後、Facebook Japanに初期メンバーとして参画。2010年9月、現ウォンテッドリーを設立し、Facebookを活用したビジネスSNS『Wantedly』を開発。2012年2月にサービスを公式リリース。高校留学中、留学生同士のコミュニティサイト運営に携わる。大学では、大学の履修情報やキャンパス周辺の生活情報を掲載したフリーペーパー「chot
better」を立ち上げ、京都市内の中小企業向けにHP制作会社を設立。Facebookでの経験を通して、ソーシャルメディアの可能性を肌で感じたことが、Wantedlyというサービスを思いつくきっかけとなる。ウォンテッドリー設立後、人と人が繋がることにより、個人の可能性を最大限広げるサービス作りに取り組む。趣味は面白いものを創る活動。「ジョジョの奇妙な冒険」と岡崎京子、庵野秀明監督が好き。世の中をより面白くするプロダクト作成に日々没頭している。

ウォンテッドリーは、仕事がネガティブなものではなく、その仕事自体ですごく毎日がワクワクして楽しいという人を増やす、ということをミッションに掲げています。

今、大きく分けて二つサービスを行っている。一つが、企業と人材のマッチング。求人のようなところです。

そして、もう一つが、人と人が繋がった後にコミュニケーションを活性化するというような意味で最近Sync(シンク)というチャットツールを始めて、展開しています。

シゴトでココロオドル人を増やすサービス作りをやっているので、今日はそれについてお話できればと思います。よろしくお願いします。

お母さんと子どもをファンにする

佐々木 次にスマートエデュケーション池谷さんお願いします。

池谷大吾氏(以下、池谷) スマートエデュケーションの池谷です。よろしくお願いいたします。

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池谷大吾
株式会社スマートエデュケーション
代表取締役

2011年に「世界中の子どもたちのいきるちからを育てたい」をテーマにスマートエデュケーションを創業。子ども向けの知育アプリや幼稚園・保育園向けのICTカリキュラムを手掛け、国内マーケットでトップシェアにまで成長。2012年12月のIVS LaunchPadで優勝。AppStore「Best OF 2013」やGoogle Play「ベストアプリ2013」を受賞。2000年に明治大学大学院を修了後、日本ヒューレットパッカードに入社。 2004年にサイバーエージェントグループのシーエー・モバイルに入社。後に同社取締役に就任。2011年にスマートエデュケーションを起業し、現在に至る。

弊社は子供向けのアプリを開発・提供しています。グーグル(Android)とかアップル(iPhoneやiPad))が主戦場ですからゲームのアプリと同じような感じです。

最近ではアンパンマンのアプリなどを提供しています。起業した5年前はなかなかこういったメジャーなIPは使えなかったのですが、現在は弊社が子供の教育アプリの分野は独占している状況です。

今、アプリの「エデュケーション」というカテゴリーにいて、Google PlayではApp Annnieが赤裸々にデータを出しているのですが、この前の情報でいくと55%くらいの売上が弊社という状況です。

ただ、ゲームの市場と比べるとエデュケーションの市場は小さい。ですから、かなり寡占が進んでいるような状況です。

そして、ファンは、私たちの場合は特徴的で、お母さんたちと子供です。

2人ステークホルダーがいるというのが特徴だと思います。このツーシーンに関しても最近スイッチを始めていて、基本はグーグルとアップルのプラットフォーム上でビジネスをしているということ自体有利さは感じているのですが、いわゆるまとめてお母さんたちへ届けるということをやっていきたいと思っています。

それは「egg」というブランドで、実は4月からサービスを開始します。

ただ、どこで売るのだという話になりますでしょう。

定番なのはキャリアなどの店舗での販売なのですが、もう一つはショッピングモールさんですね。ターゲットユーザーが集積する場所なので、そこと大きく組んで、タッチポイントを設けてやっていきたいと考えています。

