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5. 人間は意外と「儲けられればいいや」では割り切れない【終】

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ICC FUKUOKA 2023のセッション「ビジョン/パーパスについて語り合う」、全4回の最終回は、各社のビジョンができるまでから議論がスタート。最後に今日の議論を振り返り、起業をした自分の中にあるものは何かを見つけ、追い求めることについて語ります。最後までぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 9F
脱炭素社会への変革の取り組み
Supported by エッグフォワード

「ビジョン/パーパスについて語り合う」の配信済み記事一覧


佐々木 「個別善」とか「ワクワクする」などヒントになるワードが出ました。

このセッションの最後のパートとして、実際にどうビジョンを作っていくかを考えた時、トップが持つワクワクや、どうしても成し遂げたいという感情から作るのか、ボトムアップで作るのか、どちらなのでしょう?

最後の実践編というか、作り方のところには、色々なアプローチがあると思いますが……。

各社のビジョンはこうして生まれた

中川 僕は、1人で考えて作りました。

なぜこのビジョンができたかと言うと、最初、赤字部門に入って黒字化した後、経営者としてやることがなくなったので、何のために働くのだろうと考えるようになり、やる気がなくなったからです。

自分のやる気を出すために、何のために働くのだろうと考えた結果、出てきたのがこのビジョンだったということです。

これだったら本気で頑張れると思って作りました。

佐々木 これを掲げていると、仲間が集まってきたということですね。

中川 そうですね。

佐々木 髙島さんはいかがですか?

髙島 言いにくいのですが…骨格は自分で作りましたが、PMI(組織統合)というか、3社が一緒になったので、一緒に作るプロセスが経営統合における最初のプロセスだったのです。

ですから、新しく企業理念と行動規範を作ろうという3社共同プロジェクトを、1,000人以上が同時に行ったのです。

各企業の出身者を入れた10人1組でワークショップをたくさん行い、意見を出してもらうという、彼らが納得できるプロセスを設計しました。

また、ミッションが決まった後にどう社内に浸透させるか、新入社員にどう伝えるか、そして決めたことを忘れないために表彰制度や人事考課制度に入れ込むなど、日々の行動に落とし込むためのプロジェクトもたくさん立ち上げました。

基本的に、共犯者を増やそうと常に思っています。

最終的には3割くらいの人が、ミッションを浸透させるためのプロジェクトに何らかの形で関わるようにしました。

佐々木 ありがとうございます、小林さんはいかがですか?

小林 僕たちは、ちょっと特殊かもしれませんが、2012年の創業時にはビジョンはなかったのです。

ビジョンという立派なものはなく、「アジアから世界に轟くスタートアップをたくさん生み出すインキュベーター、アクセラレーター、ベンチャービルダーみたいなものになりたい、面白そうだよね」という思いから、スタートしたのです。

最初の5年は、実践するための経験値を積み、エンジニアの仲間を増やしたかったので、修行のような期間でしたが、パートナーやクライアントにすごく恵まれて、コミュニティができ、色々な良い経験をさせてもらえ、知見を積み上げました。

2017年に、ふと、何のために事業を行っているのかというところに立ち返ったのです。

「自分たちでスタートアップを生み出していく」の主語は必要ないのではないか、そして、スタートアップにこだわらなくても、大企業の中にいる新規事業を立ち上げたい人も含めてもいいのではないか、そもそもアジアからという制約をなぜつけたのだろうと思いました。

自分たちの存在意義を真剣に考え始めたのですが、どうやって導き出すのかも分からなかったので、当時いた1,300人くらいの社員、教育事業で関わる大学の生徒や教授、クライアント、投資先のスタートアップなど、関わる人みんなに、半年くらいかけて質問をしたのです。

総勢1,500人ほどに、「僕らは何なのでしょう?」と聞きました。

そこで出てきた共通の答えをベースにして、法人と表現するくらいなので、会社にも何か人格があるのではないかと考え、まず会社のパーソナリティを作ってみました。

すると、5つのパーソナリティができました。

そのパーソナリティに名前をつけ、この人が今話していることを一言でまとめるとどうなるのかという視点から、最終的には僕が中心になって、ビジョンとして言語化をしました。

そういう手法で材料を集めて、ビジョンとしてまとめたという作り方です。

パーソナリティを作ったことは、めちゃくちゃ良かったです。

行動指針も併せて作りましたが、その行動指針で運営をしていくとこういう人が育つという結果がパーソナリティです。

企業理念 – Sun Asterisk(Sun Asterisk)

