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2. パーパス経営の投資対効果は、長期的に得られるもの

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ICC FUKUOKA 2023のセッション「ビジョン/パーパスについて語り合う」、全4回の②は、ユーグレナ 出雲 充さん、オイシックス・ラ・大地 髙島 宏平さんが、自社について紹介します。「ユーグレナにはビジョンがない」という出雲さん、その代わりにあるものとは? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 9F
脱炭素社会への変革の取り組み
Supported by エッグフォワード

「ビジョン/パーパスについて語り合う」の配信済み記事一覧


佐々木 では出雲さん、よろしくお願いします。

ユーグレナにはビジョンがない?

出雲 充 さん(以下、出雲) ありがとうございます。


出雲 充
株式会社ユーグレナ代表取締役社長

駒場東邦中・高等学校、東京大学農学部卒業後、2002年東京三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)入行。 2005年株式会社ユーグレナを創業、代表取締役社長就任。世界初の微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)食用屋外大量培養に成功。 世界経済フォーラム(ダボス会議)ヤンググローバルリーダー、第1回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」、第5回日本SDGs大賞「内閣総理大臣賞」受賞。 著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めた。』(小学館新書)『サステナブルビジネス』(PHP研究所) 経団連審議員会副議長、内閣官房知的財産戦略本部員、経産省SDGs経営/ESG投資研究会委員、ビル&メリンダ・ゲイツ財団SDGs Goalkeeper

ちょうどロケットの話が出てしまったので……(笑)。

もともとは、旧ソ連のコンスタンチン・ツィオルコフスキーが「ロケットの父」と言われています。

この人はバイコヌール宇宙センターに、偉大な言葉を残しています。

それが、私が一番大事にしている言葉なのです。

その言葉は、「今日の不可能は、明日可能となる」です。

これは良いなと思いました。

ロケットの父と言われている人の言葉です。

でも今日、地球には困っている人がたくさんいるわけですよね。

今日の不可能が明日可能となっても、明日がない人はどうするのかと思ったので、僕はパーソナルモットーを1日早めたのです。

つまり、「昨日の不可能を、バイオテクノロジーの力で今日可能にする」ということです。

明日だと間に合わない人がいるので、もっと急いで頑張ろうと考え、今、7倍速で仕事をしています(※) 。

▶編集注:ユーグレナの3つの行動指針の1つが「7倍速」。

たまたまロケットの話が出たので脱線したところからスタートしましたが、脱線ついでに、今日ここに来ている人のうち、良いビジョンやパーパスを作ってお金を儲けたいと思っている人がいれば、私の話を聞くのはやめた方がいいです。

(一同笑)

でも、ミレニアル世代とZ世代においては、お金儲けがしたくてスタートアップを始める人はいないです。

正確に言うと、ミレニアル世代とZ世代の79%、4人中3人以上は、お金儲けよりも社会課題を解決することに重きを置いている人なのです。

ですから、お金儲けではなく、社会課題を解決したい人がビジョンやパーパスを作るにあたっては、私は一緒に考えられると思います。

統計では4分の3以上のはずですが、ICCサミットに参加する人はアグレッシブな人が多いと思うので、割合は逆になると思います。

ソーシャルグッド・カタパルトを見ていれば、社会課題を解決したい人は、まだマイノリティであることは分かります。

しかし、これがもうすぐ変わるので、覚えていてください。

今、早くビジョンとパーパスの話をしろよというプレッシャーを感じていますが、話せないのです。

ユーグレナには、ビジョンがないのです。

なくしたのです。

ミッション・ビジョンを廃止。ユーグレナのCI一新プロジェクトを支えたPRパーソンが目指したもの(PR TIMES MAGAZINE) 

