無印良品はまるで「密教」- ファン作りの神槌とは何か?【K16-2A #8】 – INDUSTRY CO-CREATION(ICC)

無印良品はまるで「密教」- ファン作りの神槌とは何か?【K16-2A #8】

Pocket

平日 毎朝7時に公式LINE@で新着記事を配信しています。友達申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! Youtubeチャネルの登録はこちらから!

「ファン作りとユーザーの資産化」【K16-2A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その8)は、各登壇者が考えるファンを創る仕組みについて議論しました。事前人気投票で1位に輝いたセッションです。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております



登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 2A
「ファン作りとユーザーの資産化」

(スピーカー)
青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役

佐渡島 庸平
株式会社コルク
代表取締役社長

長見 明
スターバックスコーヒージャパン株式会社
マーケティングコミュニケーション本部 デジタル戦略部 部長

濱野 幸介
株式会社良品計画
Chief Marketing Technologist(当時)
*現在はプリズマティクス株式会社 代表取締役

(モデレーター)
守屋 彰人
株式会社ディー・エヌ・エー EC事業本部長 (当時)
*現在はダイソン株式会社 Head of Direct

「ファン作りとユーザーの資産化」の配信済み記事一覧

【前の記事】

【本編】

守屋 先ほどの紹介にありましたように、スターバックスさんや良品計画さんも、インターネット上のサービスのトラフィック(サイトへのアクセス数)ではトップ10以内に挙がっていますし、良品計画さんにしても、この会場の中にもアプリをダウンロードされている方が沢山おられると思います。

そういったユーザーの内、このくらいの割合は「資産化」されているとか、「資産化されたファン」をこういう風に活用していますといったエピソードはありますか?

ブランドそのものの鮮度が大事

長見 むしろ「資産化」という考え方をしたことがありません。

ブランド論では「ブランド・エクイティ(資産)」という言い方をし、資産から負債を差し引いた正味資産という形で、ブランドがもつ資産価値を評価するというやり方はあると思うのですが。

例えば、大学生のころよく行っていたチェーン店に、今も行かれているかどうか考えてみて下さい。

大学生の時に大好きだったそのお店のブランド・イメージはどうなのかというと、多分、今も悪くないはずなんですよ。

5年、10年経っても悪くはならないと思うのですが、「最近行ったの?」と聞くと、「行っていないです」と答えが返ってくる訳です。

あまり具体名は出したくないのですが、最近はドーナツから始まり、パンケーキからポップコーンまで、随分流行りがありますよね。(笑)

では3年後はどうなのか。あんなにお客さんが並んでいたお店が、今はどうなっているのか。お店に行っているのかというと、多分今は行列もないし、最近ちょっと残念な感じのお店の空間になっていたりするのです。

「資産」だったとするならば、償却はとても早いと思うんですよ。

守屋 トレンドやブームも移り変わりのスピードによる、という感じですかね?

長見 というよりは、ファンよりもブランドそのものの鮮度の方が大事だと思います。

記憶というのは一旦しまわれて、再編集された時にもう一度頭に出てくるので、何回再編集できたのかということや、どれくらい新しい刺激を受けることができるかということが重要な気がします。

スターバックスではイノベーションを大事にしていますが、それが小さなことであっても、お店でのお声掛けでサプライズが起こるということでも全く構わないのです。

小さなことから商品レベルの大きなことまで、そういうものを出し続けられる組織・カルチャーであることが、むしろ資産としては価値が高いと思うんですよね。

ですから、外側に起こっているお客様の状態というのは、むしろ劣化がとても激しい状態なのではないかと思うので、あまり着目したことがありません。

守屋 ありがとうございます。濱野さんは、いかがですか?

無印良品はまるで「密教」

濱野 無印良品の場合も、「資産」という言葉が馴染まないんですよね。

既に長見さんが仰って下さいましたが、無印良品って何なんだろうねというと、これは主観も入っていますが、まるで「密教」のようだとも思っているんですよ。

入って下さいと勧誘に行く訳ではないのですが、僕らはこういう世界観、ライフスタイル、思想をすごく大事にしていて、もしよければ体験してみませんかといった感じなんですよね。

僕らは「B with C (Business with Customer)」とも言いますが、「B for C (Business for Customer)」の考え方に基づき、お店のイベント等もその一環だと思っています。

そこに新規・既存のお客様に参加して頂いて、そこで「いいね!」と思うような体験をして下さったらお客様の時間、つまりそれだけの顧客時間(編集注:商品の検討から購入、使用や消費に至るまですべてのフェーズを指す)を得ることになる訳なので、それによって絆が繋がれていくし、その方からのご紹介という方が無印良品っぽい感じがしますね。

