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2020年3月11日、ICCサミット FUKUOKA 2020の運営チーム打ち上げを、東京のICCパートナーズオフィスにて開催しました。新型コロナウィルスが猛威を振るう直前に行われた、運営チームの解団イベントでは、活躍したスタッフのMVP授賞式や、ICCサミットを作る一員として心がけたことを語るパネル・ディスカッションが行われました。運営チーム参加を考える方、それに限らず自分の持ち場でさらに活躍したいという人に学びの多い内容です。ぜひご覧ください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
▶ICCサミット FUKUOKA 2020 開催レポートの配信済み記事一覧
ICCサミット運営チーム(スタッフ)とは…
年に2回、福岡と京都で開催されるICCサミットは、すべて若手社会人や学生による120名前後のボランティアスタッフによって運営されている。その中でも28歳以下の若手社会人や学生は、スカラシップとして旅費交通費の補助はあるが、基本的に自費で自分の時間を使って参加している。
【運営チームの役割概要】
上記リンクの運営チーム募集のページにもあるが、改めて運営チームの役割をご紹介しよう。チームは大きく5つに分かれているが、担当チームによってさらに細分化した小チームがあり、新規プログラムの追加などにより、チーム分けには毎回多少変更がある。パーティなどのイベントは、一部メンバーが兼務している。
A. 会場運営チーム……セッション会場の運営を担当(ステージ担当、マイクランナー、司会)
・ステージ担当:プレゼン機材の接続などの準備やネットワークの設定確認など。メンバーはスタートアップで働くエンジニアの方が中心。各会場2〜4名のチームが担当。
・マイクランナー:セッション中の会場内、質疑応答のマイク受け渡しなどを行う。セッション以外の時間帯は、受付業務のサポートや会場入口においてセキュリティチェック・誘導の仕事を担当。
・司会:セッション前後や会場内の誘導などのアナウンスなどを担当。
B. 受付チーム……ICCサミットの受付業務や会場誘導業務を担当
初日やセッション開始の時間帯など、ピークの時間帯が過ぎるとシフト制となり、セッションの聴講も可能。
C. サポート・チーム……スポンサーブースなどで飲料などの配布や補充をサポート。人出の足りないチームのサポートなど
上記に加え、ICCサミット FUKUOKA 2020では「バリスタ・チーム」を組成し、オリジナルのラテを提供。飲食業などのアルバイト経験のあるメンバーが主に担当。
D. スピーカー誘導チーム……登壇予定のスピーカーを控室に誘導し、写真スタジオ、会場へ誘導
スピーカーと接する仕事となるため、マナーのしっかりしたコミュニケーション能力の高いメンバーが担当。業務以外の時間帯はセッションの聴講が可能。
E. メディア・チーム……ICCの公式サイトやFacebookでの情報発信などに必要な業務を担当
カタパルトの中継、速報記事やセッションの写真配信を行うため、動画や写真選定などの経験のあるメンバーが担当。写真撮影や映像の収録・編集はプロのチームが担当し、プロのカメラマンへのディレククションなどを担当。担当する会場に限りセッションの聴講は可能。
現在の産業のトップランナーといえる経営者たちが、真剣に語り合い、学び合う場を創り、サードプレイスともいえる場でチームとなって共創する。運営チームは、現在大学生から40代社会人まで幅広い。経営者たちの熱や議論に刺激を受けることに加え、普段所属している組織以外で仲間を作るという点においても、魅力を感じて参加してくれる人が多いようだ。
異例の雰囲気の中での打ち上げ
2月17日〜20日に渡って開催したICCサミット FUKUOKA 2020。この開催の本当に直前のタイミングで、東京で新型コロナウイルスの脅威がささやかれ始め、最終日の2月20日に福岡で2名、初めて陽性者が確認されたというニュースが報じられた。
ICCサミットの参加者大多数は東京からの参加者。当時はマスク着用と手指の消毒を徹底することが感染を防ぐ方法といわれ、口角泡を飛ばす白熱ディスカッションのカンファレンスにも関わらず、登壇者以外はマスク着用という、異例の雰囲気の中での開催となった。
