リアルとネットの対立構造を覆す無印良品のデジタルマーケティングの進化【K16-2A #6】 – INDUSTRY CO-CREATION

リアルとネットの対立構造を覆す無印良品のデジタルマーケティングの進化【K16-2A #6】

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「ファン作りとユーザーの資産化」【K16-2A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その6)は、良品計画 濱野さんに無印良品のデジタルマーケティングについてお話し頂きました。事前人気投票で1位に輝いたセッションです。是非御覧ください。

ICCカンファンレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回ICCカンファレンス FUKUOKA 2017は2017年2月21〜23日 福岡市での開催を予定しております。

登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 2A
「ファン作りとユーザーの資産化」
 
(スピーカー)
青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役
 
佐渡島 庸平
株式会社コルク
代表取締役社長 
 
長見 明
スターバックスコーヒージャパン株式会社
マーケティングコミュニケーション本部 デジタル戦略部 部長
 
濱野 幸介
株式会社良品計画
Chief Marketing Technologist(当時)
*現在はプリズマティクス株式会社 代表取締役
 
(モデレーター)
守屋 彰人
株式会社ディー・エヌ・エー EC事業本部長 (当時)
*現在はダイソン株式会社 Head of Direct

その1はこちらをご覧ください:ファン作りとユーザーの資産化【K16-2A #1】
その2はこちらをご覧ください:「北欧、暮らしの道具店」は”使い手としてのプロ”としてコンテンツを作る【K16-2A #2】
その3はこちらをご覧ください:感動の連鎖を生み出した「宇宙兄弟」のミュージックビデオレター(コルク佐渡島)【K16-2A #3】
その4はこちらをご覧ください:タンブラー、全面禁煙、デザインカード…スターバックスが起こし続けてきたイノベーション【K16-2A #4】
その5はこちらをご覧ください:「売り手ではなく、生活者或いは自然の論理」無印良品の商品開発を支える”観察力”【K16-2A #5】


無印良品のデジタルマーケティング1.0

濱野 一方で、デジタルの使い方としてどうなのというところなのですけれども、象徴的な事例として、これは結構昔なのですが、店舗は店舗、ウェブはウェブという図なのですけれども、

「リアル対ネット」という構図は、こういう小売業界だとよくある話です。

かなり昔の話にはなっていますけれども、商品のカタログの中にネットストアで注文される場合の説明を入れたのですけれども、店長がネットストアに売り上げを奪われたくなくて、このページをちょん切ってしまうというような現象が起きたりしていました。

ただ、これが段々変わってきました。

ネットストアに登録されたまま、商品を購入されないお客様がいらっしゃるのに気づいたのです。

無印良品のデジタルマーケティング2.0

それがなぜかを調べてみると、ネットストアの登録は、オンラインショッピングが一番の目的ではなく、買い物前に商品をチェックするためだということがアンケート結果から分かりました。

つまり、無印良品で商品を購入されたいお客様は、オンラインで商品をチェックしてリアルの店舗で購入する、言い換えると「送客(メディアから店舗への誘導)」がされている訳です。

今となってはごく当たり前のことかもしれませんが、それは要するに(リアル対ネットの)対立の構造を覆すものであり、段々と理解されるきっかけにもなっていきました。

ですから、デジタルマーケティングを担っているWeb事業部の役割というのは、ネットストアでの購買はもう当たり前のこととして、店舗への送客とデジタルメディアを用いたコミュニケーションだと考えています。

それは、リアルの店舗での売上が9割を占めているということにも深い理由があります。こちらの方でより多くのお客様が(ブランドに)接触されているということですね。

売上高にも貢献し、そのコミュニケーションにも貢献するというのが我々のミッションです。

ソーシャルメディアは2009年から使い続けていています。

無印良品のデジタルマーケティング3.0

ソーシャルメディアの活用

横に(スターバックスの)長見さんがいらっしゃって比較するのが申し訳ないんですけれども(笑)、Facebookでも「いいね!」のフォロー数が100万を超えるくらい大きなものになっています。

最近ですとInstagramのアカウントのフォロワーも30万人を超えて、これも青木さんが横にいらっしゃって申し上げにくいのですけれども(笑)、それなりに大きな規模になってきています。

後ほどこの辺に触れていければいいなと思うのですが、ソーシャルメディアを使ったら売れるのか、或いはソーシャルメディアを使ってバズった(インターネットサイトやブログの記事や発言がソーシャルメディアで爆発的にシェア・共有されること)時に何が良かったのか、何が結果なのかという話だと思っています

一つは当然売上高なのですが、ではただそれだけか。やはり色々ソーシャルメディアを活用していく中で、一番左にあるようなツイート(つぶやき)だとあまり売れなかったのですけれども、1日5,000フォロワーが増えたり、

2つめのツイートは、5万リツイート(あるつぶやきを皆に知らせる機能)されたのだけれども全然売れなくて、でもやはりフォロワー数は増えていたりするんですよね。

最後のInstagramの例ですと、実際に売り切れるということも起きているのですが、バズらせること自体が目的ではなく、どうお客様に喜んで頂いて、最後にどう売り上げにつなげていくのかというところに、トライ&エラーを繰り返しながら真剣に取り組んでいるところです。

守屋 ちなみに、スライドのバウムクーヘンのところに書いてある「ドラゲナイ」というのは、SEKAI NO OWARIの楽曲「Dragon Night」のプロモーションビデオに出てくるトランシーバーですか(笑)?