ユーザー向けのプラットフォーム事業は弊社だけではなくて、以前の(モバイルゲーム)のモバゲーさんやグリーさんのようにオープン化していきますので、世界で有名なアプリ開発会社があるので、そこと提携して、パッケージングして売っていくようなビジネスを始めたりしています。

あと、もう一つ新しいのが「KitS(キッツ)」と呼んでいる園幼稚園とか保育園向けのサービスも提供しています。

今、「日本は少子化ね」という話題になっていると思うのですが、もちろん最終的には日本は少子化になっていくので幼稚園や保育園というのはかなり厳しくなっていくわけですよね。

その中で、教育の差別化というのが必要だと言われている中で、われわれが提供しているICTの教材、いわゆるiPad(タブレット)とアプリだけ提供するだけでは事業にはならないので、カリキュラムをわれわれの方で提供しています。

このビジネス(KitS)も結構引き合いが取れるようになってきたので、ここはファンがまさに園長先生や先生になってきます。

(ICCカンファレンスの会場の近くの)東京大学の福武ホールで年一回カンファレンスをやっているのですが、全国の幼稚園・保育園の先生をお呼びして、新しい教育のトレンドを教えていくとか、一部ネットワーキングビジネスとかそういうのも始めているというのが現状です。

今日はよろしくお願いします。

広告費ほぼゼロでファンを創るEコマース

佐々木 青木さんお願いします。

青木耕平氏(以下、青木) 今日はどうもありがとうございます。株式会社クラシコムの青木と申します。
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青木耕平
株式会社クラシコム
代表取締役 CEO

1972年 埼玉県生まれ。
株式会社クラシコム代表取締役。
2006年、実妹である佐藤と株式会社クラシコム共同創業。単独、共同創業通算で同社で3社目。翌年、賃貸不動産のためのインターネットオークションサイトをリリースするが、一年ほどで撤退。2007年秋より北欧雑貨専門のECサイト「北欧、暮らしの道具店」を開業。現在は、北欧雑貨のEC事業のみならず、オリジナル商品開発販売、広告、出版(リトルプレス発行)事業など多岐にわたるライフスタイル事業を展開中。

「北欧、暮らしの道具店」という、われわれのユーザー属性(女性)とは全然違う観客のみなさんなので、ご存知ない方も結構いらっしゃるかもしれませんが、基本的には、生活雑貨のeコマースが主たる事業になっています。

よくあるいわゆるネットショップと呼ばれるeコマースとの大きな違いがあるとすればこうなります。

ネットショップと呼ばれるそういうECというのが急成長するためには、基本的に広告でリードを取って、販促でリピート化して、収益をあげていくというビジネスモデルになっているのですが、われわれは(自社でメディアを運営しているため)広告費はほぼゼロ。

売上高に対して広告費は1%台なのですが、売上高は毎年1.7倍くらいずつ伸びているという状況が、一つユニークなポイントなのかと思っています。

ただ、とは言え、こちらにいらっしゃる皆さまと違っている部分もあって、例えば規模的にはだいたい月間で1億2〜3千万円くらいのビジネスですから、先ほどのオイシックスさんの話と比較すると、だいたい10分の1以下くらいの規模だということをご理解いただいた上で話を聞いてくださればと思います。

また、われわれの場合、完全にプライベートカンパニーで、バイアウトとか、上場とかはまったく視野に入れていない会社ですから、そういうところでもずいぶん大きな差があるだろうと思っています。

オイシックスさんから先ほど、だいたい年間20万円くらい使ってくれるお客様を増やすのだということをおっしゃっていましたが、この「20」というのが非常に近くて、僕らの場合、過去に20回以上訪問してくださった方が、今のアクセスボリュームのどれくらいを占めているかという割合をずっと追いかけています。

とにかく20回以上訪問くださった方のコンバージョンレートがとび抜けて高いというところがありますので、いかに20回以上くるかというところをずっと自分たちのKPIにしてきました。

そこで、今回のファンを作るというテーマにつきましては、そういうところに関連したお話ができるのかなあと思っております。

今日は他の方たちのお話も非常に楽しみにしてまいりましたので、ぜひ活発な議論ができたらと思います。よろしくお願いします。

ファンとは何か?

