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1. 気鋭の経営者たちが語る、我が社のビジョン/パーパス

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ICC FUKUOKA 2023のセッション「ビジョン/パーパスについて語り合う」、全4回の①は、中川政七商店 中川 政七さん、クラシコム 青木 耕平さん、Sun Asterisk 小林 泰平さんが、自社のビジョンやパーパスを語ります。モデレーターを務めるのはPIVOT 佐々木 紀彦さんです。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 5B 
ビジョン/パーパスについて語り合う
Supported by エッグフォワード

(スピーカー)

青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役

出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長

小林 泰平
株式会社Sun Asterisk
代表取締役CEO

髙島 宏平
オイシックス・ラ・大地株式会社
代表取締役社長

中川 政七
株式会社中川政七商店
代表取締役会長

(モデレーター)

佐々木 紀彦 
PIVOT株式会社
代表取締役社長/CEO

「ビジョン/パーパスについて語り合う」の配信済み記事一覧


佐々木 紀彦さん(以下、佐々木) 本セッションは、ビジョンとパーパスについて語り合うということで、5名のゲストと一緒に話していきたいと思います。


佐々木 紀彦
PIVOT株式会社
代表取締役CEO

福岡県生まれ。 慶應義塾大学総合政策学部卒業、 スタンフォード大学大学院で修士号取得。 「東洋経済オンライン」編集長、NewsPicks創刊編集長、 NewsPicks Studios CEOを経て、 2021年6月にPIVOTを創業。 

会場参加者が少なめですね(笑)。

中川 政七さん(以下、中川) 先ほど髙島さんには、「このテーマなら、このくらいだよ」と言われました(笑)。

(一同笑)

髙島 宏平さん(以下、髙島) というか、皆さん、どういうモチベーションで参加されているのでしょうか。

(会場笑)

だって皆さん、基本的にビジネスの成功に興味があるわけですよね(笑)?

佐々木 すぐには儲けにつながらなさそうなセッションテーマです(笑)。

髙島 ですので、どういうモチベーションなのか興味ありますよね。

佐々木 会場の何名かに聞いてみましょうか。

これを聞くために来た!というご意見がある方、いらっしゃいますか?

その意見に寄せてセッションを作っていきますので、ぜひ。

最前列の方、いかがでしょう? 最前列にいるということは、相当気合いが入っているわけですよね。

なぜ、このセッションに来てくださったのでしょう?

発言者1 北三陸ファクトリーの下苧坪(したうつぼ)と申します。

Made by Japanを世界へ。「北三陸ファクトリー」はうにの再生養殖で水産業の新時代を創る(ICC FUKUOKA 2023)

何年、何十年先の目的を目指して事業をされているのかを聞いてみたかったからです。

目の前ではなく、先の未来をどんな視座で見ているのかを教えてください。

佐々木 ありがとうございます。まさしく、ビジョンを聞きたいということですね。

後ろの方、いかがでしょうか?

発言者2 大阪で靴作りをしている、インターナショナルシューズの上田と申します。

OEM工場から自分たちのものづくりへ。「インターナショナルシューズ」は顧客を想い、世界を笑顔にする靴作りを目指す(ICC KYOTO 2020)

私は、各社、過去にビジョンを作ったことで変わったことはあったのか、その際、言葉だけが変わって根幹が変わらないのか、それともガラッと変わったのかを聞きたいです。

よろしくお願いします。

佐々木 ありがとうございます。

今いただいたコメントも頭に入れながら、進めていきたいと思います。

今日は3つのパートで進めていきます。

まず、5名の方に3分ずつ、自社のパーパスとビジョンをご説明いただきながら、自己紹介をしていただきます。

パート2では、なぜビジョンやパーパスは重要なのか、それを作ることで実際に経営上の効果があるのかを聞きます。

最後のパート3は、ビジョンやパーパスをどう作ったのか、実践について役立つ話を引き出していきたいと思います。

ではトップバッターとして、このセッションを是非ともやりたいと一番に言ってくださった、中川さんからお願いします!