濱野 そうです。

前年度のNHK紅白歌合戦で (SEKAI NO OWARIのボーカルが)トランシーバーを持って歌った時のものです。

翌年の節分の時に「無印良品のバウムは、恵方巻としてはもちろん、ドラゲナイにもいけそうです。」というメッセージをツイートしました。

そのあたりからはソーシャルメディアの活用事例の話になってしまうのですが、時事ネタをどういう風に入れて(お客様の心を)掴んでいくかについて日々担当者が考えています。InstagramもFacebookもTwitterも、実は一人の社員が運用していて、その者のセンスにかなり依存しているのですけれども。

守屋 熱狂的な無印良品ファンでも、購入回数は年間8回だと書かれていたのを、何かのメディアで読んだことがあるのですが、こういう取り組みというのは、既に愛用して下さっている方というよりは、新規顧客の獲得を目的に行われているのですか?

濱野 TwitterやFacebookの場合はもちろんやり方にもよるのですが、割と新規顧客寄りの発想が強いかなと思います。

守屋 なるほど。

デジタルメディアを活用したプロモーション

濱野 一方で、後ほど出てくるアプリに関しては、どちらかというと既存顧客向けのイメージが強いかなと思います。

ただ、それも結構(既存顧客と新規顧客で)重複している部分があるので、その辺は色々と考えながらやっています。

デジタルメディアを用いたプロモーションも結構行っています。例えば、Facebookとの連動で、お気に入りのコーディネイトに「いいね!」をクリックして頂くと、有楽町の売り場のマネキンの胸に取り付けられたカウンターでリアルタイムに表示されるO2O(Online to Offline)プロモーションシステムも作りました。

そして、それを音で体感できるように、「いいね!」がカウントされる度にロボットが自動で木の球を送り出し、木琴がクリスマスソングを奏でる仕掛けも作りました。

2012年に取り組んだこの「KNIT Like COLLECTION(ニットライク コレクション)」では、広告賞の一つ「One Show(ワンショウ)」のインタラクティブ部門「One Show Interactive(ワンショウインタラクティブ)」において、メリット賞を受賞しました。

右側は、「MUJI HOME MADE」で、毎年冬になると「ヘクセンハウス」というお菓子の家をプロモーションしているのですが、有楽町にかなり大きなジオラマレベルのものを作って、それをリアルタイム・ストリーム配信するというプロモーションも行っています。

こちらの取り組みも、「モバイル広告大賞」のマーケティング部門で「グッドブランディング賞」を受賞しました。

ただ、賞を頂くことよりも、お客様とどうインタラクション(交流、相互作用)するかという事の方がすごく大事なので、例えば今でも無印良品のペンを使った作品をInstagramにハッシュを付けて投稿して頂いき、「MUJI PEN ART CONTEST」を催したりしています。

今お話したような様々なプロモーションを行ってきたのですが、どうしても期間やエリアが限定されてしまったり、ネットだけに限定されてしまいがちだったので、現在はアプリを入れて展開しています。

「MUJI passportをお持ちですか?」が最強のプロモーション

ダウンロードの回数は約700万で、端末だと大体500万まできています。

今は何よりもアクティブユーザーを重視していて、230万人くらいのレベルにきています。

加えて、特徴的なのは、これはリアル店舗向けのツールでもあるので、実際にお店でどれだけこの会員証を提示して下さったのかという提示率を重視しているところです。

現在、100人に30人くらいのお客様に提示して頂けるようになりました。

守屋 店舗でダウンロードを勧めたりもされますよね。

濱野 そうですね。意外かもしれませんが、実はFacebookも含めて、ネット上で広告を出していないんですよ。

お店で「MUJI passportをお持ちですか?」と一声掛けするのが、最強のプロモーションだと思っています。

守屋 数百店舗もある訳ですが、各従業員の方々にダウンロードを促進してもらうために、どういった工夫をされているのですか?

濱野 まず無印良品の文化もあると思うのですが、その辺は「MUJIGRAM(ムジグラム)」(運営マニュアル)に繋がると思います。

【参考資料】
業績好調「無印良品」、進化の秘密は「マニュアル」にあった【前編】

店舗の、特にオペレーションに関しては、「MUJIGRAM」にやり方が示されているんですよね。

それに沿ってオペレーションすることで、なぜ「おたたみ」(衣料品を畳む作業)をしなければならないかや、どの時間帯にやればよいかが、理由も合わせて分かるようになっています。

最初は「一声がけ」を必ずレジのときにやるというのが落ちました、だけどここから先は支持してもらえるかどうかの問題なので、これで効果が出てきちんと集客という形で自分たちに跳ね返ってくるかどうかと、それを使って自分達に有用な気づきが得られるかどうかというところが、すごく重視されているかもしれませんね。

守屋 私も様々なインターネット系、モバイル系のビジネスに取り組んできましたが、店舗の従業員教育というのは、やはりなかなか上手くいきません。

良品計画さんの離職率が5パーセント以下だというのを見た時に、やはりそういう積み上げ資産が店舗の従業員さんにもどんどんたまっていっているのかなと感じたのですが。

濱野 外部から見る場合と内部から見る場合とでは、確かに違いもあると思うのですが、サービスのクオリティを一定レベルに上げるためには、「MUJIGRAM」の浸透は欠かせないと思っています。

店舗に新しく入った従業員の教育にも、必ずマニュアルとして使っています。

あとは、先ほどの田中一光さんの話にあった雰囲気みたいなものも、かなり大きく影響しているのかなと個人的に感じています。

守屋 ありがとうございます。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子

続きは ファン作りの究極的な姿は「宝塚歌劇団」のような世界観 を配信予定です。

【編集部コメント】

続編(その7)では、「ファン」が企業の資産となるにはどのようにすれば良いか?等について議論しました。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。

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ICCパートナーズ(ICC Partners Inc.)は産業を共に創る経営者・経営幹部のためのコミュニティ型カンフ ァレンス「Industry Co-Creation(ICC) カンファレンス」の企画・運営および新規事業創出・アライアンスなどのアドバイザー業務を行っています。