佐々木 ファンを作るというテーマですから、まずはファンというものの定義をしてみたいと思います。先ほど、青木さんと議論していたのですが、「ファン」と「ロイヤルカスタマー」とはどう違うのかという話になりました。

単にいっぱい買ってくれる人がファンなのか。少し違うのではないか。などいろいろな仮説が出て来たのですが、まず青木さん、その話をしてもらっても良いですか。ファンとは何かという定義をもう少し話したいと思います。

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青木 これはいろいろな定義があると思います。ですから、これからお話するのはあくまで僕がどう思っているかということです。

例えば、トヨタという自動車の会社と、レクサスという会社があって、これは基本的に同じ母体なわけですが、経営を分けている。

これはおそらく、トヨタは車を売る会社ですが、レクサスはブランドビジネスをしている会社だということです。

そして、両方にロイヤルカスタマーがいる。ファンがいる。そういう状況だと思います。

しかし、おそらくトヨタのファンは、その車のスペックであったり、スペックに対するコストパフォーマンスといったところに魅力を感じるという中でファンになってゆくということでしょう。

ですから、プロダクトそのものをより価値、バリューの高いものにしていくことが、極めて重要なのだろうと思います。

ところがブランドビジネスをしている方に想いを移すと、レクサスというロゴだったり、ブランド名を聞いた時に、どんなイメージができるか。このイメージの方に惹かれてファンになる。こういうことが起こるのだろうと思っています。

多分、今回で言うと、われわれと他の方でやっているビジネスが大きく違うと思う点は、僕たちは自分たちが何を売るかというプロダクトそのものやサービスの内容そのものをものすごく差別化しようと思ったことは過去一回もありません。

僕らの売っているものは楽天市場でもamazonでも買えて、むしろそちらの方が安く買える。あるいはそちらの方がポイントがつく。

プロダクト自体のバリューで言えば、差異がないというよりはどちらかと言えば負けている。

こうした状況の中で、僕らの基本的なプロダクトは、自分たちのロゴだったり、店名だったりというところから想起される、「仲間に入りたいな」という気持ちをどういうふうに作っていくかというところにあります。

仲間に入りたいから読む、サイトに来る、あるいは買う。そして、場合によっては、それが極まると入社する。

そういうことだと思っているので、いわゆるロイヤルカスタマーを作るということと、僕らの定義しているファンというものを作るということは、そういう違いがあるのではないかと思いながら仕事をしています。

佐々木 高島さん、今の議論を聞かれてどう思われますか。オイシックスにおけるファンというものはどういうふうに定義されていますでしょうか。

高島 そうですね。正直言いますと、僕としてはお客さんのことを「ファン」と呼ぶのは若干抵抗があります。

ですから、あまりファンという言い方は社内的にはしていかないのですが、ロイヤルカスタマーとファンとというものの大きな違いを社内的に言うと、ただ使ってくれる人と、発信してくれる人の違いというのはあると思っています。

私としても、口コミで広がってくれることは非常に大事だと考えますので、発信してくださるお客様をどう増やすかというのは大事だと思っています。

お客さんの期待値をいい意味で裏切ることを積み重ねる

高島 そして、少し話がズレてしまってよいでしょうか。

今の話を聞いていて関連する部分があるかと思ったのが、僕らの場合はロイヤルカスタマーでもファンでも、良い御客さまを作るには、まずモノが優れていなければ話にならないというのはある。

しかし、モノが優れているだけでもロイヤルカスタマーやファンの方というのは作りにくいと思っていて、僕らが一生懸命普段頑張っているのは、「野菜がおいしい」とか「安全」とかいうのは大前提として、それ以外のことを頑張るというのがお客さんの心を掴む上で大事だと思っています。

