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聞く歴史コンテンツとして人気を拡大中の「歴史を面白く学ぶCOTEN RADIO」。その中心人物で、歴史を愛し、歴史を知りすぎてしまった株式会社コテンの深井 龍之介さんが、ICCサミット登壇者のご紹介により、ICCサミット KYOTO 2020に登場! 登壇者・参加者にも「COTEN RADIO」のファンが多いことから、7月3日に深井さんを囲む会を開催しました。その模様をお伝えします。
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
コテンラジオの深井さんがICCに登場!
ポッドキャスト「歴史を面白く学ぶCOTEN RADIO」をご存知ですか? 国内外の歴史上の出来事や人物、はてはお金の歴史などテーマ斬りまで、ひたすらマニアックに歴史を語る音声番組なのですが、昨年Japan Podcast Awards大賞とSpotify賞をダブル受賞。YouTubeでも配信されており、じわじわと人気を拡大しています。
歴史を面白く学ぶコテンラジオ_COTEN RADIO
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▶日本一のポッドキャスト、歴史を面白く伝える「COTEN RADIO」に決定(IT media NEWS )
ICCサミットの参加者、登壇者の中でもファンが多く、ココナラの南 章行さん、住友生命の藤本 宏樹さんもお知り合い。三星グループの岩田 真吾さんのご紹介で新シリーズ – 歴史から学ぶ「帝国の作り方」セッションや、比叡山延暦寺のツアーなどに登壇いただくほか、こともあろうにカタパルト・グランプリにエントリーです!
そのリハーサルも兼ねて深井さんが来京したタイミングで、歴史から学びたいICCサミット参加者有志で、深井さんを囲む会を企画しました。もとは4月に企画していたのですが、緊急事態宣言の外出自粛期間となったため、7月3日への変更となりました。カタパルトのリハーサルを終えた深井さんに、ココナラ南さんが早速挨拶しています。
深井さんを囲む会はソーシャル・ディスタンスを考慮に入れ、少なめの人数で歴史のフリートーク75分となりました。いきなり振られた時代・お題・テーマでも、何でも答えられる深井さんに一同驚嘆! その模様をお伝えしていきましょう。
COTEN RADIOファンのカラクリ小田 志門さんも始まる前に記念撮影
『キングダム』の時代、何がすごかったのか
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深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役
新卒で入社した大手電機メーカーの経営企画を2年で退社し独立。新規事業立上コンサルタントとして3年働く。その後福岡でベンチャー企業取締役を2社経験し、株式会社COTENを起業。現在も複数社のスタートアップ・ベンチャー起業の取締役を兼任しながらCOTENの代表を務める。人文学・歴史・社会科学が大好き。3,500年分の世界史情報を体系的に整理し、200~300冊の本を読んで初めてわかるような社会や人間の傾向やパターンを、誰もが抽出できるように世界史の一大データベースを作成するプロジェクトを進行中。また会社の広報活動としてPodcastで「歴史を面白く学ぶCOTEN RADIO」を放送中で2018年末から開始し、2019年にはJapan Podcast Awards大賞とSpotify賞をダブル受賞。Apple Podcast総合ランキング過去最高1位を獲得。
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経営者が集まっていることと、ファンが多いことから「『キングダム』あたりから始めましょうか」と話を始めた深井さん。全編に渡ってベンチャーや経営者を意識した知識やトリビアを、COTEN RADIOさながらに、次々と語っていきました。
▶読む楽しさ倍増! ICC登壇者たちが『キングダム』のキャラクター、組織、経営の学びを深読み!