当然運営チームも、常にマスク着用である。今では社会のデフォルトとなったが、マスクを着用したままでのコミュニケーションを主とした仕事は非常に不便で、ましてやそれが自分の普段の居場所ではなく、新しい人達と働くというアウェーの環境だと、さらに困難を増す。しかし、そんななかでも結果を出す人はいる。
今回の運営チーム打ち上げは、いつものように全国から全員集合というわけにいかず、出席できない人に向けてライブ中継を行った。学生的には春休みであったが、直近で海外に行った人にもご遠慮いただき、オフィス入り口での検温を実施し、120人いたスタッフのうち、51人の参加と少々寂しい形になった。もちろん飲食のときと写真撮影以外はマスク着用だ。
ICCサミット終了後は、運営チーム一人ひとりによる相互投票で活躍したスタッフMVPを選出する。この3月11日の打ち上げでは、MVP表彰式に加え、MVP4名とICCパートナーズ代表の小林 雅が特別パネル・ディスカッション「福岡の振り返りと『活躍するメンバーの特徴』とは?」を行った。
今回MVP1位のスピーカー誘導チームAチーム / 3階責任者の山本 丈善さんを始め、2位のC会場統括 / 3階フロア統括の金田 拓也さん、3位のサポートチーム統括の市川 大樹さん、4位の会場運営チームB会場統括の三輪 開人さんが語った内容からは、どういう気持ちで本番に臨んだか、仲間からの学びや、さまざまな場面でどう思考して動いたかが明らかになった。
楽しい話も多かったのだが、ここでは参加した人を始め、スタッフ参加に興味のある人、次回すでに参加が決まっている初参加の人や、自分の仕事をさらにレベルアップしたい人へ、アウェーの現場でも力を発揮したMVPの4人が心がけたことを中心にご紹介していきたい。
<MVP受賞者が語る、飛躍の理由>
うまくいかなくて、悔しかった思いで向上する
小林 今回MVPの山本君は、前回のICCサミット KYOTO 2019では、ぱっとしなかったのです。
1年前の福岡、初回参加のときは頑張って評価され、2回目は調子に乗って、求められるものが最も高度なカタパルト会場を希望したものの、結果が全然出なくて、不完全燃焼だったんですよね。
山本 はい。その通りです。
小林 自分が思い描いた姿になれず、他のスタッフが大活躍して、自分は全然何もできなくてどうしようという感じで、失意のもとに去りました。
そこで、1回目のMVPディナーのときには、スケジュールが合わなくて出席できなかったので、2回目の参加の後にMVPディナーに来てもらい、昨年末の箱根のリトリートにも来てもらいました。(※)
MVPディナーとは… 上位入賞者を対象に、お祝いのディナーを開催しています。また運営で活躍した希望者に、2019年12月に箱根で、1泊2日のチームビルディングを兼ねたリトリートを実施しました。
山本君には期待していたので、今回活躍してくれて本当にうれしいです。
山本 ありがとうございます。
本当に今だからこそ言えるのですが、初参加でMVPに食い込めて、ちょっと調子に乗って(笑)、「次もいけるでしょ?」みたいなところがありました。
1回目はすごく準備をしていきました。実を言うと、2回目はマニュアル(※)をさらっと読んで、こんな理解でいいだろうと分かった気になって、解像度が低い状態で臨んでいました。
マニュアルとは… 運営チームで参加するにあたり発生する業務や進行について書かれた手引書のこと。初参加の人でも業務に入れることを念頭に作成されており、運営チームの各担当業務別、パーティや体験ツアーなどの特別プログラム別にもあり、兼務となるスタッフはいくつものマニュアルを読み込むことになる。
そして2回目の当日を迎えたときに、みんながしっかり準備してきている状況を見て、「あれ? やばい」と感じました。
そもそも、マニュアルもしっかり読み込んでいないから、確認したい点も事前に把握できていなくて「この質問を、今聞いていい温度感なのか?」となりました。
初歩的な質問をするということは、準備をしていないのがばれてしまいます。人にも聞けないし、動くこともできないしといった状況で、初日に情けない気持ちになりました。そこから宿に帰って準備をしましたが、当然追いつかないわけです。
会期中にいろいろ聞けるはずもないし、なんとか付け焼刃で追いつこうと悶々とするのですが、そこそこの仕事しかできません。
本当にくやしい状態で、3日間を過ごして終わりました。
「全力でやると決めたのに、こんな姿で帰りたかったんだっけ?」と考えると、ものすごく情けない気持ちになって、すぐ同じ会場統括だった福西さんに「申し訳ないです」と伝えました。
小林 福西さん、ここまで聞いてどうですか?