バリューが行動規範だとすれば、パーソナリティは結果だと僕たちは捉えています。

コーポレートアイデンティティは、自己紹介だと思っています。

積極的に採用したり、新しい人と関わっていったりする中で、入社後のインタビューやコーポレートアイデンディティのセッションにおいて、入社前に自己紹介した時と同じキーワードがもし出てこなければ、それは自己紹介が間違っていた、もしくは違うパーソナリティだったということです。

ですから、結果として、ビジョン作成のプロセスでパーソナリティを作ったことがうまく機能しました。

佐々木 その、定めたパーソナリティに寄ってくるのですね。

小林 そうですね。

一人ひとりを見るとそうでもないのですが、集合体になると、そのパーソナリティになります。

このパーソナリティは、面接のプロセスでも活用しています。

採用で理念共感度をどの程度重視するか

髙島 これは皆さんに聞きたいのですが、理念共感度を重視して採用をすると、同質性の高い人が集まる組織になると思うのですが、採用時、どのくらい理念共感度を重視していますか?

もしくは、あえて、少し外れた人を採用することもあるのでしょうか?

青木 難しいですよね。

僕らも同質的だと言われることがありますので、同質的だと良くないのかなと思うこともあります。

カルチャーにフィットしない人もいた方が良い化学反応が起こるという状況が、本当に起こり得るのかなと考えて、試すことはあるのですが、現実として、ぴったりフィットする人を採用した方が、確実に成果が出ていると感じます。

また、その方が変化にも強いのです。

なぜなら、一致しているのでコミュニケーションコストが極端に低く、テレパシーでつながっているような状態だからです。

今のところ、その方が強いような気がしています。

ずっと、これで本当にいいのかなと思って迷いながらいますが、これまで十数年経営をしてきて、まだ滑っていないので(笑)。

でも今後、例えば25年目には、壮大に滑ることになるかもしれません(笑)。

いずれにせよ、どこかは一致していなければいけないと思っています。

例えば、収益や売上が第一、顧客が第一など、方向性を合意できている会社は、考え方やキャラクターがバラバラでも束ねられると思います。

でも、結果のあり方の多様性を認めている会社、つまり、「こういうのも成功だし、こういうのも成功」としている会社では、価値観によって束ねておかなければ、一致するところがなくなってしまうのです。

ですから、僕が見ている限り、多様性を担保しながらもうまくいっている会社のほとんどが、顧客や売上、利益、成長など、最優先とするものについて合意ができている会社である気がします。

僕らの会社はそれとは少し違うので、価値観の同質性を担保しなければ、合意できる部分がなくなってしまうと思います。

佐々木 出雲さんはいかがですか?

私は最近、出雲さんが教祖に見えて仕方がないのです。

(一同笑)

ユーグレナ社にいる方は、出雲さん大好き!ユーグレナ大好き!みたいな感じなのでしょうか?

出雲 そういう人はあまりいないと思います。みんな、もっとしっかりしていますから。

佐々木 そうですか(笑)。

出雲 同質性の話ですよね。

僕は、「何が正解か分からない」とは意地でも言いたくないタイプですので、分からなくても、仮説は申し上げたいです。

日本の自動車工場にイノベーティブな人が来たら、困りますよね。

例えば、みんな朝9時に工場に来て自動車を作っているのに、「私はイノベーティブで、オリジナリティがあふれているので、夜9時に出社します」と言っても、その人は何も貢献ができないですよね。

電力会社やインフラ関係の事業では、同質性がすごく重要で、イノベーティブな人では困ります。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起こるような社会や先が分からないフィールドでは、同質性は致命的になります。

インテンショナル・インジェクション、つまり生命や生物においては意図的に、ランダムだけれどある一定の確率で突然変異が起こるのです。

そういう生き物の方が、レジリエントなので急激な環境の変化に対応できるのです。

経営者は、その要素も含めて、自社がどういうステージ、どういうポジションにあるのかと、どういう社会であるかを見極めた上で、こういう人をこういう比率で採用して配置しようと決めるべきだと、僕は思います。

また、人事部が決めやすいよう、僕は84:16だと常に伝えています(Part.2参照)。

バングラデシュで目の当たりにした栄養失調の子どもたちに元気になってもらいたいというパーソナルミッションは、僕がバングラデシュに行って感じたことなので、それに取り組もうと自分で決めました。

コーポレートミッションも、何のために自分はベンチャー企業を創ったのかを振り返り、世の中の社会課題をイノベーションで解決するべきではないかという仮説を発信したものです。

ただ、今見ていただいているスライドの内容は、私が作ったものではありません。

ユーグレナ社はサステナビリティ推進を加速させるためコーポレート・アイデンティティ(CI)の一部改定を実施します。コーポレートカラーに「ワイルド・ピンク」を追加(ユーグレナ)