深井さん「春秋戦国時代の本当に最後の時代です。戦国七雄とよばれる7つの国(秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓の七国)がありますが、こんなにたくさん残ることはないです。普通は2、3国で、誰かが弱くなったら他の2つが強くなりました。
7つあるのがすごいところは、1つが強くなったらそれを潰そうと合従軍ができたり、柔軟な戦力拮抗状態を創ることができたので、とても長い間戦国時代が続いたのです。その間、超実力社会が続きました。
既得権益で生きている人たちはその間にいなくなり、実力社会で実力を発揮する人、その中で切磋琢磨している人しか残っていないので、あの時代は不世出の天才みたいな人が多いのです。とにかくみんな、ぶっ飛んでいます。
彼らの特徴は、とにかく、空気を読みません。
ほかの時代や文明だったら、それを王様に言ったら首が飛ぶというようなことを、平気で言うみたいな文化が育っていて、逆にそれをどこまで言えるかというところに、かっこよさを見出しています。
諸子百家(春秋戦国時代に現れた学者・学派の総称)の人たちなのですが、どこまで忖度しないでしゃべれるかがかっこいいという文化でした。
王様のほうも、何でもないところから人材を発掘するのがかっこいいみたいなのがあって、そこから出てきた人たちのなかに、孫子(孫武と孫臏)、墨子とかがいて、全員すごいんですよね。
彼らの基本的なスタンスとしては、ベンチャー企業と近くて、自分に信念があります。自分に究極の哲学がある人しか残っていない。
ギリシャの哲学者は、暮らすために仕事をする必要がなくて、哲学しているだけでいいのですが、中国は全員が戦争しているなかで、哲学もするんです。
戦争していてみんなめちゃくちゃ強い、将軍だけど、行政の知識とスキルがすごくあるとか、哲学もできる人がいる。そういう人たちが生き残っていて、そういう哲学を王様に噛み砕いて言えるのがかっこいいとなっています。
彼らが哲学を王様に説明している言葉が残っています。たとえ話をするのですが、過去にこういう王様がいて、こういうふうにだめになった、こういうふうに成功したという話をして、お前もそうだ、というのが彼らの基本のスタイルです。
僕が一番好きな諸子百家は、墨子と孟子です。
春秋戦国時代の戦国七雄、それぞれの国に特徴がありますが、斉は学問の国で、学者を大量輩出しています。ちなみに魏はエンジニアの国、秦は軍事の国です。
斉は稷下の学(しょくかのがく)といわれて、筑波大学というか、学園都市みたいになっています。勉強したかったら斉へ行く。孟子もここで学んでいます。
孟子もとにかく空気を読まない。『五十歩百歩』という言葉がありますが、これは彼が王様を説得するときに言った言葉です。王様が孟子にボロクソ言われて、自分のほうがあの王様よりここができている、と反論したときに、孟子は言いました。
『戦場で逃げた2人の戦士がいたとします。50歩逃げた戦士と、100歩逃げた戦士がいて、あなたの評価は変わりますか?』と聞き、王様が変わらないと答えたところ、あなたはそれだと言ったのです。
(会場爆笑)
そこで、王様はあっ気に取られて『……。』となったことが、記録に残っています。
孟子は態度が超でかい。ある日王様の側近がそれに対して、いくらなんでもおかしい、なぜそんなに偉そうなんだ、失礼だ、と注意するのですが、孟子はこう答えます。
『王様も、気を使えることがあったほうがいいでしょう。王様にとっても、自分が偉そうにできない存在があったほうが絶対いいと思う』と言ったのです。だから自分は態度を直しません。王様は恐縮してください、と。
なかなか他の国でそんなことを言う人はいなくて、そういう言葉は2千数百年も残っているわけです。非常に頭のいい人でもありました。
そんな孟子を勉強して、松下村塾で教えていたのが、吉田松陰です」
とめどなく溢れてくるエピソード。COTEN RADIOをお聞きの方はきっとご存知の感覚かと思いますが、歴史上の偉人がぐっと身近になります。
ICC小林「今日は、こんな感じで大丈夫ですか? 岩田さん」
岩田さん「はい! 空気を読まないといえば…(ICC小林)雅さんですよね!」
会場の気持ちを代弁(!?)したような言葉に、会場は爆笑です。
深井さんは、なぜ歴史を見てきたように語れるのか?
歴史を学ぶときは1次~2次資料にあたるという深井さん。資料の9割はつまらないことが多いといいます。面白さのブレイクスルーはなんと、15冊目ぐらいに出てくるのだそうです。
岩田さん「以前に、歴史を勉強するときに、深井さんが作者の思いが入っているから小説を読まなくて、一次資料にあたると聞きました。
でも話を聞いていると、見てきたように語られるじゃないですか。どこを読み取れば、ビジュアルでも見てきたかのように、そんなにわかるのですか?」
深井さん「ビジュアルは想像しながら読んでいます。さきほどの孟子も、会話文として残っています。
孟子の発言のあとに王様が辟易している描写があって、それまで饒舌だった王様が急に言葉が少なくなったりとか、そういうものをつかんでいる感じです。一次資料からでもわかるところがありますし、嘘にならないレベルの想像で補っています」
南さん「易姓革命という概念があって、新しい王朝になると歴史書を編纂して、前の王朝を悪く書いて、今の王朝を良く書いています。そこを差し引いて読まなければいけないけれど、研究者はどうやって資料を読んでいるのですか?」
深井さん「たしかに、それを考慮して読むことしかできません。でも、僕たちがいま経験していることもまったく同じだと思っています。
ベンチャー企業でトラブルがあって人間関係が壊れたとします。それで両側の陣営から話をに聞くと、まったく違う事実がでてきたりします。それと同じじゃないですか?