守屋 なるほど。

一度でも心を動かされた人の数が増えていくことが資産

青木 今の「資産化」のお話の中で、資産が劣化する、劣化しないという問題がありましたが、「資産化されたファン」が劣化しているというよりは、「資産化」されているのだけれども、その期待値は超え続けなければならないということなんですよね。

先ほどのハイブランドの話もそうですけれども、CHANELがいいなという記憶の刷り込みがあって、資産化されたのだけれども久しぶりに見たら、「何だよ、最近はこんな風になっているんだ」といった感じで劣化するということなので、外部に源泉があるというのはもちろんそうなのですけれども。

僕がよくお話するのが、昔好きだった女の子の例え話です。

昔好きだった女の子のことをたまに思い出して、「あれ?あの子は今どうしているのかな」と思ってFacebookで検索してみたりするようなことって、皆さんも絶対されたことがあると思うんですよ(笑)。

(会場笑)

心を動かされた相手って、15年経ってもたまに思い出すじゃないですか。

姓が変わっているからか、実際にFacebookで見つけることができたことは一度もないのですけれども、仮に見つかった時に、「ああ、今はこんな風になっているんだ…」と思えばそこで終わるし、「15年も経っているのに、益々素敵だな」と思えば、発火する何かがありそうじゃないですか。

守屋 何を期待するかにもよりますよね(笑)

(会場笑)

青木 まあ、そうですよね。

要は何が言いたいかというと、一度でも心を動かされた人の人数が増えていくということは、確実な「資産化」だと思うんですよ。

一瞬途切れても、やはり先ほどのポップコーンのように、「昔食べてとても美味しかったポップコーンは、今どうなっているのかな」と思った時に、そこにイノベーションが起きていることを久しぶりに確認できたら、そこからまた縁が繋がると思うんですよね。

ですから、劣化させるかどうかというのは、運用側の問題であって、そのブランドが確実に第一想起に挙がっているかや、共感を得て自分のブランドだと思ってもらっているかということは、ケアし続ければ積み上がっていくものなのだと思っています。

守屋 ファンの嗜好性が移り変わりやすい業界か、定着しやすい業界かによっても、ファンが一時期離れてもなお且つ期待を超え続けようという努力をするサービスの提供側の大変さの度合いが違ってくるのではないでしょうか?

コミュニケーションのクオリティを上げ続ける

佐渡島 ファンが離れやすい業界というのがある程度あるにしても、実はそれほどではないと思っています。

スターバックスの場合、店舗に行くとよく分かるのですが、そこまでメニューに変化があって毎回期待値を超える訳ではなくて、その安定したコミュニケーションが良いのだろうなと思っています。

実は、青木さんのネットの中でのインタラクションについての考え方に関しては、青木さんから学び、今、それに自分なりに取り組んでいるところです。

僕は少し違う考え方をしていて、ネット上であればあるほどそこはやっていったほうがいいだろうなと思っています。

例えばスターバックスさんにしても良品計画さんにしても、リアルな店舗でしっかり個別対応されていて、そこでの関係性があるからこそ、(ネットに)移行させていった時にインタラクションが起こり易いのだと思います。

他のファーストフードのお店等だと、個別の対応というのがないから、割引券としてのアプリ以外は殆ど意味を持たないのだと思うんです。

ハイブランドの場合、ハイブランドのど真ん中のお客さんになっていないと、遠く離れているような感じですが、ど真ん中のお客さんに対してかなり電話営業をしているじゃないですか。

だから結局、リアルの場合でも個別対応をかなりしています。

僕は、それをある程度していくというのが大切だと思っています。ネットメディアはラジオ的であることが重要で、雑誌やテレビ的な距離感ではダメなのではないかなと思っています。

ただ、リソースの割き方として、全員に会話するのか、それとも、(他の人にも)見られていて、ここは関係が築けるところなのだなと思わせるのかという演出の方が重要なのではないかと思っているんですよね。

守屋 先ほどの青木さんのお話だと、リソースの問題もあるけれども、ハイブランドがインタラクションをしないのと同様に我々もしないという論調もあったと思うのですが。

青木 今のお話でいうと、僕らが店だということがまず決定的なこととしてあって、お店の機能の部分はOne to Oneで、それこそ月間1万5,000件のお客様にモノをお届けして個別対応しているということがあります。