福西 祐樹さん 新宿のオフィス界隈で、マッサージ屋の予約を待っていたときに、すごく長いメッセンジャーが飛んできて、「電話したほうがいいのかな?」「とりあえず、同じ会場統括の今井(悠介)君に転送しようかな?」と思いました(笑)。
(会場笑)
ICCサミットは始まってしまうと、成功させてクオリティを高めることが最大のミッションなので、言葉は悪いですが、残念ながらボトムに合わせることはできません。
置いていくしかないところがあるので、会期中は機会を提供できなかったのですが、今回自分でリベンジを果たしたので、さすがだなと思いました。
山本 ありがとうございます。
三輪 私も実は、カタパルト会場の演台担当スタッフからスタートしました。
ひたすら登壇者を送り出すというルーティンが多いので、どうやったら付加価値を出すことができるのか悩んだ部分もあって、終わったときに、多少なりともくやしさはありました。
2回目の参加では、司会という表に立つ、しかも自分が崩れたら失敗するような大役をいただいて、また気合いを入れ直しましたが、もっとできるのではと、くやしかった記憶があります(※)。
▶編集注:三輪さんは、運営チーム参加2回目のICC サミット FUKUOKA 2019でMVP1位を獲得しています。
ICC サミット FUKUOKA 2019運営スタッフMVPディナーは、ポルトガル料理のごちそう! カタパルト場外戦も勃発!?【活動レポート】
今回もそうだと思いますが、前回10数票獲得していたような人でも、1票も入らないこともあります。僕は前回3位だった服部(雄也)君からメッセージをもらいましたが、くやしかった気持ちは絶対次につながるなと思います。
<ICC運営チーム、ベテランスタッフが覚醒した背景>
ベテランに求められる視座を自覚し、喝が入る環境
小林 次に市川さんですが、僕はICCサミット KYOTO 2019最終日の夜に、残った人たちで飲んでいたときに、その場にいた6人ほどがシーンとするくらい、市川さんにストレートにお説教をしました。
市川 僕は、今回7回目の参加ですね。
何回も参加して、ある程度分かっていく暗黙知が自分の中にだんだん入ってくると、一生懸命準備をしなくても、どこはすごく頑張って、どこは抜くというところがわかります。そんな油断が、正直あったタイミングでした。
小林さんにお叱りを頂いた前のサミットは、都合がつかず休んでいたんですよね。
一度休んだことや久しぶりに来てうれしかったこともあり、結果を出さなければと思ってしまっている部分が少しありました。
絶対だめなのは、小林さんに媚びるとか、会に媚びるとか……、媚びる感じって分かりますか?
本当に自分が為すべきことを為していれば、「俺はこんなに頑張った」とか、言わないですよね。
(スピーカー一同、「はい、はい」と同意の声)
偶然それを、打ち上げの場で小林さんが聞かれていたんですよね。
小林 どんな内容かというと、隣に大学生の飯島 和也君が座っていて、市川さんが「ちゃんとスポンサーの担当者の方に、また喜んでもらえるように頑張ることがいいことなんだ」と語っていたのです。
なぜそんなに視座の低いことを言っているのだろうと思って、「担当に評価されたら、産業を変えることになるのか!」「若者に言うのだったら、もっと視座の高い話をしろ!」と言いました。
市川 本当に、そのまま言われました。でもお酒が入っていたので、もう少し言葉は強めのトーンでした(苦笑)
小林 「お前の役割は、何だと思っているんだ?」と。
市川 年齢も運営チーム歴も含めて上がってきたときに、「自分とICCと仕事」の兼ね合いの中で、どういうことを自分が変えていくべきか、実は悩んでいる時期でした。
だから本当にぐさりと刺さって、まず髪を切りまして(笑)、本当に坊主刈りにしました。
小林 それで「髪を切ったら、いいと思うな!」と言いました。
市川 この年になって、ICCの場での自分の立振る舞いもなんとなく分かった中で「そういうスタンスじゃ、だめだな」と痛感しました。
以前の運営チームだったら、ある程度回数を重ねたほうが、暗黙知的なものがが合うから、なんとなくの感じが分かる人たちが集まっていましたよね。
でも今回は(山本)丈君もそうですが、すごくコミットの高いチームができているのが一瞬で分かります。
そういう新たな関係性の中で、今回、自分がどうあるべきかを強く意識してICCに参加した結果、MVPに選んでいただけました。
金田 僕も前回はスポンサー枠で参加していて、運営チームでは出席しなかったのですが、なぜか箱根のリトリートに連れていってもらいました。
そのとき、酔っ払っていたと思うのですが、あるメンバーが「本当にスタッフの人たちは、共創する意識があるんですか?」と発言して、それは真理だなと思いました。