例えば私たちは何をやっているかと言うと、オイシックスで野菜を買っていただけたら美味しいだろうという期待値はあるのですが、届いたダンボールを開けると、そのダンボールの裏側に野菜の保存方法などが書いてあるのです。

そして、そこに生産者からの手紙などが入っています。あるいは、モノが届いたその日に生産者さんからメールが来て「このホウレンソウはこうやって食べると美味しいですよ」というふうに教えてくれる。

その通り食べると本当に美味しいのですが、リピート率が全然違うのです。そのメールを送ったのと送っていないのと比較して。

だから、ファンやロイヤルカスタマーを作っていく上で大事だし、有効だと思っているのは、お客様の期待値が低いポイントを見つけて、その低いポイントを良い意味で裏切っていくということを積み重ねていくと、商品が良いだけではなくて、お客様の心を掴みやすいと思うのです。こうしたことを重視しています。

佐々木 例えば、期待値の低いところと言うと、今例であげてくださったところ以外ではどうしたところがあるのでしょう。

高島 例えば、新米とかを買う時、新米が美味しいのは期待していると思うのですが、僕らはその新米と一緒に稲穂を届けている。

稲穂が来るなどと言っていないし、期待はしていないし、何かゴミみたいのが来たなと思う。

だけど、これがご飯になるのだということをお子さんと会話になったりする。初めて見るお子さんも多いでしょうから。

すると、食卓で会話が生まれ、会話が生まれると良い「調味料」になるわけです。満足度が上がっていく。

ですから、全然稲穂が来るなどと期待されていないからこそ、そういうことをやる。

お節をお届けする時には、お清めをした5円玉を一緒にお届けをするなど。

そういう期待していないところで頑張って、喜んでもらって、食卓での会話を生み出して、満足度をあげて、リピートしていただくというパターンが多いですね。

ファンづくりは、ファンを創るサービスを作る人づくり

佐々木 それは面白いですね。そういう企画を担当される方がいらっしゃるのですか。それともみんながそういうことを気にかけてやるということなのでしょうか。

高島 それは結構本質的な話です。

結局、ファンを作るサービス作りというのは、ファンを作るサービスを作る人作りだと思うのです。

こういう期待値の低いいろいろな業務というのは、あらゆる社内のワークフローに関わっている一人一人の社員がいかに創造力を働かせてチャレンジできるかというのがすごく大事です。