両側を聞く人って、それを差し引いて聞くじゃないですか。この人はこういう立場だからこう言って
いるんだろうなと思って聞きます。歴史の読み方はそれと同じです。盛って書いているところは絶対に出てくるので、どう差し引いて読むかは歴史学者の仕事の一つだと思います。
チンギス・カンは、情け容赦なく敵を皆殺しにするなど、他の文明から見ると非常に残酷な人で、中国王朝はそれに対して比較的正確に書いているけれども、イスラム国家はめちゃくちゃ盛っています。
なぜそうなるかというと、イスラム国家はそこまで皆殺しにする文化はない。普通途中で止めたりするのだけど、初めて皆殺しにされたので、それが怖すぎて、盛られ続けてそれが100万人殺されたとなってしまったのではないかと、歴史家は見ています」
シンクロ西井 敏恭さん「そもそも深井さんは、なぜ歴史に興味をもったのでしょう? きっかけは?」
深井さん「僕は20歳までに、尊敬する大人を見つけられなかったのです。自分自身が考えている疑問に答えられる大人が周囲にいなかったのですが、中国の古代思想に触れたときに、初めてロジカルに、きれいに答えてもらえる人たちがいたのです。それが衝撃でした。
たとえば孔子もそうなのですが、目上を敬えといっているのではない。
敬う文化を組織(国家)に導入すると、組織はうまく治まる、という話をしていて、とても論理的な話をしているなと思って気に入ったのです。
倫理的だったり、これが善だ、悪だという話をしているのじゃない。そこで尊敬できる大人を歴史上に見つけたんです」
コロナ禍の社会への影響は? 歴史の観点から想像してみよう
どんな話になっても面白すぎるということで、集まった人に好きな歴史上の人物は?と聞いていったところ、意外なことからタイムリーな話題へ移りました。
南さん「歴史上の人というより、地政学的必然が好きです。たとえば地球が寒冷化すると人が南下して戦争が起きるとか、米の地域と麦の地域では収穫量が違うので、エリアあたりで人口が変わってくるとか、安定して収穫できないところは戦争が強くなるとか。
王様がいて国があると考えがちだけど、全部一定の必然がある。それが整理されてきた瞬間の面白さが好きです」
深井さん「それは歴史学でいうところの、世界システム論という観点と言われていて、人間よりも諸条件が重なったときに、そうなっていくという話ですね。
歴史を見ていると、玉突き事故みたいなことが起こります。産業とか、新しい転換点、いまのコロナもそうです。
ペストも世界にめちゃくちゃ大きな影響を与えています。
コロナを今僕たちも体験して大変ですが、中世ヨーロッパで流行ったペストは、その比じゃない。都市の半分が死んでいる状況が起こって、社会が変わっています。ベネチアなんて人口の4分の3が死んだのです。
当時はウイルスや細菌の概念がなかったから、超怖いわけです。それで人々は、自分たちがよほど悪いことをしたのかと考えるのです。
宗教的な話になっていき、自分たちにムチを打ちながら行進することが流行ったり、隣町に感染が広がると、全員自暴自棄になって踊り狂ってーーーそれが後世そのまま社交ダンスになっていくとか、いろんなことが起こるのですがーーーそういうぶっ飛んだことになっていくわけです。
あとは、人のせいにする。これはユダヤ人が毒物を流しているんじゃないのかという話になって、ヒトラー並に大量虐殺を行ったと言われています。
資本主義の形成にも影響を与えています。流行ったことで一番変わったのは、宗教の価値が落ちたのです。