スタッフの枠としてではなくて、そもそもICCサミットをきちんと、その先のステージに引っ張っていく意識をリーダーが持っていないといけないし、当然登壇者になるとか、カタパルトに出る意思を持っていないといけないという意識はありました。
でもその発言がなかったら、もしかしたら今回の福岡で、僕は「市川さん状態」になっていたかもしれません。
市川 そのステータスのネーミングはやめてください(笑)。
(会場笑)
<ICC運営チーム、こんな人たちが活躍する>
マニュアルがないところまで考えられる人
市川 あとはサポートチームで言うと、過去にバリスタ経験のある下川泰弘さんは、ラテのブース(コーヒーを提供するスペース)を作りましたが、そこもマニュアルがなかったですよね。
マニュアルが、「ラテを勉強する」としか書いていないので(笑)、それはそうですよね。そんなマニュアルは、ないですから。
(会場笑)
小林 マシンは買うから、僕に聞くなみたいな(笑)。
市川 僕はグループのチャット(※)に入っていたので分かるのですが、本当に試行錯誤して味を作っていました。
グループのチャットとは…… 運営チームは、同じ担当や業務で関わり合うことの多い人たちで、適宜チャットグループを作成して、疑問点の相談や情報共有などを行っている
牛乳の量がこのぐらいとか、そんなところまで我々はできてしまうのかと、スタッフの汎用性の高さを感じました。
今まではどちらかというと、自分は一匹狼で、問題を解決するところに自分が行くんだと勝手に思っていた部分がありましたが、今回サポートチームに入れていただいて、すごくチームを意識しました。
サポートチームは12名でしたが、MVPに上位に入った倉田(敏宏)君を含めて3名をサポートチームから選んでいただけて、本当によかったなと思いました。
適性を選ぶ仕事の期待にしっかり応える人
市川 ほかにもチームの中でキラリと光る人が出て、福西さんにすごく褒めてもらった(井上)天馬君の話をしたいと思います。
今回、「天馬君じゃないと任せられない」と思った仕事がありました。
それはカタパルトで使った賞品パネルを回収することで、破棄するか返送するか、どこへ送るかなど、一つひとつスポンサーに確認しないといけない細かなサポートが必要な役割でした。
会場統括の福西さんからヘルプを頼まれたときに、サポートチームで誰にお願いできるか考えました。
言葉を選ばずに言うと、天馬君は若干自分に自信がないタイプですが(笑)、自分がここだと思うところの丁寧さやコミュニケーションの仕方がすごくしっかりしている人で、僕は福西さんとチャットを作って天馬君を入れて、仕事を頼みました。
天馬君がすごい勢いで、「これ、やりました」「あれ、やりました」と報告すると、福西さんから「素晴らしい!神!」と返ってきました。
自分のチームのメンバーが神と言われたのがすごくうれしかったし、僕もすごいな、神だなと思いました。
ただ、MVP投票で、天馬くんは僕の1票しか入っていません。同じように票が少なかった人もいると思います。
なぜ1票を入れてくれたのか、その1票の意味を、ぜひ投票してくれた方にフィードバックをもらうと、大きな糧にもなると思います。
天馬くんは次にもっと自信をつけて、リーダーシップを身につけて、背中で語れるようになってほしいと思います。
今は手が動くから神なのですが、背中で神が見せられるようになってくると、今井(悠介)さんのように徳が積まれていって、リーダーになっていくのかなと思います。
細かいことの機微まで想像できる人
金田 それから、細かいところの機微までこだわれる想像ができている人は、間違いなく背中で分かります。
今回僕はC会場がメインでしたが、C会場は狭いため席がなかったので、運営中どこにいよう?という話になりました。
市川 結構うろうろしていましたよね。よく会いました。
金田 いつも以上にうろうろしていて、スタッフ控室にあんなにいたのは初めてでした。
そのときにチャットを見ていて、「細かいところで気になって、こう思うんだけど、どう?」とボールをC会場のメンバーに投げると、バッシー(石橋)君が反応したり、(中野)聡美が反応したり、桐本(絵梨花)ちゃんが「これ、こうやったよ」と返してくれたりしました。
そこでポジティブに「神」と褒め合う言葉が非常に出てきていました。そういう流れの中で各々が「ここがポイントになるんだな」と勘所ができてきて、それを背中で示そうとするメンバーが出てきたりすると、まさにその人は無意識に活躍している状態になるのかなと思います。
レアル・マドリードのように個々も強いし、チームも強い状況が作れたら、面白いかなと思います。