「Sustainability First」というフィロソフィー

出雲 スタートアップ時のパーソナルミッションとフィロソフィーについて、それぞれスライド1枚でお話しします。

私が生きている理由は、バングラデシュで目の当たりにした栄養失調の子どもたちに元気になってもらいたいというものであり、これがパーソナルミッションです。

でも、これは一人では実現できません。

ですから会社に、スタートアップにしたのです。

スタートアップにすると、パーソナルミッションと矛盾する利益相反が起こるので、会社のミッションはもっと高い視座のものにしなければいけないと感じました。

そこで、なぜこの世にスタートアップが存在するかを考えました。

考えた結果、結論として、社会課題を解決するためのイノベーションを起こすことがスタートアップのレゾンデートル(存在意義)であり、ミッションだと思っています。

パーソナルミッションとコーポレートミッションをベースにして、ビジョンではなくてフィロソフィー、つまり「ありよう」を1,070人の仲間に今、浸透させようとしています。

「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」というフィロソフィーは、この1枚のスライドで説明ができると思います。

字は小さいので見えなくても構いませんが、後ろにいる方にも、2色あるということは見えると思います。

ユーグレナ社はサステナビリティ推進を加速させるためコーポレート・アイデンティティ(CI)の一部改定を実施します。コーポレートカラーに「ワイルド・ピンク」を追加(ユーグレナ)

これが私の目指すフィロソフィーです。

グリーンは、持続可能な社会、サステナビリティを示しています。

でも、人間はそれだけでは割り切れないですよね。

私はそれほど良い人ではないですし、色々な人の期待に応えたいとか、色々な側面や気持ちがあります。

それらをピンクの部分で表現しています。

ピンクの部分は、他とは違う、狂っていると言われてもいいので、新しいことにチャレンジする狂気です。

100%がサステナビリティだと不自然ですよね。

吉田 松陰のように狂っている部分が過半数を占めると良くないですが、84%はSustainability Firstであるメジャーな部分で、マイナーな残り16%は、狂っていると言われてもやり切るという考え方です。

教科書では学べない、吉田松陰の“異常すぎる”生涯。力強い名言から学ぶ、命がけの29年(U-NOTE)

そういう仲間に来てほしいという思いで、これをフィロソフィーとしています。

84:16について、ICCサミットに参加するようなアントレプレナーやイノベーターは、どの社会にも16%いるのです。

例えば2007年にiPhoneが発売された当時、全然成熟していない市場でしたが、デジタルガジェットが好きな人は、日本にもアメリカにもどこにでも、16%はいるのです。

マジョリティである84%の人からは、「ユーグレナを原料の一部に使ったバイオ燃料で飛行機を飛ばすとか、栄養失調の子どもを助けるとか、本当にできるの?」と毎日言われますが、新しいものにチャレンジする人が16%はいるという社会を信じて、前に進みます。

そういう哲学を、1,070人の仲間みんなでシェアして、取り組んでいる会社です。

佐々木 出雲さん、CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)募集などまだ続きがありそうですが、飛ばしても大丈夫ですかね(笑)。

では髙島さん、お願いします。

「これからの食卓、これからの畑。 」オイシックス・ラ・大地 髙島さん

髙島 皆さん、この4人の暑苦しいスピーチを聞いて、どうですか(笑)?

(一同笑)


髙島 宏平
オイシックス・ラ・大地株式会社
代表取締役社長

東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了後、マッキンゼー日本支社勤務を経て、2000年にオイシックス株式会社を設立。2013年に東証マザーズに上場。2016年、買い物難民への移動スーパー「とくし丸」を子会社化し代表取締役会長に就任。2017年には「大地を守る会」、翌2018年には「らでぃっしゅぼーや」との経営統合を実現し、オイシックス・ラ・大地株式会社代表取締役社長に就任。2019年にアメリカでヴィーガンミールブランドを展開するPurple Carrotを子会社化し、Directorに就任する。2020年東証一部(現プライム市場)へ指定替え。株式会社ベネッセホールディングスとシダックス株式会社の社外取締役を兼務。 一般社団法人「東の食の会」代表理事、一般社団法人日本車いすラグビー連盟 理事長を務める。2021年より経済同友会副代表幹事、2022年より一般社団法人Data for Social Transformationの共同代表理事に就任。

