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ICC サミット KYOTO 2018の出席者によるセッション評価レポートでも全体で10位となったワークショップ「事業の急成長を支える組織をつくるためのミドルマネジメント強化とは?」。書き起こし記事化ができないことと、もっと話を聞きたいという声から、登壇した加藤 史子さん率いるWAmazingを訪問。具体的な取り組みについてお話をうかがいました。ぜひご覧ください。
▶2019年2月18-21日に開催する ICCサミット FUKUOKA 2019の運営スタッフを募集しています。詳細はぜひ下記リンクからご覧ください。
【ともに学び、ともに産業を創る。】ICCサミット FUKUOKA 2019 運営チーム募集
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18〜21日 福岡開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
加藤 史子
WAmazing株式会社
代表取締役社長
慶応義塾大学卒業後、1998 年に株式会社リクルートに入社。「じゃらんnet」や「ホットペッパーグルメ」の立上げ・企画開発など、ネットでの新規事業開発に携わった後、「じゃらんリサーチセンター」に異動。ビッグデータ分析による旅行者分析やスノーレジャー再興を目指す「雪マジ!19」を立ち上げた。2016年7月にWAmazing 株式会社を創業し、訪日外国人旅行者向けスマートフォンアプリ「WAmazing」をスタートさせる。日本の主要空港で無償貸与されるSIMカードによるインターネット通信環境の提供と、日本旅行に必要な宿泊や観光アクティビティの予約手配や購入支援といった旅行エージェント機能を提供。現在は、香港・台湾・中国エリアにてサービスを展開中。
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ICC サミット KYOTO 2018の出席者によるセッション評価レポートでも「最高だった」と回答した割合が69.6%、全体でも10位にランクインとなった10-Dワークショップ「事業の急成長を支える組織をつくるためのミドルマネジメント強化とは?」。
各テーブルに分かれてディスカッションするスタイルだったため、書き起こし記事化ができないことと、参加者の方々から「登壇企業の取り組みについて、さらに具体的な話を聞きたい」という声があり、ディスカッションリーダーとして登壇した加藤史子さん率いるWAmazingを訪問。組織づくりや、ミドルマネジメント強化のためのお話をリクルートマネジメントソリューションズの奥野 康太郎さんとともにうかがった。
オフィスには空港に設置されている無料SIMカードの受け取り機も
履歴書美人にひれ伏す
訪日旅行客向けに旅行情報を入れたアプリと無料SIMを配布するサービスを展開するWAmazing。ICCサミットFUKUOKA 2017 のスタートアップ・カタパルトで優勝し、創業2年弱ですでにアプリダウンロード数20万(2017年10月データ)を獲得するなど、事業は順調に成長中。人員は急増中で、2018年11月時点で約60名。現在もインターンを含む採用を毎月2〜3名のペースで行っている。
加藤「2016年7月に創業し、2017年にサービスローンチして、すぐにスタートアップ・カタパルトに出ました。当時は10名程度でしたが、秋にシリーズAの調達を行うと、それをもとに人材採用ができるし、組織を大きくしないといけないと思いました。
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加藤 史子
WAmazing株式会社
代表取締役社長
慶応義塾大学卒業後、1998 年に株式会社リクルートに入社。「じゃらんnet」や「ホットペッパーグルメ」の立上げ・企画開発など、ネットでの新規事業開発に携わった後、「じゃらんリサーチセンター」に異動。ビッグデータ分析による旅行者分析やスノーレジャー再興を目指す「雪マジ!19」を立ち上げた。2016年7月にWAmazing 株式会社を創業し、訪日外国人旅行者向けスマートフォンアプリ「WAmazing」をスタートさせる。日本の主要空港で無償貸与されるSIMカードによるインターネット通信環境の提供と、日本旅行に必要な宿泊や観光アクティビティの予約手配や購入支援といった旅行エージェント機能を提供。現在は、香港・台湾・中国エリアをメイン対象に、英語圏にてもサービスを展開中。