勇気を出して問いを投げられる人
三輪 私も個人の話をして、新しく入ってくれた人たちに、もしよかったら覚えて帰ってほしいなと思います。
私はMVPに3票投票できるうち、3票目に濱田凛君に投票しました。カタパルト会場は全員経験者で、濱田君は別会場の経験はありましたが、カタパルト会場は初めてでした。
チームビルディングもしていただいていた(※)ので、最初からみんながエンジン全開で、リハーサルを速攻で始めました。
運営チームのチームビルディングとは… 同じチームのメンバーがお互いを知り合って結束を高めることで、当日のパフォーマンスが高められると考え、今回のICCサミットに先立って、スタッフキックオフイベントや、チームビルディング・ディナーなどを実施
私と福西さんは何度か経験があるので、これだけ経験があればいけそうだという感覚があって、今まで以上にリハーサルは早く終わりました。
本番の前日、夕方の5時半ぐらいに終わって、「これは速い! かなり仕上がった」と思ったのですが、その日の夜、濱田君が、「申し訳ないですが、リハが足りなかったと思います」と申し出たのです。
僕がメイン会場の運営経験があることを知っている上で、「オペレーションで、まだやっていないところが、こういうところ、こういうところがありましたよね」と言うのは、結構勇気がいったと思います。
「自分の準備不足かもしれないけれども、でもどうしても明日失敗したくないので、お願いなのでここは考えてください」と最後にタクシーでつかまえられて、ずっとその話を聞かせてもらいました。
彼はまだ大学生だったはずですが、本気でカタパルトやICCサミットを成功させようと思って、勇気を出して問いを投げられる人でした。
彼も結果的に票は少なかったかもしれませんが、私は自信を持って投票した人です。
初参加なので経験者と比べると、どうしてもパフォーマンスが落ちるのは当然だと思います。
でもおかしいと思ったことはしっかり「おかしい」と言い、こうしたほうがよくなると思うことは絶対に意見を出したほうがいいので、ぜひ次回はもっとたくさん意見や問いを出せる人が増えてほしいと思います。
自分の業務を超えて、全体をマネージできる人
山本 僕がMVPに投票したのは、今井さんとカネタク(金田)さん、福西さんです。
3人とも、本業でそもそも結構な立場の人で、責任を負っている立場の人であるのに、ICCサミットの運営チームに毎回参加していることで、まず迷いがないと分かるし、やると決めたことに対してバリューを発揮しにいきます。
その上で3人に共通していたのは、ICCサミット全体を盛り上げるために、自分の担当業務だけではなくて他の会場の統括をほとんどマネージしていて、きちんとメンバーのモチベーションをコントロールしてあげていたことです。
カネタクさんは、現場が混乱してマニュアルで対応できないときに、現場まで一気に下りてきて、他のグループもまたいで、会期に集中するように、うまく回るようにしていました。
今井さんは、あまり自分がやった感を出さずとも、みんなが話しやすい、いい文化をつくります。
例えばコミックの『鬼滅の刃』を全然読んでいないのに、誘導グループの絵文字を鬼にして、みんなが1つのコミュニケーションを取れて笑い合えたりして、1つの文化になっていました。
それを意地でもつくり上げたのが今井さんで、誘導チームが成功したのは今井さんのおかげだったなと思います。
<ICC運営チームでのスキルアップTIPS>
やらない理由を自分で探さない
山本 活躍するメンバーの特徴は、迷いがないことだと思っています。
まずやると決めたことに対して、周りからの見え方を気にしない。ボランティアスタッフは給与がないとか、本業の立場が高いから(手を抜く)ということはなく、まずやると決めたのだったら、自分で目的意識をもってやりきれよ、と思います。
やらない理由を、自分で色々探すなと思います。
小林 かっこいいですね。
山本 いえ、過去の自分に言っているところもあります。
過去は「本業が忙しいし」みたいな言い訳を心の中で唱えた結果、ひどく悔やんだので、今回迷いなく全力で努力できたなと思います。
あとは楽しむこと。新人だからって委縮しない。良い緊張感を持って、なれ合いにならずに楽しめることが、大事だと思っています。
できると思ったら率先して手を挙げる
坂本 達夫さん(以下、坂本) 経験が浅い人やまだMVPに選ばれたことがない人向けに、運営チーム内でのキャリアパスというか、1つ向こう側を目指すことについて、あとはMVPに選ばれていないけれども、ちゃんと仕事をしている人もいるので、その観点から一言ずつ聞きたいです。
三輪 (まっすぐ手を挙げて)はい!