まあ、このセッションはこうなりますよね(笑)。仕方ない。

でも、僕も案外、熱いセッションが好きなのです。

ここまでで、出雲さんと中川さんからの大きな問題提起は、パーパス経営は儲かるのか?ということでした。

これは、大きな問題提起です。

僕らが一生懸命パーパス経営に取り組んでいるのは、投資対効果があると思っているからだと思います。

ただ、効果は長期的に得られるものであり、今日決めたから来週儲かるというものではありません。

5年後、10年後、もっと先を見据えた時、ないよりあった方がはるかにインパクトを生み出せている自分たちになれそうな気がしています。

ここいるメンバーはそれを実感しているので、取り組んでいるのでないかと思います。

暑苦しい議論を社内でし続けることになると思うので、流行っているから取り組もうという人は絶対やめておいた方がいいと僕は思っています。

好きではないのに流行っているからという理由で取り組んでも、良いものが作れる気がしません。

我々のミッションの紹介をしますが、皆さんと違う点があります。

オイシックスの創業は2000年ですが、それから15年くらい経った時、創業40年の大地を守る会、創業30年のらでぃっしゅぼーやという同業他社と経営統合により一緒になって、改めて作り直したものです。

Oisix ra daichiの歴史(オイシックス・ラ・大地)

僕らは、パーパスとは呼ばずミッションと呼んでいます。

パーパスは、自分の内側から出てくる情熱、パッションのようなものだと思っています。

一方ミッションは、与えられたこの社会において、自分たちが存在する理由みたいなものです。

これは本当に好き嫌いだと思いますが、自分たちの情熱が何かというアプローチで議論をした方が良い会社もあれば、自分たちは世の中でどんな役に立てるのかというアプローチで議論をした方が良い会社もあります。

僕らの場合は完全に後者であり、会社が統合した時に改めて、僕らが存在する意義とは何だろうと議論をし直しました。

パーパスではなく、ミッションという言葉で自分たちを定義しています。

中身は色々ありますが、ミッションを作って良かったと思うことが後からありました。

まず、一番上にある「これから」という表現ですね。

歴史ある会社が統合したので、良いところ取りをしたいと思う人が多いのですが、そうしてしまうと前の会社が良かったということになってしまうので、過去のことを考えずに、これからのことだけを考えようとしたのは、本当に良かったと思います。

もう一つは、「食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決します」という部分です。

社会課題を解決するのだけれども、儲からなければ行わないとしているので、これによって自分たちのあり方が定まったと思います。

ミッション実現のための7つの行動規範

髙島 一方、皆さんもバリューやフィロソフィーを設定していますが、僕らも行動規範を定めています。

少しずつ増えていって、今は7つです。

行動規範『ORDism』(オイシックス・ラ・大地)

会社経営において、より有効なのはこちらだと感じます。

ミッションやビジョン、パーパスなどとセットで価値観や行動規範を作ることが多いと思いますが、こちらの方が経営上、直接的にプラスになっています。

回収も比較的短期間でできるというか…こういうものを定めると、3年ではなく、1年ほどで会社の文化が変わると思っています。

佐々木 「ベストを尽くすな、Missionを成し遂げろ」は、どういう意味ですか?

髙島 ここでのポイントは、全て英語併記であることです。

Mission: Impossible、Don’t Stop Me Nowなど、洋画や歌のタイトルから取っています。

これは、ちょっと自己満足ですね(笑)。

(一同笑)

この中で我々らしいと思うのは3つ目の、「お客さまを裏切れ」です。

もちろん良い意味で裏切るということですが、これは非常に大事にしています。

僕は面接などで、誕生日にサプライズとして祝われる方と祝う方、どちらが好きか聞くことがあります。

僕たちは、お客様に対して、大好きな人の誕生日にサプライズを仕掛けているような姿勢でサービスをしているのです。

佐々木 皆さん、自己紹介ありがとうございました。

どれも本当に濃いビジョンやフィロソフィーでした。

次のパートではこれらに基づきながら、本当にパーパスやビジョンは大事なのか、儲かるのかについて皆さんで議論していきたいと思います。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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