「日本の工芸を元気にする!」中川政七商店 中川さん

中川 はい(笑)。


中川 政七
株式会社中川政七商店
代表取締役会長
1974年生まれ。京都大学法学部卒業後、2000年富士通株式会社入社。2002年に株式会社中川政七商店に入社し、2008年に十三代社長に就任、2018年より会長を務める。業界初の工芸をベースにしたSPA業態を確立し、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、業界特化型の経営コンサルティング事業や教育事業を開始。現在は学生経営×地方創生プロジェクト「アナザー・ジャパン」や、志あるブランドを世の中に届ける共同体「PARaDE」を発足。企業やブランドのビジョン・思想を「ライフスタンス®」と提唱し、新しい経済の形を生み出している。

まず、髙島さんの「儲からないこの話に、みんな興味がないのではないか」という意見に対してですが、ビジョンがきちんと機能すれば儲かると僕は思っています。

また、これは佐々木さんとも話していたのですが、ビジョン、ミッション、パーパスと色々な言葉がありますが、これらは全部同じです。

会社の1番上に掲げるものを何と呼ぶかは流派の違いであるという前提で、今日のセッションを進めていただければ良いのではと思っています。

中川政七商店のビジョンは、「日本の工芸を元気にする!」です。

ここに至るまでを少し話すと、中川政七商店は、工芸品を扱う商売を300年ほど行っています。

中川政七商店の成り立ち(中川政七商店)

僕は2002年に会社に戻ったのですが、その時、お茶道具の商売が主軸で、母が始めた雑貨事業は赤字でした。

お茶道具を扱えと言われましたが、雑貨の方が面白そうだったのでそこに入り、再生するところから始めました。

最初に行ったのは業務改善とブランディングで、SPA(製造小売業)を確立していきました。

それでうまくいって黒字化したのですが、何のために働くのだろうという問いが生まれたので、モチベーションを保ちながら長く商売を続けていくためにこのビジョンを設定しました。

もう20年ほど経営をしていますが、これを決めたことが何よりも大きかったと本当に思っています。

2007年にこのビジョンを決めて、言った以上はやらなければいけないと始めたのが、同業の工芸メーカーのコンサルティング、経営再生事業でした。

コンサルティング事例(中川政七商店)

皆さんご存知のように、工芸は斜陽産業であり、現在の売上はピーク時の6分の1ですので、どんどん事業が潰れていくわけです。

彼らが潰れるとうちもものづくりができなくなるので、何とかしなければいけないと考えてこのビジョンができ、産地の一番星を作るためにコンサルティングを続けてきて、それなりに実績も出しました。

流通サポートやコンサルティングを行い、自社の流通拡大もしていますが、産地の衰退が本当に止まらず、サプライチェーンが崩壊する事態になっており、産地の一番星を起点に地域を何とかしなければいけない状況です。

そこで、地域全体を何とかする、僕らで言えば奈良を何とかするためにスモールビジネスの事業支援を始めました。

その中で結局は教育だということになり、経営者の教育を今、行っています。

教育事業(中川政七商店)

佐々木 後ほど、深くうかがっていきますね。ありがとうございます。

次は青木さん、お願いします。

「フィットする暮らし、つくろう。」クラシコム 青木さん

青木 耕平さん(以下、青木) 初めまして、クラシコムの青木と申します。


青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役社長

1972年生まれ。2006年に実妹である佐藤友子と株式会社クラシコムを共同創業。2007年に「北欧、暮らしの道具店」を開業。商品の企画・販売、コラムや映像等のコンテンツ配信、企業へのマーケティング支援など、ライフカルチャーにまつわる事業を展開している。

北欧、暮らしの道具店」という、Eコマースの、セレクトショップとSPAとメディアを1つにしたような、少し説明の難しいサービスを運営しております。

今回のテーマですと、「フィットする暮らし、つくろう。」が我々のミッションです。

「フィットする暮らし」というのは少しふわっとしていますが、厳密には、自分の生き方を、自分らしいなと感じつつ、満足できている状態を、フィットする暮らしができている状態だと定義しています。

フィットする暮らしを「届ける」ことをミッションにしているのではなく、「つくろう。」としているということは、真っ先に経営している自分あるいは一緒に働く従業員が、フィットする暮らしを自ら作ることにお客様を巻き込んでいくのがミッションです。