これだと思っています。
要は、最初に手を挙げた人がチャンスをつかみやすいというか、それをわかってもらいたくて、今手を挙げました。
やはり、(小林)雅さんに対して「やらせてください」と言った人が、チャンスをつかみやすいことは絶対あると思っています。
小林 これは心理学ですが、授業を受けるとき、成績のいい人は前のほうに座っています。
だから僕の近くに座っているほうが、チャンスは得やすいです。証明されているエビデンスとして言われていることです。
金田 僕はちょっとその視点は逆かもしれません。
僕の場合、「これをやりたいです」と言うことはあまりないし、それこそ雅さんに「田中六五って、めちゃくちゃおいしいんですよ!」と1年前ぐらいから言い出したら、気がついたら企画にしてくれていました。
▶ICCサミット特別プログラム「田中六五」酒蔵ツアー!「これがないと生きていけないような酒を造り、人の気持ちに入っていきたい」【ICC FUKUOKA 2020レポート】
小林 そのときの記憶は一切なかったですね。
(会場笑)
金田 (笑)三輪さんのように「はい!」と手を挙げることを、できる人とできない人が絶対いると思っています。
できなくても、ちゃんと見ているメンバーがいます。そのメンバーが代理で発信をするので、無理に路線を変えるのではなく、自分はこういうプロフェッショナルスタイルのほうがいいなと思ったら、それを本当に細かいところまで突き詰めることです。
見ている人が、伝えるべきときはちゃんと伝えます。三輪さんの自主性と合わせて、その両軸を意識したいです。
小林 「やりたいこと」と「できること」は違いますよね。
「〜〜をやりたい」という要望をたくさんもらいます。やりたいというのは非常に自由なことですが、「統括をやりたいです」と言われたときに「君は無理だから」ということもある。なぜなら仕事においては責任が伴うからです。
「やりたい」と言って、ちゃんとできなかったら、やはり次は回ってきません。チャンスは1回だと思ってやらないといけません。
当たるかどうか分からないけれども、とりあえず手を挙げておこうみたいな学校の授業ではないので、本当にできる自信があるときに「やりたい」と言ったほうがいいです。自分の仕事としてのキャリアを考えて、その疑似体験をこの場でしているぐらいの感覚でやったほうがいいと思います。
「本当にできるの?」「覚悟を持ってやっているの?」という問いに対して明確に答えられるのだったら、チャンスは来るのかなと思います
金田 会場統括だけは、さまざまなポジションを経験したほうがいいと思います。
たとえば、スピーカー誘導チームから会場担当になるのはいいことだと思っています。登壇者が控室でどんな気分でいるのかを理解すると、会場に入ってもらった後、どうサポートすればよいかという意識が生まれます。
だから複数のポジションをやって、このタイミングで統括をやってみたいと考えたりするときに「担当を3つやったし、時間の流れも分かってきたたからこそやりたい」という主張に納得感が出る気がします。
<ICC運営チーム内で役割はどう決まる?>
仕事の疑似体験の場と考えて動く
小林 僕が考えている運営チーム内でのキャリアパスは、スピーカー誘導チームだったら、まずはメンバーから入っていって、A会場、B会場のリーダーとなり、会場の統括となるから、だいたい3段階ぐらいのステップがあります。(※)
リーダー、統括とは… 運営チームは大きく5つの役割で分かれるが、大人数のチームや、同じ会場担当でも役割が異なるときは数人の小チームに分かれており、それぞれリーダーがいる。統括は、そのリーダーの小チーム全体を見る役割
当然ながらリーダーといっても何人もいるので、その中で抜きん出た人が次の段階にいきます。
抜きん出たからといって、必ずしもマネジメントに向いているわけではないから、マネジメントに向いている人になっていきます。そのような感じのキャリアパスです。
会場運営のメンバーなら、ステージ担当から入ります。順調にいくと2~3回でパスが終わってしまうので、よりダイナミックにキャリアを作っていくために、受付に行ったり、会場に行ったりと動かします。
メンバーの中でも目立った人がステージ担当のリーダーになったり、会場総括になったり、最も難易度の高いカタパルト会場に行ってもらおうとなったりします。
金田 僕はロールを勝手に模写するのもありかなと思っています。
会場で運営に余裕が出てきたら、例えば司会を誰か代わってやってみたりとか。そんなときのために、司会の模写をできるまでちゃんとイメージしておくことです。
F会場は、司会を古川(琢郎)さんが継続されているとは思いますが、あれも会場統括の古川さんが、急きょやってみたら意外とよかったのです。多分シミュレーションができていたのでしょう。
その辺は楽しくできるような気もしています。
<ICC運営チームで活躍するには>
自分の得意なこと・苦手なことを言語化して伝える
山本 僕は得意なことと苦手なことを自分なりに言語化しておくことが非常に大事だと思います。