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加藤「WAmazingは、そんなにテックオリエンテッドではありません。プラットフォームサービスなので軌道に乗れば、がつがつ人が働かなくてもサーバーがコンバージョンしてくれるのですが、
一方、toCのインサイトに基づいたマーケティングや、地域の事業者に根付いたところは比較的に人に依るところが大きい。だから50人規模で上場できる事業ではないと思っていました」
早期の事業成長を実現するために採用を急ぎ、あせっていた。加藤さんは数々の失敗談を思い出す。
加藤「創業メンバーは全員ベンチャーが初めて。私も、前職のリクルートに長年いたこともあり、どうやって大企業に伍して同じように優秀な人を採っていくかわかりませんでした。結果は”履歴書美人”にひれ伏して、このキャリア、ほしい!面談に来ていただいてありがとうございます!みたいになってしまって(笑)、経歴やスキル面だけみて採用決定した結果、人材定着が難しくなったケースもありました。
創業メンバー全員で採用していたときは、問題もありました。お互いに遠慮をするし、合議制になってしまう。常にリソースが足りないので冷静さも失ってしまい、ネコの手でも借りたいとなってしまう。一歩引いて、明確な基準をもって採用ができていなかったのです。
創業メンバーの中には、人事採用を専任として、やればできるだろうメンバーもいるのですが、本質的には事業をつくりたくて共同創業しているメンバーです。、それぞれプロフェッショナルで、みんな自走タイプだから、どういうふうに他人に走ってもらうかということに根本的な理解が追いつかない。だから人事採用担当者は必須だと思っていました」
そこで2017年10月に入社したのが、ベンチャー企業での人事経験をもつ小島隆秀さん。初対面の日、加藤さんは組織の現状についてなど、当時の悩みをありのままさらけ出し、いきなり2時間も話し込んでしまったそうである。
中途採用はカルチャーフィットが判断基準
加藤さんは、小島さんが採用活動を進めていく中で衝撃を受けたという。事業側がほしがるようなどんな高いスキルを持っている人であろうと「カルチャーフィットしない」と判断すれば、絶対に採用しない。
小島「私が入ったときに、コンサル出身者や、誰もが知る企業の部長や子会社の社長など、すでに選考中の候補者が複数名いました。そうした方々のレジュメや面談メモを拝見した際に、たしかに経歴はピカピカで優秀であるに違いないが、今のようなベンチャー初期のフェーズだと、フィットすることは難しいのではないか、という懸念を持ちつつ、実際に私が面談してみると、結果、やはりカルチャーフィットしないと感じることが多かったですね」
たとえば「裁量権」という言葉。「ベンチャーであれば裁量を持って仕事ができそうなので応募しました!」と意気揚々と語る人ほど、ではあなたにとっての裁量とは何か?と聞いても答えられなかったという。
加藤「創業メンバーで採用をしていたときは「裁量権は?」と聞かれると、『無限の荒野が広がっております!どうぞどうぞ、やってください!』と言って入ってもらっていました。
でも、「裁量権」と言う人によってその解釈は違うものですね。
何が起こったかというと、、翌週ぐらいに『予算はいくらもらえますか? 部下何人つけられますか?』と聞かれるというものです。こちらとしては『え?まずご自身でやってみて、その結果、兆しが出れば予算も人員もいくらでも増やしていきましょうよ』なのですが、『予算も部下もなく、この僕が自分でやるのですか?』というふうになってしまう。
ベンチャーで「裁量があります」というのは、バックパックを背負って荒野へピクニックへ自由に行ける権利であって、そこへ大量のお付きのものを従えて大名行列を出せる権利じゃないのです。この他にも、色々失敗をしてまいりました」
小島「僕もそういうハードシングスといいますか、苦い経験が色々あります。過去に在籍していた企業でも、優秀でキャリア豊富な方を経営幹部候補として採用したものの、組織にフィットしないために、その方の影響がプラスに働かず、組織が空中分解しかけるようなこともありました。
ベンチャーにおいては、1人の採用でプラスにもマイナスにも大きく振れるので、手戻りがきかないのです。ハイキャリアの方を採用する場合は、そうしたことも考慮して、より慎重にならなければならないと考えています」