当時の宗教は救いでした。彼らは人を救うことができる唯一の存在だったので権威があり、これで救われると免罪符を発行したりして、腐敗もしていました。
そんな時にペストが来て人がたくさん死に、教会が無力だということがわかってしまいました。しかも、上のほうの聖職者は逃げたりして、全く役に立ちません。今まで偉そうにしていたのは何だったのだと、権威が失墜します。
解剖なども倫理的に圧倒的なタブーなので、教会が野蛮な行為だと禁止していました。医学は解剖しないかぎり発展しないのですが、解剖できなかったので、ずっと1000年ぐらい発展しませんでした。だから、中世ヨーロッパでは1400年前の医学か、それより前の医学を使っていたのです。
教会の権威が失墜して何が起こるかというと、ありのままのもの、目の前の現象をみて、それを帰納法的に検証していこうとする発想が生まれました。これは本当にわけわからないということが起こり、切り開いて見てみようということに、ローマ法王がOKを出すのです。
ペストがきっかけでタブーの臨界点がきて、解剖ができるようになり、医学が優位になるのです。
そして僕たちが信じてきたことは幻想、ストーリーだったと気がついて、科学的発想が生まれます。
目の前の現象を見て、データを積み上げて傾向として見ていこうとなりました。そこから医学、化学、ルネッサンスの発展の流れにつながります。
また人口が激減した結果、生産人口が一気に減ってしまいました。それまでは土地さえあれば人間を確保するだけだったのが、人がいなくなったのです。すると農業従事者の数が非常に足りなくなり、その結果農奴の立場がちょっと高くなります。より高単価で雇うという風潮になります。
労働力が賃金化するのが資本主義の前提条件です。今まで利益を吸い上げられていた農奴が、働いた分だけ単価をもらうことになり、特に人が減ったイギリスからそれが始まり、それは資本主義の始まりで、産業革命へとつながります。工業が起こり、産業が起こります。
何が起こるかわかりませんね。ペストが産業革命につながるなんて」
ズバリ聞きたい!帝国はなぜ滅びるのか
歴史をこよなく愛し、COTEN RADIOも愛している藤本さんが、これを聞きたいとばかりにとっておきの質問を投げかけました。
藤本さん「帝国の滅び方に興味があります。ローマ帝国は辺境から滅びています。あれだけ制度を作ってお金もあるのに、地方でちょこっと起こったことで滅びてしまった。なぜそういうことが起きるのでしょうか」
深井さん「法則として思うのは、国は、組織は必ず腐敗する運命を持っていることです。
初期は不世出のリーダーによって起きます。そして初期から中期にかけて組織で大切なのは、属人的でなくなることです。システム化されていることが必要で、それは言い換えると、既得権益があるという状況なのです。
優遇されている人たちが権力を持っていて、国を動かしているという状態。そうなると国は安定するのですが、同時に腐敗がおこって、面白いことに必ずファクト認識しなくなります。
明確な特徴があります。上層部の議論の中に、ファクトが入らなくなります。国の周辺で反乱が起こっているのに、それを認知してくれなかったり、理由をちゃんと理解してくれない。『起こってない』とか『そんなわけない』とか言うのです。そうなると国家経営ができなくなって滅びるのです。
そうなってしまうのは、仕組み化されているからで、ものすごいジレンマです。仕組み化すると生きていけるけど、ファクト認識できなくなる。なぜそうなるかというと、既得権益があると、ファクト認識すると都合が悪くなる人たちが出てくるからです」
一同 おお〜〜っ!