このクオリティを上げ続けていくということが、個別対応の最も重要なところです。

ですから、優先順位がまずそれ程高くないということが一つと、例えばさっき仰っておられたハイブランドの個別対応というのは、他のお客さんに可視化されないじゃないですか。

最もコアなお客さんに対してのコミュニケーションが他のお客さんに可視化されるというのは、やり方を間違えると蛸壺化する(閉鎖的になる)恐れもありますよね。

要するに、非常に濃いけれども、広がりのないファンのコミュニティができてしまうという可能性があると思っています。ですから、濃いコミュニケーションは、どちらかというと他のお客様に可視化されないところで行います。

オープンなところでは全てのお客さんにフラットに接するというのが我々の基本的なスタンスなので、コミュニケーションをしないとか、個別対応をしないということではないんですね。

どこでコミュニケーションをすべきで、どこでフラットに対応すべきかという選択の問題だという風に考えて頂ければと思うのです。

誠実であれ

守屋 あと5分になってしまったのですが、もう一つだけ、会場から質問を伺う前にお聞きしたいことがあります。

ICC(INDUSTRY CO-CREATION)ということで、経営者の方々が中心だと思いますので、是非伺ってみたいのですが、ファンの資産化やユーザーのファン化を進める上で、経営者として、或いはオンライン系のリーダーとして、従業員にどのように何を働きかけて、それを実現されているのでしょうか。

長見さんいかがですか?

長見 スターバックスの場合は、現場(店舗)で「嘘をつくな」というのが基本にありますね。

接客をすればするほど、お客さんに対すればするほど、全て見透かされてしまうので、「おすすめです」という時は、本人が本当におすすめだと思っていないのなら、おすすめしない方がよいと思います。

守屋 誠実であれということですね。

長見 そうですね。

青木さんが仰っているように、フェアであることイコール、全てのお客様に対して誠実であるということだと思うんですよね。

そういうことも含めて、結構良い人になっていないと、ファンはできないんだろうなと思います。

守屋 青木さんは「資産化」に関して意識的に取り組まれているというお話だったのですが、例えば従業員に「ファンで止めるのではなく、資産化しよう!」と言ってもチンプンカンプンですよね。

ですから、どういう語りかけ方をしながらそういった資産を増やしていくのかということは、結構難しいのかなという印象があります。

青木 これは逆説的ですけれども、資産化しようと思ったら資産化しなくなってしまうと思うんですよ。

「こいつを資産化してやろう」という風に思われたら、絶対嫌だと思うじゃないですか。

だから、動機づけの中に資産化してやろうという気持ちがあることイコール、資産化しないということで、まず、そこは大きな前提としてあります。

我々が、社員を9割方 元お客様から採用しているのは、まさにそこに理由があって、自分がお客様だったらどうすればいいかということを考えてもらうだけで成立するというところだと思うんですよね。

自分が読者の一員として読んでいた時に、どういう記事が嬉しくて、どういう記事に不快感を感じたのかを、そのまま自分のお客様に対して返してくれればよいだけだよ、というところに尽きると思いますね。

守屋 ありがとうございます。

濱野 「MUJI passport」と同じものを欲しいというお客様が、結構多いんですよね。

同じようなアプリを作っても、やはりダウンロード数が伸びないし、アクティブユーザー数も伸びないんですよ。

それはなぜかというと、元々「MUJI passport」というアプリを出す前の段階でも、元々の企業の成り立ちとしての田中一光さんの軸みたいなものもあるし、従業員が最大のファンであるし、外側にずっとインタラクションしてきたメール会員もそうであるし、LINEの会員もいらっしゃって、そこからのご案内という形で店舗にいらっしゃり、その店舗という最大の接点でずっと繋がっているというのが軸としてあるので、誠実に地道にやるしかない気がしているんですよね。

そこを一回刈り取ってしまうと、「刈取り」になってしまうというというのがイメージです。

守屋 サービス毎の特性を十分に理解して行わないと、同じアプローチではダメだということですね。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子

続きは 【最終回】コルク佐渡島氏らが語る「ファンを創る誠実さ」 をご覧ください。

【編集部コメント】

続編(その9)では、会場からの質問を受け付け、眠るファンの掘り起こしや、ファンを創るコツを議論しました。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。

更新情報はFacebookページのフォローをお願い致します。

Pocket

ICCパートナーズ

ICCパートナーズ

ICCパートナーズ(ICC Partners Inc.)は産業を共に創る経営者・経営幹部のためのコミュニティ型カンフ ァレンス「Industry Co-Creation(ICC) カンファレンス」の企画・運営および新規事業創出・アライアンスなどのアドバイザー業務を行っています。