加藤「ちょうど組織や採用で痛い目にあい始めたころでした。血が流れたあとだったので、むしろ専任の担当者にお願いしたい、素直に言うことを聞きたいというタイミングでした(笑)」
人事制度の早期導入でコミットメントが高まった
加藤さんが驚いたことはもう一つある。
加藤「小島が入社早々に『人事制度の導入を』と言いはじめ、私は、その時、早すぎるのでは?と正直思いました。でも、最初から入れておいたほうがPDCAを回しながら最適なものに育てていけるし、いずれ必要なものだから、という小島の説明を聞き、それもそうだと思い直しました。
私はどうしても事業に向いてしまうので、人事や組織開発が得意ではないのです。小島は人と組織に向き合うという覚悟が決まっているので、餅は餅屋でと思っていて、素直に小島の話を聞けます」
小島「任せていただいているので、ちゃんとしたものを作らなくてはと、人事制度についてはその段階でのベストエフォートで検討しました。CTOの舘野(祐一)はクックパッドで役員をしながらCTOでしたから、組織開発についても見識があります。加藤が気にするであろうポイントを押さえながら、ベースは舘野と共に作り、最終的に経営陣で確認しました。
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舘野 祐一
WAmazing株式会社
共同創立者 取締役CTO
2006年、株式会社はてなに入社。ソーシャルブックマークサイト、はてなブックマークのサービスリニューアルのリードエンジニアを務め、その後エンジニアリングマネージャとしてチームビルディングからサービスの開発・改善に努める。2010年、クックパッド株式会社に入社し、技術基盤の整備やビッグデータ基盤の導入等を行う。2012年同社技術部長、2014年同社執行役CTO。役員就任中には技術部門のトップ兼経営メンバーとして、技術面からクックパッドの成長を支える。2016年、共同創立者CTOとしてWAmazingに参画し、「日本を楽しみ尽くす」サービス作りを行っている。
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今年の5月に、等級や報酬、評価制度を作り、8月にはじめて人事評価を行いました。「For Users」「Flexibility」「Initiative」という3つのバリューと呼ばれる行動規範も創り、プロセス評価時の評価基準にも落とし込んでいます。まだ運用したてのフェーズです」
オフィス内に掲示されているバリュー。「浸透させるための仕組みづくりは人事評価を回しつつ、これから」と小島さん
現在のWAmazingの組織は、中国対応を行う中国推進部(10名ほどいるメンバーのうち、約半分が中国人)、香港台湾・東南アジアを中心とする英語圏地域の対応を行うAPAC推進部(30名ほどいるメンバーのうち、約10名が外国人スタッフ)、受託事業部の3事業部制で、社長の下に、リーダー(事業部長)、次期リーダー、スタッフの3階層となっている。
加藤「評価はまだ1回しか実施していませんが、組織に落ち着きが生まれたように感じました。それが私にとっては、学びでした。というのは、私は前職のときも、ミッションシートの記入が一番嫌いで、勤怠や経費精算も苦手。評価されなくても構わなかったし、自分で勝手に期中にミッション設定を変えていました。組織や上長からどう評価されるか、ということに私自身は、あまり意味を感じていなかったのです。
でも、普通はそうではないのだな、と学べました。やはり自分をみてくれるマネージャーやリーダーがいて、その人が自分をどう評価してくれて、がんばりをみてくれるということが、人によって個人差はあるかもしれないですが、やはり大事なのだなと感じました」
小島「ベンチャーで賛否あると思いますが、今後拡大していくときに、今がたとえ10名であっても早い段階で人事制度を作っておけば、中途で入ってくるメンバーにはこういうものなのかとスムースに受け入れられますし、先々のコミュニケーションコストの削減にもなります。早い段階で人事制度を設計しておくに越したことはないと思います。
ベンチャーの場合、どうしても会社や事業の成長がフォーカスされがちですが、個人にもフォーカスすべきだと思っています。今は中途採用をメインで行なっているので、称賛・評価文化があるところから来る人も多く、ごまかしがきかないし、期待もある。どのレイヤーの人材であっても、自分が評価されているのかは気になるものです。