言語化したものを自分のリーダーにあたる人に伝えておいて、「僕はこれが得意だから、これに関する仕事は率先してやります」といったことを伝えておくと、得意な仕事を振ってもらえる。逆に苦手なものをはっきり伝えておくことも、非常に重要だと思っています。
今回同じチームのメンバーだった同い年の中嶋逸成は、僕とは全然タイプが違う優秀な人で、人の前に立って色々しゃべるタイプではありません。
セプテーニから運営チームに参加した4人でポーズ。中嶋さんは右から2番目
どちらかというと、事前に準備したりデザインしたりするのが得意だと僕は個人面談で聞いていました。聞いた内容の通りに、彼の得意な分野で仕事を振ると、即座に結果を出して存在感を表してくれました。
運営チームの統括やリーダーは、メンバーの成果を自分の物にしてのし上がっていこうとする人は全然いないです。「目立っていないかもしれないが、こういうところで活躍している」と、リーダー同士で共有します。それは雅さんにも絶対伝わります。
得意な分野で結果を残して評価されておくと、2回目以降にちゃんと適したポジションに配属されていくことになると思います。だから安心して自分の持ち味を発揮してください。
小さなポジションをやり切る
市川 運営チーム内でいい問題提起だなと思ったことがあったのですが、振り返りの中で「飲み物を配る担当は、ICCサミットの理念としてある、産業を創るとか、学び合うという意味づけ的に意味があるのか?」という疑問を出した人がいました。
確かにそういう側面はゼロではないと思いますが、同時にポジションがたくさんあることは、僕は大事なことだと思っています。
つまりどんなに小さなポジションでも、やり切ってやっている人に我々は気づくし、目立ってしまうんですよね。そういうことを考えると、ICCサミットのスタッフをやるという中に、疑似的な社会や会社のようなものが含まれていると思うんです。
だから、どんな小さなポジションでもやり切っている人でないと、その次のポジションでやり切れないということ自体は、間違いないと感じています。
今後何か次にやりたいと思っている人であればあるほど、今のポジションを本当にちゃんとやっていることを僕ら自身が分かっていれば、推挙したいと思っています。
例えば先ほどの天馬君だったら、次にもっと挑戦できることをやればいいと思っています。
できるかは分かりませんが、応援したいなと思えるし、そういうふうに思わされているのは、その仕事がどんなに小さくても一生懸命やっている姿を見ているからです。そこは大事にしたほうがいいのではないかと思っています。
<運営チームを経て、産業を創る一人になるには>
仕事の価値を自分で見出す
小林 運営チームというのは「運営」とついているので、運営するためのチームであるのですが、それ以上に皆さんが、今後日本だけでなくて世界の価値を生み出す、役に立つ、貢献する、そんな人たちになってほしいと心から思っています。
例えばサービスチームになって、飲み物を配るというのは「何か意味あるの?」と思うかもしれませんが、すべての仕事は、かっこいい仕事とそうでない仕事が当然あります。
スポットライトが当たる仕事と当たらない仕事があります。今はスポットライトが当たるような仕事だけれども、実は2回前は飲み物を配っていたというように、色々と経験する。ずっと同じだけではだめだと思いますが、交替でやっていく。
今回活躍した萩森(修平)君は、何回か前に「なぜ有給を取って、ICCサミットの運営チームに参加するのか? 何をやっているのか?」と聞いたら、「マイクを渡しています」と言うのです。
「なぜマイクを渡すために、参加しているのか」と聞くと、「マイクを渡すことによって、議論が活性するから、意味があるんです」と言っていて、素晴らしいなと思いました。
▶ICCは理想のコミュニティ。全員が本気で取り組める組織を、自分も創っていきたい(萩森 修平)【スタッフレポート:スカラシップでICCに参加して】
ちょっとした仕事だけれども、その質問が数秒速くできたことで、時間ができて価値がある質問ができるかもしれないので、そこには本当に意味があるわけです。
だからそういったものを自分で気づけるかどうかは本当に大切だし、自分が上に立つとよく分かるのですが、そういう仕事をしてくれる人は本当にありがたいのです。
自分が上に立ったときに、本当につまらないかもしれない、申し訳ないなと思っている仕事は必ずあるのですが、それを一生懸命やってくれる人は本当にうれしいし、そういう人をまともなリーダーは本当によく見ているので、その人に対して、次は本当にいい仕事をしてもらいたいと思うものです。
そのメンタリティでやっていただくと、ICCだけではなくて日々の仕事の見方が変わるし、そういう仕事をしている人たちを見たら、なんかつまらないし、かわいそうではなくて、手伝ってあげるとか、もっとこうしようというふうに態度が変わるのではないかと思います。
ぜひその気持ちを忘れず、1つ1つ丁寧にしっかりやっていき、次の京都に向けて頑張っていきましょう!