南さん「とはいっても長かった帝国もある。なにをうまくやったら長くなったのでしょう」
深井さん「本人の理由でなくて、外的要因だと思います。江戸幕府は長かったけど、あれは黒船が来るのが遅かったからだと思います。早く来ていたらもっと早く滅びていたと思います。要は、帝国に対抗するようなカウンターパートが出てくるかどうかです」
ICC小林「産業の歴史もそうですよね」
深井さん「そうですね。オスマン帝国が、まわりの国までコントロールできていたわけではない。コントロール外にあるところで運命が決まっていると思います」
藤本さん「ベネチアも何度も潰されそうになっています」
深井さん「ああいう要衝っぽい、いろいろな人が行き交うところと、いろいろな国に囲まれているところは、そういう国に間接的に操られているところもあります。そうして生き残っているところもたくさんあります。地政学的ともいえますね。
僕たちの近くでいえば朝鮮もそう。なぜ中国に入っていないのか、結構おかしな話です。あれだけ広くて、国土を拡大しているのに、中国はなぜあそこだけを残しているのか。
それは朝鮮がうまく立ち回っているからです。朝鮮半島は、めちゃくちゃ政治力が高くないと運営できません。
巨大帝国が隣にあり、海の向こうに結構強い日本がいる。日本は割と強いのですが、その日本からばんばん攻められるなかで、独立しろ、経営しろって言われたら、結構難しいです。そう考えると結構うまくやっているな、ああならざるを得ないかなと思っちゃいます」
アセットマネジメントOne 岩谷 渉平さん「外部環境以外にも、滅びる理由はありませんか?」
南さん「内部崩壊とか? そうはいっても自助努力で寿命を延ばせませんか? オスマン帝国だと、弟を必ず殺していた。王朝が維持できなくなるのは、子どもの勢力争いで分裂したりするからです。比較的一般化できる、組織の長持ちできるパターンはないですか?」
深井さん「正しいかわかりませんが、比較的長く続いているところの皇帝の出し方は、3勢力ぐらいからぐるぐる回しながら出しているところが多いように思います。
江戸幕府がまさにそうで、御三家がいて、一橋慶喜は、宗家でなかったところから出てきている。ある一つの権力が突出して大きいと、バランスとしては難しく、永続性から見るとかなり難しいです。
秦の始皇帝はびっくりするほど中央政権で作ってしまったから、2代で終わっている。そのあとの漢は、もう少しバランスをとってみたら、長く続いた。
結局既得権益のバランスを、どれだけ周りに分散させるかということだと思うのです。その渡し方がうまければ長く続くけど、下手だと短命で、さきほどの腐敗も同時に起こります。
僕たちみたいな株式会社でやる場合は、個人的には自己破壊していかなければと思っています。指示命令系統や評価などを、確変的に定期的にぶっ壊していくと、組織として生まれ変わっていくので永続性が高まるのではと思います。
でも、株式会社の目的が永続性かというと謎なので、10年ぐらいで潰れる会社をバンバン作るというのもありかと思います。
中国王朝はすごくうまいと思います。中国はヨーロッパの国々を統一しているようなものなので、すごい政治力です。日本と比べると、歴史的に見てスキルもマインドも圧倒的に上です。
中国人にあなたたちの歴史で最も栄えた国は?と聞くと、唐と答えます。でも唐って、漢民族の国じゃないのです。遊牧民の鮮卑族の国なのです。
でも、中国になってるじゃないですか。そこがすごいですよね。永続性がすごい。その会社じゃないのに、その会社だと名乗っているような状況。新しく出てきた強いベンチャーを、うちの会社ですといっているようなものです。
別に政府がそう言っているのではなく、彼ら自らが中国と同化することを望んでいます。元もモンゴル民族ですが、そうですよね。
中国人の最大の発明は、漢字です。これは相当すごい発明で、漢字と官僚制度は一対になっていて、文書行政を作った。それで巨大なあの帝国を統治するシステムを作ったのです。
一番優れた制度だったから、鮮卑族やモンゴル帝国が中国を治めようとすると、どうしても官僚制度を採用しないわけにいかなくなり、そのシステムを使おうとすると文書行政だから、どうしても漢字を使わないわけにはいかない。
すると、自分たちも漢民族のようにならざるを得ないのです。
システム的に一緒だし、それを変えることすらできなくて、逆に同化してしまう。遊牧民の制度で国を収めることはできなかったのです。そういうでっかいエッセンスがあって、それが大きな国のすべてを司っているのです」
ICC小林「住友グループは銅を採掘するところから発展しています。足尾銅山は一番手で古河財閥、住友は別子銅山で二番手なのですが、いまは歴然とした差がありますよね。住友は400年と日本一長く続く財閥です。その圧倒的な差は何でしょう?