そういう構造にしているので、つまり、自分自身がまず幸福になりたいということをミッションとして掲げている、まあ変わった会社かなと思っております(笑)。

ただ、フィットする暮らしをつくると一口に言っても非常に難しく、言うは易し、行うは難しだと思います。

しかもお客様の、フィットする暮らしづくりを少しでも進めるためのお手伝いするだけではなく、経営者である私も、一緒に働いている仲間も、少なくとも自分たちがフィットする暮らしにどんどん近づいていると感じながら働けることを掲げています。

ですから、かなり難易度の高いテーマ設定をしてしまったと思っています。

それができる会社はどういう要件を備えているべきかという点から、ビジョンを説明しています。

我々は、ミッションを達成するために会社がどうあるべきか、というのがビジョンだと捉えています。

「自由」「平和」「希望」という3つの要素が揃えば、少なくとも「フィットする暮らし、つくろう。」というミッションを達成しうる土台たる会社を作れるかもしれないと考えています。

自由、平和、希望を追求することは継続的にイノベーションを起こし続けることだった。(クラシコム)

「自由」とは、他者に支配されず、ミッションに向かってまっすぐ意思決定ができる状態です。

「平和」とは、ユニークなポジションを得て、望まない競争で消耗させられることのない状態です。

また、非常に難しいミッションに取り組むので、長期間にわたってモチベーションを維持できることが重要で、それが「希望」という状態です。

ですから今日より明日、今年より来年、やればやるほど自然と良くなると思える分野だけに事業を展開する、つまり蓄積と複利が効くところだけでビジネスを行います。

これらを経営方針としています。

会社で働く人たちに求める行動指針は、一般的にはバリューと言われるものだと思います。

これを「センシティブ」「チャーミング」「オルタナティブ」という3つの言葉で表現しています。

センシティブ!オルタナティブ!チャーミング!(クラシコム)

とかくビジネスの現場においては、「センシティブ」という言葉は弱さにつながるので否定的に取られる向きもあると思いますが、一方で、お客様や自分自身、仲間がどう思って、感じているのかに気づく力がなければ、卓越したサービスを生み出すことはできません。

ですから、我々がミッションとして持っている非常に難しい課題を解決するには、まずセンシティブな人でなければ始まりません。

よって、自分自身の敏感さを大切にしてほしいという思いから、「センシティブ」と掲げています。

また、センシティブなだけではナイーブになってしまう可能性があります。

自分の感じていることだけに振り回されて、やるべきことをしっかりと行えないかもしれないので、セルフコントロールをきちんとしてチャーミングに表現するということを、心がけてもらっています。

その上で、我々としては、より良い解決策があるということを素直に信じて、オルタナティブなものを選択肢として作っていくという意味で、「オルタナティブ」を挙げています。

バリューは数年前に言葉は変えましたが(※) 、ミッションとビジョンは創業時のほぼDAY1からあり、ずっと掲げ続けています。

▶編集注:変更前のバリューは、「勇気」「素直」「非競争志向」。

佐々木 ありがとうございます。

中川政七商店も2007年からということでしたので、ビジョンを掲げてからもう15年ですよね。

クラシコムもそうですし、皆さん長いですね。

すごい。ブレていないのですね。

中川 変わらないですね。

佐々木 後ほど、作り方についてもうかがいたいと思います。

青木さんは幸せがテーマとおっしゃっていましたが、青木さん自身は今、幸せなのでしょうか?

青木 いやー、まだ遠いのですよ…全然幸せにはなっていません。

佐々木 なっていないのですね(笑)。

(会場笑)

青木 いつか会社を辞めるようなタイミングで幸せになったと思えたら素敵ですし、もしかしたら僕らの3世代後に、幸せと思いながら経営するような人が出てくれば、少しでも役に立てたことになるかなと思います。