全員で作ったものです。

うまくファシリテートをして全員で作ると、こんなに素敵で、こだわったものができるのです。

僕は基本的に、人が好きで好きで仕方なくて、人を信じています。

チャレンジは安定した社会やコミュニティがあるからできる

出雲 少し冒頭の会話に戻りますが、私が中川さんに間違ったメッセージを伝えてしまっていたら、死んでも死にきれないので、これだけ言わせてください。

私は他の方のミッション、ビジョン、バリューにクレームやケチをつけることは、絶対にしたくないですし、そんなことをする資格はありません。

自分もそうされたら嫌ですから、絶対にしません。

でも私は信じているからこそ、こんなに馬鹿げたことができるのです。

みんながみんな「ユーグレナだ!」と言って、100人中100人が、儲からなくてもいいからやりたいことをやる社会だとしたら、そんな社会は明日崩壊しますよね。

周りにいる人が自分よりも賢くて、今の社会をしっかり安定的に成長させてくれる確信や信頼がベースにあるからこそ、中川さんのようなまともな経営者がいるからこそ、ユーグレナはこんなふざけたこと(挑戦)ができるのです。

儲からなくても、身を捨ててでも、というところにチャレンジさせてもらうには、やはり安定した社会やコミュニティが必要です。

僕は、それに対するリスペクトが今日は全然足りていなかったですね。

ですから、すごく反省しています。

これを真似しろとか、儲けるのはダメだとかではなく、儲けるという制約条件の中で会社経営をしているまともな人が多いからこそ、うまくいくかどうか分からないチャレンジができるという自覚は、本当に持っています。

その感謝は絶対にお伝えしたく、お話しさせていただきました。

佐々木 出雲さん、秀逸なまとめをありがとうございます。

終了時間が迫っていますので、他の皆さんにも一言ずついただいて終わりたいと思います。

自分の中にあるものは何なのかを求めて

青木 本当に色々な立場で、自分たちを定義しているのだなと思っています。

ほとんどの場合、起業は誰かに頼まれて行うものではないですよね。

だからこそ、なぜ事業を行っているのかという問いはずっとあり、答えを出さないと力が出せないと思います。

ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスなど、どんな表現をしているかは別にして、なぜこれに取り組んでいて、なぜこんなに大変な思いをしているのにやっているんだろうということは、考えざるを得ないテーマなのだろうと思いました。

儲かる、儲からないは別にして、会場に今いる、これだけの人がテーマに関心を持って集まるということは、人間は意外と「ビジョンがなくても、儲けられればいいや」と割り切れるものではないのでしょうね。

今日、皆さんがどう考えているかをお聞きできたことで、改めて、自分はこれから何のために行うのかを考えたいと思いました。

ありがとうございました。

小林 僕が勉強してどうするんだと思うくらい(笑)、個人的にはめちゃくちゃ勉強させていただきました。

ビジョンやミッション、バリューがなくても事業を続けること、社会活動はできると思いますが、機能的なものや効果を求めて作ると、変な結果になる気がしています。

その人が心からそう思っているかどうかは、他の人は敏感に察知できると思うので、機能や効果、組織にどう影響するかを考えるよりも、自分自身や仲間たちの存在意義をシンプルに考えるのが良いと思います。

今回、そう学びました。

髙島 皆さん、長時間にわたる暑苦しい話、お疲れ様でした(笑)。

こういう風に熱くなるトピックですが、これは結局、自分の中にあるものは何なのかを探して、登壇している皆さんがそうですが、見つけたものに何十年も付き合っていくようなものです。

自分も変化するので、その時に少しまた変えることはあると思いますが、自分の中を覗き込んで探していくということです。

その時、青木さんのように、「今日、明日のための無理はしない」という人もいれば、僕みたいに、「明日のためにめちゃくちゃ歯をくいしばる」という人もいます。

つまり、自分らしくあるべきですし、パーパスが少し面倒だと思えばやめればいいと思います。

皆さん、自分を見つけてください。

佐々木 では最後に、このセッションをぜひともやりたいと最初に言った中川さん、総括をお願いします。

中川 本当にあっという間でした。

このテーマについて、これだけの方々と話すのは学びが多かったですし、まだまだ話し足りないこともたくさんあると思いますので、続けられるならぜひ続けて、皆さんと一緒に考えていけたらと思います。

佐々木 では、シーズン2があることを願って…。

中川 佐々木さん、よろしくお願いします。

佐々木 私が作っているわけではなく、(ICC代表の)小林(雅)さんが決めていらっしゃるので……(笑)。

(会場笑)

皆さん、ご清聴いただき、ありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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