住友本家は一旦無くなったりもして、名家から養子がきています。経営者と所有のオーナーをはっきりと分けているそうですが、それが多角化に生きているのでしょうか。
住友は非常にポートフォリオ経営として優れています。銀行、商社、保険 林業ほかにもあり、CSRなどでやっていた林業も、ちりも積もれば巨大な産業になるのだと思います」
深井さん「初期のオーナーに哲学をもった人がいて、それが脈々と受け継がれているのではないでしょうか。それが経営とオーナーの分離を促進させているのではないかと推測します。
国についても同じですが、創業者は創業できているから、成功しているということです。
その人の成功によって国は大きくなるのですが、その思いは、どこかで”呪い”になって、その国の悪い部分を司るようになるのです。
たとえば後漢王朝でいくと、光武帝という人は、宦官とよばれる奴隷に助けられたことがあります。だから比較的彼らを重用しますが、なぜ後漢王朝が滅びたかというと、宦官が跋扈するようになったからです。そういうことが起こるのです。
最初はいいのだけど、だんだんその”呪い”がボディブローのよう効いてくる。
400年も続くところならば、それをどこかの時点で確変されているのだと思います。中興の祖みたいな人がいて、ボディブローを取り除いて確変させると、300年ぐらい続きます。
150年以上続く国家は、必ず中興の祖がいる。7代目くらいのときにすごい人がいて、創業者の悪癖とかボディブローをうまく切り替えていき、それがうまくできると、300年ぐらい続くのです。
これはオスマン帝国でいう、完全にメフメト2世(7代目)とスレイマンです。既得権益をぶっ殺すことをやっていて、その人たちが真ん中にいる。それが150年後にまた起こるんでしょうね。
400年続く場合は、2回ぐらい途中に中興の祖がいるんじゃないでしょうか」
南さん「オスマン帝国の600年の歴史には、150〜200年ぐらいでフェーズが変わると書いてありました」
深井さん「現代の組織は、そのフェーズが早くなっていると思います。それも30年ぐらいに。150年だったのが、5分の1ぐらいになっている。30年毎にすごい人、創業者と同じくらいの人が出てこないと存続できない。
仕組みで次の代が輩出されることで150年続くのだけど、それによって腐敗していくので、それを新たにぶっ壊す人がいて、新たな仕組みを創る人が中興の祖です。
そういう仕組みの寿命がマスメディアの登場以降、めちゃくちゃ短くなっていて、面白いなあと思います。情報伝達が早くなった結果、そのサイクル自体が早くなったんだと思います」
岩谷さん「仕組みは優れているのだけど、中興の祖は、それをさらに上回るものをもっているということですか?」
深井さん「そうです。その人達は、賭けに必ず出ています。中興の祖のすごいところは、ある程度安定したところで生まれていて、自分が冒険する必要がないにも関わらず、賭けに出るという難しいことをしているのです」
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中興の祖ではなく、開祖である方々が多かったこの夜でしたが、話を聞きながら、皆さんは何に思いを馳せていたのでしょうか。漢字に並ぶような仕組みの発明なのか、自分の呪いなのか、はたまた自身の会社のフェーズなのか、中興の祖は誰なのか。もしくは賭けによるゲームチェンジかもしれません。
最後は記念撮影で、フリートーク終了です。
終了後も深井さんは大人気。吉田 松陰ゆかりの町に住んでいるリブ・コンサルティングの権田さんや、ネット・プロテクションズの秋山 舜さんは、早速深井さんをつかまえて、COTEN RADIOの過去の放送分について話し込んでいます。
リスナーの一人として、お話に混ざらせていただきましたが、今は世界はいろいろなものに翻弄されていて不穏である、と不安をもらしたところ、歴史マニアの皆さんから「歴史は上向きの螺旋階段。同じところを回っているように見えて上がっている」という、力強い言葉をいただきました。
終了後も感想をいろいろいただいています。
「ICCは現代の諸子百家の集まりですね!」
「参加されてる皆様の歴史への造詣が深く驚いた。組織がどうして滅んだのか、また滅ばないためには何をしなければいけないのかなど、ビジネスリーダーの視点でのトークもありすごく学ぶことが多かった」
「集まった皆さんが、自分の代だけではなく、この先の会社をどうやって存続させていくのに腐心していることに感心させられました。我々はいまだ現在進行形の会社しか見えてないし見てないなぁ~と。あの会に参加してからCOTEN RADIOも聞き始めました」
「参加者から様々な角度でぶつけられる組織や事業に関する質問に対して、個別の歴史事象と解釈の組み合わせで全て答える深井さんがすごかった。そして説得力があった。ただ学ぶのではなく、どういう問いを立てて歴史に向き合うか、それがとても大事なのだと思いました」
一度聞けば、俄然歴史が面白くなってしまうこと間違いなしの深井さんのトークが聞けるのは、ICCサミットのDAY1の 延暦寺CRAFTED TOUR(満席)、Session 5D新シリーズ – 歴史から学ぶ「帝国の作り方」とDAY2のSession 6A「カタパルト・グランプリ」。ぜひご期待ください。以上、現場から浅郷がお送りしました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成
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