今ある制度も完璧ではないのですが、まずは仕組みを入れたことが大事だと思っていて、半期に一度、立ち止まってメンバーの頑張りをを見ることが大事。加藤、舘野ら経営陣、リーダー陣がメンバーと向き合うこと、メンバーにとっても確認ポイントを定期的に設けておくことに意義があると思います」
加藤「制度ができたあと、写真が苦手でもインタビュー答えて採用に協力しますよ、とか、社内で勉強会を開きますよ、とか、社外のイベントに出るなど、自分の普段の仕事の範囲をこえて、もっと会社の成長のために寄与したいという人が出てきました。すごくありがたいなと思いましたね」
拡大の時期こそ社内リテンションを高める
「カルチャーフィット」で採用に磨きをかけつつ、メンバー間の結束力を高める施策も小島さんが担当だ。客観的な視点で提案を行っている。
加藤「最近、ウィークリーカロ(※)というのが小島さんの提案で始まりました。週1回、全体会という全社ミーティングを行なっていますが、そこで私が少し、5分から10分程度ですが毎週必ず直接話をしています」
▶編集部注:カロは加藤さんの愛称。漢字の「加」がカロと読めることから。
小島「採用を積極的に進め組織が拡大していくなかで、徐々に従業員と加藤がコミュニケーションをとる機会が減ってきているように思っていました。当然みんな加藤の存在を知っていますが、60人弱の組織とはいえ、普段あまり話す機会がない。オフラインで対話する機会を定期的に設けたほうがいいと思ったのです。
加藤の良さは、旅行や観光産業に精通していて、色々な引き出しを持っていること。「ウィークリーカロ」の場では、Newspicksのプロピッカーでもある加藤ならではの視点で選んだ記事を紹介したりして、インバウンドに興味のある人は非常に面白いのではないかと思います。都度、資料を用意してもいいのですが、続かなくなると意味がないので、ただ話すだけでもまずは価値があるんじゃないかと思っています」
取材時、休憩・フリーアドレススペースではなごやかなランチタイム。ここで全体会やウィークリーカロも行われる
採用業務の負担が減り、代表として事業開発に集中できる状態になった加藤さんは、外で吸収したことを事業に還元すべく、オン/オフラインで知識を共有することを通じてメンバーとコミュニケーションをとっている。
小島「加藤は出張等で不在にしていることも多いので、オンラインでの社内Wikiで情報発信はすごくしています」
加藤「私は外でいろいろな話を聞いたり人に会ったり、資料をもらったりしますから、私自身が、人脈や書籍の貯蔵庫のようなものでもあり、それが社内全体の共通知になればいいなと思っています。私は社外で得た知見を、社内Wikのような仕組みがあるので、そこによく投稿します。誰でもコメントできて、自分の知っていることを肉付けもできて、参照できる。みんなとアイデアを出してブラッシュアップできるような仕組みです。私は会社にいないことも多いので、社員からするとやっぱり「見えない」部分も多いと思うんですよね。全部は難しくても、なるべく「見える状態」にしていきたいと思っています。
皆目に見えないものは信じられないですし、外で私が見聞きしたことが、私の中だけで溜まっていくのはレバレッジがきかない。外での講義を受ける機会があれば、学んだものは、リアルタイムにまとめて共有する。自分自身の学習効果も高まります。
WAmazingでは初日からslackを導入したのですが、これはあくまで「フロー」の情報共有の仕組みなので、ストックしていきたい良い情報が流れていってしまうことから、そういうことに先見の明がある舘野から、Kibelaという社内Wikiみたいなものを紹介してもらって、導入しました。「ストック」していきたいナレッジは積極的に蓄積していこうということになりました。
外での見聞を自分の成長のためとは、あまり考えないかもしれないです。よく企業の器は経営者の器と言われますが、自己成長ばかり考えてもあまりレバレッジがかからない気がしています。なので以下に共有・シェアできるかが重要と思っています」
自分の言葉で伝えていく重要性は、まさにセッション中でもポイントとして解説されていた。WAmazingではメンバーがそれにインタラクティブに反応して、共通知を作っていく作業となっている。
出典元:10-Dワークショップ「事業の急成長を支える組織をつくるためのミドルマネジメント強化とは?」資料