トップダウンでやってもそれは限界があるし、企画でやっても限界がある。

社員一人一人がそういう意識を持ってやっていくことが、特に小売業とかの場合は非常に重要でしょう。

そのあたりは少しみなさんに聞きたいと思っています。どうやってファンを作るサービスを作る人作りをしているのか、と。

佐々木 今のところ、池谷さんなどはどうですか。

池谷 みなさんの話を聞いていて思うのは、ターゲットにしているユーザーが違うということです。ウチはもうダントツに子供ですから、子供至上主義です。

ファンとかそういうものも、子供の頭の中というのは単純なものなので、やはり子供がすべて教えてくれるということです。

あとは知育アプリとか、子供でアプリで子育てなどというのはまだまだ文化になっていないことですから、先ほどの米以前なのです。

ですから、われわれがまずやらなければならないのは、そこで感激、感動してもらわなければならない。

起業した時によく言ったのですが、僕はデジタル絵本という言葉がすごく嫌いです。

アプリが出始めた頃というのは結構絵本をキャプチャーして、デジタル絵本でアプリにして、売って、駄目だったということがあった。

あんなものは僕からすればクズなのです。絵本というのは大きいのが良いのですから。

それをiPadのアプリにした瞬間に劣化しているし、さらにそれを有料で1,000円で売るというのです。もうワケがわかりません。

ですから、われわれの商品というのはフリーミアムで届けやすいというのもあり、誰でも無料で体験できるのですが、やはりその先には感動があるだろうと。

最近はアンパンマンとかを扱っているのですが、やはりアンパンマンの遊具とか玩具というのはたくさんある。

だから、それと同じ感動を提供しても意味がないので、それは実際に作って子供達に見てもらうということです。

すると、子供たちがものすごく「わお」と言う。こういうのがすごく重要だと思っています。

われわれは必ず、作ったら子供に見せる。大人がレビューしても意味がないので、そういうのは必ず子供しか答えを持っていない。

子供たちがまたやりたいと思うかどうか。その積み重ねがファンが毎日使ってゆくということに繋がってゆく。

そして、僕らにとってのロイヤルカスタマーができるのは、彼らが大人になった時でしょう。大人になった時にまた使ってみたいと。

よく言うのですが、レゴとかディズニーというのはそうでしょう。

やはり子供に与えたいと思うのは、自分が小さい時に使った良い経験があったので渡したいと思う。

僕たちはこうなったら勝ちだと思っています。ですから、それをもう地道なサイクルですが、ずっと続けてゆくことが重要です。

つまり、子供を見続ける。これがシンプルなポイントですね。

誰の満足度を充足していくべきか?

高島 少し質問をしてよろしいでしょうか。ウチも買う人はお母さんで、食べる人は子供だったりお父さんだったりもするという点で似ているところがあると思うのですが、しかしウチは買う人の満足と食べる人の満足を結構両方バランスを見てやっています。

御社は、基本的にお母さんのことはあまり気にせず、お子さんだけを徹底的に満足させるということなのでしょうか。

お母さんはその結果喜べば良いということでしょうか。

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池谷 素晴らしい質問です。実は両方しています。やはりマネタイズしていかなければならないので、そこで親がどうして払うのかとなってくる。

すると、やはりゲームでは課金をしないのです。

特にわれわれはサブスプリクション(月額定額課金)ですから、子供が熱狂すればするほどやはり病的に思うという観点もでてきます。

ですから、最後にお母さんへの口説き文句というのは重要です。すると、本当に二人ユーザーがいるということになります。

子供が見るという視点もありますが、保護者からの目線もかなり気にしているので、お母さんへ「これは良いモノなのだよ」ということをアプリのUI/UXの中で上手く伝えてゆくというのは、この5年間で培ってきた部分です。

そうでないと、課金に繋がっていかない。ですから、起業した1年目というのが実はあまり課金率というのが良くなかった。

最近良くなってきたのはそこの認知がだんだん進んできて、お母さんたちがこれで保育とか教育をするのがアリなのだと思ってきた部分もあるので、それはもういろいろな手を工夫しながらやっています。

ただ、文字をいっぱいにすると、子供の継続率というのが下がってきますから、上手くバランシングしながら両方のステイクホルダーとコミュニケーションを取ってゆくというのはあります。

高島 それはもうお母さんに対しては啓蒙という感じですか。

池谷 アプリの中で啓蒙というのはありませんからね(笑)。

ただ、アプリと言ってもいろいろなところでコミュニケーションが取れるわけです。

例えばアプリのアイコンも一つそうですし、起動した時の最初の画面もそうですし、あとは最近はストアの星の数などもかなり見られているのでそこでどういう文言があるのかとか、レビューが荒れてくるとすべてに悪影響が出るとか、いろいろチューニングできるポイントがあるのでそこを上手く使い分けてゆくというのが現状かと思います。

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ただ、根っこで言うと、先ほど言った幼稚園・保育園向けをやり始めたのはまさにそこで、やはり啓蒙していきたいと思っている。