まあ、無理ゲーですよね(笑)。

佐々木 無理ゲーですか(笑)。

では小林さん、お願いいたします。

「誰もが価値創造に夢中になれる世界」Sun Asterisk 小林さん

小林 泰平さん(以下、小林) 初めまして、Sun Asterisk(サンアスタリスク)代表の小林と申します。


小林 泰平
株式会社Sun Asterisk
代表取締役

早稲田実業高校を中退。その後、ITエンジニアとなりソフトウェア開発会社に就職。ソーシャルアプリの開発プロジェクトにて中国、ベトナムのエンジニアとのグローバル開発を経験。アジアの若い才能が未来を創っていくと確信し、2012年7月よりFramgia(現Sun*)の立ち上げのため、ベトナムに移住しCOOとして従事。2017年12月より同社の代表に就任。2020年7月に東証グロースに上場し、2022年12月東証プライムへ市場区分変更。

よろしくお願いします。

僕らは、「誰もが価値創造に夢中になれる世界」を目指している、デジタル・クリエイティブスタジオです。

事業創りをする時に必要なビジネス、クリエイティブ、テクノロジー分野のプロフェッショナルを集めたり、育成したりしながら、そのチームで事業創り支援をするような会社です。

社名で「太陽」を名乗っている通り、太陽が地球上の全ての命を育むように、事業創りをしたい、新しい何かにチャレンジしたいという人たちの思いや才能を、僕らの力で照らして育むインフラになりたいというのが、僕らの企業理念です。

ですからシンプルに、「誰もが価値創造に夢中になれる世界」を支えるインフラになっていきます。

例えば皆さんが今日の帰り道に、こんな事業をしたい、こんなチャレンジをしたい、こんなプロダクトを作ってみたいと思ったとします。

その際、コンビニに水を買いに行くくらいの感覚で「Sun*」というスタジオに飛び込んできて、「こうしたい、こういうものを作ったみたい」と思いを表現すれば、うちのメンバーが集まって、ディスカッションが始まってプロジェクトがスタートするような状況を作りたいと思っています。

現在2,000人規模で、ベトナムと日本を中心に4カ国6都市で活動をしています。

色々な企業の支援をしています。

世の中には、「課題解決」という言葉があふれていると感じています。

世の中にある課題は、SDGsなどで語られるめちゃくちゃ大きな人類の課題から皆さんの身の回りの小さな課題まで色々あります。

これらの課題の解決スピードは、テクノロジーの進化によって、すごく速くなりました。

課題を与えられて面白いと感じる人と、嫌だなと感じる人がいると思っています。

僕は自由研究が好きでしたが、夏休みの宿題など、課題は好きではありませんでした(笑)。

課題自体は、みんなで協力し合ってさっさと解決し、人が課題の奴隷のように動く世界ではなく、やりたいという思いを大事にできる社会を作れたら、平和な世界になるのではないかと思っています。

例えば、ロケットは何かの課題を解決するために創られたものではなく、大昔の人が道を歩きながら月を見て、あそこに行ってみたいなと思った、その探究心から生まれたものだと思います。

その思いが言葉になり、色々な人にストーリーとして伝わり、それに共感した人が『竹取物語』みたいなおとぎ話を創り、より多くの人に伝わった結果、それに触発された研究者が技術を開発して、何世代も経たのち、人類が月に降り立ったのではないでしょうか。

その降り立った瞬間、何かの課題が解決したわけではないのですが、世界中の人が熱狂したでしょうし、今まで積み上げてきた偏見みたいなものが壊れて、「月に行けるならあそこにも行けるかも、こんな生命体や鉱物があるかもしれない」と、人のクリエイティビティを解放することにつながったのではないかと思っています。

僕らは、人の思いを起点として新しい何かを創ることを、「価値創造」と表現しています。

この価値創造にあふれた世界を創り、誰もが朝、新しい一日をワクワクした気分で迎えられる状況を実現したいと思っている、そんな会社です。

佐々木 ありがとうございます。

小林さんは、良い意味で社長っぽくないと感じますが、御社には肩書きがないのですね。

小林 そうなんです(笑)。

佐々木 ビジョンの「誰もが」に通ずる、フラットなカルチャーを体現していますね。

小林 例えば僕は、エンターテイメント領域や、最近ではWeb3と呼ばれる領域で新しいサービスの立ち上げをさせてもらっていますが、代表だから行っているのではなく、僕自身も「誰もが」の1人として、デジタル・クリエイティブスタジオを活用し、新しい価値創造に挑んでいるのです。

みんながそういう状態になれば良いなと考えています。

佐々木 ありがとうございます。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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