小島「中途で入ってくるメンバーには、加藤のビジョン・人柄に惹かれ入社を決めたメンバーも多いです。シンプルに従業員をリテンションする意味でも、従業員と加藤との距離感をいかに感じさせないようにするか、壁を作らないかが大切です。業務終了後にオフィスのフリースペースで、加藤とお酒を片手にカジュアルに話そうという「ハイボールNight」なる企画も目下検討しています」
加藤「外国人メンバーは、日本という外国に来て、母国との架け橋になりたいと思ってくれている人が多い。私が日本のいろいろな地域でためた知見を聞きたい、という人も多いみたいですね」
採用段階からミドルマネジャー育成を開始
求心力のある加藤さんを軸にメンバーとコミュニケーションをしながら、会社の中核を担うミドルマネジャー育成にも着手している。それも、かなりの早い段階から意識的に行っている。
小島「話してきたことと矛盾するかもしれませんが、加藤の存在は重要とはいえ、スタートアップにはありがちな、経営者である加藤に依存してしまうのも良くないと思っています。ミドルマネジャーを作って、現場に権限委譲していくというのも重要です。
将来IPOすると、必然的に組織は変わります。そのときに会社を引っ張っていくメンバーを今から育てることも大事です。フットワークの軽い、今の30歳前後の若手中心に、若手〜ミドルレイヤーの人材をどう育てていくかが重要なテーマだと思っています。
今、組織開発でいうノミネーション、次世代の人材を育てていくことにも取り組んでいます。そうした人材は社内ではリーダーという呼び方をしており、今はまだピープルマネジメントが正しくできなくても、そういう役割を将来担ってほしいという人材です」
加藤「WAmazingで何かをやると言った場合、はたしてそれがユーザーに受けるかどうかわからない新規事業であることが多いです。
ミドルマネジメントは、そういう戦略実行と業務改善が自らできる、コト推進のトッププレイヤーの側面が求められます。しかし、新規事業に着手したときは、だいたい半年もしないうちに結果が出てきますから、そこからは自分が直接やらず、委譲してほしいという、ピープルマネジメントの領域になってきます。
出典元:10-Dワークショップ「事業の急成長を支える組織をつくるためのミドルマネジメント強化とは?」資料
たとえば地域事業者との事業開発でも、いつまでも着手した本人が担当していると、出張など時間コストを考えるとそこからレバレッジきかなくなってしまいます。早期にピープルマネジメントに移ってもらいたい。でもこれは結構、無理難題を言っているなという感覚があります」
小島「ベンチャーの場合、優秀なプレイヤーがマネージャーになるケースも多いため、現場側に引っ張られてしまうことが多いかなと思います。中長期的な経営視点を持って、業務に取り組んでほしいのですが、中々それが難しかったりします」
加藤「個別のメンバーには週1回、リーダーまでには、週1よもやまミーティングなどをしています。そのときはフランクに、このまま自身がトッププレーヤーとしてやるのは大変じゃん、体制考えていかないとね〜、みたいな話もします(笑)」
小島「実際それで、痛い目を見ているメンバーもいるのです。仕事を委譲できなくて、メンバーが辞めてしまったりとかして。それで開眼するメンバーもいますね。徐々に視点を経営側に寄せていかないと、今後さらに拡大していく中においては、組織が耐えられないですね」
奥野「調査してみると、マネージャーになって半年以内の困ることベスト3は、メンバーに仕事を任せられない、部下をうまく育てられない、チームをうまく作れない、ということです」
それに対する施策を、小島さんは採用の段階から行おうとしている。
小島「採用段階から、その意識をどうやって植え付けていくかが大事だと思っています。私も採用に一緒に入ってみて、カルチャーフィットを見極めて、トレーニングコストがかかりそうであれば、率直に現場メンバーには伝えますが、それでも現場がほしいなら採ってもOK。そのかわり、入社以降、ちゃんと現場でフォローしてくださいと先に伝えます。
もし入社してからそれが現場レベルでできていなければ、私も言いやすいです。
出典元:10-Dワークショップ「事業の急成長を支える組織をつくるためのミドルマネジメント強化とは?」資料
とくにこれからメンバーが増えていく過程において、採用段階から、どう育成にコミットさせるかも大事だと思っています。
経営合宿は四半期に1回やっていますが、リーダーに対するマネジメント研修はまだ行っていないですね。それでも、現場レベルで自発的に1on1を行なってくれていて、アルバイトに対しても行なってくれていたりしますね。