ただ、啓蒙というのはなかなか簡単にはできません。それでも、われわれとしては幼稚園・保育園のビジネスというのはどちらかと言えば啓蒙、啓発活動に近い。

そこでちゃんと使われているモノならば良いはずだというふうに、お母さんたちに保育でアリなのだと思っていただける部分というのは大きいと思っています。

ですから、そこはもちろんマネタイズもしますが、啓発の意味も強いとも思っています。

佐々木 今、高島さんの質問が面白かったのですが、買う人と食べる人で何対何くらいの注意を払っているのですか。そして、どちらを満足させると注文に繋がるのですか。

高島 ウチは結構買う人が大事です。買う人と作る人がだいたい同じです。

そして、作る人は家族に褒められると継続してくれる。

普段野菜を食べきれなかった子供がウチの野菜だと食べきったとか、あるいは「何か料理上手になったんじゃない」と旦那が言ってくれたとか、そういうのが買う人にとって大事です。

ですから、僕らは買う人の満足のMAXのために、脇役である家族が奥さん(お母さん)を褒めるという仕掛けを作るようにしています。

 その褒める仕掛けというのは具体的に何なのですか。

高島 子供がいらっしゃる場合ですと、お母さんの悩みは一生懸命作ったのにちゃんと食べてくれないというのがある。

そこで、レシピつきとか、下拵え調理済みとか、最近売れているのですが、それは僕らが結構子供心を理解しているのです。お母さん以上に。

すると、色が可愛いとか、何か丸っこいとか、刻まれている度合いが歯の中に残らないとか、そういう子供心をグリップしている食べ物ならば子供は全部食べてくれるので、するとお母さんは嬉しい。

 それは商品開発部の人が日々実験して、定量化して、これは子供にウケるというようなことをやっているのですか。

高島 そういうこともやっていますし、池谷さんの話と少し似ているかもしれませんが、コドモニターといって子供を集めて試食会をやっているのです。

子供が「バツ」とやると売れない。子供心を理解しようとしているので、そういうやり方でやっています。

一点集中で価値を追求していく

佐々木 仲さんのウォンテッドリーのサービスもある種企業が普通に求人を出すのではなくて、その会社のファンになってもらうようなコンテンツにしたり雰囲気を出すということが、他の求人広告と違うところなのではないかと思います。

仲さんのところにとってはファンとはどういう概念で捉えていますか。

 先ほど高島さんが、発信してくれる人がファンだと言っていましたが、発信してくれる人というのはすごくそのサービスで良い経験をした人だと思うのです。

そして、ウォンテッドリーの中で良い経験をしたという人がいるとすれば、ウォンテッドリーがなければ出会えなかったような出会いをした人なのではないかと思っています。

先ほど高島さんは、本質的な野菜が美味しいというところ以外にもサプライズを押し込むという話をされていましたが、ウチは徹底的に良い人、良い会社と出会えるというところだけフォーカスしています。

逆に言えば他がパッとしなくても、そこだけ一点集中で価値を追求していければ良いのかなというところでやっています。

ですから、先ほどステイクホルダーが何人かいるというお話がありましたが、ウォンテッドリーの場合は企業とユーザーのマッチングなので、両方顔色を見なければいけないのですが、マッチングのところで言えば社内では圧倒的に転職者にあたるユーザーの方を優先しようということをずっと言っているのです。

だから、例えばウォンテッドリーは、募集のバナー(画像)などについて厳しかったりします。変な画像などがあれば速攻で禁止されます。

それも多分アップル的なやり方と楽天的なやり方があると思います。アップル的というのは、全体最適の個別不最適。

楽天的というのは個別最適の全体不最適なんですよ。ですから、一個一個が目立とうとすると楽天のようになっていって全体不最適なのですが、アップルの場合は一個一個についてとても審査を厳しくして個からするとウザったいのですが、全体としてすごくマーケットが最適化されていて、全体として価値がでるから、そこへ乗っかるだけで個のプレーヤーも座布団の上へ乗っかれるという感じなのです。

ウチの場合はユーザーの方を向くと全体最適になると思っていますので、そこは結構徹底してやっています。

(続)

続きはEコマースは「amazonかamazonではないか」に二極化するのか?をご覧ください。

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編集チーム:石川 翔太/小林 雅

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