◆ ◆ ◆
ここまでの議論を読むと、スタッフ参加は、生半可な気持ちではできないのではとか、大変そうと思う人もいるかもしれない。たしかに準備にせよ、本番にせよ、正味4日間に対して求められるものは多く、合う人、合わない人は、はっきりと分かれるだろう。
しかしスタッフ継続率は約7割と高く、本気で取り組めば日常にはない刺激や学びが得られると、コミットメント高く参加してくれる人たちが多い印象だ。運営チームに参加したスタッフの感想はぜひ、スカラシップレポートをご覧いただきたい。
「ともに学び、ともに産業を創る。」というスローガンのもと、真剣勝負で取り組むICCサミットだが、ある種文化祭のような楽しさもあり、最終日には達成感もある。運営チームには東京でのワークショップやイベントの運営も兼ねた参加や、ICCランチ、活躍すると前述のリトリートなど、楽しい企画も用意している。
「ICCは全力の努力を応援してくれる環境」
パネル・ディスカッションが終了すると、MVP授賞式となった。同率7位が2人、8位が4人いるため、合計12人に記念品が贈られた。
1位 | 山本 丈善 |
2位 | 金田 拓也 |
3位 | 市川大樹 |
4位 | 三輪 開人 |
5位 | 澤谷 賢太 |
6位 | 下川 泰弘 |
7位 | 池田 史、高野 葉子 |
8位 | 荒木 珠里亜、 今井 悠介、高杉 涼平、福西 祐樹 |
▶【一挙公開】ICCサミット FUKUOKA 2020 スタッフMVPインタビュー
受賞者が一人ずつスピーチ。写真はメディアチームから初入賞の池田 史さん
今回の記念品は、リーデルのワイングラスとルイナールのシャンパン。それぞれが一言スピーチをしたが、ここでもMVPの山本さんの熱いメッセージをお伝えしたい。
「今回はたまたまリーダーのポジションだったので、MVPをいただいていますが、みんながいいもの創ろうと仕事を全うしてくれたので、オール定刻で進行できたと思っています。本当にみんなのおかげだし、感謝したいです。
ICCっていいなと思います。なぜなら、全力を惜しみなく発揮できる環境だから。中途半端な環境だと、『意識高い系』と揶揄され、笑われたりします。ICCはまったく逆。高いものを目指す努力している人を、むしろ応援して活躍できるようにする環境です。
なぜそんな文化が生まれるかというと、目標に向かって血のにじむような努力や悔しい思いをしてきた人が集まっている場所だからだと思います。頑張ることは辛く、大変なことがあると知っている。だから、頑張る人を見て応援したり支えたりできる。
これから環境を作って行くのは僕らだし、僕が今、ここに立たせてもらったように、次は新たに頑張る人を応援しポテンシャルを発揮させたいです」
後日、打ち上げに参加できなかった今井さんと高杉さんもMVP受賞の記念品を受け取りに来社した。
このチーム、最後の懇親会
そもそも今回、打ち上げを行うか否かというところでも議論はあったものの、これが今回の運営チームでも最後のイベントであり、考えうる手段を尽くして開催しようということで決行となった。プレイベントからICCサミット当日まで、何度となく一緒の時間を過ごしてきた仲間と会える最後の機会である。
パーティの食事はビュッフェではなく、決まったスタッフが手袋をして盛り付けたものを配るような形にし、着席した形で飲食。立食でのにぎやかな雰囲気はないが、久しぶりの再会に、どのテーブルでも話に花が咲いている。
話は尽きないが、ドアを開けて空気の入れ替えを定期的に行いながら、終了はいつもより早めの時間となった。打ち上げの締めの挨拶に、ICC小林がマイクを持って呼びかけた。
「もしもう一度、運営チームに参加する機会があるのなら、より楽しいものを創ろうじゃありませんか」
4日間で運営チームが担う仕事は、決して難しいものではない。基本に忠実に、一つひとつやっていけばできることだが、初めて会う人と協力して価値を出そうとしたり、今以上を目指そうと思ったときや、イレギュラーが発生したときに、難しさが出てくる。それを力を合わせ、一つずつクリアしたときに、結束や手応え、楽しさが感じられるようになる。
それを「しがらみのないところで4日間、高速でPDCAを回していく体験」という人もいる。それを持ち帰って自分の職場で実践しようとする人や、年に2回のICCのサミットで、自分がどこまで腕を上げられたか確認するという人もいる。接点のない社会人の世界を見てみたくて来たという学生もいる。
「ともに学び、ともに産業を創る。」ために、運営チームは裏方のスタッフだけではない。ともに全力を尽くして、それが産業を創ることにつながるならば、費やす努力は無駄にはならない。仲間との共創、そして産業を共創する一人として、より成長を求め、楽しい未来を目指す場として、この場に加わっていただければ幸いである。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成
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