自主的に1on1を学んでいるメンバーもいますが、コーチングやティーチングなどスキルは弱いですし、自分で見て学べでは限界があります。それができないメンバーもいると思うので、体系的に学べるような仕組みを会社で提供することも必要だと思います」
事業の急成長を支える組織づくり
ミドルマネジメントについては、着手したばかりでまだこれからとのこと。
しかし、「朝令暮改も多いし、切り替えは早い」というバリューを体現するようなしなやかさと、次に来た人、得意な人にあっさり権限委譲するトランジションを、WAmazingではトップ自らがごく自然に行っている。それが現在の急成長の源となり、今後は社内カルチャーとして醸成され、さらなる成長への糧となるのだろう。
奥野「加藤さんが組織作りについて大切にしていることは、どんなことでしょうか? たとえばSmartHRの宮田昇始さんは、1人で100問を解くより、50人で2問ずつ解くほうが早いとおっしゃられています」
加藤「最初の”バックパックを背負って荒野へのピクニックへ自由に行ける権利”のたとえでいうと、自分が最初に荒野へ出てみて、きざしがみえたら小さなチームを追加していったりして、うまくいけば大名行列のようになったりする感じ……かな?」
小島「加藤の場合、『できないことは任せる』というのが、傍から見て感じます。他のスタートアップを見ていると、それがなかなかできない方が多いと思います。自分がつくった会社だからという意識があってか、すべて自分がやってしまう。皆不安になるし、失敗したくないのでしょう。
創業メンバー以外、私もそうですが、外から来たメンバーを簡単には信頼できないと思います。苦手なことは任せるというのは、当たり前のように見えてなかかなできない。加藤は自然体でそれができているので、傍から見ていてすごいなと思いますね」
加藤「100問の問題であれば、得意な人がいればその人が100問を解いてもらえばいいと思います。フラットに見て、時間さえあれば私が100問解いたほうがいいなと思えば、私が遠慮なく解かせてもらいます。それは周囲の人もわかってくれると思います」
その時の事業のフェーズに合わせて、適材適所で、伸びたところ、伸びた人が注力をする。弱点の補完にも目を配る。極めて実力主義ともいえるが、同時にフラットで自由な組織でもある。それが矛盾して見えず、むしろバランスよく見えるところに、WAmazingの組織の特徴と強さが表れている。
このほか印象的だったのは、ミドルマネジメントや組織の話とは異なるが、加藤さんが確固たる口調で語った事業ポリシーについての話だ。
「SIMカードを先に渡すので、コストがかかる。SIMカードを渡した相手はマネタイズユーザーではないかもしれないので、どこまでばらまきますか?という話になり、その意思決定がたまに揺らぎます。
私は会社の資金が切れない限り、どこまでpay forwardできるかが、プラットフォーマーとしては大切だと考えています。BtoCのマッチング事業というのはユーザー集めとコンテンツ(事業者)集めがニワトリと卵の関係なので、まずはWAmazing自身が、pay forwardしてユーザーが集まるからこそ事業者のコンテンツが集まり、だからさらにユーザーが集まるという好循環を作る必要があります。
ベンチャーは大企業のように元手があるわけではなく、最初がゼロなので、そこは下駄をはかせてクルマを転がしていかなければいけない。そこは社内で議論が揺れるたびに、明確にやり続けますと言っています。
いつも先にユーザーのためになることをやる。広告の引き合いもありますが、先にお金をいただくことはないですね。そこに実績がつけば、次に高単価で買おうという話も出てきます。
For Usersのなかで、誰が先にPayForwardするかという話ですね。先にWAmazingがやる。それに相手を説得して出してもらうより、自分が出すほうがスピーディです」
強い信念を軸に、成長を続けるWAmazing。2017年の年末まで、ICCパートナーズがオフィスの一角を間借りさせていただいていた。しかしそのスペースもすでに手狭になってきたため、現在、小島さんがオフィスリノベーションを検討中だという。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/吉名 あらた/戸田 秀成
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